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国連総会におけるロシア軍即時撤退決議採択(中東諸国の基本的姿勢に変化なし)[2023年02月24日(Fri)]
本2月24日で、ロシアが「特別軍事作戦」と名付けたウクライナ侵攻開始からちょうど1年となる。そのタイミングで、ニューヨークの国連総会においてウクライナにおける戦争終了とロシア軍の即時撤退を求めた総会決議案が採決に付された。米国時間23日の採決の結果は、賛成141、反対7、棄権32で、決議案は採択された。この採決での注目点は、ロシアのウクライナ侵攻に対する国際社会の見方が変化したか否かであった。結果として、1年前と国際社会の支持・不支持の構図は大きく変化していない中東諸国の立場にも大きな変化はみられない。但し、中東諸国は、トルコを含め欧米主導の対ロシア制裁には加わっていない。軍事的には、トルコがウクライナにドローンを供与し、イランがロシアにドローンを供与しているとされる。これまでの主要な決議の結果と中東諸国の対応をまとめておく。

1.2022年2月25日の安保理のロシア非難決議案右矢印1中国、インド、UAEが棄権。ロシアの拒否権行使で決議案は成立せず。

2.2022年3月2日ロシアの即時撤退を求めた国連総会決議右矢印1賛成141(UAEは賛成。ほかサウジを含むGCC、エジプト、イスラエル、トルコなども賛成。BRICSのブラジルは賛成。)、反対5(含むシリア)、棄権35(含イラン、イラク、アルジェリア、スーダン。インド、中国、南アも棄権)。モロッコは投票参加せず。

3.2022年3月24日のウクライナの主権・領土保全支持する国連総会決議右矢印1賛成140 (GCC、エジプト、トルコなど賛成。イラク、南スーダンは前回の棄権から賛成に転じた。BRICSのブラジルは賛成。)、反対5(含むシリア)、棄権38(含イラン、アルジェリア、スーダン。BRICSのインド、中国、南アも棄権)。

4.2022年4月7日の国連人権理事会からのロシアの追放を決定した国連総会決議右矢印1賛成93反対24(イラン、中国を含む)、棄権58(中東諸国のバーレーン、イラク、ヨルダン、クウェート、オマーン、カタール、サウジ、UAE、エジプト、イエメンは、前回の賛成から棄権に回った)
★BRICSのブラジルやサウジ、UAE、エジプトなど中東主要国は棄権に回った。

5.2022年10月12日のロシアによるウクライナ4州併合無効とする国連総会決議右矢印1賛成143(サウジ他中東諸国大半を含む。BRICSのブラジルは賛成)、反対5(シリアを含む)、棄権35(アルジェリア、中国、インド、南アを含む)

6.2022年11月15日のロシアに対するウクライナ賠償を求める国連総会決議右矢印1賛成94(トルコ、カタール、クウェートを含む)、反対14(シリア、イランを含む。中国も反対)、棄権73(サウジ、UAE、エジプトほかを含む。BRICSのブラジル、インド、南アも棄権)

7.2023年2月23日の戦争の終了とロシアの即時撤退を求めた国連総会決議右矢印1賛成141(イラクをはじめとする中東諸国の大半を含む。BRICSのブラジルは賛成)、反対7(シリアやアフリカのマリを含む)、棄権32(アルジェリア、イランを含む。BRICSの中国、インド、南アは棄権)、また、ベネズエラは決議不参加。
https://news.un.org/en/story/2023/02/1133847

Posted by 八木 at 15:31 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

出口の見えないシリア内戦(ISISによるシリア人53名の殺害)[2023年02月19日(Sun)]
2023年2月17日、シリア国営テレビは、同国中部のシリア第三の都市ホムス県砂漠地帯のアル・スクナ地区で過激派組織「イスラム国」(ISIS)による銃撃をうけ、砂漠でトリュフ(雷雨の後で採れることで知られる。高値で販売される)を採取していた民間人ら53人が殺害されたと報じた。過去1年間に起きたイスラム過激派による攻撃で最多の犠牲者となったとのこと。襲撃後に53体の遺体が運び込まれたパルミラ病院の院長は地元ラジオ「シャームFM」に、殺害されたのは民間人46人、兵士7人だと語った。過去にもトリュフを集めていた民間人がISISに狙われたことがあり、2019 年 4 月、少なくとも 19 人が誘拐された。ISISは、シリア、イラクの拠点のほとんどを失ったにもかかわらず、依然活動が鎮静化していない。

2月6日のトルコ・シリア大地震では、トルコ、シリア在住のクルド人にも犠牲者が多数発生した。クルド人の各勢力との関係をまとめれば次のとおり。シリアでは、各勢力が周辺国や政権側の思惑に翻弄されて、利害関係が複雑に絡み合っており、シリアのクルド人は、シリア内戦発生後12年が経過したにもかかわらず、世界から「見捨てられた」状況が続いている。
@シリアのクルド人民防衛隊(YPG)は、米軍を主体とする有志連合軍の最も信頼できる地上部隊であるシリア民主軍(SDF)の主力勢力として、対ISIS掃討作戦に多大の人的犠牲を払いながらも参加している。
Aトルコ政府からは、YPGはトルコのクルド労働者党(PKK)と同根のテロ組織に位置付け。トルコはYPG/PKKグループを国家の脅威とみなして、2018年、2019年二度にわたってシリアへの越境攻撃を実施し、今も、シリア領内の一部を実効支配している。
Bシリアのアサド政権は、シリア内戦において反体制派を分断する必要にかんがみ、クルド人に暫定的自治を容認したが、SDFが事実上米軍の保護下に置かれている関係上、クルド人地区の再統合や侵攻は控えている。
Cシリアのアサド政権の後ろ盾であるロシアのプーチン大統領は、反体制派のイドリブでの保護を主張するトルコのエルドアン大統領との間で、体制側と反体制側の停戦を実現し、イドリブ県は反体制派の最後の拠点となっている。
Dプーチン大統領は、ウクライナ危機において、トルコとの関係維持がロシアの生命線のひとつであるとみており、クルド人とアサド政権の関係修復には動いておらず、むしろ、アサド政権のトルコ接近を後押ししている。
Eすなわち、クルド人は、ISISとの戦いで、今も米軍と連携し、戦闘の中心になっているものの、トルコ軍からも攻撃をしかけられ、今回の地震でも大被害をうけ、救援物資の搬送も滞っている。

1.ISISによるカリフ国宣言から現在まで
ISISは、2014年6月イラク、シリアの領土の一部を実効支配するカリフ国を宣言。これに対して、イラクのシーア派は大アヤトラ・アリー・シスターニ師のファトワで、カリフ国との戦いを宣言。同年8月には米軍を主体とする有志連合軍が対ISIS作戦を開始した。ISISは有志連合軍に対して、次第に劣勢に追い込まれ、2017年7月、イラクの拠点モスルを失い、同年10月カリフ国の首都と評されたシリアのラッカを失った。その後、2019年3月にシリアの町バグーズでの1か月にわたる血なまぐさい戦いの末、最後の領土を失った。しかし、拠点を失ったものの、未だに政府軍や民間人ほかへの襲撃を繰り返し、脅威は解消していないばかりか、最近では、むしろ活動が活発化している観がある。
2.2022年のシリアにおける米軍のISIS掃討作戦の成果
(以下米国ウィルソンセンター記事ポイント)
2022 年、米国中央軍 (CENTCOM) は ISIS に対して 300 以上の掃討作戦を実施し、指導者と数十人の地域司令官を含め、シリアで 466 人、イラクで少なくとも 220 人の工作員計 686 人を殺害した。 同年2月、米国の特殊作戦部隊が、シリア北西部イドリブ県でアブー・バクル・アルバクダーディの後継者であったISIS指導者のアブー・イブラヒーム・アル・ハーシミ・アル・クレイシーを急襲し、同指導者が自爆に追い込まれた。同年 7 月には、シリアの ISIS のリーダーであるマーヘル・アル・アガルが、米国の無人機攻撃で殺害された。作戦の大部分は、米国が軍事作戦で連携するシリアのシリア民主軍(SDF)やイラク政府の治安部隊との共同で実行されている。

(参考1)米中央軍(CENTCOM)発表の2022年暦年に実施された対ISIS作戦右矢印1計313
(1) シリア:
@ パートナー部隊との連携した作戦108件
A 米国の独自の作戦14件
B ISIS 工作員の拘束215人
C ISIS 工作員の殺害466人(アルクライシ指導者殺害を含む)
(2)イラク:
@ パートナー部隊との連携した作戦191件
A ISIS 工作員の拘束159人
B ISIS 工作員の殺害少なくとも 220 人

(参考2)クレイシーISIS指導者の殺害
2019年10月27日のイドリブ県バリシャ村での米軍特殊部隊に追い詰められたアルバグダーディ1SIS指導者自害後、ISIS指導者となったアブー・イブラヒーム・アルハーシミ・アルクレイシーは、2022年2月3日早朝イドリブ県アトマ村の住居で米軍ヘリ4機から降下した特殊部隊員に追い詰められて自害したとされる。なお、クレイシーの居場所について、イラク情報部が有志連合に伝えた情報に基づき、作戦が実行されたとされる。

3.2022 年 12 月 28 日から 2023 年 1 月 5 日までのSDFによるISIS掃討作戦
2022 年 12 月 28 日から 2023 年 1 月 5 日まで、シリア民主軍と連合軍(生来の決意作戦統合任務部隊:Operational Inherent Resolve)は、シリア北東部アルジャジーラ域内で ISIS メンバーを追跡し、将来の攻撃を抑止するために大規模な作戦を実施した。アルジャジーラ 「サンダーボルト」作戦では、シリア民主軍SDFの約 1,000 人のメンバーが、テル・ハミス、テル・バラク、およびアル・ホール周辺地域を捜索した。8 日間の作戦中に、SDF は 150 回以上の襲撃と 40 回以上の村の掃討作戦を実施し、170 人以上の ISIS 工作員を拘束し、数百の武器、ISIS の補給・兵站物資を回収した。

4.ISIS戦闘員の拘留
イラクとシリアには未だ数多くのISIS戦闘員が拘留されている。 今日、シリア全土の収容施設には 10,000 人を超える ISIS 司令官・戦闘員がおり、イラクの収容施設には 20,000 人を超える ISIS 司令官・戦闘員がいる。 2022 年 1 月には、シリアのアル・ハサカで発生した ISIS の脱獄事件は、これらの刑務所がリスクにさらされていることを想起させる。 脱獄を封じ込めるための戦闘とその後の戦いにより、420 人以上の ISISメンバー が死亡し、120 人以上のパートナー部隊員が殺害された。また、アル・ホールキャンプの25,000人以上の子どもたちも、次世代戦闘員候補としてISISが狙いをつけている。2022年9 月、ISIS は、シリア北東部にある 60,000 人を超える ISIS の家族が収容されているアル・ホール拘置所に攻撃をしかけたが、失敗した。
https://www.wilsoncenter.org/article/centcom-fight-against-isis-2022

(参考)ISISによるハッサケ県シーナ刑務所襲撃
●2022年1月20日、ISIS傭兵部隊が、5千名の5,000人のISIS元戦闘員が収容されているシリア北東部ハッサケ県のシーナ刑務所を襲撃。トルコ占領地域とイラクからの200人の自爆テロ犯を含む戦闘員が参加。
●クルド人部隊主体のシリア民主軍(SDF)が迎撃し、23日時点で刑務所の支配をほぼ取り戻した。有志連合軍が、空からSDFを支援した。
●襲撃は、ISIS側の声明によれば、準備の6か月間の準備期間を経て、1月20日の午後7時30分頃に車両爆弾攻撃に続いて、刑務所内のISIS元戦闘員は、同時に医療スタッフ、料理人、警備員を攻撃し、脱出を試みた。
●直接の戦闘で、175名のISIS戦闘員が殺害され、27名のSDF隊員が死亡した。

Posted by 八木 at 11:36 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

シリアへの支援を渋る欧州への警鐘[2023年02月11日(Sat)]
2016年3月、メルケル独首相(当時)はトルコを訪問し、内戦下のシリアからの難民の欧州への移動を、トルコが盾となる約束をエルドアン大統領から取り付けて、阻止することに成功しました。トルコからギリシャに海路入国する非正規移民は、すべてトルコに一旦送り返されることになったため、海路欧州を目指すシリア人等の数は劇的に減少しました。その後、トルコは、世界最大の難民受け入れ国となり、現在も360 万人以上のシリア難民と 32万 人の他の国籍者を保護しています。 開発イニシアチブのレポートによると、2022年トルコは、人道支援に 55 億 9000 万ドルを費やし、GDP の 0.86% を占め、世界のリーダーとなっています。
そのトルコ南部とアサド政権下にあるアレッポなどのシリア北部地帯、トルコ軍が事実上支配しているアフリーン、アザーズ・ジャラブルス間などの国境周辺地帯、ならびにシリアの反体制派の支配地となっているシリア北西部イドリブが今回の巨大地震に見舞われました。マグニチュード7.8を測定したトルコ-シリア地震は、750万トンのTNTに相当する爆発エネルギーを放出したとのことです。 これに続いて、トルコ中部および東部でマグニチュード 6.7 の余震が続き、トルコとシリアの国境でマグニチュード 5.6 の余震が発生しました。余震は800回近く記録されています。NHKや中東メディアによれば、11日10時時点の最新の統計で、これまでに死者2万3千人以上(トルコ国内2万213人、シリア国内少なくとも3553人:ホワイトヘルメット発表2166人、シリア保健省発表1387)が死亡し、東日本大震災の関連死者も含めた数字2万2212人を上回ったとのことです。トルコでは、1999年1万7千人以上が死亡したイズミット大地震の犠牲者を上回っており、1939年以来最悪の地震被害となっているとされます。UNHCRによれば、シリアでは530万人が地震で住居を失い、国民の3/4の1530万人が緊急支援を必要としているとみています。
こうした中、ロンドンを拠点とする中東をカバーするメディア「ミドル・イースト・アイ」の共同創設者兼編集長のデービッド・ハーストは、英国はウクライナに2022年 27 億ドルの武器を提供し、23年も同額の軍事支援が予想される中、トルコとシリアの 2,300 万人の災害救援のために 600 万ドルしか提供を表明しておらず、信じがたい額であると指摘しています。英国、フランス、ドイツからはまだ多額の救援資金が集められておらず、サウジアラビアは、シリアとトルコの救援のためにサヘム プラットフォームが立ち上げ 4 日後に、5,100 万ドル以上を集めたとのことです。
シリアの反体制派の拠点イドリブは、プーチン・エルドアン合意により、停戦ラインが設けられ、アサド政権側からは、通常物資の輸送が行われることはなく、トルコのハタイ県側のバーブ・アルハワーが物資や人の往来の通過地点になっていました。しかし、ハタイ県が地震で大きな被害をうけ、検問所や途中の道路も被害をうけ、支援が困難な状態に陥っています。トルコは、急遽新たに2か所の通過地点の設置を認め、アサド政権も国際的な支援物資のイドリブ搬入のため、政権側からの輸送を認めたとのことです。米国はシリアのアサド政権とそれに関連する企業や団体に制裁を課しており、これが、シリア側への緊急支援の妨げになっているため、バイデン政権は、2月9日、Wally Adeyemo財務省副長官が、シリアへの今回の地震に関連した取引等について6か月間外国資産制限局(OFAC)の制裁適用を免除すると表明し、支援金のシリアへの送金が可能になるのではないかと期待されています。他方、アサド政権が、緊急の人道支援実施には、政権側との調整の下、進めることが効果的であると述べているものの、米国など西側諸国は、アサド政権とのかかわりなしに支援を行う意向を変えていません。
こうした中、懸念されるのは、欧州がシリア内戦下経験したシリアほかの難民・移民の大量流入の再現です。欧州は、すでにウクライナ避難民800万人を受け入れています。そして、今回、トルコに一時避難していたシリア人360万人、イドリブのシリア人400万人以上、さらにアサド政権支配地のシリア人、クルド人など多数が被災しました。これらの人々の多くは住む家を失い、生活の糧を失いつつあります。欧州がシリアやトルコへの本格的支援を躊躇っていれば、これらの人々がこれからどこに向かうのかは自明であると思われます。欧州は、アサド政権との間であっても制裁を一時凍結して、必要な支援提供を急ぐべきであると思われます。
https://www.middleeasteye.net/opinion/turkey-syria-earthquake-europe-heartless-face-billions-war
https://www.middleeasteye.net/live/live-turkey-syria-huge-quake-kills-hundreds
https://www.aljazeera.com/news/2023/2/10/quake-hit-syria-approves-aid-delivery-to-rebel-held-areas
https://www.aljazeera.com/news/2023/2/10/us-issues-sanctions-general-exemption-for-aid-to-syria

Posted by 八木 at 13:09 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

悲惨なシリア人の状況に追い打ちをかけたトルコ・シリア大地震[2023年02月07日(Tue)]
トルコ・シリア地震は、忘れ去られたかにみえるシリアの悲惨な状況がまったく解消しておらず、それに追い打ちをかけていることを国際社会に強く訴えることとなりました。
NHK等が報じたところでは、2月6日未明に発生したトルコ南部を震源とするMG7.8の地震で、7日日本時間午前11時の段階で、トルコの防災当局によれば2921人が死亡しました。シリアでは保健省がシリア北西部を中心にこれまでに711人が死亡したと発表しているほか、北西部の反政府勢力の支配地域で救助活動を行う団体は少なくとも700人が死亡したとしており、トルコとシリアの両国の死者は計4300人以上に上っており、さらに死者、負傷者数が増えると懸念されています。

これを受けて、6日、ロシアのプーチン大統領は、アサド大統領、エルドアン大統領と夫々電話会談し、お見舞いと支援を申し出ています。シリアのアサド大統領は、6日緊急閣議召集し、各省庁や県知事に救援活動を指示し、国連でもシリア大使が国際社会に支援を要請しました。シリアでは、既に駐留のロシア兵3百人以上が救援活動を開始したとされています。UAEのムハンマド・ビン・ザーイド(MBZ)大統領は、シリア、トルコ大統領に電話し、支援を申し出ています。カタールは救援チームをトルコに派遣し、1万移動住宅ユニットをシリア、トルコに提供する旨表明しました。サウジのサルマン国王はトルコ大統領に見舞い電報を発出し、MBS皇太子は、エルドアン大統領に電話し、見舞いを伝達しています。エジプト・シュクリー外相は、トルコのチャウシュオール外相、シリアのメクダード外相に電話し、支援を表明しました。

こうした中、懸念されるのは、シリア北西部のイドリブです。イドリブは、シリア内戦で拠点を政府軍側に奪われた反体制勢力派約4百万人が居住する地域です。トルコに近い反政府勢力のほか、旧ヌスラ戦線の流れを組むアブー・ムハンマド・アルジューラーニが指揮するHTS(シャーム解放機構)の拠点でもあります。また、イドリブでは、ISISのリーダーであったアブー・バクル・アルバグダーディ、さらに後任の指導者アブー・イブラヒーム・アルハーシミー・アルクレイシーبو إبراهيم الهاشمي القرشيが身を隠し、前者は、2019年10月27日トランプ政権によって、後者は、2022年2月3日バイデン政権によって米軍の特殊部隊に殺害されたトルコ国境に近い地域でもあります(下記参考1)。アサド政権は、国内の全土解放を目指して、イドリブ進攻を望んでいましたが、2018年9月反体制派を支えるトルコのエルドアン大統領とロシアのプーチン大統領が、イドリブでの停戦実現、安全地帯設定で合意(下記参考2)し、アサド政権は、それを受け入れざるを得ない状況にありました。

今回の地震で、シリア政権側から隔離されたイドリブで、トルコ側から迅速かつ効果的な支援が実施できるのか否か、この地震で、イドリブでのHTSが中心となっている権力構造に変化が出るのかシリアのアサド政権とアラブ諸国の関係修復につながるのかが注目されます。

参考1:アルクレイシーIS指導者のイドリブでの殺害
バイデン米大統領によると、本名がアミール・ムハンマド・サイード・アブドルラハマン・アル・マウラであるアブー・イブラヒーム・アルハーシミー・アルクレイシーは、2022年2月3日イドリブ北西部のアトマ村に滞在していた家に米軍兵士が4機のヘリから降下してきたときに爆弾で、彼自身と女性、子供を含む彼の家族を爆死させた。サッダーム・フセインの軍隊所属から、米国の情報提供者へ、さらに悪名高きISの長に就任するまで、アルクレイシーについて次のとおり。
アブドッラー・カルダシュまたはハッジ・アブドッラーとしても知られるマウラは、1976年にトルクメン人が多数の町であるイラク北部のタルアファルで生まれた。2021年発表されたBBCアラビア語放送の調査によると、彼の父親は2人の妻を持つムアッジン(注:モスクで、礼拝時間に呼びかけを行う役の人)であった。モースル大学でコーラン研究とイスラム教育を受けた後、マウラはバグダッド郊外のサッダーム・フセイン軍の将校として18か月間務めた。2003年に米国がイラクに侵攻した頃、マウラは過激派として活動を開始した。その後、彼はモースルに移り、そこでイスラム学の修士号を取得し、アルカーイダの階級を上げ始め、グループの宗教裁判官になった。2008年、米軍兵士はマウラのモースルの家を襲撃し、イラク南部のウンムカスルにあるキャンプ・ブッカの施設に彼を投獄した。ここにはアブー・バクル・アルバグダーディも投獄されていた。 それ以来、何人かの当局者は、そこで訓練と教化が促進されたため、そこを「ジハーディ大学」と呼んでいる。マウラは2009年に釈放されるまで、何ヵ月もの間、繰り返し尋問された。マウラは釈放されるとまもなくアルカーイダのイラク支部組織であるイラクのイスラム国の長であったバグダーディに合流した。彼はイラク北部のニナワ県で宗教指導者に指名された。バグダーディのように、マウラは影の(表舞台に立たない)指導者として選任され、意図的に戦闘から遠ざけられたと伝えられている。彼は前任者が殺害される前にイスラム国の「カリフ制」の運営に関与し、裁判官と宗教指導者を訓練し、大臣相当のさまざまな役職を歴任した。伝えられるところによると、2014年にISがイラク北部でシンジャールを占領したとき、彼はヤズィーディーの女性を奴隷にする制度に賛成するよう強く主張した。ISのトップリーダーたちが有志連合に連行され、グループが領土を失い始めたとき、マウラはバグダーディの右腕になり、BBCによれば、組織が再編成されたときに組織の財政を担当した。
ISは、2019年3月にシリアの町バグーズでの1か月にわたる血なまぐさい戦いの末、最後の領土を失った。5か月後の10月27日、米軍特殊部隊がトルコ国境近くのバリシャ村で彼のコンパウンドを襲撃したため、バグダーディは軍犬に追われてトンネルに逃げ込み、爆発物のベルトを爆発させ、自らと3人の子供が爆死した。マウラは、2019年10月にバグダーディが亡くなってから5日後に後継者に指名された。
https://www.middleeasteye.net/news/islamic-state-syria-iraq-what-we-know-islamic-state-leader-al-qurayshi
https://www.bbc.com/news/world-middle-east-60246129

参考2:イドリブに関するロシア・トルコ合意
◆2018年9月17日、ロシアのソチで開催されたプーチン・エルドアン首脳会談で、情勢が緊迫化していたシリアのイドリブ情勢への対応で、両首脳は、@政府軍・反体制派の境界線に沿って幅15〜20kmの非武装地帯の設置と旧ヌスラ戦線を含む過激派の撤収、A重火器等の撤去、Bトルコ・ロシア共同の非武装地帯の監視、C年末までのアレッポ・ラタキア間とアレッポ・ハマ間の幹線道路の通行の確保、に合意した。一方、エルドアン大統領は、「穏健な」反体制派は支配地区に留まると補足。プーチン大統領は合意に沿って、シリア政権側の了解を取り付けるとしており、政府軍・ロシア軍によるイドリブの反体制派への大規模軍事作戦は見合わせることになった。この合意の基本的枠組みは、依然変化していない。

1.プーチン大統領記者会見発言
●我々は、イドリブの状況に関する重大な問題を解決するための進捗を成し遂げ、調整された解決策に到達することができた。
●ロシアは緊張緩和地帯を設置した国のひとつである。我々の懸念は、イドリブの過激派からのアレッポ県、アレッポ市ならびにシリア領内に存在するロシアの軍事基地であるタルトゥース海軍基地とフメイミム空軍基地への脅威と関係している。
●プーチン大統領が言及した両首脳合意事項
@非武装地帯の設置:2018年10月15日までに、武装勢力と政府軍の境界に沿って15〜20kmの幅の非武装地帯設置を決定。旧ヌスラ戦線を含む過激派は非武装地帯から撤収する。
A重火器の撤収:2018年10月10日までに、トルコ大統領の提案に基づき、すべての反体制派の軍事的重装備、戦車、複合式ロケット発射機、大砲とモルタルの撤収を確保する。
B合同監視:トルコの移動偵察隊とロシアの軍事警察は、非武装地帯の監視を行う。
C主要幹線路の開通:トルコ側提案により、2018年末までにアレッポ・ラタキア間とアレッポ・ハマ間の幹線道路の交通を可能にする。
●ロシアとトルコは、シリアであらゆる形のテロと戦うコミットメントを再確認した。計画された手順を履行する実践的な取り組みは、シリアにおける政治的解決プロセスをさらに強化し、ジュネーブ・プラットフォームの作業を強化し、シリアに平和をもたらすことに貢献するというのが我々の共通の見解である。
●ロシアとトルコの両国が、アスタナ協議枠組みの完全なる活用を継続し、国連後援の下で、ジュネーブで長期的な政治的解決策を見つける機会を得ることが重要である。我々は、シリア政府、反体制派および市民社会の代表者の中から憲法委員会を構成するために引き続き努力する。目標はできるだけ早く作業を開始することである。
http://en.kremlin.ru/events/president/news/58574

2.エルドアン大統領補足
●穏健な反体制派は、彼らの支配下にある地域にとどまる。一方、テロリスト集団PKKのシリアでの同根組織クルド人民防衛隊(YPG)は、国家に脅威を与えている。
●トルコとロシアは、最近のイドリブ情勢に関する両国間の不一致と懸念の一部を克服するため、大いに努力してきた。

Posted by 八木 at 13:08 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)