「あれから2年」[2013年03月06日(Wed)]
理事 茂木宏友
今年の冬は、例年になく雪が多く、春が待ち遠しく感じます。あの東日本大震災から間もなく2年を迎えようとしています。あの日の夜も光が消えた仙台市中心部にはしずかに雪が降っていたことを思い出します。あれから2年、「もう」2年なのか、「まだ」2年なのか。説明するまでもなく、沿岸被災地の現状はまだまだ厳しいと思います。「みなし仮設」を含む仮設住宅から再建した家に移り住めた被災者の世帯数は、一昨年のピーク時からほとんど変わっていないそうです。(ピーク時を100とした場合、岩手94.6%、宮城88.0%、福島99.7%)震災前の生活を取り戻すだけでも、解決しなければならない課題は無数にあり、ましてや、震災前より、魅力ある地域の創造を目指しているのであれば、なおさら時間はかかるでしょう。理想を実現していくために必要となる時間の経過が、復興を遅らせる一因となっていると感じます。
私は、平成15年2月に司法書士として独立し、今年でちょうど10年目の節目を迎えることができました。震災後は、職業柄、相続に伴う不動産の所有権移転登記や、売買など不動産の取引に立ち会う機会が多く、昨年夏以降、例年より多くの登記案件を担当させていただきました。公費による被災エリアの土地の買い取りのための相続登記、全壊した工場や家の再建築の登記、中には、震災後の混乱した状況下だったためか、同時死亡の推定を見落として、相続人でないものが相続人として登記されていたケースを修正する手続きなど、さまざまな種類の手続きをしています。
中でも、地方でよく見受けられる共有名義の山林について、相続登記をどのように進めるかについては、極めて深刻な問題だと認識しています。地方農村部などの田舎では、さまざまな背景や理由から、住民たちがその地域の山林を共有しており、多い場合で共有者が100名を超えるケースもあります。このような共有状態は、明治時代などに登記された当時の名義人のまま何十年も相続登記がされずに放置されているケースがあり、このような山林の相続登記については、相続人を探す作業だけで大変な苦労を伴います。また、相続人が判明したとしても、相続人の居場所がつかめない場合も珍しくありません。
女川町や南三陸町などでは、市街地の平地部分の大半が浸水し、高台の山林を切り崩して高台移転を促進させようとしていますが、そのような権利関係の確定が困難な山林については、具体的な解決策が見えていないと感じます。原発事故による不動産賠償が進まないという報道が1月になされましたが、その原因の一つに上記の相続の問題があるとされています。
昨年、女川町の須田町長とお話をさせていただいた際に、震災後の緊急時であったにも関わらず、それまでの法律や手続きに基づいた対応しか取れていない状況はかなりあったとおっしゃっておりました。当時の非常事態とは状況はことなりますが、現行法での手続きに限界がある場合は、新しい法律を作り、相続問題が確定しない場合であっても、供託などの制度を利用して、土地の買い取りを進めていく必要があるのではないかと思います。
憲法で保障されている財産権の侵害に該当する可能性もありますが、進まない復興により、その地域から住民が離れてしまっては意味がありません。復興へ至る過程が、実感できる3年目を迎えることができればと切に願います。

