ジャマール・カショギ氏殺害に関する米国国家情報局要約版報告書公開[2021年02月27日(Sat)]
2月26日、米国国家情報局(ODNI)は、2018年10月2日にトルコのサウジ領事館内で殺害された、ワシントンポストのコラムニストで著名なサウジ人ジャーナリストであったジャマール・カショギ氏をサウジアラビア皇太子ムハンマド・ビン・サルマン(MBS)が、同人を「捕捉するか殺害する」ことを目的としたトルコのイスタンブールにおける作戦を承諾していたと分析評価した報告書の4頁の要約版を公開した。
(主要点)
• カショギ殺害の時点で、皇太子は、側近たちが託された職務を果たすことに失敗した場合、解雇されるか、逮捕されるかもしれないとの恐怖を利用したものとみられる。これは、側近たちが、MBSの命令に逆らったり、彼の了承なしに機微な行動をとることは出来そうにもないことを示している。
• 2018年10月2日、15名で構成されるサウジのチームは、イスタンブールに到着した。チームには、王宮のサウジ調査・メディア問題センター(CSMARC)で勤務し、あるいは関連する役人が含まれていた。作戦時、CSMARCは、MBSの身近な側近であったサウード・カハタニが長を務めていた。カハタニ氏は、2018年央時点で、皇太子の承諾がなければ、決定を下すことができないと公に述べていた。
• チームには、サウジ王宮府護衛隊の一部である急速介入部隊(RIF)として知られるMBSのエリート護衛部隊メンバー7名が含まれていた。この部隊は、MBSのみに従い、王国内外での反逆者を抑圧するための早くからの作戦に、皇太子の指示で直接関与していた。我々は、RIFのメンバーは、MBSの承諾なしにはカショギ作戦に参加できなかったと判断する。
• 皇太子は、カショギを王国への脅威とみなした。彼を黙らせるために必要であれば、暴力的な手法をとることを広く支持した。サウジの役人たちがカショギに対する作戦を事前に練っていたものとみられるものの、どれくらい前から彼らが彼を傷つけようとしていたのかはわからない。
• 我々は、以下の人物が、MBSに代わってカショギ殺害に関与し、命令され、責任を有することに高い確信を有している。我々は、これらの人物が作戦がカショギの死に至ることを事前に承知していたのかについてはわからない。
@ サウード・カハタニ(元王宮府顧問)
A マーヘル・ムトリブ(チーム代表格。カショギと在英大使館同僚)
B ナーイフ・アルアリーフィ
C ムハンマド・アルザハラーニ
D バドル・アルウタイバ
E アブドルアジーズ・アルハウサーウィ
F ワリード・アブドッラー・アルシヒリー
G ハーリド・アルオタイバ
H サアル・アルハラビィ
I ファハド・シハーブ・アルバラウィ
J メシュアル・アルブスターニ
K トルキー・アルシヒリー
L ムスタファ・アルマダニー(殺害当日カショギに変装)
M サイフ・サアド・アルカハタニ
N アフマド・ザイド・アッシーリ(元情報部副長官)
O サラーハ・アルトゥバィギ(法医学者)
P ムハンマド・アルオタイバ
(コメント)ヘインズ国家情報長官は、上院のヒアリングで、2019年に議会で可決された法律を遵守し、カショギ殺害に関する報告書を公開することを約束していた。報告書は、サウジ王室と緊密な関係を共有し、サウジを米国の対中東戦略の中心に据えたトランプ政権によって、1年以上にわたって公の場から遮断されていた。2月25日、バイデン大統領はMBSの父親サルマン国王と電話会談して、報告書を公表する旨通報した。サウジ外務省は報告書の内容を虚偽であり、その評価を完全に拒否するとしたうえで、王国は、その指導者、主権、および司法制度の独立性を侵害するいかなる措置も拒否する、と補足した。ブリンケン国務長官は、この報告書の評価にもかかわらず、MBS皇太子自身に対しては、制裁を科さないことを明言した。一方、アッシーリ元情報部副長官と「タイガー部隊」として知られる組織としてのRIFが財務省の制裁リストに追加された。
https://www.axios.com/khashoggi-report-365166be-7092-483c-b739-411193a91d2a.html
国家情報局https://www.dni.gov/files/ODNI/documents/assessments/Assessment-Saudi-Gov-Role-in-JK-Death-20210226v2.pdf
https://www.middleeasteye.net/news/khashoggi-murder-advocates-decry-us-failure-impose-sanctions-mbs
https://home.treasury.gov/policy-issues/financial-sanctions/recent-actions/20210226
(主要点)
• カショギ殺害の時点で、皇太子は、側近たちが託された職務を果たすことに失敗した場合、解雇されるか、逮捕されるかもしれないとの恐怖を利用したものとみられる。これは、側近たちが、MBSの命令に逆らったり、彼の了承なしに機微な行動をとることは出来そうにもないことを示している。
• 2018年10月2日、15名で構成されるサウジのチームは、イスタンブールに到着した。チームには、王宮のサウジ調査・メディア問題センター(CSMARC)で勤務し、あるいは関連する役人が含まれていた。作戦時、CSMARCは、MBSの身近な側近であったサウード・カハタニが長を務めていた。カハタニ氏は、2018年央時点で、皇太子の承諾がなければ、決定を下すことができないと公に述べていた。
• チームには、サウジ王宮府護衛隊の一部である急速介入部隊(RIF)として知られるMBSのエリート護衛部隊メンバー7名が含まれていた。この部隊は、MBSのみに従い、王国内外での反逆者を抑圧するための早くからの作戦に、皇太子の指示で直接関与していた。我々は、RIFのメンバーは、MBSの承諾なしにはカショギ作戦に参加できなかったと判断する。
• 皇太子は、カショギを王国への脅威とみなした。彼を黙らせるために必要であれば、暴力的な手法をとることを広く支持した。サウジの役人たちがカショギに対する作戦を事前に練っていたものとみられるものの、どれくらい前から彼らが彼を傷つけようとしていたのかはわからない。
• 我々は、以下の人物が、MBSに代わってカショギ殺害に関与し、命令され、責任を有することに高い確信を有している。我々は、これらの人物が作戦がカショギの死に至ることを事前に承知していたのかについてはわからない。
@ サウード・カハタニ(元王宮府顧問)
A マーヘル・ムトリブ(チーム代表格。カショギと在英大使館同僚)
B ナーイフ・アルアリーフィ
C ムハンマド・アルザハラーニ
D バドル・アルウタイバ
E アブドルアジーズ・アルハウサーウィ
F ワリード・アブドッラー・アルシヒリー
G ハーリド・アルオタイバ
H サアル・アルハラビィ
I ファハド・シハーブ・アルバラウィ
J メシュアル・アルブスターニ
K トルキー・アルシヒリー
L ムスタファ・アルマダニー(殺害当日カショギに変装)
M サイフ・サアド・アルカハタニ
N アフマド・ザイド・アッシーリ(元情報部副長官)
O サラーハ・アルトゥバィギ(法医学者)
P ムハンマド・アルオタイバ
(コメント)ヘインズ国家情報長官は、上院のヒアリングで、2019年に議会で可決された法律を遵守し、カショギ殺害に関する報告書を公開することを約束していた。報告書は、サウジ王室と緊密な関係を共有し、サウジを米国の対中東戦略の中心に据えたトランプ政権によって、1年以上にわたって公の場から遮断されていた。2月25日、バイデン大統領はMBSの父親サルマン国王と電話会談して、報告書を公表する旨通報した。サウジ外務省は報告書の内容を虚偽であり、その評価を完全に拒否するとしたうえで、王国は、その指導者、主権、および司法制度の独立性を侵害するいかなる措置も拒否する、と補足した。ブリンケン国務長官は、この報告書の評価にもかかわらず、MBS皇太子自身に対しては、制裁を科さないことを明言した。一方、アッシーリ元情報部副長官と「タイガー部隊」として知られる組織としてのRIFが財務省の制裁リストに追加された。
https://www.axios.com/khashoggi-report-365166be-7092-483c-b739-411193a91d2a.html
国家情報局https://www.dni.gov/files/ODNI/documents/assessments/Assessment-Saudi-Gov-Role-in-JK-Death-20210226v2.pdf
https://www.middleeasteye.net/news/khashoggi-murder-advocates-decry-us-failure-impose-sanctions-mbs
https://home.treasury.gov/policy-issues/financial-sanctions/recent-actions/20210226
Posted by 八木 at 15:56 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)