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日本のロシア、中東からのエネルギー輸入(財務省8月貿易統計の注目点)[2022年09月16日(Fri)]
9月15日付で2022年8月の財務省貿易統計が発表された。G7の一国として、ロシアへの経済制裁を発動中の日本の対ロシア輸出は金額ベースで約2割減少したが、逆に輸入は、7割近く増加している。数量ベースでは、原油が2割減、石炭が3割減になっているものの、LNG(液化天然ガス)輸入は、数量で211%、金額で384%の大幅増となっている。
一方、ロシアのエネルギー輸入の代替先と期待される中東からの原油輸入は、数量ベースでわずか3%増。LNGに至っては、約3割減となっている。それでも、エネルギー価格高騰と円安の影響で、中東原油輸入額は約8割増、LNG輸入額は、125%増と急騰している。この統計から言えることをまとめると次のとおり。
@ロシアと日本とのエネルギー関係は、貿易金額を見る限り弱体化していない
Aとりわけ、日本の国策としてサハリン2の権益維持を掲げている液化天然ガスについては、数量、金額とも大幅な増加が確認される。
B日本とロシアのエネルギー取引は、ロシアの対ウクライナ戦闘継続能力に打撃を与えていない
C中東からの原油輸入は数量ベースで微増にとどまっており、LNGに至っては、数量ベースでむしろ減少している。中東は、ロシア産エネルギーの減少分を補う代替供給元とはなっていない。
Dエネルギー価格の高騰と円安のため、日本のエネルギー資源購入代金はうなぎのぼりとなっている。

2. ロシア
●輸出は549.5億円(マイナス21.5%)
●一方、輸入は1641.04億円(プラス67.4%)
原油輸入 (数量)10.3万L(20.3%減) (金額)103.174億円(54.1%増)
LNG輸入 (数量) 45万トン (211.2%増) (金額) 472.38億円(383.6%増)
石炭輸入 (数量)113.7万トン(32.6%減) (金額)580.06億円(120.2%増)

3. 中東
原油輸入 (数量)1299.3万L(3.1%増) (金額)1兆2415.74億円(76.8%増)
LNG輸入 (数量) 90万トン (28.4%減) (金額) 1608.91億円(124.8%増)
●輸出はUAE、サウジ、クウェート、カタール、オマーンとも金額ベースで増加
●一方、輸入は、イランを除き大幅増
@ UAE  6450.42億円(111.3%増)
A サウジ 5505.54億円(71.6%増)
B クウェート1333.88億円(117%増)
C カタール2236.50億円(102.1%増)
D オマーン 315.64億円(46.7%増)
E イラン   3.74億円(20.2%減)

(参考)2022年8月5日、ロシア政府はサハリン2の運営会社から事業を引き継ぐ新たなロシア企業「サハリンスカヤ・エネルギヤ」を設立し、プロジェクトに参画している三井物産や三菱商事に対して、新会社の株式を取得することに合意するかどうか1か月以内に通知するよう求めてきた。これまでサハリン2の事業主体だった「サハリンエナジー社」には、ロシアの政府系ガス会社「ガスプロム」が50%、英国「シェル」が27.5%、「三井物産」が12.5%、「三菱商事」が10%それぞれ出資していた。三井物産、三菱商事は、日本政府の権益維持の方針もうけて、株式取得維持の報告をロシア側に行った。この申請は、ロシア側に承認された。さらに、8月25日、東京電力と中部電力が出資するJERA(東京都中央区)は、極東ロシアの石油・天然ガス開発事業「サハリン2」の新会社と液化天然ガス(LNG)調達の長期契約を結んだことが確認された。

https://www.customs.go.jp/toukei/shinbun/trade-st/2022/2022084.pdf

Posted by 八木 at 12:00 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

イランが正式メンバー資格取得手続きを進める上海協力機構について[2022年09月16日(Fri)]
2022年9月15,16日ウズベキスタンのサマルカンドで開催されている上海協力機構(SCO)首脳会議の機会に実施された習近平中国国家主席とプーチン・ロシア大統領の会談が話題になっているが、SCOとは如何なる組織なのか。中国のCGTN等の解説に従うと次のとおり。
1.創設年:2001年6月15日(於:上海)
2. メンバーシップ
(1)正式メンバー国8か国:中国、ロシア、カザフスタン、キルギスタン、タジキスタン、ウズベキスタン、パキスタン、インド(創設メンバーは:ロシア、中国、キルギス、カザフスタン、タジキスタン、ウズベキスタン)
(2)オブザーバー資格国4か国:アフガニスタン、ベラルーシ、イラン、モンゴル
(3)対話パートナー国6か国:アゼルバイジャン、アルメニア、カンボジア、ネパール、トルコ、スリランカ

3.目的:加盟国間の信頼と善隣関係を強化する。 幅広い分野で効果的な協力を促進するとともに、地域の平和、安全、安定を維持・確保するための共同の努力を行う。新しい、民主的、公正かつ合理的な政治的および経済的国際秩序の確立に向けて行動する。

4.機構
(1)国家元首評議会:最重要事項の決定。年一回会合
(2)政府首脳評議会:多国間協力、機構の方向性、経済問題等の課題の解決、機構の予算を協議
(3)常設事務局等:機構事務局は北京に設置。反テロ地域機構(RATS)はタシケントに設置
(4)機構の公式使用言語:中国語、ロシア語

5.SCOの規模
(1)正式加盟国地理的広がり:ユーラシア大陸の約 60%、世界全体の 25%
(2)正式加盟国人口:世界人口の 41%
(3)正式加盟国経済規模:2021 年の世界の GDP の 24%

(参考1)ドゥシャンベで開催された 2021 年の SCO 首脳会議で、イランの SCO への完全な加盟手続き(注:イランは2008年に加盟を最初に申請したが、米国の対イラン制裁などが影響して、進展がながらくなかった)と、エジプト、カタール、サウジアラビアの対話パートナーへの加盟手続きを開始する決定がなされた。2022年9月14日、アミールアブドラヒアン・イラン外相は、正式メンバーとなるための誓約文書に署名し、イランの国内的には、加盟に関する法案が今後イラン国会で批准されることになる。イランの正式メンバー資格獲得が完了するのは、2023年4月とみられている。なお、イランは、2022年8月BRICsの正式メンバーになるための申請を行っており、欧米と一線を画す主要国家協力枠組みへの参加を模索している。

(参考2)9月15日のイラン・ロシア首脳会談で、ライシ大統領は、「米国によって制裁を受けているイラン、ロシアあるいはその他の国々の間の関係(強化)は、多くの課題や問題を克服し、(耐久力を)より強くすることができる。米国人は、制裁を課したどの国も(その活動を)止められると考えているが、彼らの認識は間違っている」と伝え、一方、プーチン大統領は、ロシアがイランのSCO正式メンバー資格獲得を全面的に支持したと言及したうえで、来週中にもロシアの80以上の企業が参加する経済代表団をイランに派遣すると伝えた。

https://news.cgtn.com/news/2022-09-12/Chart-of-the-Day-What-is-the-SCO--1dgqmDmy9EY/index.html
https://www.presstv.ir/Detail/2022/09/15/689253/Russian-President-Vladimir-Putin-meeting-Iranian-President-Ebrahim-Raeisi-Shanghai-Cooperation-Organization-full-membership-
https://www.presstv.ir/Detail/2022/07/13/685560/Iran-Shanghai-Cooperation-Organization-SCO-membership-2023

Posted by 八木 at 10:31 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

ウクライナ産穀物輸送協定存続の危機(合意の修正を求めるプーチン大統領と、対応策を思案するエルドアン大統領)[2022年09月11日(Sun)]
1.9月7日、プーチン大統領は、ロシアと発展途上国はウクライナとの国連・トルコが仲介した穀物輸出協定について、「我々が目撃しているのは厚かましい欺瞞である。我々のパートナーであるアフリカや、食糧を切実に必要としている他の国々への欺瞞である。 それは詐欺そのものだ。トルコを除外すると、ウクライナから輸出される穀物のほとんどすべてが、最貧国ではなく、EU諸国に送られている。60,000トンの農産品を運ぶ87隻の船のうち貧困国に到着したのは2隻だけだ。状況が改善されなければ世界は食糧危機に陥る。どの国が出荷を受け取ることができるかを制限するために合意を修正することについて議論するためにエルドアン大統領に連絡する」と述べた。
2.9月8日、エルドアン大統領は、クロアチアの首都ザグレブ訪問中の記者会見で、「ウクライナ産穀物が、ロシアへの制裁を実施している(欧州の)国々に穀物が出荷されているという事実は、プーチン氏をいら立たせている。ロシアは、同国からの穀物出荷も開始することも望んでいる。ロシアのプーチン大統領がこの協定の一部としてもたらされる穀物が、残念ながら、貧しい国ではなく、豊かな国に送られているというのは正しい」と述べた。そして、エルドアン大統領は近くウズベキスタンで開催される上海協力機構サミットの機会にプーチン大統領とこの問題について話し合うことを確認した。

(コメント)ウズベキスタンのサマルカンドで9月15、16両日に開かれる上海協力機構(SCO)首脳会議の機会にエルドアン大統領は、プーチン大統領と対面で会談する予定となっている。エルドアン大統領は、7月19日、シリア問題を話し合う会合の機会にテヘランを訪問し、プーチン大統領とも会談し、さらに、8月5日、ロシアのソチを訪問し、プーチン大統領と対面で会合し、穀物協定のほか二国間経済関係についても話し合った。9月の会合で、エルドアン大統領とプーチン大統領との直接対面会合は、2月のロシアのウクライナ侵攻以来3回目となる。7月22日の穀物輸送安全回廊設置協定の有効期間は、120日であり、11月下旬に更新期限を迎える。プーチン大統領は、9月2日のG7によるロシア産原油価格への上限設定の決定(注:ロシア産石油については12月5日に、石油製品は2023年2月5日に、それぞれ上限価格制度が導入される。石油の海上輸送に対する保険の約90%が英国やEUの保険会社によるとされ、輸入国に上限価格を遵守させるために、G7メンバー国は保険サービスへの規制を実行する)、やEUによる天然ガス価格の上限設定提案(注:これについては、9月9日のEUエネルギー相会議で、ロシアのガス価格のみに上限を設定する案は採択されなかった。ロシアのプーチン大統領は9月7日、ウラジオストクで開催された東方経済フォーラムで行った演説で、ロシア産エネルギーに上限価格が設定されれば、設定国に対してガス・石油供給を停止すると表明していた)。EUによるロシア人への査証発給制限、9月のウクライナ軍の軍事的攻勢を受けてのロシア軍のハリコフ撤退の中で、主としてアフリカ等の途上国の食糧危機を緩和するためのウクライナ合意が、ロシアに制裁を科しているEU諸国の利益になっているとして反発を強めている。エルドアン大統領は、7月22日協定が、ウクライナの穀物輸送だけでなく、ロシアの穀物・肥料輸送も可能にする合意であることを仲介当事者として理解しており、協定を維持するためにも、ロシアにとってもメリットが感じられる実効性のある措置が講じられる必要性を認識している。
トルコは、NATOメンバーでありながら、ウクライナとロシアに対してバランスのとれた対応を行い、欧米の対ロシア制裁には加わらず、ウクライナ危機の実務的な緊張緩和措置に取り組む世界でも稀有な国であり、穀物輸送協定の継続は、トンネルの先が見えない現下のウクライナ危機にあってほぼ唯一のかすかな灯りといえ、国連も国際社会もこの灯りを消さない配慮が求められる。
(参考)7月22日合意に基づくウクライナ産穀物海上輸送の状況(アナドール通信)
@ 出航した穀物輸送船は、105隻(9月8日時点)
A 穀物輸送量は、250万トン
B 目的地に到着した船は39隻(トルコ21隻、エジプト4隻、イタリア4隻、ルーマニア3隻、ギリシャ、英国、ジブチ、オランダ、ギリシャ、イスラエル、スペイン各1隻)
C 航行中の船舶は66隻
https://www.dailysabah.com/business/transportation/erdogan-echoes-putins-gripes-wants-russian-grain-to-be-exported-too
https://www.aa.com.tr/en/info/infographic/29756

Posted by 八木 at 14:11 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

シェンゲン領域欧州諸国によるトルコ人ビザ申請拒否割合の増加に不満を募らせるトルコ[2022年09月05日(Mon)]
シェンゲン協定は、シェンゲン領域を構成する欧州の協定参加国26か国の市民および居住者ならびに適法に入域した短期滞在者が、国境での出入国管理なく参加国間を移動できる仕組み。域内を原則自由に移動できるかわりに域外からの入域管理を厳格に実施することとしており、とくに、2015〜2016年にかけてパリやブリュッセルなどで発生したテロ事件を受けて、個人に対する入域審査が強化されている。シェンゲン領域はEU27ヶ国のうちの22ヶ国(ブルガリア,キプロス,アイルランド,クロアチア、ルーマニアは参加せず)とEFTA(欧州自由貿易連合)の4ヶ国(アイスランド、リヒテンシュタイン、ノルウェー、スイス)を指す。
域外国トルコの市民が、シェンゲン領域内に入域しようとすれば、事前にシェンゲンビザを取得する必要がある。トルコは、大都市イスタンブールをはじめ一部地区が欧州側にあり、EU加盟も求めているシェンゲン領域近隣国である。そのトルコ人のシェンゲンビザ拒否の割合が増加していると報じられている。トルコで拒否されたシェンゲンビザ申請の割合は、2017 年の 6.4% から 2018 年には 8.4%、2019 年には 9.6%、2020 年には 12.5%、そして 2021 年には 16.5% にまで急増している(欧州評議会議員会議PACEの7月報告では、トルコ政府は、トルコ人へのシェンゲンビザ拒否率が2014年の4%から2020年の12.7%に増加したと苦言を呈している)。シェンゲンメンバー国の大使館、領事館での申請の際求められる資料の増加・煩雑化、審査の長期化、査証申請料の高額化(100ドル相当で、査証が拒否されても払い戻しはない)、付与される滞在期間の短縮化が認められるとされる。トルコ国民は2021年、拒否されたシェンゲンビザの手数料として少なくとも 360万ユーロを支払ったとされ、2022年はさらに増加するとみられている。

トルコ側は、欧州側が申請をもてあそんでいると非難しており、チャブシュオール外相は、シェンゲンビザ発給に改善が見られなければ、対抗措置をとる可能性を示唆したが、在トルコ EU 大使ニコラウス・マイヤー・ランドルートは、ビザ拒否率の上昇は政治的なものではなく、トルコ国民だけがそうなっているのでもないと述べている。

データによると、世界全体を対象としたシェンゲンビザ申請の却下率は、2014 年の 5.1% から 2015 年には 6.2%、2016 年には 6.9%、2017 年には 8.2%、2018 年には 9.6%、2019 年には 9.9% に、2020 年は 13.6%、2021 年は 13.4% となっている。

2.2016年3月シリア難民・避難民の欧州への大量移動をうけて、メルケル独首相(当時)がトルコを訪問しエルドアン大統領と協議した結果、シリア難民に関するEU・トルコ合意が成立した。その合意は、@トルコからギリシャの島々に到着した非正規移民全員をトルコに送り返す(参考:過去6年間でギリシャからトルコへの移送は2,140名のみ)、A送り返されたシリア人1名につき、EUはトルコからシリア人1名の空路移送による再定住を認める(参考:EUに再定住したシリア人は32,472名)、Bトルコは、海路、陸路を通じたトルコからEUへの非正規移民の移動を阻止する、C非正規海路の移動がなくなれば、有志の人道的受け入れプログラムが活性化される。資金は有志の形で集められる、DEUはトルコに30億ドルの支援を行い、追加でさらに30億ドル支援する、Eトルコ人のEUへのビザなし訪問に途を開く、F関税同盟の格上げのための現行取り組みを歓迎する、GトルコのEU加盟協議を再活性化する、HEUとトルコは、シリアの人道状況の改善に努めるとの9点で、Eのとおり、トルコ側がEUで設定した基準を満たすのであれば、EU諸国へのビザなし訪問が実現するはずであった。しかし、現実はそうなっていない。
トルコは、2022年5月時点で370万人規模のシリア人を国内で受け入れており、2015年にピークに達したシリア人の欧州への移動の流れを断ち切ることに貢献した。ウクライナ危機においては、2022年7月22日に黒海沿岸からの船舶によるウクライナの穀物輸送の安全航行のための回廊設置を可能にする合意成立に国連とともに仲介し貢献した。9月3日、エルドアン大統領は、ザポリージャ原発の安全確保についても、トルコとして協力する用意がある旨プーチン大統領に伝えたとされる。さらに9月15日には、両首脳は上海協力機構会合の機会に対面会談を予定している。6月28日、NATO加盟国トルコは、NATO首脳会議を前に、フィンランド、スウェーデン両国代表と会談し、当初、クルド人対策が不十分であるとして難色を示していた両国のNATO加盟にも青信号を灯した。
このようにトルコは、紛争当事者の対立を煽るのではなく、実質的な措置の積み重ねによって欧州の安全と安定に貢献しているように思えるが、これに対して、欧州はトルコ人のシェンゲンビザ取得の条件を厳しくしており、トルコの欧州側へのフラストレーションが高まっているのは間違いない。
https://www.schengenvisainfo.com/news/turkish-citizens-have-paid-at-least-e36-million-for-rejected-schengen-visas-last-year/
https://statistics.schengenvisainfo.com/
https://www.consilium.europa.eu/en/press/press-releases/2016/03/18/eu-turkey-statement/
https://eu.rescue.org/article/what-eu-turkey-deal

Posted by 八木 at 13:23 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)