三式簿記でひらく自主自立の道(2)
[2022年05月10日(Tue)]
簿記はどこから来て、どこへ行くのか
〜三式簿記でひらく自主自立の道〜
(昨日のつづき)
(2022.4.19)
(2022.5.3)
(2022.5.7)
巣作りから子作り、そして子育て
順調に育って、お父さんやお母さんは大忙し
巣立ちもそう遠くなさそうです♪
愚直に一歩、一歩、もう一歩
〜三式簿記でひらく自主自立の道〜
(昨日のつづき)
それにしても、万物流転で生成発展する社会の中で、なぜ複式簿記は500年を超えて不変であり続けられたのか。井尻先生の三式簿記は複式簿記の完全仮説の否定から出発するが、私は複式簿記が不変であることに疑問を持つことなく、過去の慣行のままに日々仕事してきた。
しかし、「あらゆるビジネスが進化している時代に、500年前と同じやり方を使いつづける必要がどこにあるだろうか?」(7)と問いかけられて強烈な衝撃を受け、触らぬ神に祟りなしで済む話ではないと強い危機感を抱いたのである。
たしかに、仕訳を振替伝票に起こして総勘定元帳に転記し、試算表を作成するなど簿記一巡の手続きは手書きからパソコンに変わり、情報システムの管理もオンプレミスからクラウドに移行して、日々の仕事の効率化は進んだ。しかし、ベースとなる複式簿記は進化せず、不変である。
手書きの文書からワープロへ、ファックスから電子メールへ、はんこから電子署名へ、紙媒体からペーパーレスへ、請求書からデジタルインボイスへ、手形から電子債権へ、給与の支払いは現金や振込からデジタル払いへ、対面からテレワークやオンライン授業へ。IT化やデジタル化の取り組みによって社会は変化し続けているが、その変化changeは、improveか、reformか、innovationか、transformationか、それともrevolutionなのか。言葉遊びでなく、物事の本質が問われる。
たとえば、DX(デジタルトランスフォーメーション)について、デジタル技術を使ったビジネスモデルの「変革」と言われるが、単にIT化やデジタル化といった技術の進化に留まらず、蝶が青虫からサナギを経て成虫に変態するように生きる世界や生き方がすっかり変わって意識や行動が大きく変わるものである。であれば、レボリューションは「革命」だから、命を革めてまったく別のものに生まれ変わるのか。
2018年7月23日に開催された公認会計士制度70周年の記念講演会で、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏は、私たち公認会計士にこのように問いかけた。
柳井氏は、この講演の2年前、2016年10月の決算説明会で「企画、デザイン、生産、販売までの一貫したサプライチェーンを改革し、『情報製造小売業』になる」と製造小売業(SPA)から「情報製造小売業」に変わることを宣言していた(9)。そして、その後も、改革を加速化するために様々な手を打っている。
好むと好まざるとにかかわらず、社会は変わり、劇的に変化する。今までのコンピューターとまったく違う原理で圧倒的なスピードで処理を実現する「量子コンピューター」の実用化が進み、一方、暗号化されたデータ送信の解読を困難にする「量子暗号」の開発が進む。社会やビジネスに新たな可能性が生まれ、劇的に変わるであろう。
すべての取引は三式簿記でブロックチェーンにリアルタイムで記録され、圧倒的なスピードと低コストと低リスクで透明性と正確性は劇的に向上し、取引に信頼を付与する役割は「ブロックチェーンによる三式簿記」が担うといわれている。
柳井氏の問いかけを真摯に受け止めて真の改革に向けた行動をするのか、それとも電子帳簿保存法の改正やインボイス制へ移行といった制度改正や行政からの支援要請の対応で事足れりとするのか。私たち公認会計士の覚悟と本気が問われていると受け止め、以下、簿記の原点に立ち返って、今後いかに行動すべきかを考えるものである。
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(7) タプスコット、前掲書、pp.95
(8) 柳井正「会計士が世界を変える」『会計・監査ジャーナル』第30巻第11号(2018年11月)、pp.14-15
(9) ファストリ、「3本の矢」で描く再加速の青写真『日経・電子版』2016年10月13日
(10) タプスコット、前掲書、pp.22
しかし、「あらゆるビジネスが進化している時代に、500年前と同じやり方を使いつづける必要がどこにあるだろうか?」(7)と問いかけられて強烈な衝撃を受け、触らぬ神に祟りなしで済む話ではないと強い危機感を抱いたのである。
たしかに、仕訳を振替伝票に起こして総勘定元帳に転記し、試算表を作成するなど簿記一巡の手続きは手書きからパソコンに変わり、情報システムの管理もオンプレミスからクラウドに移行して、日々の仕事の効率化は進んだ。しかし、ベースとなる複式簿記は進化せず、不変である。
手書きの文書からワープロへ、ファックスから電子メールへ、はんこから電子署名へ、紙媒体からペーパーレスへ、請求書からデジタルインボイスへ、手形から電子債権へ、給与の支払いは現金や振込からデジタル払いへ、対面からテレワークやオンライン授業へ。IT化やデジタル化の取り組みによって社会は変化し続けているが、その変化changeは、improveか、reformか、innovationか、transformationか、それともrevolutionなのか。言葉遊びでなく、物事の本質が問われる。
たとえば、DX(デジタルトランスフォーメーション)について、デジタル技術を使ったビジネスモデルの「変革」と言われるが、単にIT化やデジタル化といった技術の進化に留まらず、蝶が青虫からサナギを経て成虫に変態するように生きる世界や生き方がすっかり変わって意識や行動が大きく変わるものである。であれば、レボリューションは「革命」だから、命を革めてまったく別のものに生まれ変わるのか。
2018年7月23日に開催された公認会計士制度70周年の記念講演会で、ファーストリテイリング会長兼社長の柳井正氏は、私たち公認会計士にこのように問いかけた。
RPAやAlの時代になると数字はすべて自動的に計算出来るようになります。人間が出来ることは何なのか、今、それを深く考えないといけない時代になったのではないかと思います。単純計算や分析・整理ではなくて、計算された数字を見て、どのように解釈するのか、どのような可能性があるのか、企業の経営理念や目標に基づいて数字をどう見て何を考えて、何を実現していくのか、そういう仕事として組み立て直したらどうでしょうか。そういうことが、本当は公認会計士にとって最も重要なことではないでしょうか。(8) (下線は筆者による、以下同じ)
柳井氏は、この講演の2年前、2016年10月の決算説明会で「企画、デザイン、生産、販売までの一貫したサプライチェーンを改革し、『情報製造小売業』になる」と製造小売業(SPA)から「情報製造小売業」に変わることを宣言していた(9)。そして、その後も、改革を加速化するために様々な手を打っている。
好むと好まざるとにかかわらず、社会は変わり、劇的に変化する。今までのコンピューターとまったく違う原理で圧倒的なスピードで処理を実現する「量子コンピューター」の実用化が進み、一方、暗号化されたデータ送信の解読を困難にする「量子暗号」の開発が進む。社会やビジネスに新たな可能性が生まれ、劇的に変わるであろう。
すべての取引は三式簿記でブロックチェーンにリアルタイムで記録され、圧倒的なスピードと低コストと低リスクで透明性と正確性は劇的に向上し、取引に信頼を付与する役割は「ブロックチェーンによる三式簿記」が担うといわれている。
「たいていの技術は末端の仕事を自動化しようとしますが、ブロックチェーンは中央の仕事を自動化します。タクシー運転手の仕事を奪うのではなく、Uberをなくして運転手が直接仕事を取れるようにするんです」(10)
柳井氏の問いかけを真摯に受け止めて真の改革に向けた行動をするのか、それとも電子帳簿保存法の改正やインボイス制へ移行といった制度改正や行政からの支援要請の対応で事足れりとするのか。私たち公認会計士の覚悟と本気が問われていると受け止め、以下、簿記の原点に立ち返って、今後いかに行動すべきかを考えるものである。
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(7) タプスコット、前掲書、pp.95
(8) 柳井正「会計士が世界を変える」『会計・監査ジャーナル』第30巻第11号(2018年11月)、pp.14-15
(9) ファストリ、「3本の矢」で描く再加速の青写真『日経・電子版』2016年10月13日
(10) タプスコット、前掲書、pp.22
この続きはまた明日
(2022.4.19)
(2022.5.3)
(2022.5.7)
巣作りから子作り、そして子育て
順調に育って、お父さんやお母さんは大忙し
巣立ちもそう遠くなさそうです♪
朝に種を蒔き 夕べに手を休めるな。
うまくいくのはあれなのか、これなのか あるいは、
そのいずれもなのかあなたは知らないからである。
コヘレトの言葉(11:6)/旧約聖書(日本聖書協会・共同訳)
うまくいくのはあれなのか、これなのか あるいは、
そのいずれもなのかあなたは知らないからである。
コヘレトの言葉(11:6)/旧約聖書(日本聖書協会・共同訳)
愚直に一歩、一歩、もう一歩
会計は算術ではなく、思想である
会計情報という数字を介して、経営との対話がはじまる。
会計情報という数字を介して、経営との対話がはじまる。