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東地中海での天然ガス開発を加速する歴史的レバノン・イスラエル海上境界画定合意[2022年10月12日(Wed)]
2022年10月11日、イスラエルのラピッド首相は、米国が仲介した何ヶ月にもわたる交渉の末、イスラエルは隣接するレバノンとの海上境界線画定に関して「歴史的な合意」に達したと述べた。
東地中海でのガス田開発が過熱する中で、レバノンとイスラエルはどちらも、地中海の西側海域約 860 平方キロメートルの領有権を主張してきた。この係争水域には、有望な天然ガス田「カナ(Qana)」が双方の主張ラインにまたがる形で存在している。
イスラエル高官筋によると、レバノンは「カナ」と呼ばれるそのガス田からガスを産出することを許可されるが、イスラエル側領域で産出されたガスに対して使用料をイスラエルに支払うことになる見通し。レバノンは、フランスのエネルギー大手トタルと協力して、このガス田探査の準備を進めてきた。
ラピッド首相は、この取引を「イスラエルの安全を強化し、イスラエルの経済に数十億ドルをもたらし、北部国境の安定を確保する歴史的な成果」とみなした。
アウン大統領を支えるヒズボラの指導者ナスラッラー書記長は、正式に署名が行われるまでは軍事的な対応の用意は怠らないとしながらも、合意の発表を歓迎する意向を表明した。
バイデン大統領は、両国が合意に達したことは、歴史的ブレークスルーであると評した。
カタールのアルアラビィTVは、海上境界画定協定が、10月20日に両国の境界地点ラス・ナクーラで署名される見通しと報じた。
この協定は、1948 年のイスラエル建国以来正式に戦争状態にあった 2 国との関係に大きなブレークスルーをもたらすものとなるとみられている。
(解説)両国の地中海の沖合には860平方キロの未確定水域が存在する。2020年10月にトランプ政権が後押しして一旦協議が開始されていたが、米国の政権交代を経て、レバノン・イスラエル協議は目立った進展がなかった。未確定水域についてのこれまでの経緯をまとめると次のとおり。
2007年のレバノン・キプロス海上境界設定の際に、レバノン側が合意したレバノン海域の南端は、ポイント1(イスラエルの現在の主張のライン)。この合意はレバノン議会の承認が得られなかった。2009年の段階で、レバノンは、ポイント1より南のレバノンEEZの南端がポイント23であるとして、2010年7月、10月に国連に報告している。一方、イスラエル・キプロス海上境界合意が2010年12月に結ばれたが、イスラエルはレバノン側の主張を無視した。イスラエルのネタニヤフ政権は2011年7月国連に、EEZの北端をポイント1として報告した。2011年11月にレバノンは、改めてEEZ南端はポイント23であると国連に改めて主張し、このため、860平方キロの未確定水域が発生した。米国の仲介者フレデリック・ホフは、2012 年 5 月に、暫定的ではあるが法的拘束力のある海上ラインを作成する計画を提案した。 いわゆる「ホフ ライン」は、ポイント「1」と「23」の間の係争地域の 40% 強 (860 平方キロメートルのうち 370 平方キロメートル) をイスラエルに与え、490平方キロメートル をレバノンに割り当てるものであった。この仲介は失敗に終わった。次に、上述のとおり、トランプ政権下で、協議が再開したが、トランプ大統領の敗北で一旦停止され、バイデン政権下で、米国の仲介者ホッホスタインのもとで、再開された。その際、レバノン側は、ポイント23ではなく、新たに1430平方キロを含むポイント29を主張した。ポイント29は、ポイント23よりもさらに南のカリシュガス田を含むものであった。これには、イスラエル側も、米国の仲介者ホッホスタインも、協議の出発点にはならないと切り捨てた。2022年6月ロンドンを拠点とする Energean の掘削船が、東地中海のイスラエル沖の カリシュ天然ガス田で掘削準備を開始したことで再び緊張が高まった。ヒズボラが合意なきまま、イスラエルが採掘を開始すると武力攻撃を行うと警告を発したからである。米国は、ポイント23ラインで修正を加えた案を再提案し、ガス料金のイスラエル側への支払いを含めて、レバノン側が境界線について了解した模様。但し、具体的な詳細は発表されていない。(ポイント1,ホフライン、ポイント23、ポイント29については、リンク先のMEE記事参照
イスラエルは、ヒズボラが合意なきまま採掘を開始すれば攻撃すると脅したカリシュガス田での掘削を10月まで延期していた。こうした中、10月11日、両国が海上境界線画定について合意に達したとのニュースがもたらされ、10月20日に正式協定署名とも報じられている。本年10月末にはレバノンの大統領選挙、11月1日には、イスラエルの総選挙が実施される。アウン大統領の再選を支えるヒズボラと、政権を維持し、ネタニヤフ政権の再来を阻止したいラピッド首相の思惑が一致し、11月に中間選挙を迎えるバイデン大統領も、エネルギー危機の最中、久々に良いニュースとしてこの出来事をとらえている。
https://www.naharnet.com/stories/en/292935-israel-announces-sea-deal-with-lebanon-but-doubts-remain
https://www.middleeasteye.net/news/israel-lebanon-agreement-reached-maritime-border-dispute

Posted by 八木 at 10:06 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)