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アサド大統領のUAE公式訪問の意味(シリアのアラブ陣営復帰に向けた動き)[2023年03月20日(Mon)]
シリアのバシャール・アル・アサド大統領は夫人アスマーを同伴し、2023年3月18日、アラブ首長国連邦(UAE)に到着し、アサド大統領は、UAEのシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン(通称:MBZ)大統領と会談した。MBZ大統領は、ツイッターの声明で、両国は「両国間の関係を発展させることを目的とした建設的な会談を行った。我々の話し合いでは、シリアとその地域の安定と進歩を加速するための協力を強化する方法を探求した」と語った。シリア大統領府は、夫人アスマーが2011年以来初めてのアサド大統領に同伴した外国公式訪問の機会に、MBZ大統領の母親(故ザーイド大統領妻)でUAEでは「国家の母」と見なされているシェイク・ファーティマ・ビント・ムバラクと会談すると述べた。
アサド大統領にとっての湾岸諸国訪問は、2月6日のトルコとシリアを襲った壊滅的な地震以来、2月20日のオマーン訪問に続いて2回目となる。一方、エジプトのシュクリー外相、UAEのアブドッラー外相は、2月にそれぞれダマスカスを訪問していた。
2018 年12月に国際的に孤立したアサド政権との関係を正常化したUAEは、2 月 6 日の地震被災者支援のため積極的な支援活動を展開してきた。UAE は、地震に見舞われたシリアへの支援として 1 億ドル以上を約束した。また、捜索救助チームを派遣し、数千トンの緊急救援物資を提供し、首長国連邦の病院でシリア地震の犠牲者に治療を提供した。
UAEの上級大統領顧問アンワル・ガルガーシュは、「UAEのシリアに対するアプローチと取り組みは、アラブと地域の安定を強化することを目的としたより深いビジョンとより広範なアプローチの一部である。シリアがアラブ世界での地位に戻り、その地域での正当性を取り戻す必要があることに関して、UAEの立場は明らかだ。これは、今日のアサド大統領との会談でシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド殿下によって確認された」とはツイッターで述べた。
(参考)シリアとアラブ諸国関係修復に向けての主な動き
1. UAE:2018年12月27日、ダマスカスの大使館を2011年のアラブの春勃発で閉鎖して以来初めて再開。アブドッラーUAE外相は、2023年2月12日、シリア地震後初めてのアラブ高官として、シリアを訪問し、アサド大統領と会談。同外相は、2023年1月にもシリアを訪問している。アサド大統領は、2022年3月18日、ドバイとアブダビをそれぞれ訪問し、ムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥームUAE副大統領兼首相(ドバイ首長)と会談したほか、アブダビのMBZ皇太子(当時、現在大統領)と会談した。国際的に孤立していたアサド大統領の外国訪問は、ロシアとイランに限られていた。
2. サウジ:サウジも高官のシリア訪問は実現していないが、アサド政権支配下の地域を含め、地震被災者救援の活動を実施している。過去には、2021年5月3日サウジのハーリド・フメイダン総合諜報庁長官が、このレベルのサウジの高官の訪問としては10年ぶりにダマスカスを訪問し、アサド大統領と会談したとされる。同長官は、ダマスカスでシリアのカウンターパートであるアリー・マムルーク(Ali Mamlouk)と会談した模様。同年5月26日、シリアの観光大臣ムハンマド・ラーミー・マルティーニ(Mohammed Rami Martini)は、2011年の内戦が始まって以来、シリア政府当局者として初めてサウジアラビアを訪問した。
3. ヨルダン:2023年2月15日、アイマン・サファディ・ヨルダン外務大臣がダマスカスを、ヨルダン外相としてはアラブの春以来となる訪問を実施した。過去には、2021年9月8日 ハラ・ザワティ・ヨルダンエネルギー・鉱物資源大臣、タレク・エル・モラ・エジプト石油・鉱物資源大臣、バッサム・トーメ・シリア石油・鉱物資源大臣、レイモンド・ガジャール・レバノン・エネルギー・水大臣がヨルダンの首都アンマンで会合し、エジプトの天然ガスのアラブパイプラインを通じたシリア経由、レバノンへの輸送のアクションプランを整えていくことに合意。同年9月29日 ヨルダンは、物流の往来のためヨルダン・シリア国境ジャーベル検問所の通過を完全開放した。
4. エジプト:シリア地震発生直後の2023年2月7日、エルシーシ・エジプト大統領は、アラブの春以降エジプト大統領としては初めて、アサド大統領に電話し、見舞いのメッセージを伝えた。2月27日、シュクリー外相も、エルシーシ政権誕生後初めて、ダマスカスを訪問した。シュクリー外相は、2021年9月国連総会の機会にメクダード・シリア外相と会談した経緯はある。
5. オマーン:2023年2月20日、アサド大統領はマスカットを公式訪問し、ハイサム国王の出迎えを受けた。オマーンは外交関係を維持してきたが、アラブ諸国内で先陣を切る形で、オマーンがアサド訪問を受け入れたことは、シリアのアラブ陣営復帰に向けた動きとして注目された。
6. バーレーン:2023年2月7日、ハマド国王は、アラブの春後初めてアサド大統領と電話会談し、お見舞いのメッセージを伝えた。バーレーンは、2018年12月のUAE大使館のダマスカス復帰に続き、外交使節の再開は行っていた。
(コメント)2021年5月26日に実施されたシリア大統領選挙で、現職バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)が1354万0860票、得票率95.1%で任期7年の4選を果たした。欧米諸国は、多くのシリア国民がボイコットする中で、選挙自体が有効ではないとして、アサド大統領の退陣を求め、制裁を継続してきている。特に、2020年6月、トランプ政権下の米政府はシリアの中央銀行の資金洗浄疑惑、シリア政権中枢の戦争犯罪を理由に、シーザー・シリア市民保護法を発動した。当時のポンペイオ国務長官は、米財務省と国務省がシーザー法と大統領令第13894号に従い、39の個人・団体を制裁対象に指定したと発表した。それは、シリア政府に経済的・政治的な圧力をかけ、その収入を断ち、それが戦争やシリア国民の大量虐殺に拠出されるのを食い止める持続的なキャンペーンを開始するのが目的とされる。制裁対象に指定されたのは、バッシャール・アサド大統領、アスマー夫人、ビジネスマンのムハンマド・ハムシュー氏、ファーティミーユーン旅団(注:イランがアレンジしたアフガニスタンのハザラ人の武装集団)、アサド大統領の弟のマーヘル・アサド准将、姉のブシュラー・アサド、マーヘル准将の妻のマナール・アサドなど。これをきっかけにシリアポンドは大暴落し、さらに、シリア政権側のレバノンにおける銀行口座も打撃をうけ、レバノンの金融危機にも発展した。一方で、ロシアの後ろ盾を得て国土の7割程度を回復してきたアサド政権が、2021年5月の大統領再選も受けて当面崩壊する見通しはなく、10年以上続いてきたシリア孤立政策を見直す動きも、UAEを筆頭としてアラブ諸国内で出始めていた。そうした中で、2023年2月6日、トルコで発生した大地震は、トルコだけではなく、トルコに避難していたシリア人、シリア北西部の最後の反体制派の拠点といわれたイドリブのシリア人ならびにクルド人支配地域のシリア人ならびにアサド政権の支配地域のシリア人にも大きな被害をもたらした。欧米諸国は、シリア人救済のために、アサド政権との接触を持つことを依然躊躇っており、シリア人被災者救援に積極的に動こうとはしていない。そこに、その隙間を埋めるような形で、アラブ諸国のアサド政権へのアプローチが活発化している。2021年以来出始めていたシリアのアラブ連盟復帰の動きがなかなか現実のものとならないのは、サウジアラビアがゴーサインを出さないためであるとの見方が根強かった。今回の地震被害で、米国もシリアの地震被害復旧のための取り組みについては、関与した者への制裁を一時見合わせると発表しており、3月10日に、イランとの外交関係再開合意を発表したサウジが、アサド政権下のシリアのアラブ陣営復帰を認めるタイミングに来たのではないかと考えられる。最近、一時トルコとの関係が冷え切っていたUAE、サウジ、エジプトとトルコの関係が改善してきており、地震で被害を受けた反体制派陣営のシリア人、トルコに一時避難した350万人規模のシリア人のシリアへの安全な帰還に向けても、アラブ諸国とトルコが、アサド政権との間で、実務的な問題解決の動きを進めることが期待される。それがなされなければ、2015年のシリア避難民の欧州等への大量移動が再現されることにもなりかねない。
https://www.aljazeera.com/news/2023/3/19/424

Posted by 八木 at 12:02 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

イラン・サウジ間の外交関係正常化に向けてのイラクの役割[2023年03月12日(Sun)]
3月10日、アリー・シャムハニ最高国家安全保障会議書記は、イラク首相ムハンマド・シーア・アル・スーダーニとの電話会談で、イランとサウジアラビアの間の5回の交渉をホストしてきたイラクの努力を高く評価し、イラクがイランとサウジアラビアの間の緊張緩和を達成するための土台を整えるために貴重な努力を払ってきたと述べた。

3月6日から10日まで北京での集中的な会談の後、イランとサウジアラビアは3月10日、両国が外交関係を正常化し、大使館再開と外交使節団交換を最大2か月以内に実施することに合意した。

スーダーニ・イラク首相は、本年2月シャルキルアウサト紙とのインタビューで、イラク政府はサウジ・イラン間の緊張した関係を修復することを目的として両国代表間での和解交渉の新しいラウンドを組織するために取り組んでいると述べ、交渉のレベルをこれまでの秘密裏の治安担当レベルから公の外交レベルに引き上げる後押しをしていると示唆していた。

(コメント)イラン・サウジ間の最初の接触は、2021年4月9日、当時のカーディミ・イラク首相の招待をうけたサウジの情報機関責任者ハーリド・ビン・アリー・アル=フメイダーン(Khalid bin Ali AL Humaidan)とイランのイスラム革命防衛隊 (IRGC)のエスマイール・カーニィ(Esmail Qaani)(2020年1月米軍に殺害されたカーセム・ソレイマニ・コッズ部隊司令官後任)の間で行われたとされる。その後、4回、計5回治安担当レベルで、秘密裏に協議が実施されてきた。こうした中、サウジとイランの外交関係正常化に向けての協議実施と合意が、北京でしかも習近平国家主席の全人代での3期目決定のタイミングで実施されたことは、中国がこの件で外交的得点をあげることに対して、サウジ、イラン、イラクがともに中国に花を持たせることを了解したとも解釈できる。関係3国は、今後の中国からの経済的な見返りも期待していると考えるのが自然である。他方、これから2か月以内にサウジ・イラン外相間で、大使館再開・外交使節交換に向けての具体的な話し合いがもたれることになるが、その際は、イラクが再び、協議の場所を提供することになると予想される。

https://www.tasnimnews.com/en/news/2023/03/10/2865424/iran-lauds-iraq-for-hosting-talks-that-led-to-rapprochement-with-saudis
https://financialtribune.com/articles/national/117066/baghdad-working-to-advance-iran-saudi-talks

Posted by 八木 at 10:19 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

イランとサウジアラビアの外交関係正常化(注目点)[2023年03月11日(Sat)]
2016年1月に、テロ容疑で死刑判決を受けていたサウジのシーア派指導者であったニムル・アルニムル師など47名のサウジ側による処刑に抗議したイランの群衆によるテヘランとマシュハドのサウジ大使館、領事館内への襲撃事件以来、公式の外交関係が途絶えていたサウジアラビアとイランは、2023年3月6 日から 3 月10日まで中国がホストして北京で行われてきた一連の会談終了時、声明を発出し、両国は外交関係を正常化し、2か月以内に両国の大使館を再開し、外交使節を復活させることに合意した、と発表した。注目点は、@中国が対立する両国の外交関係修復を後押ししたこと、A習近平国家主席の3期目が決定する全人代にあわせて、3月6日から北京で会合をホストしていたこと(参考:全人代は3月10日、全体会議を開いて投票を行い、習近平国家主席を賛成2952票、反対、棄権いずれも0票の全会一致で再選)、Bイランがウラン濃縮度を核兵器製造レベルに近い84%の濃縮達成と報じられた直後に、本来的にイランの核能力に、イスラエルと並んで最も敏感であるはずのサウジが、イランとの直接協議に臨んでいたことである。

サウジの代表団は国務大臣兼国家安全保障顧問のムサエド・ビン・ムハンマド・アル=アイバン氏が率い、イランの代表団は最高国家安全保障会議の書記であるアリー・シャムハニ少将が率いた。会談には、元中国外相である中国政府の外交トップである王毅政治局委員が同席した。

「サウジアラビアとイランは国家主権を尊重し、内政に干渉しないことに同意する」と声明は述べ、両国の外相は近く会談して、大使館再開に向けての具体的話し合うと付け加えた。

さらにサウジとイランは、2001 年4月17日に署名された安全保障協力協定と 1998 年5月27日に署名された貿易、経済、投資、テクノロジー、科学、文化、スポーツ、青年協定の活性化に合意した。

声明によると、両国代表は、中国の習近平国家主席が、対話と外交を通じて紛争を解決するために、イランとサウジアラビアの代表者間の会談を主催し後援するイニシアチブをとり、最近の会談を主催しホストしてくれたこと、ならびに会談の成功を支援するために尽力したことに謝意を表明した。 彼らはまた、2021年と2022年に両国の代表者間の対話セッションをホストしたイラクとオマーンにも謝意を表明した。

中国の王毅政治局委員は、北京でのイランとサウジアラビアの会談の成功について、「これは対話の勝利であり、平和のための勝利であり、世界が激動の時代に大きな朗報をもたらすものだ、中国は、誠実で信頼できる仲介者としてホストとしての義務を忠実に果たした、中国は今後も世界のホットスポット問題に対処する上で建設的な役割を果たし、大国としての責任を果たしていく」と述べたとされる。

中国の果たした役割に対して、サウジのサルマン国王、MBS皇太子はともに感謝しているとされ、また、イランも、今回の関係正常化合意は、最高指導者、ハメネイ師の承認を得ているとされる。声明にも言及があった過去の接触をホストしたオマーンのバドル・アル・ブサイディ外務担当相はツイッターで、サウジとイランの国交再開は「誰にとっても『ウィンウィン(相互利益)』であり、地域と世界の安全保障に恩恵をもたらす」と述べた。

(コメント)注目点で示したとおり、今回のイラン・サウジの外交関係正常化の合意は、中国外交の勝利といえる。中国にとっては、習近平体制が異例の3期目に入ることが全人代で決定された当日に合意が発表されたことで、国内的には、習近平体制の外交の成果を誇るとともに、対外的には、ウクライナ危機で、中国が対話による戦争終了を訴えていることを補強する材料になるともいえる。
中国は、イランとの間で2021年3月に、今後25年間にわたる当面4千億ドルの長期戦略パートナーシップ協定を結んでいる。一方、2022年12月には、習近平国家主席がサウジを訪問して、中国サウジの二国間首脳会談、中国GCC首脳会談、中国アラブ首脳会談を実施し、中国はサウジとの間で、12月8日、「包括的戦略パートナーシップ協定」署名。 中国企業は、新エネルギー、クラウドコンピューティング、物流、建設ほか34の投資協定に署名した。ウクライナ危機を背景にした原油価格高騰で財政的に余裕が出てきたサウジアラビアは、NEOMはじめ意欲的なメガプロジェクトを推進し、新時代の地域のリーダーとして存在感を高めている。こうした中で、中国との関係強化は、地域開発の面でも必要不可欠とみられる。一方のイランは、米国とのJCPOA復活に向けた核協議は一向に進まず、米国の対イラン制裁は解除される見通しはたたず、経済財政は悪化の一途をたどり、昨年9月からは、ヒジャブ着用問題をきっかけにした反体制抗議運動が収まらず、最近では、女子学生の中毒問題が発生し、対外的には、超強硬派が主導権をとったネタニヤフ政権から、イランの核開発阻止にむけた実力行使の脅威を受けている。こうした状況下の生命線は、中国やロシアとの関係強化であった。サウジとの関係改善は、イランにとっても、地域の緊張緩和のために歓迎すべき動きといえる。
気になるのは、サウジの次の動きである。最近、オマーンがイスラエルの航空機に対して領空通過を認めた。サウジは、2020年8月のUAE・イスラエルの国交正常化直後、イスラエル航空機の領空通過を認めている。トランプ政権末期、アラブ諸国は、UAEのほか、バーレーン、スーダン、モロッコが次々とイスラエルとの国交正常化を実現したが、サウジはそれに踏み切らなかった。しかし、今回のサウジ・イラン間の外交関係正常化のバランスとして、サウジがイスラエルとの国交正常化に動くことも考えられ、UAEとの間で、域内経済開発の主導権争いでしのぎを削っているサウジの動向が注目される。
https://english.alarabiya.net/News/saudi-arabia/2023/03/10/Iran-Saudi-Arabia-agree-to-re-establish-diplomatic-relations-Iranian-state-media
https://twitter.com/KSAmofaEN/status/1634180277764276227?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1634180277764276227%7Ctwgr%5E10ad2f92f87d958bd6db3318ba8d8bf1c7e5cda7%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Fwww.aljazeera.com%2Fnews%2F2023%2F3%2F10%2Firan-and-saudi-agree-to-restore-relations

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豪シンクタンク発表の先端技術研究論文国別競争力ランキング結果(圧倒的存在感を示した中国。中東ではイランが目立った)[2023年03月03日(Fri)]
 3月2日、オーストラリアのシンクタンク、豪戦略政策研究所(ASPI)は、エネルギーや人工知能(AI)、医療や防衛分野などにおける44項目について、2018〜22年に発表された影響力のある論文を分析し、重要な先端技術の国別研究競争力のランキングを公表した。全44項目のうち37項目で中国が1位となっており、次いで米国は7項目で1位となり、32項目で2位にとどまった。日本は44項目の中で、5位以内に入ったのは核エネルギーや量子センサーなどの4項目にとどまった。韓国は5位以内20項目で日本を上回った。中東勢では、イランが全体で6項目が5位以内で、サウジアラビアは1項目で5位となった。研究論文は、今後の各国の技術革新、技術開発の潜在可能性を物語っており、ASPIは中国が予想以上に多くの分野で米国に先行していることをみとめている。また、日本は、他の先進国・新興国との比較で遅れをとっているといわざるをえない。中東諸国の中では、イランが予想外に注目論文を発表しているといえる。
(44項目の概要と上位国)
1. 先端素材と製造右矢印1中国11分野(@ナノスケール材料と製造、A塗装、Bスマート素材、C先端複合素材、D新規メタマテリアル、Eハイスペック機械化プロセス、F先端爆発・エネルギー素材、G希少鉱物抽出、加工、H先端磁石と超伝導体、➉先端防御、J連続フロー化学反応合成、K3Dプリントを含む積層造形法)で1位独占。米国9分野、インド3分野で2位。日本2分野(H、J)で5位。イランは1分野(B)で4位。3分野(@、A、C)で5位
2. AI、コンピューティング、通信右矢印1中国7分野(@5G,6Gを含む先端無線通信、A高度光通信、BAIアルゴリズム、C分散型台帳、D先端データ解析、E機械学習、F防御的サイバーセキュリティ)で1位。米国3分野(G高性能コンピューティング、H先端統合電気回路デザイン・組み合わせ、➉自然言語処理)で1位。米国7分野で2位。中国3分野で2位。3位には、インドが6分野、英が3分野、韓国が1分野を占めた。サウジアラビアが、1分野(A)で第5位を占めた。日本は、10分類すべてで5位以内にランクインせず
3. エネルギーと環境右矢印1中国8分野(@動力用水素・アンモニア、Aスーパーキャパシター(大容量蓄電)、B蓄電池、C太陽光発電、D核廃棄物管理・リサイクル、E指向性エネルギー技術、Fバイオ燃料、G核エネルギー、で1位独占。米国は6分野で2位。韓国、インドがそれぞれ1分野で2位。日本は1分野(G)で3位のみ。イランは1分野(F)で4位。
4. 量子右矢印1米国は1分野(量子コンピューティング)で1位。中国は同分野で2位。中国は、3分野(Aポスト量子暗号、B量子通信、C量子センサー)で1位。2位は米国。日本は、1分野(C)で4位。
5. バイオ、遺伝子、ワクチン右矢印1中国が2分野(@合成生物学、Aバイオ分野製造)で1位。米国が1分野(Bワクチン、医療対策)で1位。
6. センシング、タイミング、ナビゲーション右矢印11分野(光センサー)で中国1位。米国2位。インド3位。
7. 防衛、宇宙、ロボット、輸送右矢印1中国4分野(@極超音速を含む先端航空エンジン、Aドローンおよび協調型ロボット、C自発的システム運用テクノロジー、D高度ロボティックス)、米国2分野(B小衛星、E宇宙船打ち上げシステム)で一位。中国2分野、米国4分野で2位。イランは1分野(@)で第5位
https://www.aspi.org.au/report/critical-technology-tracker

Posted by 八木 at 16:01 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)