(003)数字の「意味するところ」を理解する
[2009年03月22日(Sun)]
(最終更新:2011/12)
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2001(平成13)年版『中小企業白書』の第2部では、不況が長期化する中で中小企業が抱える悩みについて、事例を設定し(印刷業、従業員11人)、わかりやすく、しかも深堀りした分析が展開されていました。その中で示されたグラフです。
―― 中小企業の資金繰りを改善するためには売上高の向上が重要であるが、「既往借入金の返済負担」も深刻な課題である。既往借入金の返済負担の重さを、有利子負債とキャッシュフローの比率(必要返済期間)で見ると、中小企業の場合平成元年以降平成10年までは増加し、必要返済期間は直近で19年と、大企業・中堅企業と比較しても高い水準にある。
■数字を評価せず、「症状」を読み取る
このグラフのタイトルは、「キャッシュフローで見た有利子債務の必要返済期間」です。
中小企業のデータが、平成元年から10年間で倍増し、約20年になっています。
数字は見ればわかります。
しかし、それで、数字の本当のところがわかったと言えるのでしょうか?
大切なのは、数字が示す「症状」から何を読み取り、いかに行動するか、です。
そのためには、数字の「求め方」ではなく、
数字の「意味するところ」について理解を深めることが必要です。
■数字の「意味するところ」
このグラフが示すデータは、「債務償還年数」と一般的に呼ばれる指標です。
グラフの(注)2に示す<有利子負債の残高>÷<キャッシュフロー>で算出します。
この「債務償還年数」の数字が「意味するところ」は何でしょうか?
――借入金を返済するのに何年かかるか
(銀行が融資判断において重視する指標で、短いほど高く評価される)
No!
それは、数字の「求め方」を説明しているにすぎず、数字の「意味するところ」ではありません。
「借入金月商倍率」という指標があります。
<借入金残高>÷<月商(年間売上÷12)>で算出します。
「債務償還年数」と同様、借入金の返済負担の重さ(借入返済能力)を判断する指標です。
2つの指標の分子は同じですが、分母が違います。
数字の「求め方」が違えば、数字の「意味するところ」は当然違います。
■債務償還年数(借入金残高÷キャッシュフロー)の「意味するところ」
「借りた金はキャッシュローで返す」ということです。
もっと明確に言えば、「キャッシュフローがなければ借金は返せない」ということです。
しかも、そのキャッシュフローは「利益」から算出していますので、
「借りた金は利益で返す」ということになります。
実際、損益計算書(P/L)の利益が赤字(▲)でこの指標の分母がマイナス(▲)だと、
分子は無借金でない限りプラスですから、算出された指標はマイナス(▲)になります。
この指標が示すマイナス(▲)の数字に意味があるでしょうか?
――「借りた金を返せないと評価される覚悟がある」ことを意味しているのです。
「経営者自身がまず会計というものを
よく理解しなければならない。
計器盤に表示される数字の意味するところを
手に取るように理解できるようにならなければ、
本当の経営者とは言えない」
『稲盛和夫の実学』p.41
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よく理解しなければならない。
計器盤に表示される数字の意味するところを
手に取るように理解できるようにならなければ、
本当の経営者とは言えない」
『稲盛和夫の実学』p.41
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