(066)「リスク」に応じた資金調達の選択
[2009年05月29日(Fri)]
(最終更新:2011/12)
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■「リスク」に応じた資金調達の選択
(1)リスクの低い資金ニーズ(正常な(経常的な)運転資金など)
⇒ 資金提供者にとってローリスクの資金(間接金融)
(※)確実に返済できることを数字で示すのが調達のポイント
(2)リスクの高い資金ニーズ(設備投資や研究開発など)
⇒ 資金提供者にとってハイリスクの資金(直接金融)
内部資金(自分で額に汗して稼いだお金)
(※)同じお金でも値打ちが違う ⇒ ていねいに真剣に使う(→別記(055))
(※)たやすく金がはいるということほど危険なことはない(松下幸之助)(→別記(055))
■「間接金融」と「直接金融」
金融の仕組みの中で銀行などが介在するものが「間接金融」であり、その代表が銀行借入です。
銀行は預金者から預かったお金を融資するので、いわばお金の「卸」の役割。⇒「間接金融」
したがって、銀行において、資金提供者である「預金者の保護」は重要なテーマです。
銀行が手堅くてリスクを負わず、担保も個人保証も要するのは、ある意味当然のことであり、
リスクマネーの供給を銀行に期待するのは限界があります。
――借入による資金の調達は、市場における金利や資金需給の動向、政府や金融機関の政策や方針といったものに直接の影響を受ける。 新しい事業や生産設備の拡大のための投資が、このような事情によって、タイミングを失いかねない。また、資金を貸してくれる銀行の意向を気にするあまり、まったく新しい事業を行うための投資は、実施しにくいものとなるかもしれない。
これに対して、「直接金融」は、資金提供者から直接にお金の提供を受けます。
このように、資金の提供者と企業との関係で、間接金融か直接金融かを判断しますので、
B/Sの表示は借入金でも、社長個人からの借入金は「直接金融」といえます。
直接金融は、いわばお金の「産直」です。
お互いが顔の見える関係なので、強固な信頼関係を構築して持続することが何より重要です。
したがって、社債や増資など「直接金融」による資金調達は、
資金提供者と顔の見える関係において強固な信頼関係を前提に
資金提供者にとってリスクあるお金の提供を受けていることに留意が必要であり、
銀行借入より高い説明責任が求められます。(→別記(102))
「銀行借入が厳しいので直接金融による資金調達」というのは、誤った認識です。
■「手形」は私製紙幣(松下幸之助著『経営心得帖』より)
手形は、紙幣ほど完全には通用しませんが、ある程度それによってものを買えるし、それをもって支払いにあてることができるわけで、いわば私製紙幣のようなものではないでしょうか。
それがつぎからつぎへと裏書きされて転々と通用していく。かりに1億円の手形でも、10回転々とすれば、10億円の紙幣が発行されたと同じ効果をもつわけです。
そのような私製紙幣を大小さまざまな会社、商店が発行しており、しかもその期間が長期化していくというのは、考えてみれば恐ろしいことです。また、そのような手形の濫発は、一つの企業が行きづまった場合に、数珠つなぎ的に連鎖倒産を招くおそれもあると思います。
お互い商売に携わる人間としても、こうしたことを十分考えて、手形の安易な発行、長期化を戒めあいたいと思うのです。
それがつぎからつぎへと裏書きされて転々と通用していく。かりに1億円の手形でも、10回転々とすれば、10億円の紙幣が発行されたと同じ効果をもつわけです。
そのような私製紙幣を大小さまざまな会社、商店が発行しており、しかもその期間が長期化していくというのは、考えてみれば恐ろしいことです。また、そのような手形の濫発は、一つの企業が行きづまった場合に、数珠つなぎ的に連鎖倒産を招くおそれもあると思います。
お互い商売に携わる人間としても、こうしたことを十分考えて、手形の安易な発行、長期化を戒めあいたいと思うのです。
松下幸之助著『経営心得帖』p.22〜25