相続税・所得税の二重課税処分をめぐって国を相手に戦い抜き、ついに最高裁で納税者の逆転勝訴を勝ち取った“無骨な税理士”の裁判ドキュメント ――
日本税理士会連合会の会報(『税理士界』)の今月号のブックレビューに紹介されていたので、購入して読みました。
課税当局に対して「更正の請求」を繰り返すも、すべての還付に至らず。
国税不服審判所に審査請求、しかし棄却。
税理士としての使命を貫き、納税者の理解を得て、国を相手に税務訴訟。
一審の地裁は納税者が全面勝訴。 国はただちに控訴。
二審の高裁は一転敗訴。 舞台は最高裁へ。
そして、平成22年7月6日、納税者の逆転勝訴
見事です

納税者との出会いから7年。
江崎さんの正義感と信念が、納税者の理解と信頼を得て、そしてその信頼に応えるべく税理士の使命を果たされた江崎さん。
国を相手に最後まで闘い抜かれた納税者と江崎税理士のお二人に敬意を表します。
たったひとりの納税者が訴えた利益は、わずかに25,600円。
しかし、最高裁での逆転勝訴がもたらす影響は、20万件、300億円に達するとも、、、 江崎さんが昨年11月に黄綬褒章を受賞された時の地元紙(長崎新聞)のインタビュー記事が同書に掲載されていますが、その記事の最後に書かれた江崎さんのメッセージが素晴らしいです。
独立して公正な立場で「納税義務の適正な実現を図る」と定める税理士法第1条が「私の物差し」。
「これからも業務をこつこつと続けたい」と語った。
それにしても、なぜこんな事態が生じたのか・・・
考えられる原因は、国側の主張を見れば昭和43年の通達にあるだろう。年金受給権に課税するという例の通達である。これが長年、一人歩きした。では、一人歩きを許してしまったのは誰か。そこに責任の所在がある。私が思うに、この責任の負担割合は国が6割、保険会社が2割、税理士が2割ぐらいの割合ではないだろうか。
たしかに国がミスリードをしてしまったという事実は重い。しかし、疑うこともなくそれに乗っかってしまい、ミスを見逃してしまった税理士も、また保険会社にも責任は問われるべきだ。
(同書 p.122〜123)
まったく反論できません。
税理士の一人として、私も深く反省し、江崎さんのメッセージを肝に銘じます。
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以下、本件に関する現時点のサイト情報です(2011/2/26)
◆
国税庁 トップページの最下部のバナーをクリックすると、図解や手続きの詳細のページへリンクします

◆税理士会
(1)
日本税理士会連合会 残念ながら、トップページに表示はありません
TOPICSをクリックすると、過去のお知らせの中に国税庁のお知らせを掲載(リンク)
(2)
東京税理士会 さすがです。トップページにメッセージ(PDF)を掲載(リンク)
以下、メッセージの最後の部分です。ご参考までに
今回の勝訴判決は、二重に課税された大勢の納税者にどのような影響を与えるか、課税庁と生保会社ではどのように対応していくのか注視していきたいと思います。
私たち税理士は、税理士法の定めによって「税務に関する専門家として、独立した公正な立場にお いて、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ること」を使命としています。
今回の裁判で、金額にとらわれず、「納税義務の適正な実現」のために課税庁と争った補佐人の税理士と弁護士、そして、5人を信頼し最高裁まで提訴した納税者に敬意を表します。
(3)
近畿税理士会 昨年10月の国税庁の発表の紹介とリンクだけでなく、
12月15日付で「還付手続の期限について」というトピックスも掲載しています
◆
生命保険協会 残念ながら、トップページには表示がありません
トップページの<情報・資料>をクリックし、さらに<その他のお知らせ>をクリックすると、
その一番下の右側に、ようやく、求める情報のリンクがあります
◆生命保険会社
二審(福岡高裁)で国の求めに応じて報告書を提出した4社のサイトを確認しました。
その報告書によると、対象となる事案は
日本生命だけでも209万件あるとのこと(同書 p.94)
(1)
日本生命 その日本生命は、トップページのお知らせの下に「当社の対応(10/20付)」(PDF)をリンク
「お客さま重視の方針の下、・・・・」と記されています
「お知らせ」をクリックすると、お知らせのページのトップ項目はこの「当社の対応」です
なお、国税庁や生保協会の該当サイトへのリンクを見つけることはできませんでした
(2)
朝日生命 残念ながら、トップページに表示はありません
<お知らせ一覧>をクリックすると、過去のお知らせの中に生保協会の該当サイトにリンク
(3)
住友生命 トップページの<お知らせ>の一番上に、「加入者向けの案内」(PDF)をリンク
その案内(PDF)から、国税庁や生保協会の該当サイトにリンクしています
また、発送予定の時期を明記されるなど、上記(1)の書面に比べて丁寧な印象を受けます
(4)
明治安田生命 トップページの<お知らせ>の一番上に、生保協会の該当サイトにリンクしています
◆FP団体
(1)
日本FP協会(2)
きんざいFPセンター いずれも、本件に関する情報の掲載を見つけることはできませんでした
以上、ご参考までに