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2022年05月09日

【助成事業報告・No17】一般社団法人神奈川県聴覚障害者連盟青年部

日頃より、三澤基金の運営へのご協力ありがとうございます。
助成第17号事業の一般社団法人神奈川県聴覚障害者連盟青年部の事業報告書を掲載致します。

◆助成第17号◆
一般社団法人神奈川県聴覚障害者連盟青年部(団体・神奈川県)


◆申請事業◆
ろう塾事業

◆助成支給額◆
292,000円

◆事業担当者◆
大橋 翼さん(事務局長)

◆事業の目的・概要・効果等◆
<概要>
 一般社団法人神奈川県聴覚障害者連盟は神奈川県内のろう・難聴者の会員で構成された当事者団体である。その中の青年部(以下神聴連青年部)は、若手会員を中心とし、「仲間づくり」「学習づくり」「自己啓発」の三本柱を軸に会員同士の交流や聴覚障害に関わる情報交換などの目的をもとに1994年(平成6年)から活動してきた団体である。
 特に手話を第一言語とする現在のろう者の多くは、成人ろう者として見習うべきロールモデルが周りにいない状況にある。このことは、日常生活における周囲の聴者からの聴覚障害への無理解に伴った社会生活上の困難に向き合う際に、彼ら自身の自己肯定感を著しく低め、結果的にろう者であることに自信が持てない様子を生み出している状態であるといえる。
 そんな若手のろう者に対して、2019年度より開始した「ろう塾事業」は、ろう者のロールモデルと触れ合う場や若手ろう者同士のコミュニティー形成の場を提供している。これらの場の提供は、彼らのそれぞれのアイデンティティをより強固にするだけでなく、社会生活への適応を見据え、青年期に獲得することが期待されるリーダーシップやマネジメント能力の獲得を志向した取り組みともなっており、今後の社会へ貢献できる人材育成を目的とした事業である。

<背景と目的>
〜「若手のろう者の人材育成」と「指導者育成」〜
 ろう・難聴者の中には青年期に手話を第一言語とするろう者としてのアイデンティを萌芽させる者が多いことが知られている。しかし、この萌芽は障害のない者と比較しても遅く、ここには、ろう・難聴者自体の出生率の少なさや、それらに伴う彼らのコミュニティーが形成しづらいことが大きく影響している。
 即ち、ろう者の多くは幼少期の段階で自身と同じ障害を持つろう・難聴者や、特に手話を用いるろう者との出会いが物理的に制限されている状態にあるといえ、その言語的・文化的アイデンティティの萌芽が遅れがちな状況を招いている。
 一部の高等教育機関への進学を果たしたろう・難聴者では、手話を用いるろう者との出会いを果たすことで、その言語的・文化的アイデンティティの獲得を果たす様子も観測されるが、そのような機会に青年期に出会うろう者は未だに少ない様子がある。
 更に、幼少の頃からの未熟な自己肯定感を獲得してきた彼らにとって、聴者と同等の自己肯定感を獲得することは難しい状況にあるが、これらの心理的な発達の課題は、彼らの社会的な発達にも影響を与えており、青年期に獲得することが望ましいリーダーシップやマネジメント能力を獲得しないまま青年期を過ごすことも少なくない。
 そこで、ろう塾では、2つの取り組みを実践している。1つは、特に聴者と対等に社会生活を送るろう者(以下、ロールモデル)とろう・難聴の高校生や大学生、それから若手ろう者らが交流する場を提供している。2つは、これらの交流の場を作る際に、今後の社会で活躍できるろう者を養成する観点から、彼らろう・難聴の高校生〜青年までを運営スタッフとして集い、リーダーシップとマネジメント能力の涵養を図っている。

◆事業時期・内容◆
事業報告書をこちらからダウンロードできます(PDF・全22ページ)

◆事業成果◆
@講義・ワークショップ・オンライン対談を通して、アイデンティティを高め、必要なリーダーシップを学べる場となった。企画ごとに学生スタッフが主体となり、企画運営を進めることができた
A学生スタッフのうち社会に貢献できる人材登用をおこなうことができたスタッフのうち3名がしかく広場の講師となった
B学生スタッフ7名から13名となり、うち4名が高校生となり、スタッフの底上げができた。
C2021年12月にHPを開設することができた。
DSNS配信を積極的におこなったことにより、フォロワーを増やすことができた
 ・Facebook:300→753フォロワー
 ・Instagram:200→1035フォロワー
 ・Twitter(2021年5月に開設):0→613フォロワー
Eコロナウイルスで十分な講義ができなかったその代替として学生スタッフが中心としたオンライン企画を実施することができ多くの参加があった
 ・5月29日(講義)→6名
 ・6月27日(講義)→17名
 ・7月17日(オンライン)→72名
 ・12月12日(オンライン)→136名
 ・12月19日(講義)→20名
 ・1月7日(オンライン)→220名
 ・2月27日(オンライン)→210名
 ・3月5日(オンライン)→170名
 ・3月20日(オンライン)→100名  ※3月16日時点
  ※講義は20名定員

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感想動画は、ろう塾Youtubeチャンネルでご覧いただくことができます。
こちら


◆経費収支内訳◆
■収入:三澤基金助成金 292,000円
    自己資金     50,000円
    参加費     132,100円
合計:474,100円

■支出:
会場費         7,850円
講師謝金・託児謝金   254,000円
会議費        19,079円
事務費        18,684円
保険料     1,120円
交通費         21,307円
合計:362,040円   


◆今後に向けて◆
 日本手話やろう文化等を学ぶことでアンデンティの確立を図りつつ、青年期に獲得することが期待されるリーダーシップやマネジメント能力の獲得が出来る場を構築することの重要性について改めて確認された。次年度はこれを踏まえ、次年度は今年度以上に学生スタッフに主体的な企画運営への参加を求めることで、更なる学びの場の提供を図りたい。
なお、今後はこれらの社会的な必要性の高さから、神奈川県内のみでなく、その対象となる射程を拡大し、全国的なろう者の人材育成に取り組んでいくために、本事業について別法人の設立を予定している。法人化を機会とし、青年期のみならず、幼児期や学齢期からの言語的・文化的なアイデンティティの涵養についての取り組みについても行っていきたい。
 

◇助成報告書はこちらからご覧いただけます(PDF)◇



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