「試行錯誤から学ぶ世代交代のあり方」常務理事・事務局長:紅邑晶子[2010年11月02日(Tue)]
試行錯誤から学ぶ世代交代のあり方
常務理事・事務局長 紅邑晶子
民主党政権になって、鳩山元首相が「新しい公共」という言葉を発したことから、今年の1月に「新しい公共円卓会議」なるものがスタートした。これは自民党政権の最後のところで誕生した、セクターを越えた人々が対等に意見を述べる場としてあったものだったが、政権交代によりどのように引き継がれるかと、ある一部の人たちは心配していたことである。この円卓会議では、経済界の大御所もNPO法人の代表も大学教授やいわゆる有識者といわれる人も、対等に議論のテーブルについて意見を交換できるというもので、その議事録もちろん映像で生中継が行われるという、情報公開度100%に近い会議である。そこで話し合われたことが、具体的な政策となって次年度以降動き出す気配だ。
政権交代に伴って、いかに野党時代にシミュレーションをしていたとはいえ、経済政策や外交など、思っていたことと実際に預けられて動かしてみるのではだいぶ違っていたというのがいまの民主党政権の現状だと思う。あまりに長い間同じ政党が政権を握っていたのだから、それは仕方ないと思う。アメリカやイギリスのように2大政党が交互に政権を取り、その中枢を担う人材が総取り換えになることが普通である国の出来事とは違うのだから。わたしたちは、それを選択した責任、そういう状態にしてきた責任をもっと自らのこととしてとらえなければならないと思う。野党となった政党も、それ見たことかという傍観者の立場でものをいうのではなく、貢献する意見や提案を国という単位で発言する責任があると思う。
こんなことを熱く語るには、理由がある。当センターはこの11月1日で法人化して11年目を迎えた。それを目前にして、8月の終わりに加藤代表理事が入院することになり、9月の総会は初めて大滝代表理事と紅邑の2人で務めることになった。入院は思いのほか長引いて2カ月が過ぎた。全国的なNPOセクターの集まりや出張先で名刺を交換すると、多くの人が「あ、加藤さんのところの」と言われてきた当センターだが、設立当初から頼りにしていた加藤代表理事が常勤として復帰するのは難しい状況となり、新たな体制で理事会や事務局の運営をせざるを得なくなった。
理事会では、「ピンチをチャンスに変えよう!」という声が上がり、その思いは事務局スタッフにも、そして総会では会員の皆様に伝わっていった。けれど、「言うは易し行うは難し」。加藤代表理事に変わって、同じように役割を果たすというのは、この2カ月間なかなか大変なことだった。実は、この5月はじめにも加藤さんが一度入院していたことがあり、次年度からは常勤を解く形で1年かけて準備をしていこうと、理事会で話していたのだった。それこそ、新体制としての動きをシミュレーションしながら、権限委譲など徐々に行っていく予定だった。それが、9カ月も前倒しになったのである。
けれども、組織は生き物であるとつくづく思う。呼吸を止めるわけにもいかず、加藤代表理事が担っていた1人分をいろいろな人に協力していただき、同じように呼吸ができる状態を維持している。ピンチの時には、知恵も出る。眠っていた能力が、この時に目覚めてくれる。そして、いまはむしろこれまで以上に逞しいわたしたちの組織の姿が見えてきた。
このようなことをお話しできる理由はいくつかある。一つは、頼れる理事会と顧問の存在である。常務理事2名体制でこの10数年、現場の判断を任されてきたのだが、1人でそれを担うことになったいま、ほかの理事の皆さんがそれぞれの立場で協力してくださるということは、当たり前のようだがありがたい。また、3年前から設けた顧問・参与というかたちで関わっていただく方々がおいでになるのだが、フルにこの方々にも今回はご支援いただいている。
もう一つは、管理職研修を実施したことである。当センターには事務局長を紅邑が兼務しているほか、事務局次長が2名、そして施設管理事業では各施設ごとに施設長がいる。これまでは、職場の長ということであまり他施設の施設長どうしの交流が行われにくかったのだが、今年はあえてそのメンバーを管理職という位置づけで事務局運営の中枢を担っているという意識付けをする研修を行うことにしていた。6月から開始したこの研修は、今回の組織のピンチを救う大きな原動力となっている。それは、理事や顧問・参与の皆さんとは違う、現場の責任者同士のきずなを作ることになり、常務理事・事務局長である私を支えてくれる存在として大きいものとなっている。これも、先を見越した準備ができていたからこその成果だと思っている。
とはいえ、まだまだ考えていることと現実の隔たりは多く、試行錯誤が続いている。けれど、失敗をしながら学び、それが次の大きな成功体験につながるのであれば、大いにこの試行錯誤期間を活用させてもらいたいと思っている。スタッフも成長することになるし、その経験はほかのNPOのマネジメント支援をする際のお役にも立つと思う。自らの組織を実験台にしながら、社会のお役にたつというのは当センターらしいように思う。また、こんなときだから多くの方々にご支援いただくことがたくさんあるはずだ。遠慮せずに他団体から応援いただくというのも、これまでの当センターにはあまりなかったことだ。自分たちの強みと弱みをしっかり見つめ直して、新生せんだい・みやぎNPOセンターを目指すことが、加藤代表理事復帰に向けてのいまの私たちのミッションだと思う。
常務理事・事務局長 紅邑晶子
民主党政権になって、鳩山元首相が「新しい公共」という言葉を発したことから、今年の1月に「新しい公共円卓会議」なるものがスタートした。これは自民党政権の最後のところで誕生した、セクターを越えた人々が対等に意見を述べる場としてあったものだったが、政権交代によりどのように引き継がれるかと、ある一部の人たちは心配していたことである。この円卓会議では、経済界の大御所もNPO法人の代表も大学教授やいわゆる有識者といわれる人も、対等に議論のテーブルについて意見を交換できるというもので、その議事録もちろん映像で生中継が行われるという、情報公開度100%に近い会議である。そこで話し合われたことが、具体的な政策となって次年度以降動き出す気配だ。
政権交代に伴って、いかに野党時代にシミュレーションをしていたとはいえ、経済政策や外交など、思っていたことと実際に預けられて動かしてみるのではだいぶ違っていたというのがいまの民主党政権の現状だと思う。あまりに長い間同じ政党が政権を握っていたのだから、それは仕方ないと思う。アメリカやイギリスのように2大政党が交互に政権を取り、その中枢を担う人材が総取り換えになることが普通である国の出来事とは違うのだから。わたしたちは、それを選択した責任、そういう状態にしてきた責任をもっと自らのこととしてとらえなければならないと思う。野党となった政党も、それ見たことかという傍観者の立場でものをいうのではなく、貢献する意見や提案を国という単位で発言する責任があると思う。
こんなことを熱く語るには、理由がある。当センターはこの11月1日で法人化して11年目を迎えた。それを目前にして、8月の終わりに加藤代表理事が入院することになり、9月の総会は初めて大滝代表理事と紅邑の2人で務めることになった。入院は思いのほか長引いて2カ月が過ぎた。全国的なNPOセクターの集まりや出張先で名刺を交換すると、多くの人が「あ、加藤さんのところの」と言われてきた当センターだが、設立当初から頼りにしていた加藤代表理事が常勤として復帰するのは難しい状況となり、新たな体制で理事会や事務局の運営をせざるを得なくなった。
理事会では、「ピンチをチャンスに変えよう!」という声が上がり、その思いは事務局スタッフにも、そして総会では会員の皆様に伝わっていった。けれど、「言うは易し行うは難し」。加藤代表理事に変わって、同じように役割を果たすというのは、この2カ月間なかなか大変なことだった。実は、この5月はじめにも加藤さんが一度入院していたことがあり、次年度からは常勤を解く形で1年かけて準備をしていこうと、理事会で話していたのだった。それこそ、新体制としての動きをシミュレーションしながら、権限委譲など徐々に行っていく予定だった。それが、9カ月も前倒しになったのである。
けれども、組織は生き物であるとつくづく思う。呼吸を止めるわけにもいかず、加藤代表理事が担っていた1人分をいろいろな人に協力していただき、同じように呼吸ができる状態を維持している。ピンチの時には、知恵も出る。眠っていた能力が、この時に目覚めてくれる。そして、いまはむしろこれまで以上に逞しいわたしたちの組織の姿が見えてきた。
このようなことをお話しできる理由はいくつかある。一つは、頼れる理事会と顧問の存在である。常務理事2名体制でこの10数年、現場の判断を任されてきたのだが、1人でそれを担うことになったいま、ほかの理事の皆さんがそれぞれの立場で協力してくださるということは、当たり前のようだがありがたい。また、3年前から設けた顧問・参与というかたちで関わっていただく方々がおいでになるのだが、フルにこの方々にも今回はご支援いただいている。
もう一つは、管理職研修を実施したことである。当センターには事務局長を紅邑が兼務しているほか、事務局次長が2名、そして施設管理事業では各施設ごとに施設長がいる。これまでは、職場の長ということであまり他施設の施設長どうしの交流が行われにくかったのだが、今年はあえてそのメンバーを管理職という位置づけで事務局運営の中枢を担っているという意識付けをする研修を行うことにしていた。6月から開始したこの研修は、今回の組織のピンチを救う大きな原動力となっている。それは、理事や顧問・参与の皆さんとは違う、現場の責任者同士のきずなを作ることになり、常務理事・事務局長である私を支えてくれる存在として大きいものとなっている。これも、先を見越した準備ができていたからこその成果だと思っている。
とはいえ、まだまだ考えていることと現実の隔たりは多く、試行錯誤が続いている。けれど、失敗をしながら学び、それが次の大きな成功体験につながるのであれば、大いにこの試行錯誤期間を活用させてもらいたいと思っている。スタッフも成長することになるし、その経験はほかのNPOのマネジメント支援をする際のお役にも立つと思う。自らの組織を実験台にしながら、社会のお役にたつというのは当センターらしいように思う。また、こんなときだから多くの方々にご支援いただくことがたくさんあるはずだ。遠慮せずに他団体から応援いただくというのも、これまでの当センターにはあまりなかったことだ。自分たちの強みと弱みをしっかり見つめ直して、新生せんだい・みやぎNPOセンターを目指すことが、加藤代表理事復帰に向けてのいまの私たちのミッションだと思う。
大きな支えであった加藤さんだけど、いつかは誰かが引き受けなければならないこと。
そんなこと解っていても「突然」はショックだよね。
でも紅ちゃんたちが「変えずに変わろう」ってしてること伝わってきます。
その志と情熱と連帯と…
素敵です。
「なるようになる」って。
神様はちゃんと観てますよ。