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クウェート・サバーハ首長の逝去[2020年09月30日(Wed)]
9月29日、クウェートの首長シェイク・サバーハ・アルアフマド・アルジャベール・アルサバーハが亡くなった。91歳であった。故サバーハ首長は、1929年生まれ、クウェートの外務大臣を40年近く務め、2006年に逝去したジャービル首長のあと、ごく短期間の首長家内の権力争いを経て首長に就任した。後任には、サバーハ首長の異母兄弟のシェイク・ナワーフ・アルアフマド・アル・サバーハ皇太子(83歳)が閣議で新しい首長に指名された。
https://www.aljazeera.com/news/2020/9/29/sheikh-sabah-the-gcc-has-lost-his-voice-of
(コメント)クウェートはOPECメンバーで、大産油国である。サバーハ首長は40年務めた外相時代ならびに首長就任後も様々な危機や困難に直面した。その中で達成した大きな業績のひとつは、イラン革命後の1980年9月に勃発したイラン・イラク戦争をうけて、湾岸の王国・首長国の結束を強め、共同防衛にあたるために1981年に湾岸協力理事会(GCC)の結成に尽力したことである。最大の困難は、1990年8月にサッダーム・フセイン統治下のイラクがクウェートに侵攻したことである。サバーハ外相は、サウジに逃れ、一時期、亡命政権の中で、クウェート外交の陣頭指揮にあたった。翌1991年3月クウェートは多国籍軍によって解放された。外相は、その後イラクとの国境線の画定、補償と被拘禁者、人質、そしてクウェート人の遺体の返還に取り組んできた。日本は、湾岸危機で多額の資金面での貢献を行ったが、日本国内では日本の貢献にふさわしい謝意がクウェートから示されていないと見方もあったが、2011年3月の東日本大震災にあたって、クウェートは、サバーハ首長の指示で世界の中で最大の500万バレル(5億ドル相当)の石油を日本に送り、日本国民に分かる形で湾岸危機における日本の貢献に謝意を表した。クウェートには、湾岸諸国では少数派の立法議会が存在する。サバーハ首長は、内閣の変更や、議会の解散・総選挙により、幾たびかの国内の政治的危機を乗り越えてきた。2011年のアラブの春の民衆蜂起も乗り越えることができた。2009年には、初めて議会で女性議員4名が誕生した。2017年6月、サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトがGCCを構成する同胞国であるカタールに対して「テロを支援している」との理由で断交し、陸、海、空の封鎖を課した。封鎖国は、カタールのアルジャジーラ放送局の閉鎖、イランとの外交関係縮小、トルコ軍の駐留終了、ムスリム同胞団やハマースやヒズボラとのすべての関係の切断などの13の要求を突き付けた。GCC創設に尽力したサバーハ首長は、直ちに調停に乗り出し、現実的解決を模索してきた。この努力が実を結んだわけではないが、内部の危機に際して、周辺国すべてから敬意を払われ、外交的イニシアティブを発揮できる人物の存在の必要性が改めて認識された。GCC諸国の中では、本年1月10日に、湾岸で全方位外交を展開してきたカブース国王が亡くなった。湾岸アラブ世界では、近隣同胞諸国の結束よりも、指導者の権力維持・拡大のための過去の経緯に配慮しないアグレッシブな外交政策を展開する国が増えている。サバーハ首長の死は、世代交代による躍動的で明るい展望の湾岸アラブ世界というより、対立の中で敵か味方かの判断を突き付ける不安定でリスクの大きい湾岸アラブ世界に突入していくのではないかという不安を感じざるをえない。

Posted by 八木 at 11:25 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

Mada Masr編集長リナ・アタッラーのタイム誌による2020年世界で最も影響力のある人物100人のひとりに選出[2020年09月24日(Thu)]
中東で最も影響力のあるメディアのひとつとして、アルジャジーラが知られているが、エジプト人女性が立ち上げたニュースサイト「Mada Masr」をご存知であろうか。Mada Masrの編集長であるリナ・アタッラー(Lina Atallah)が、タイム誌による2020年に世界で最も影響力のある100人のひとりに選ばれた。日本人も、全米オープンテニス大会で、殺害された黒人の名前を記載したマスクで、黒人の命の重要性を訴えた大坂なおみ選手や、自らがうけた性的暴力を様々な圧力にもかかわらず公表して立ち向かう姿勢を示した伊藤詩織さんが選ばれた。中東では、シリア人夫婦の娘に焦点をあてながら、一般人が内戦下のシリアのアレッポでの生活をどのように生き抜いてきたかを示す映画を作成したWaad al-Kateab、2008年からUAEの駐米大使を務め、トランプ政権に深く食い込み、今回のUAE・イスラエル国交正常化への道筋をつけたユースフ・オタイバ(Yousef al-Otaiba)大使、ならびにシリアの監獄に投獄されながら、脱獄に成功し、5万枚のシリアの牢獄における反体制派への拷問写真等を持ち出して、米議会における米国の「シーザー市民人権保護法」成立のきっかけを作ったコードネーム「シーザー」と称される軍脱走者が2020年の100名のリストに含まれている。

マダー・マスルサイトhttps://www.madamasr.com/en

(参考)リナの選出に到る経緯
2019年5月、マダー・マスルのウェブサイトの編集長は、エジプトのトーラ刑務所の壁の外で、拘束された活動家のアラー・アブデル・ファッターハ(Alaa Abdel Fattah)の母親であるLaila Suef博士とのインタビューを行っていたため、彼女の取材活動中に逮捕された。マダー・マスルによれば、検察は彼女を「軍事施設の撮影」の容疑で起訴した。数時間拘留され、2020年の事件No. 8009で尋問された後、検察は2000ポンドのエジプトの保釈金で彼女は解放された。
リナは15年以上ジャーナリズムに携わってきた。その間、彼女は多くのジャーナリズム賞や国際的な賞を獲得し、複数の国や複数の報道機関で働くようになった。リナはロイター、カイロ・タイムズ、デイリー・スター、クリスチャン・サイエンス・モニターに寄稿し、また、スーダンのダルフールにあるBBCのグローバル・サービスのためのラジオプロデューサーおよびキャンペーン・コーディネーターとして働いてきた。
彼女は、著名で影響力のあるジャーナリズムを称えるために国際ジャーナリスト・センターが贈った2020年の国際ジャーナリズムの「ナイトアワード」を受賞した。
マダー・マスルを独立した報道サイトとして立ち上げるという考えは、リナが管理編集者として働いていた「アル・マスリー・アル・ユーム」新聞の経営陣が英語版「エジプト・インディペンデント」を閉鎖した後、2013年に誕生した。同紙閉鎖後すぐに、リナはジャーナリストのグループと一緒に、「マダー・マスル」という名前で英語のニュースサイトを作成することを決定した。サイトの管理者は、「創造的で勇気があり魅力的なジャーナリズム・コンテンツを制作しようとするエジプトのサイト」と定義した。しばらくすると、サイトはアラビア語と英語の両方で発信されるようになった。
リナは、報道活動に敵対的雰囲気の中で、「マダー・マスル」チームとジャーナリズムの仕事を行ってきた。 ジャーナリスト保護委員会の報告書によると、エジプトの報道関係者は、2015年以降、サウジアラビア、トルコ、中国とともに、最も多くのジャーナリストが投獄された国のリストに繰り返し登場している。7年間にわたって、マダー・マスルは多くの課題に直面してきた。 2017年、エジプト当局は国内からアクセスできないようにするため、マダー・マスルを他に禁止された500のWebサイトの一つとしてブロックしたが、それでもプレスチームは発信を続けることを選択した。
リナと彼女のチームは、何度も脅迫を受けた。昨年、ウェブサイトの編集者の1人が自宅で逮捕され、治安部隊が「マダー・マスル」を襲撃し、オフィスワーカーを数時間拘束した後、リナを含む「マダー」の編集者とジャーナリスト3人がエジプト大統領アブデル・ファターハ・エルシーシの息子についてのプレスストーリーの背景に関して報道し逮捕された。彼らは数時間後に釈放された。
リナは、フィリピンのジャーナリストであり、昨年タイムリストに登場したラプラーの創設者であるマリア・リサによって今回紹介された。彼女はリナについて、警察によって逮捕され、手錠をかけられ、車で連行されたリナと彼女の同僚に起こったように、あなたがそうなるまで、一線を越えたことを知ることはないであろう。自分たちがどうなるのであろうかと彼らは心の中で葛藤しながらも、他の仲間と手を取り合っていた。これこそが私たちの選択ですある。
(関連記事)
https://www.aljazeera.net/news/women/2020/9/23/%D8%A7%D9%84%D8%B5%D8%AD%D9%81%D9%8A%D8%A9-%D8%A7%D9%84%D8%B9%D8%B1%D8%A8%D9%8A%D8%A9-%D8%A7%D9%84%D8%A3%D9%83%D8%AB%D8%B1-%D8%AA%D8%A3%D8%AB%D9%8A%D8%B1%D8%A7-%D9%81%D9%8A
https://www.middleeasteye.net/news/time-influential-top-waad-kateab-lina-attalah-yousef-otaiba
https://time.com/collection/100-most-influential-people-2020/5888226/lina-attalah/

Posted by 八木 at 11:09 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

イランの弾道ミサイル開発および通常兵器追求を阻止するための米国の新たな措置[2020年09月23日(Wed)]
9月21日、トランプ大統領は、イランの核開発、弾道ミサイルおよび通常兵器への追求を制限するため新たな制裁、規制措置をとったことを明らかにした。9月19日にポンペイオ国務長官は、2015年7月のイラン核合意で解除された国連によるイラン制裁が、国連安保理決議(UNSCR)2231に基づくスナップバック・プロセスに従って、制裁が復活したと宣言しており、9月21日の米国の新たな措置は、トランプ大統領が11月の大統領選再選を狙って、イラン封じ込めの成果を米国民にアピールするとともに、イランに対する国連制裁復活に同調しようとしない欧州諸国に圧力を加える意味もあるとみられている。

(参考1)イランへの国連制裁の復活に関する国務省プレス声明(2020年9月19日)
●トランプ政権は、中東の平和への最大の脅威はイラン・イスラム共和国からのものであることを常に理解してきた。イラン・イスラム共和国は革命を広めるための暴力的な取り組みにより数千人を殺害し、数百万人の無実の人々の命を蝕んだ。宥和政策は、そのような体制を強化するだけであることは歴史が証明している。 このように、今日、米国はテロと反ユダヤ主義の世界有数の国家スポンサーであるイラン・イスラム共和国に対する事実上すべての国連制裁の復帰を歓迎している。
●国連安全保障理事会決議(UNSCR)2231に基づくスナップバック・プロセスに従って、制裁がイランに再度課されている。8月20日、米国は安保理議長にJCPOAの約束へのイランによる重要な不履行を通知した。 この通知の後、30日のプロセスが続き、以前に終了した国連制裁措置がスナップバックされた。これは、9月19日の東部夏時間午後8時に発効した。すなわち、今19日から、UNSCR 1696、1737、1747、1803、 UNSCR 2231によって終了させられた1835年と1929年が再び発効した。 UNSCR 2231のパラグラフ7、8、16から20に含まれている措置は現在終了している。
●米国がこの決定的な行動をとったのは、イランがJCPOAの約束を履行できなかったことに加えて、安保理が13年間続いていた国連の武器禁輸を延長できなかったためである。 安保理の不作為は、10月18日にイランがあらゆる種類の通常兵器を購入する道を開いたであろう。幸いなことに、米国はこれを阻止するために責任ある行動をとった。 UNSCR 2231に基づく我々の権利に従って、武器禁輸を含む以前に終了したすべての国連制裁を事実上すべて復活させるために、スナップバック・プロセスを開始した。 その結果、世界はより安全になる。
●米国は、すべての国連加盟国がこれらの措置を実施する義務を完全に遵守することを期待している。 武器禁輸に加えて、これには、イランが濃縮と再処理関連の活動に従事することへの禁止、イランによる弾道ミサイルのテストと開発の禁止、とりわけ核とミサイル関連の技術のイランへの移転への制裁などの制限が含まれている。 国連加盟国がこれらの制裁を実施する義務を果たせなかった場合、米国は国内当局を利用してこれらの不履行に影響を与え、イランが国連で禁止されている活動の恩恵を受けないようにする用意がある。
https://www.state.gov/the-return-of-un-sanctions-on-the-islamic-republic-of-iran/

(参考2)トランプ大統領のイラン追加制裁声明(9月21日)
●本日、私はイランの核開発、弾道ミサイルおよび通常兵器への追求を制限するために新しい行動をとっている。 私の政権はイランが核兵器を持つことを決して許さないし、イランが弾道ミサイルと通常兵器の新たな供給で世界の他の国々を危険にさらすことも許さない。 これが起こらないようにするために、私は新たな大統領令を発出し、イランに対する国連制裁を復活させ、イランの核、ミサイル、および通常兵器に関連する活動を支援する2ダースを超えるエンティティと個人に新たな制裁と輸出規制を課した。
●私が本日発出した大統領令は、イランへの、またはイランからの通常兵器の供給、販売、または移転に貢献する人々、ならびに技術トレーニング、金融支援とサービス、およびこれらの武器に関連するその他の支援を提供する人々の米国における財産および財産への配当を遮断する。 この大統領令は、イランへの国連武器禁輸を実施するために重要である。 この命令により、イラン政権が地域全体のテロリストや危険な行為を行う者たちに武器を輸出する能力や、自国の軍事力構築のための武器獲得の能力を大幅に低下させる。
●今日、私の政権はまた、イランの核拡散ネットワークに関係する27のエンティティと個人に新たな制裁と輸出管理措置を課している。 これらの行為は、イランの核開発におけるイラン原子力庁の役割、弾道ミサイル開発を促進するためのイランのミサイル製造組織Shahid Hemmat Industrial Group、および通常兵器の移転と獲得に関与する2つのイランの組織を標的としている。
●米国は現在、イランに対する国連の制裁を復活させた。 イランの政権は秘密の核兵器貯蔵施設について繰り返し嘘をつき、国際査察官によるアクセスを拒否し、私が米国を離脱させた前政権による失敗した核合意の深い欠陥をさらけ出させた。 イランが核兵器を製造するとき、世界はのんびりと座したままでいることはできない。 私の政府は、これが起こらないようにするための取り組みの一環として、これらの制裁を復活させた。
●本日の私の行動は、イラン政権とイランに立ち向かうことを拒否する国際社会の人々に明確なメッセージを送るものである。 米国は、イラン政権が世界の他の地域を直接脅かして恐怖にさらす能力を一層前進させることを許さない。 私の政権は、イランの核、弾道ミサイルや通常兵器への追求を阻止するために、私たちがあらゆるツールを駆使する。 イランの政権は、繁栄するイランのためイラン国民が必死に求め、それに値するものを提供しようとするのであれば、その振る舞いを変えなければならない。
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/statement-president-regarding-new-restrictions-irans-nuclear-ballistic-missile-conventional-weapons-pursuits/

(参考3)対イラン追加制裁に関する国務省ほかによる共同記者会見(2020年9月21日)
1.ポンペイオ国務長官発言骨子
●週末に、国連安全保障理事会決議2231に基づく武器禁輸措置を含む、イラン・イスラム共和国に対する以前に終了したすべての国連制裁を実質的に回復するための米国の取り組みを行っており、トランプ政権は常に、イラン政権が真に過激で、革命的で、テロと反ユダヤ主義の世界有数の国家スポンサーであることに正直である。トランプ大統領は、JCPOAが重大な失敗であったことを理解した。それはイランを「国家の共同体」に招き入れることはなく、または核兵器保有へのイランの取り組みを妨げなかった。代わりに、それは宥和政策のエクササイズであった。それは何十億ドルものギフトを政権に与え、イランがたった5年間で世界中のテロリストグループと独裁者が選ぶ武器商人になる道を切り開いた。
●イランがより高度な武器を自由に購入できたらどうなるか想像してみてほしい。それを実現させるつもりはない。本日発表された大統領令は、国連の武器禁輸を実施し、国連の制裁復活を回避しようとする人々に責任を持たせるための新しい強力なツールを我々に付与する。今日、私はイランの国防省と軍隊のロジスティクス、およびイランの国防産業機構とその局長に制裁を科すことにより、この新たな大統領令の下で最初の行動をとる。
●また、ベネズエラの前大統領であるニコラス・マドゥーロも制裁対象としている。ほぼ2年間、イランの腐敗した当局者は、ベネズエラの非合法な体制と協力して、国連の武器禁輸を無視してきた。今日の私たちの行動は、世界中に向けての警告である。あなたが誰であろうと、イランへの国連武器禁輸に違反すると、制裁の危険にさらされることになる。
●我々は、人道的貿易と支援のためのチャネルを開いたまま、これらの行動をとってきた。 本日説明したことは、イランの政権が協議のテーブルにつき、その行動を変えるための真の合意を受け入れるまで、それを維持する。米国人は、私たちが常に国民の安全を最優先していることを知るべきである。
2.ムニューシン財務長官発言骨子
●政権はイランが弾道ミサイルと通常兵器の新鮮な供給で世界の他の人々を危険にさらすことを許さない。本日、財務省はイランの核開発、弾道ミサイルプログラムを支援する団体と、イランの核・弾道ミサイル開発を監督する高官を制裁対象に指定した。本日の我々の標的は、核計画の運営と規制を管理し、核の研究開発に責任を負っているイランの原子力庁と提携している者たちで、 3人の副局長が本日制裁を受けたほか、イランの民間核プログラムの中心的な要員であるAEOI傘下の3つの団体が制裁対象となった。
●財務省はまた、イランの弾道ミサイル・プログラムのために、軍事仕様でイランの弾道ミサイル・プログラムにも使用可能な製品の主要な生産者と供給者を制裁対象に加えた。マンムート・インダストリーズおよびマンムート・ディーゼルは、これらの企業の数名の株主および上級役員とともに、制裁対象に指定された。
●また、液体推進型ミサイルの主要開発者であるイランのシャヒード・ヘンマット・インダストリアル・グループを制裁対象に指定したことを特に強調したい。 特に、Shahid Haj Ali Movahed Research Centerは、液体推進型弾道ミサイルと宇宙ロケットの統合、最終組み立て、テストを担当している。これらの個人または団体との主要な取引を故意に促進する金融機関は米国の制裁の対象となる可能性がある。

(コメント) 10月に期限切れを迎えるイランに対する武器禁輸措置をめぐり、米国が国連安全保障理事会に提出したイランに対する武器禁輸措置の延長に関する決議案が8月14日に採決にかけられたが、賛成は2票(米国、ドミニカ共和国)、反対2票(中国、ロシア)、棄権11票で否決された。採決の結果を受け、米国のクラフト国連大使は声明で「武器禁輸を延長するためにはいかなる手段も辞さないと警告し、8月20日、米国は安保理議長にJCPOAの約束へのイランによる重要な不履行を通知した。 この通知の後30日が経過した9月19日、国連安保理決議2231が規定したプロセスに基づき、米国は、以前に終了した国連制裁措置の復活を宣言した。イラン核合意では、いずれかの参加国が「合意違反がある」と判断すれば、武器禁輸を含む国連制裁を復活させる「スナップバック」という仕組みが盛り込まれ、米国は今回、この仕組みを援用したと主張する。米国は、8月20日の安保理議長へのイランの義務違反通報後、当事国で協議した後、解決できなければ安保理に持ち込まれ、安保理が30日以内に制裁解除を継続するという決議案を採択しない限り、制裁は復活するとの立場をとってきた。中国やロシアは、米国は2018年5月にイラン核合意からの一方的離脱を宣言したことから、制裁再発動を求める資格はないと主張している。現実問題として、イランへの武器輸出は、ロシアなど一部の国に限られ、ロシアは米国の今回の発表に縛られないと発表しており、イランの外国製武器入手への実質的影響は少ないとみられる。ムジャヘディン・ハルクなどが参加するイランの反体制派組織であるイラン抵抗国民会議(NCRI)のラジャヴィ暫定議長は、米国のイランに対する経済制裁と、スナップバック規定によるイランへの武器禁輸延長ならびに国連によるイラン制裁の復活を全面的に支持している。

Posted by 八木 at 11:54 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

ホワイトハウスでのUAE・バーレーンとイスラエルとの国交正常化合意署名式[2020年09月16日(Wed)]
9月15日、ワシントンDCのホワイトハウスで、トランプ大統領立ち合いのもと、イスラエルのネタニヤフ首相、UAEのアブドッラー・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン外相、バーレーンのアブドル・ラティーフ・ザヤニ外相が出席して、UAE、バーレーンとイスラエルの国交正常化合意がそれぞれ署名され、米国を含む4国代表によるアブラハム合意宣言が署名された。UAEの実質的な指導者で、今回の合意を推進したUAEのムハンマド・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン・アブダビ皇太子ならびに直前にイスラエルとの関係正常化を宣言したバーレーンのハマド・ビン・イッサ・アルハリーファ国王は、署名式に出席せず、それぞれ外相を派遣して、署名を行わしめた。
(参考1) アブラハム合意宣言(2020年9月15日 於WH)
●署名者である私たちは、相互理解と共存、および人間の尊厳と信仰の自由を含む自由の尊重に基づいて、中東および世界中の平和を維持し、強化することの重要性を認識しています。
●私たちは、異宗教間および異文化間の対話を促進し、アブラハムの3つの宗教とすべての人類間の平和の文化を推進するための努力を奨励する。
●私たちは、課題に対処する最善の方法は、協力と対話を通じてであり、国家間の友好関係を育むことは、中東および世界中の永続的な平和の利益を促進すると信じている。
●私たちは、この世界を、人種、信仰、民族に関係なく、尊厳と希望の人生を享受することができる場所にするために、すべての人に寛容と尊敬を求める。
●私たちは科学、芸術、医学、商業をサポートし、人類を鼓舞し、人間の可能性を最大化し、国家をより緊密に結びつける。
●私たちはすべての子供たちにより良い未来を提供するために過激化と紛争を終わらせることを希求する。
●私たちは中東と世界の平和、安全、繁栄のビジョンを追求する。
●この精神において、私たちはアブラハム合意の原則に基づいてイスラエルとその地域の近隣諸国との間の外交関係構築のためにすでになされた進展を心から歓迎し、励まされている。 私たちは、共通の利益とより良い未来への共通のコミットメントに基づいて、そのような友好関係を強化、拡大するために進行中の取り組みに勇気づけられている
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/the-abraham-accords-declaration/
(署名文PDF)https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2020/09/ABRAHAM-ACCORDS-DECLARATION.pdf
アブラハム平和合意:アラブ首長国連邦とイスラエル国家間の平和条約、外交関係、完全な関係正常化(2020年9月15日)
アラブ首長国連邦政府およびイスラエル国政府(以下、「締約国」)は、
@ 地域のすべての国と人々のために、安定して平和で繁栄する中東地域のビジョンを実現することを目指し、
A この協定に従って、平和、外交的かつ友好的な関係、協力関係、そして彼らとその国民との間の関係の完全な正常化を構築し、彼らと地域の国々に潜在的な可能性を解き放つための新しい道を一緒に描くことを望も、;
B 2020年8月13日付けの「米国、イスラエル国、アラブ首長国連邦の共同声明」(「アブラハム合意」)を再確認し、
C 友好関係のさらなる発展は中東における永続的な平和の利益を満たし、課題は紛争ではなく協力によってのみ効果的に対処できると信じ、
D 両国の永続的な平和、安定、安全、繁栄を確保し、そのダイナミックで革新的な経済を発展、強化することを決意し、
E 外交的関与、経済協力の拡大、その他の緊密な調整を通じて、関係を正常化し、安定を促進するという両国の共通の責任を再確認し、
F 平和の確立と両国間の完全な正常化は、経済成長に拍車をかけ、技術革新を強化し、人と人とのより緊密な関係を築くことによって中東の変革を助けることが出来るとの彼らの共通の信念も再確認し、
G アラブ人とユダヤ人が共通の祖先であるアブラハムの子孫であり、その精神の中で、中東ではイスラム教徒、ユダヤ教徒、キリスト教徒、あらゆる信仰、宗派、信仰、国籍の人々がともに生活しており、共存、相互理解、相互尊重の精神を持ち、それにコミットしていることを認識して、
H トランプ大統領が平和へのビジョンを提示した2020年1月28日に開催されたレセプションを想起し、イスラエル・パレスチナ紛争に対する公正で包括的、現実的かつ永続的な解決策を達成するための努力を継続することを約束する。
I イスラエル国とエジプト・アラブ共和国間およびイスラエル国とヨルダン・ハシミテ王国間の平和条約を想起し、正当なニーズを満たし、両国民の願望、そして包括的な中東の平和、安定と繁栄を前進させるためにイスラエル・パレスチナの紛争の交渉による解決を実現するために協力することを約束して、
J イスラエルとUAE間の関係の正常化は両国民の利益であり、中東と世界の平和の大義に貢献するという信念を強調し、
K この歴史的な成果への多大な貢献について、米国に深い感謝の意を表して、
以下のとおり合意した。
1. 平和、外交関係と関係正常化の構築:アラブ首長国連邦とイスラエル国との間に、平和、外交関係および二国間関係の完全な正常化が構築される。
2. 一般原則:締約国は、国連憲章の規定および国家間の関係を規定する国際法の原則により、その関係が導かれる。 特に、彼らは互いの主権と平和と安全に生きる権利を認め、尊重し、彼らとその国民との間の協力の友好関係を発展させ、平和的な手段によってそれらの間のすべての紛争を解決する。
3. 大使館の設置:締約国は、この条約の調印後可能な限り速やかに駐在大使を交換し、適用される国際法の規則に従って外交および領事関係を遂行する。
4. 平和と安定:締約国は、平和と安定の領域での相互理解、協力、調整を、関係の基本的な柱として、また中東全域でのそれらの領域を改善させる手段として、極めて重要視する。 彼らは、それぞれの領域内でテロ行為や敵対行為を防止するために必要な措置を講じ、また、そのような海外での活動に対する支援を拒否し、それぞれの領土でのそのような支援を許すことを拒否する。 締約国は、平和と友好関係の新時代、ならびにそれぞれの人々と地域の福利が安定の中心であることを認識し、これらの問題を定期的に検討および議論し、調整と協力のための詳細な合意と取り決めを結ぶ。
5. 他の分野における協力と合意:平和、繁栄、外交的かつ友好的な関係、協力および完全な正常化へのコミットメントの不可欠な一部分として、締約国は中東全域における平和の大義、安定および繁栄を前進させるために活動する。 そして、彼らの両国と地域に大きな可能性を解き放つ。 そのような目的のために、締約国は、可及的速やかに、以下の領域あるいは合意される可能性のある相互に関心のある他の領域において、二国間合意を締結する。@金融および投資、A民間航空、Bビザおよび領事サービス、Cイノベーション、貿易 と経済関係。
-健康管理
–宇宙、科学、技術、平和利用
–観光、文化、スポーツ
–エネルギー
–環境
- 教育
–海事の手配
–電気通信および郵便
–農業と食料安全保障
- 水
–法的協力
・この条約の発効前に締結されたそのような合意は、別段の定めがない限り、この条約の発効とともに効力を生じる。 特定の分野での協力に関する合意された原則は、この条約に付属しており、その不可欠な部分を形成する。
6. 相互理解と共存:両当事者は、共通の祖先であるアブラハムの精神の中で、社会間の相互理解、尊重、共存、平和の文化を育むことを約束し、この協定によって、人と人との交流プログラム、宗教間の対話、文化的、学術的、青少年、科学的、その他の民族間の交流を育むことを含む平和と友好関係の新時代が到来した。彼らは、必要なビザと領事サービスの契約と取り決めを締結・実施して、それぞれの国民が互いの領域に効率的かつ安全に旅行できるようにする。締約国は、憎悪と分裂、テロリズムとその正当化を促進する過激主義と闘い、過激化と過激分子のリクルートを防止し、扇動と差別と闘うために協力する。彼らは、これらの目標を前進させることに専念する平和と共存のためのハイレベル合同フォーラムの設立に向けて努力するものとする。
7. 中東の戦略的アジェンダ:アブラハム合意に加えて、締約国は、地域外交、貿易、安定、その他の協力を拡大するための「中東の戦略的アジェンダ」を立ち上げるために米国に協力する用意がある。 彼らは、両国間ならびに中東全域の平和の大義、安定および繁栄を前進させるために、必要に応じて米国およびその他の国々と協力することを約束する。 それにより、地域のセキュリティと安定を促進し、 地域経済の機会を追求し、 地域全体で平和の文化を促進し、共同の援助と開発プログラムを検討する。
以下省略
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/abraham-accords-peace-agreement-treaty-of-peace-diplomatic-relations-and-full-normalization-between-the-united-arab-emirates-and-the-state-of-israel/
(署名文PDF)https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2020/09/DECLARATION-OF-PEACE.pdf
(参考2)アブラハム合意:(イスラエル・バーレーン間)平和、協力、建設的な外交・友好関係の宣言(9月15日)
ベンジャミン・ネタニヤフ首相とアブドル・ラティーフ・アル・ザヤニ外相は、両者の会合において、完全な外交関係を樹立し、永続的な安全を促進し、脅威と武力の行使を避け、共存と平和の文化を前進させることに同意した。 この精神で、彼らは今日、この新しい章を彼らの関係で始める一連のステップを承認しました。 バーレーン王国とイスラエル国は、投資、観光、直行便、セキュリティ、通信、テクノロジー、エネルギー、ヘルスケア、文化、環境、および相互利益の他の分野についても、今後数週間で合意を求めることに同意しました。 大使館の相互開放について合意に達したとして。
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/abraham-accords-declaration-peace-cooperation-constructive-diplomatic-friendly-relations/
(署名文PDF)https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2020/09/DECLARATION-OF-PEACE.pdf
(コメント)アブラハムは、イスラム教徒、キリスト教徒、ユダヤ教徒にとって、一神教の祖として位置付けられており、今回のイスラエルとUAE、バーレーンとの国交正常化合意署名を、米国はアラブ・イスラエル紛争の解決というより、一神教間の融和、共存のステップと位置付けようとしている。9月11日にイスラエルとの関係正常化を宣言したバーレーンの合意は、9月15日時点で、イスラエルとの関係を完全に正常化するとの意思を確認した内容となっているが、8月13日に関係正常化を宣言したUAE・イスラエル合意は、具体的な協力関係の詳細に踏み込んでいる。すなわち、@金融および投資、A民間航空、Bビザおよび領事サービス、Cイノベーション、貿易 と経済関係、D健康管理、E宇宙、科学、技術、平和利用、F観光、文化、スポーツ、Gエネルギー、H環境、I 教育、J海事アレンジ、K電気通信および郵便、L農業と食料安全保障、M水、N法的協力をカバーしている。そして、合意文書のアネックスで、財政・投資、民間航空、観光、技術革新・貿易・経済関係、科学・技術・宇宙の平和利用、環境、電気通信・郵便、保健、農業・食糧安全保障、水、エネルギー、海事、法制面での協力の詳細に踏み込んでいる。すでに、UAEはイスラエルに対するアラブボイコット廃止を決定しており、両国関係は、急速に正常化していくものとみられる。

今回のUAE・イスラエル合意において、中東和平に関する比重は小さく、トランプ大統領が平和へのビジョンを提示した2020年1月28日に示されたトランプ大統領の新和平プラン「世紀の取引」をベースに、イスラエル・パレスチナ紛争に対する公正で包括的、現実的かつ永続的な解決策を達成するための努力を継続することを約束する、としている。ここで、注目されるのは、以前は決して含まれることがなかった「現実的」ということばが加わったことである。UAEは、イスラエルとの国交正常化にあたり、イスラエルによる西岸の一部併合を先延ばしにするとの約束を米国から取り付けたとされており、ネタニヤフ首相は、併合計画を断念したわけではないと主張しており、一部報道では、2024年1月までの暫定約束であるとの見方がある。「現実的な」が加わった意味は、イスラエル政府のエルサレムや入植地への立場に変更を求めない範囲での、紛争解決をUAEは支持すると宣言したに等しく、パレスチナ人にとっては、アラブ連盟でのUAE・イスラエル関係正常化を拒否する決議を却下され、アラブ世界でも孤立し、一時期国際社会がこぞって支持した安保理決議242、338の実現、二国家共存を目指すオスロ合意も過去の遺物になろうとしている。

さらに、今回の湾岸二か国のイスラエルとの国交正常化は、イランの喉元で、イスラエルが自由に活動できるようになることを意味し、今回の合意では、軍事協力、情報協力、イランに対する明示的な共同行動に言及はないものの、イランは、UAE・イスラエル合同のイランへの諜報活動や外部勢力による最近頻発している国内の火災・爆発事件の続発に神経を尖らせることになるのは間違いないとみられる。

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イスラエルにおける新型コロナ感染抑制のための二度目のロックダウン[2020年09月15日(Tue)]
9月13日、イスラエル政府は、9月18日から期間3週間の、二度目の新型コロナ抑制のための国内全体のロックダウンに入ることを閣議承認し、発表した。9月19日はユダヤ教新年のローシュ・ハシャナの休日にあたる。また、新年の10日目がユダヤ教徒にとっての大贖罪日であるヨム・キプールにあたり、ユダヤ教徒は断食したり、シナゴーグで祈りを捧げたりする。超正統派のユダヤ人党を率いるヤアコフ・リッツマン住宅相は、今回のロックダウンがユダヤ人の祝日であるヨム・キプールを含むユダヤ人の宗教祭を祝うことを妨げると述べ、ネタニヤフ首相に辞任を申し出た。イスラエルでは、3-4月にかけてユダヤ教の超正統派が多数居住するブネイ・ブラクを含む人口密集地帯でコロナウイルス感染が拡大し、最初のロックダウンが課され、その後、5月〜6月中旬にかけては新規の感染者数が激減したものの、再び、感染が増え始め、7月中旬ごろから高止まりを続け、9月に入って、感染拡大が加速している。9月14日には、一日で過去最大の4764人の新規感染が確認された。
https://www.bbc.com/news/world-middle-east-54134869
(参考1)イスラエルの新型コロナ感染状況
9月15日3:12(GMT)現在の中東諸国の感染状況の中のイスラエルの位置づけは次のとおり。
世界全体12位 イラン    感染者数404648 死者23313
同   16位 サウジ   感染者数326258 死者4305
同   18位 イラク    感染者数294478 死者8086
同   19位 トルコ    感染者数292878 死者7119
同   24位 イスラエル  感染者数160368 死者1136
感染者数を人口100万人あたりで比較すると次のとおり。
@ イスラエル 17436
A サウジ   9342
B イラク    7289
C イラン    4805
D トルコ    3465
https://www.worldometers.info/coronavirus/#countries
(参考2)イスラエルにおける二度目の新型コロナ感染抑制のためのロックダウンの閣議承認
内閣は、13日夜、イスラエルにおけるコロナウイルス感染抑制のための計画について、保健省とMagen Yisrael所長のRonni Gamzu教授の勧告を承認した。
第一段階
2020年9月18日(金)14:00から2020年10月11日まで有効であり、ロックダウンの開始から2週間後に感染状況の評価と、内閣による承認が行われる。
取るべきステップ:
1.公衆を相手にするのではなく、必須のサービスを提供しているビジネスは、財務省が提示する概要に従って事業を継続することができる。
保健大臣、首相官邸官房長、および首相代行室官房長(政府省庁の仕事に関して人事院、地方自治体に関して内務大臣とも)と連携して、財務大臣は、職場(公共部門と民間部門)でのプレゼンスの制限と削減に関する内閣によるコロナ承認のための規則を提出する。
2.スイミングプールを含む、商業、文化、レクリエーション、国内観光の分野で公衆を受け入れるすべての企業を完全閉鎖する。ジムとレストランも同様(必須サービス、食品の販売場所、薬局、眼鏡店、または主に衛生用品を扱う店、必須の家のメンテナンス製品、通信製品、医療機器を除く)。
レストランを含むビジネスは、配達サービスの運営のみが許可される。
3.家を出るときの移動は、規則に詳細が記載されている必要がある場合を除き、500メートル以内に制限される。
4.特別教育、寄宿学校、およびコロナウイルスに対処する特別権限に関する法律に詳述されている追加の例外を除いて、教育システムを閉鎖する (可能な限りリモート学習が有効になる。)。
5.集まり制限について、「信号機」モデルの赤色による集まりの制限として、閉じた空間で最大10人、空き領域で最大20人まで
第二ステージ(省略)
https://www.gov.il/en/departments/news/spoke_magen130920

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イスラエルとの国交正常化署名式でのUAE代表者はなぜMBZ皇太子でないのか[2020年09月14日(Mon)]
9月15日にワシントンDCのホワイトハウスで実施されるUAEとイスラエルとの国交正常化合意署名式に出席するため、イスラエルからネタニヤフ首相一行が、UAEからアブドッラー外相一行が訪米の途に就いた。アブドッラー外相はハリーファ大統領の代行として、署名式に出席することになったが、UAEの実質的支配者で、イスラエルとの国交正常化を決断したムハンマド・ビン・ザーイド(通称MBZ)アブダビ皇太子は、出席を見合わせている。

(参考)アブドッラーUAE外相のワシントンDC到着(9月13日、UAE国営通信WAM)
シェイク・ハリーファ・ビン・ザーイド・アルナヒヤーン大統領を代行し、トランプ米大統領の招待により、シェイク・アブドッラー・ビン・ザーイド・アルナヒヤーン外相兼国際協力相が9月15日にイスラエル首相のベンジャミン・ネタニヤフの前で歴史的なアラブ首長国連邦とイスラエルの和平合意の調印式に参加するためにアラブ首長国連邦代表団を率いて、ワシントンDCに到着した。

高いレベルの代表団は、Abdullah bin Touq Al Marri経済相、 Obaid bin Humaid Al Tayer財務担当相。 Reem bint Ibrahim Al Hashemy国際協力担当相、Dr. Sultan bin Ahmed Al Jaber産業・高度技術相。Ali Said Matar Al Neyadi連邦税関庁長官、ユーセフ・オタイバ駐米大使らで構成されている。
https://www.wam.ae/en/details/1395302869602

(コメント)本来ならば、今回のUAE・イスラエル国交正常化合意の立役者であるMBZアブダビ皇太子が、ワシントンDCの署名式典にUAEを代表して出席するのが合理的であり、トランプ大統領もそれを期待していたと思われる。なぜ、MBZ皇太子は、自ら署名式に出席せず、アブドッラー外相をワシントンDCに送り込んだのであろうか。前例をみてみたい。
@ 1979年3月26日 エジプト・イスラエル和平合意署名式(於:ワシントンDC)
●カーター大統領仲介の下、サダト大統領とベギン首相が出席
A 1994年7月25日 ヨルダン・イスラエル間の戦争状態終結を宣言する「ワシントン宣言」署名式(於:ワシントンDC)。
●フセイン国王とラビン首相が両国の戦争状態終結を宣言する「ワシントン宣言」に署名。追って、同年10月26日にイスラエルとヨルダンはイスラエル南部エイラートの北、ヨルダン国境付近のアラバの谷で開催された式典で、平和条約に署名した。ラビン首相とマジャリ首相がクリントン大統領立ち合いの下、調印し、イスラエルのヴァイツマン大統領とフセイン国王が握手を交わした。
B 1993年9月13日 暫定自治に関する原則合意(いわゆるオスロ合意)署名式(於:ワシントンDC)
●クリントン大統領仲介の下、アラファトPLO議長とラビン首相が立会し、マフムード・アッバース(現在のパレスチナ暫定自治政府大統領)とペレス外相が署名。

2019年11月6日、UAEの国家元首である大統領として、7首長国の首長により構成される連邦最高評議会は、ハリーファ・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン大統領を再任した。任期は2024年までの5年間である。副大統領兼首相は、ドバイのムハンマド・ビン・ラーシド(MBR)・アルマクトゥームであるが、MBZアブダビ皇太子が、2014年1月脳卒中で倒れた兄のハリーファ大統領に代わってUAEの事実上の支配者となっている。ネタニヤフ首相のカウンターパートは、外相ではなく、MBR副大統領兼首相ということになるが、MBRは訪米しないため、国交正常化合意の署名自体は、両国外相が行い、ネタニヤフ首相が見守るという形をとるのか、あるいは、ハリーファ大統領の代行としてのアブドッラー外相とネタニヤフ首相が署名するのかは、はっきりしないものの、MBZ皇太子が、署名式の場に立ち会わないということは、やはり違和感がある。そもそも病気で倒れたハリーファ大統領は、国政の運営を全面的にMBZ皇太子に任せており、2019年11月にさらに任期5年の大統領職を務めることに不自然さを感じるが、MBZとしては、部族社会であるUAEでは、兄を立てつつ、兄の大統領の名のもとに、UAEでの政治・財政の実権を握り、自らの政策を押し通すとのしたたかさが感じられる。今回のイスラエルとの合意は、形式的には、MBZアブダビ皇太子ではなく、ハリーファ大統領が決定したということになる。

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米中央軍司令官によるイラク国内の民兵組織から駐留米軍への攻撃の評価[2020年09月13日(Sun)]
9月9日マッケンジー米中央軍司令官は、米国が9月末までにイラクでの駐留米軍の規模を現在の5200から約3000名に削減すると発表したのち、米国のNBCのインタビューに答えて、本年前半に発生している米軍基地や周辺に対する間接的攻撃の頻度は増えているものの、それは致命的ではなく、米軍のレッドラインを越えない攻撃を継続することで、米軍のイラク退去という別の目的を達成しようとしているのであろうが、その目的は達成される見通しはなく、イラク政府は、米国との協力で自国のセキュリティを確保しようとしている、一連の攻撃はたとえイランが直接命令したものでないにしても、イラン製の武器が使用されており、イランは倫理的な責任を負っていると警告した。
(参考)米中央軍司令官のフランクマッケンジー准将のNBCとのインタビュー主要点
●本年前半は昨年の前半よりも基地周辺および基地に対する間接的な攻撃が多かった。これらの攻撃の頻度は増加している。それらの攻撃は特に致命的であったわけではなく、それは良いことであるが、彼らの攻撃は継続している。(致命的ではない理由を尋ねられ)彼らは我々に打撃を与えようとはしていない。 (イラク国内の米軍基地への)攻撃の頻度は2019年を超えて増加しているが、各攻撃のロケットの総数は概して低い。 2019年、民兵グループは攻撃で数十個のロケットを発射することがよくあったが、今年のほとんどの攻撃には一度に数個のロケットしか含まれていない。
●我々は、彼ら(民兵グループ)が非常に優れた兵器システムを持っていることを承知している。彼らは効果の大きい兵器システムを採用していない。彼らは所持している他のいくつかの兵器システムほど洗練されていない107 mmロケットや迫撃砲のようなものを採用している。どんな理由であれ、それは仕様によるものかもしれないが、彼らの攻撃はさほど成功していない。そしてそれは祝福されるべきである。
イランの目標は米国にこの地域を強制的に去らせることだ。 彼らはイラク政府に影響を与えて米国人が立ち去るよう頼むことを含め、今年政治的な目標を追求してきた。 しかし、現在、少なくとも私からみれば、その解決策が彼らのために生じないことは明らかであり、イラク政府は、合衆国のパートナーであるNATOとともに、米国との長期的な安全保障関係を維持することの利点を理解している 、それが大規模なものになるという意味ではないが、彼ら(イラク政府)との良好なセキュリティ関係を維持するつもりである。
●今、イランは、彼らのために機能しなかったこの政治的目標追及を継続するのか、それとも他のものにシフトしてそれらがどのように機能するのかを見極めるのかを決定する必要がある。その答えは時間が明らかにするが、我々はそれに備える必要がある。
●米軍は、イランが米国を強制的に域外に追い出そうとする場合に備えて、パトリオットミサイル防衛システムなどの追加の防御機能を導入した。我々は、我々の軍隊を守るために必要とするべきことを実行した。
●イランは、米国がレッドラインと考えるものよりも低いレベルの痛みを負わせることで、他の目的を追求できると考えているのだろうが、我々のレッドラインがどこにあるかについて彼らが理解しているとは思わないので、それは非常に危険である。 彼らは彼らがイラクでロケットとミサイルで我々を攻撃し続けることができ、我々が反撃するとは信じていないかもしれないが、彼らがそう信じるのは非常に危険なことである。
●対応の決定は軍事的決定ではないものの、ここでの危険は、イランが、彼らがしていることのいくつかがどれほど挑発的であり得るかを理解しないということである。
●イラク人の能力向上の結果、米軍はすべての作戦に同行するのではなく、彼らを指導し、より高いレベルで彼らと対話することができるようになった。
●米軍駐留基地の数を減らすことで、米軍が「攻撃面」を減らしたり、標的の数を減らしたりして、悪意のある民兵グループからより適切に守ることができる。
●最近の攻撃はさまざまな民兵組織によって行われており、誰もが直接イランに結びつけられるわけではないが、イランは依然としていくばくかの責任を負っている。イランがどれくらい指示を出しているのか、十分な指揮権と統制を持たない地上の代理人にどれだけ指示しているのかと疑問に思うかもしれないが、最終的に、イランから直接指示が出されていなくても、彼ら(民兵グループ)はプロセスのある時点でイランから通常提供された武器を使用しているため、イランが指示したわけでなくとも、これら(の攻撃)には一定の倫理的責任を負っている。
●(米国がこれらの攻撃に対応するかどうかについて)米国は、イラクにおける米軍の保護に必要なあらゆる措置を講じると考えている。
https://www.nbcnews.com/news/military/attacks-u-s-troops-iraq-have-increased-says-u-s-n1239863
https://blog.canpan.info/meis/daily/202009/10
(コメント) 8月20日のカーディミ・イラク首相訪米の際のイラク・米共同声明では、米軍の撤退に関する言及はなく、記者会見で、トランプ大統領は、駐留米軍の規模は非常に小さくなっているとし、一方、カーディミ首相も、訓練や能力強化の面では引き続き、米政府組織の能力強化への期待を表明した。今回のマッケンジー米中央軍司令官のNBCとのインタビューでの発言の注目点は、@(親イラン系の)民兵グループの米軍が駐屯する基地やその周辺への間接的な攻撃の頻度は、本年前半増えている、Aしかし、それらの攻撃は致命的ではない、Bしかし、攻撃は継続しており、その目的は米軍自体に打撃を与えるというより、米軍のイラク撤退を促すことに目標が置かれているようにみえる、C直接的な打撃を与えないことで、米軍のレッドラインを越えないと考えているとみられるが、それは大きな誤算である、Dイランが、民兵グループに直接指示したものではないにしても、イラン製の武器が使用されており、イランは(攻撃に対する)倫理的な責任を負っている、Eイラクの治安部隊が育ってきており、必ずしも米軍がすべての作戦に同行する必要はなくなっている、Fイラク政府は、米国とのセキュリティ面での協力の継続を望んでおり、駐留米軍の規模は大きすぎることはないが、イラクに留まることになる、という点である。この発言を通して、イラク駐留米軍を退去させようとのイランと親イラン系グループの目的は達せられることはなく、カーディミ政権は、米軍にイラク軍の治安維持の能力強化を期待しており、米軍が直接民兵グループに反撃を行うのではなくとも、政権側の治安部隊が、米軍からの情報と装備の支援を得て、民兵グループに対応することがあるとの示唆である。

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イスラエルとバーレーンの国交正常化に向けた合意発表[2020年09月12日(Sat)]
9月11日、トランプ大統領は、8月13日のイスラエルとアラブ首長国連邦(UAE)の国交正常化に向けた合意に続いて、イスラエルとバーレーンが国交正常化の合意に達したと発表した。今週、オンラインで開催されたアラブ連盟外相会議で、イスラエルとUAEの国交正常化合意を非難する決議を提出しようとしたパレスチナ代表団に対して、バーレーンをはじめとする一部のアラブ諸国は、パレスチナ提案を拒否し、アラブ連盟は、イスラエルとUAEの正常化合意を非難できなかった。9月15日、イスラエルとUAEの和平署名式がホワイトハウスで実施される見通しとなっており、バーレーンとイスラエルとの和平は、過去のしがらみを断ち切って、イスラエルとの和平に前進するのは、UAEだけではないとアピールし、トランプ大統領が大きな外交的成果を達成したと誇示する狙いがあるとみられる。

(参考1) ホワイトハウス記者発表「イスラエルとバーレーン王国の歴史的な取引を仲介して」

●氷が砕けた今、私はもっと多くのアラブ諸国とイスラム諸国がアラブ首長国連邦の前例に従うと予想している。ドナルドJ.トランプ大統領(9月11日)

1.もう1つの歴史的合意の確保:ドナルドJ.トランプ大統領は、バーレーンとイスラエルの間の完全な外交関係を確立する取引を仲介した。イスラエルとアラブ諸国の間で1か月足らずで2番目の合意である。イスラエルとバーレーンは、大使館と大使の交換を開始し、両国間の直行便を開始し、幅広い分野にわたる協力イニシアチブを立ち上げることを約束した。この和平合意は、イスラエルとバーレーンの両方にとって重要な前進である。それは彼らの経済的結びつきを深めるための機会を生み出す一方で、彼らの安全をさらに強化する。この取引は、イスラエルとアラブ首長国連邦の間の歴史的な国交正常化合意に続くものである。アラブ首長国連邦とバーレーンは、25年以上の間にイスラエルとの関係を正常化した最初のアラブ諸国である。米国は、バーレーンの人々がテロと過激主義に対抗し、経済的に発展し、地域全体で新たな平和的なパートナーシップを構築するよう努力する間、引き続き支援していく。

2.平和のための条件の作成:トランプ大統領の賢明な外交政策戦略は、イスラエルと隣国との間の平和のための条件を作り出した。トランプ大統領が就任したとき、中東は極度の混乱の状態にあった。トランプ大統領は、地域のパートナーとの信頼関係を再構築し、彼らの共通の利益を特定して、過去の対立から彼らを遠ざけるように努めてきた。大統領の大胆な外交ビジョンと取引仲介者としての洞察力のおかげで、地域全体の国々が彼の思慮深いアプローチのメリットを実感している。大統領の取り組みが継続するにつれ、より多くのアラブ諸国とイスラム諸国がイスラエルとの関係を正常化しようとするだろう。関係を正常化する各国は、お互いを基盤として、地域とそこに住む人々に平和と繁栄をもたらすであろう。

3.先例のない地域変革:数十年にわたる不安定さと危機の後、中東とアフリカの国々は、より平和で繁栄した未来を築くためにますます協力している。トランプ大統領のリーダーシップのおかげで、アラブ世界は一世代以上で最も急速な地政学的な変化を経験している。イスラエルとの関係を正常化する国が増えるにつれ、この地域の安定、安全、繁栄が進んでいる。各経済間のビジネス・金融関係の拡大により、地域全体の成長と経済的機会が加速する。バーレーンおよびアラブ首長国連邦との合意は、イスラエルとパレスチナ人との間の公正で永続的な平和を見出すためのトランプ大統領のビジョンを前進させるのにも役立つ。米国は、地域の人々と共に、より明るく希望に満ちた未来を築くために尽力し続ける。
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/president-donald-j-trump-brokered-historic-deal-israel-kingdom-bahrain/

(参考2)トランプ大統領のイスラエル・バーレーン合意に際しての記者会見注目点(9月11日)
(1)トランプ大統領:平和と協力の精神で、バーレーンとイスラエルの両首脳は、両国の外交関係を完全に正常化することに同意した。 彼らは大使館や大使を交換し、両国間の直行便を開始し、保健、ビジネス、技術、教育、安全保障、農業を含む幅広い分野にわたる協力イニシアチブを立ち上げる。 今日は本当に歴史的な日である。過去72年間にイスラエルと2つの和平協定が結ばれている。 これは、先月発表の(イスラエル・UAE合意から)2番目の和平協定であり、今後さらに続くことが期待されている。 他の国も参加するために多大な熱意を抱いていると言える。 そして、最終的には、ほとんどの国が参加し、パレスチナ人は非常に良い立場におかれるであろう。 彼らは参加したいと思っている。彼らの友人たち全員が参加しているので、彼らは参加したいと思っている。私たちは取引に参加することに途方もない熱意を持っている。中東では、誰も考えることすらできないと思っていたことが起こっている。それが現在起こっていることである。 バーレーンはイスラエルとアラブ首長国連邦に加わることに同意した。ところで、私は9月15日のホワイトハウスで偉大な指導者、本当に偉大な指導者であるムハンマド・ビン・ザーイド(アブダビ皇太子)に感謝したいと思う。 であるから、彼らは15日にここに来て、アブラハム合意に署名する。
(2)クシュナー上級顧問:これは、大統領がこれまでにこだわってきた戦略であり、このファイルをこの数年間にわたって処理するために大統領が私に信頼と自信を与えてくれたことに感謝したい。そして、私たちが達成した結果は、誰の期待も超えていた。そして、これからはまだまだ(結果がもたらされる)と考えている。先週この中東地域から帰ってきたところである。私は中東にいて、イスラエルからアラブ首長国連邦への初めての商用便に搭乗した。その飛行はサウジアラビア空域を飛行した。サウジアラビアがイスラエルから商業便を往復できるように空域を開放したのは、72年ぶりのことである。バーレーンも同じ措置をとった。アラブ首長国連邦はイスラエルに対する48年間のボイコットを放棄したが、これは驚くべき発展であった。そして今、中東全域を行き来する代表団があり、人々をより近づける方法を考え出している。
https://www.whitehouse.gov/briefings-statements/remarks-president-trump-announcement-normalization-relations-israel-kingdom-bahrain/

(コメント)バーレーンは、スンニー派のハリーファ家が支配する小さな王国であるが、シーア派住民が約6割を占めており、バーレーン指導部は、スンニー派の大国サウジの傘に入ることによって、政権の安定を維持してきている。島には、米国の第五艦隊司令部も置かれ、ペルシャ湾の航行の安全をにらむ前線基地ともなっている。2011年のアラブの春では、バーレーンの首都マナーマの真珠広場を反体制派が占拠して座り込みを続けたが、サウジが、バーレーン島への連絡橋を通って治安部隊を派遣し、反体制派の集団を排除した。バーレーンの政治的動きは、サウジアラビアがイスラエルとの国交正常化をはじめ、地域の問題をどのように考えて、対処していこうとしていくのかを知るアンテナ・ショップ的な機会を提供している。8月13日のUAE・イスラエル関係正常化合意をバーレーンは歓迎し、8月31日のエルアル機のテルアビブからの初飛行にサウジが領空通過を認め、さらに今後常態的にサウジ領空をイスラエル商業機に開放する方針を明らかにすると、バーレーンは直ちに、イスラエル商業機の自国の領空通過を認めると発表した。今週の外相会議でも、バーレーンは、パレスチナ外相によるイスラエル・UAE国交正常化合意非難の提案を阻止した。米大統領選挙を目前に控えて、イスラエルとアラブ諸国の関係正常化は、UAEだけでなく、他のアラブ諸国もその輪に加わろうとしていることを、トランプ政権が過去3年間の外交的成果としてアピールできるようにするためにも、サウジのムハンマド・ビン・サルマン(MBS)皇太子がクシュナー上級顧問らと相談し、バーレーンにイスラエルとの国交正常化にゴーサインを出したことは間違いないとみられる。イスラムの2聖地を抱えるサウジは、2002年3月28日にベイルートのアラブ首脳会議で当時のアブドッラー・サウジ皇太子が、「領土と平和の交換」の原則を打ち上げ、イスラエルによる占領地の引き渡しと交換にアラブ諸国がイスラエルとの関係を正常化するとして、アラブ諸国の了解を取り付けたにもかかわらず、パレスチナの領土は返還されず、一時的な併合停止をもって、イスラエルとの関係正常化に突き進めば、自国の外交イニシアティブを真っ向から否定することになる。そのため、サウジは今回、国交正常化の一歩手前で踏みとどまったが、今週のアラブ連盟外相会議で、アラブ諸国がUAEの行動を非難する決議を発出できなかったというは、アラブ諸国は、2002年のアラブ和平プランにもはや拘束されないと宣言したに等しく、アラブ・イスラエル紛争の構図を通じて、結束を図ってきたアラブ連盟は、その歴史的な役割を閉じようとしている。トランプ大統領は、パレスチナ人の友人たちが次から次にイスラエルと関係を正常化し、パレスチナ人自身もその輪に加わることになると発言し、パレスチナ人は、米・イスラエル・サウジ・UAE等が進めようとしている新和平プラン「世紀の取引」に結局は、縋りつくしかないとの見通しを示している。

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7月2日のイランのナタンツ・ウラン濃縮施設での火災(その後の展開)[2020年09月11日(Fri)]
イランは、7月2日のイランのナタンツ・ウラン濃縮施設で発生した火災の原因は破壊活動であり、その工作員をほぼ特定していると述べるとともに、ナタンツ近郊でより近代的で大規模な濃縮施設の建設にとりかかったと発表した。

●9月6日、ベフローズ・カマルヴァンディ(Behrouz Kamalvandi)イラン原子力庁スポークスマンは、イランのセキュリティ機関は7月2日の事件を綿密に調査する必要があり、この点に関して彼らは最終的な見解を発出することが期待されている。彼らの調査は進行中であり、我々の知る限り、彼らは妨害行為の動機、方法、および振る舞いだけでなく、妨害行為を犯したエージェントを把握したと述べた。
●9月8日、アリー・アクバル・サーレヒ原子力庁長官は、「妨害行為のため、ナタンツ近くの山の中心部に、より近代的でより大きくより包括的なホールを建設することを決定した。 既に、作業は始まった」と国営テレビで発言した。ナタンズはイランのウラン濃縮プログラムの中心的存在であり、イランは、濃縮は平和的な目的のためであると述べている。
https://sputniknews.com/us/202009091080414387-iran-begins-construction-on-advanced-centrifuge-production-hall-near-natanz-nuke-site/
https://parstoday.com/en/news/iran-i126345-iran_identifies_perpetrators_of_sabotage_at_natanz_nuclear_facility_aeoi_spokesman

Posted by 八木 at 11:54 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

米軍のイラクからの部分撤退発表[2020年09月10日(Thu)]
本年1月3日、イランのソレイマニIRGCコッズ部隊司令官ならびにイラクのアルムハンディス人民動員勢力(PMF)副司令官が米軍のドローン攻撃で殺害されたあと、イラク議会は、米軍のイラクからの撤退を決議した。8月20日の米国でのカーディミ首相のトランプ大統領との会談直後の8月23日、米軍は、バグダッド北方のタージ基地をイラク軍に明け渡し、カーディミ首相は、訪米の際には米・イラク共同声明には盛られなかったものの、米軍のイラクからの撤退に真摯に取り組んでいる姿勢を内外にアピールした。9月9日には、米中央軍が、イラク駐留米軍の規模を現在の5200から3000に縮小すると発表した。一方、親イラン系民兵組織は、カーディミ首相が米軍の撤退の見通しを取り付けられなかったばかりか、今後、イラク治安部隊が米軍の支援を受け続けることになるとみられることに反発が広がっている。

(参考1)フランク・マッケンジー将軍(米中央軍)のイラクでの演説からの抜粋
(2020年9月9日)
●今後は、イラクとシリアのパートナーと協力してISIS根絶の作業を継続する必要がある。イラク軍の能力を高め、我々のイラクでの駐留数を減らすことができるパートナー能力強化プログラムを引き続き拡大していく所存。イラク軍が大きく前進したことを認識し、イラク政府および連合軍パートナーとの協議および調整のもと、米国は、9月中に、イラクにおける部隊の駐留を約5,200人から3,000人に減らすことを決定した。この削減された部隊により、イラクでのISISの最後の残党を根絶し、その永続的な敗北を確実にするために、イラクのパートナーに引き続き助言および支援することができる。この決定は、イラク治安部隊が独立して活動する能力の向上に対する我々の信頼に基づくものである。米国の決定は、イラク治安部隊がISISの復活を防ぎ、外部からの支援なしにイラクの主権を確保することができるようになるとの究極の目標への我々の継続的な取り組みの明確な証明である。行程は困難であり、犠牲は多大であったが、進歩は著しかった。使命は重要であり、まだやらなければならないことがたくさんある。
https://www.centcom.mil/MEDIA/STATEMENTS/Statements-View/Article/2340570/excerpt-from-gen-frank-mckenzies-speech-in-iraq/

(参考2)イラク駐留米軍および有志連合参加軍の撤退(アルジャジーラ放送による)
●9月9日、米中央軍は、イラク駐留米軍の規模を9月中に現在の5200から3000に削減する意向を表明。独軍も現在の700名から500名に人員を削減する予定。独軍によれば、イラク国防省は、引き続き、独軍からイラク国防軍への訓練の継続を希望しているとのこと。
(これまでの有志連合部隊撤退のタイムライン)
3月19日 アンバール県アルカイム基地からの米軍の撤退
3月26日 ニナーワ県アルカイヤーラ基地からの米軍の撤退
3月29日 キルクーク県K1基地からの米軍の撤退
3月30日 モスル市ウスール駐屯基地からの米軍の撤退
4月04日 アンバール県タカッドム基地からの米軍の撤退
4月07日 バグダッド国際空港第3部隊駐屯地からの仏軍の撤退
6月25日 バグダッド近郊のイシーアナ基地からのスペイン軍の撤退
8月23日 バグダッド北方タージ基地からの米軍の撤退

(コメント)
8月下旬までの過去10か月間に、特にグリーンゾーンと米軍基地で、イラク国内の米国の権益が32回攻撃されている。8月20日のホワイトハウスにおけるカーディミ首相とトランプ大統領の会談では、本年1月イラク議会で可決された米軍撤退スケジュールは示されず、むしろ、米軍は規模を縮小してイラクに留まる見通しが強まった。米軍撤退を取り付けることができなかったカーディミ首相は、帰国直後の8月23日米軍のタージ軍事基地からの撤退をもって、自身が撤退問題に真摯に取り組んでいるとの姿勢を内外にアピールした。しかし、イラン、および親イラン系民兵組織は、ガーニーIRGCコッズ部隊司令官らがカーディミ訪米前に米軍撤退の約束を取り付けるよう念押ししたにもかかわらず、カーディミ首相が具体的な見通しを取り付けられないばかりか、米軍がイラクに留まり続けることに反発し、カーディミ首相の帰国後、米軍向けの物資輸送車などの被害が相次いでいる。米国は米軍駐留継続の理由として、イラク軍のISISの残党掃討の能力を高めることを挙げ、カーディミ首相も先の訪米で、訓練や情報面での協力を米側に求めたとみられているが、親イラン系民兵組織は、カーディミ首相が、米軍と協力して、ISISのみならず、米国の権益を攻撃しているとして親イラン系組織を標的にするとみており、首相サイドと親イラン系組織との摩擦が拡大する傾向にある。

Posted by 八木 at 10:18 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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