先日のブログでご案内しました、みんみんpresents まち・むすび助成団体の「Anego」さんによる
「東北レインボーSUMMERフェスティバル」が、8月2日(日)に仙台市市民活動サポートセンター地階の「市民活動シアター」で開催されました。
普段は、モノトーンで落ち着いた雰囲気の場所として知られる市民活動シアターですが、この日は、壁一面に赤橙黄緑青紫の風船で飾られ、明るく華やかに彩られていました。

13:30から始まった第一部は、仙台市在住の詩人、武田こうじさんのポエトリーリーディング&トークショーです。
武田さんのほか、本イベントを主催されたキャシーさんと魅冴さんが登壇して、このイベントを始めるきっかけ等について語り合いました。
先日のブログでご紹介した展示と、当イベントを合わせた「東北レインボーSUMMER」は、「普段の生活の中では気付き辛いLGBTの存在を一般の方にも理解して頂きたい」という趣旨から生まれた企画とのことで、東北各地のLGBT団体が一つにまとまってイベントを開催するのは、今回が初めてだそうです。

「LGBTとは、東京・大阪・TVの中だけにいる存在ではないことを知って頂きたい」と仰るキャシーさんに続き、魅冴さんからは「セクシャリティのことを、ひとりひとりが、自分のこととして考えてほしい」とのメッセージが印象的でした。
また、東日本大震災とLGBT活動との関係については、「震災後にセクシャルマイノリティのネットワークが増えたと思う」と指摘するキャシーさん。続く魅冴さんは、「細い糸でもあちこちに投げかけていくと繋がっていく実感がある。インターネットでの交流だけでなく、直接会って話し合うことが、ネットワークが繋がっていくことに貢献していると思う」とのこと。震災をきっかけに、東北各地のLGBTが活動の裾野を広げていった結果が「東北レインボーSUMMER」であるとの意気込みを感じました。
これらのトークショーの会話は、会場のパソコンで要約筆記され、ステージ左にあるミニスクリーンに映し出されており、聴力が不自由な方に対する細やかな配慮が新鮮でした。
トークショーの次は、HIV・AIDSの情報発信を目的としたコミュニティセンター「ZEL」のスタッフによる、HIV陽性の方の手記朗読です。スタッフの方から、「セクシャルマイノリティと同じくらい、HIV陽性の方も『見えない存在』になりやすい」との言葉に、HIVに対する偏見や管見が未だに色濃いことを痛感させられました。
中でも、「感染している事実は自分だけのもの」という手記の文章が、漠然とした不安を抱えて生きている切なさを物語り、参加者の皆さんも真剣な面持ちで聴き入っていました。

第一部が終了すると、30分ほどの休憩です。みなさんも会場を自由に歩きまわっています。
会場の後方にあるLGBT団体のブースでは、資料を配ったりアンケートを取る団体のほか、自分たちが作った商品や本などを販売する団体、体験教室を開催する団体もありました。もう一方のカウンターでは、BAR「月子の小部屋」がソフトドリンクやカクテルを提供していました。
LGBTに関連した洋楽PVが流れるスクリーンを背景に、参加者の皆さんが和やかに談笑する声が響いていました。

15:30から始まった第二部では、仙台発ドラァグ・パフォーマンス・ユニット「Anego Girls

」によるダンス、東北ろうLGBTによる活動紹介ビデオ上映、イルさんのソプラノ歌唱、月子さんによるポールダンスが行われました。
ステージ前に置かれた椅子は満席で、シアターの端にある長椅子もほぼ埋まった会場は、第一部の真面目な雰囲気から一転し、明るく勢いあるステージが連続。拍手と歓声が鳴り響く中、あっという間に時間が過ぎ去りました。

最後は、会津の裏磐梯にあるリゾート「GRANDECO RESORT」のリフト・ゴンドラ券の抽選会です。チケットを提供されている「GRANDECO RESORT」は、東北で初めてIGLTA( 国際ゲイ&レズビアン旅行協会)に加盟。LGBTの方々に開かれたリゾート施設とのことでした。
当日は、最高気温が31度という酷暑でしたが、10〜30代を中心に沢山の方が参加されていました。
パートナーと一緒の方、友達同士で来られた方の他、独りで参加された方もいらっしゃいましたが、皆がそれぞれのペースで楽しまれている様子でした。
「真面目さ、アットホームさ、際どさ」が程よくミクスチュアされて「前向きの明るさ」に包まれたフェスティバル。
この雰囲気こそが、「多様性とはこういうこと!」という、東北のLGBTからの一つのサジェスチョンに感じられました。


ところで、2015年4月に電通ダイバーシティ・ラボが「LGBT調査2015」を実施。全国69,989名を対象に調査した結果、LGBT層に該当する人は7.6%、LGBT層の商品・サービス市場規模は5.94兆円との結果が公表されました。
また、企業でもLGBTの社員に対応するための社内制度変更や、新たなサービスを模索する動きが少しづつ進んでいます。
私達は普段の生活の中で、多様性という意味を意識する機会は少ないと思いますが、このようなイベントをきっかけに、多様性が認められる社会について知識を得ることは、誰しもが持っている「隠れた偏見」を見つけ出す好機となるのではないでしょうか。(文責:大町事務局 高荷)