
Aさんのお母さんは、真剣にAさんの今後の住まいを探している。住まいは、住み慣れた家の近くを望んでいる。
そしてもうひとつ、あるものも、Aさんと一緒に暮らせることを望んでいる。
それは、Aさんが作りためた紙飛行機だったり、描きためた絵だったりする。
あるAさんの部屋には、天井に無数の紙飛行機が吊られている。また、別のAさんの部屋には、大きなタンスに絵がぎっしり入っている。タンスの中の絵は、整然と並べられている。天井の紙飛行機は、同じ向きに整然と並んでいる。Aさんたちが、自分で並べている。
私が、その一つを指さすと、Aさんは即座に「〇月〇日!」と答える。日にちを記憶しているのだ。私たちは、思い出を脳の中にしまっておける。Aさんたちは、その日の思い出を、紙飛行機や絵にしているのかもしれない。
Aさんのお母さんたちは、無数の紙飛行機や大きなタンスにぎっしり並んだ絵のすべてが、Aさんにとって、どれだけ大切なのかを知っている。
一方で、今ある施設やグループホームは、段ボール5箱まで、とか私物の持ち込み制限が多い。
Aさんにとって、段ボール一箱に入るだけの、紙飛行機や絵を選んで、ここから移りましょう、という話ではないのだ。Aさんのお母さんたちは、そのことをよく知っている。