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イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

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本年のイスラム暦1月10日のアシューラ(8月29日)[2020年08月31日(Mon)]
イスラム暦の最初の月であるムハッラムの10日目にあたるアシューラは、すべてのイスラム教徒によって特別の日と記憶されている。
それは、ノアが箱舟を離れた日とモーセが神によってエジプトのファラオから救われた日と一致する。預言者ムハンマドは、マディーナでアシューラの断食を行い、それが初期のイスラム教徒にとって共通の習慣になった。今年のアシューラは、8月29日に実施された。
しかし、シーア派にとっては、西暦680年のカルバラの戦いで亡くなった預言者ムハンマドの孫であるフサイン・イブン・アリーの殉教を記念する重要な宗教行事でもある。それ以来毎年、多くのシーア派がアシューラを、イマーム・アルフサインの霊廟に巡礼を行っている。
スンニー派イスラム教徒は、自発的な断食を通してその日を祝う。
今年、コロナウイルスのパンデミックが激しさを増しているため、イラン政府と保健当局は厳格な健康ガイドラインでアシューラを祝うよう人々に警告した。8月初めにイランのサイード・ナマキー保健大臣への書簡で、イラン精神医学会は、ムハッラムのアシューラの集会、特に共同の追悼式典の完全な禁止を要請した。レバノンのヒズボラ・リーダーであるナスラッラー師は、信者に公共のアシューラ集会を一時停止するように求めた。その結果、シーア派教徒は、社会的距離を保つ形で、アシューラの行を行った。
(参考1)ムハンマドの断食開始
イブンアッバースは、次のように述べている。「預言者がマディーナにやって来て、ユダヤ人がアシューラの日に断食しているのを目撃した。 これは何か」と彼は尋ねた。 ユダヤ人らは言った、「これは正しい日であり、アッラーがイスラエルの民を敵から救った日であり、それでモーセはこの日断食した。 彼らは、私たちにはあなた(預言者)よりもモーセの権利がある、と言ったので、彼(預言者)はその日断食し、ムスリムにその日に断食するように命じた。」 [ブハーリ]
(参考2)カルバラの悲劇
•フサインが率いていたのは、女性・子どもを含め、わずか数十名であった。それを4000名のウマイヤ軍が包囲した。戦闘になる前の3日間、水の補給が断たれ、全員がのどの渇きに苦しんだ。戦闘当日、フサインがのどの渇きに苦しむ赤子を抱け上げた時、飛んできた矢が赤子を刺殺した。戦闘は、イスラム暦1月10日の朝から始まり、日没の少し前に終わった。ウマイヤ軍は、最後にフサインを殺害し、首を切り取り、遺体を放置したまま、女性・子どもを捕虜にした。ウマイヤ軍が槍の穂先に掲げた首級は全部で72あったとされる。
•捕虜になったフサインの妹は、「預言者ムハンマドの死後、わずか50年にして、彼の最愛の孫が、ムスリムによって惨殺されるとは」と嘆いたとされる。
•宗教的な理念としてのシーア派は、カルバラーの事件を境に誕生したといっても差し支えない。フサインの死を防げなかったクーファの支持者たちは、自分たちの無力さを嘆き、沈黙していた卑怯さを自ら責めた。その慚愧の念が、シーア派的信条の基礎を構築する。クーファの民は、自ら「悔悟する者たち(タウワーブーン)」と名乗り、宣教を開始した。その内容がやがて、シーア派信条として確立していく。
https://www.aljazeera.com/news/middleeast/2020/08/ashoura-day-muslims-fast-mourn-muharram-200825143119399.html
(本年のアシューラの行事の写真)https://www.middleeasteye.net/news/coronavirus-ashura-shia-worshippers-amidst-pandemic

Posted by 八木 at 15:31 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

イスラエルとの正常化の列車を待つアラブ4か国[2020年08月17日(Mon)]
8月16日付アルジャジーラ・オンライン記事(アラビア語版)は、ネタニヤフ首相が、今回のUAEとの国交正常化合意は、「領土と平和の交換の原則」の終焉であると発言。また、コーエン・イスラエル情報相は、今後のイスラエルとの国交正常化が期待される国として、サウジ、バーレーン、オマーン、およびスーダンを挙げた。

1.ネタニヤフ首相は16日のテレビ・スピーチで、これは26年ぶりのイスラエルとアラブ国家間の和平合意であり、「平和のための平和」と「強さによる平和」という2つの原則に依存しているという点で、これまでの原則と異なる、この原則によれば、イスラエルはいかなる土地からも撤退する必要はなく両国は投資、貿易、観光、エネルギー、健康、農業、環境、およびセキュリティを含む他のすべての分野において、完全で開かれた平和の果実を共に享受することになる、「撤退」と「弱さ」に基づいて平和を達成する可能性への信念は消え去り、真の平和を構築する別の信念に取って代わられた、と発言した。
2.イスラエルのラジオは、モサドのヨシーコーエン長官が16日夜アラブ首長国連邦に向かい、アブダビの皇太子、シェイク・ムハンマド・ビン・ザーイドに会い、両国関係正常化合意の最終的な詰めを行うことを確認した。
3. 英国のインディペンデント紙は、アラブ首長国連邦が西岸の一部の併合を停止するというイスラエルからの保証を得ていないとUAE外務省のオマル・ゴバシュ補佐官が、イスラエルとの正常化関係に関連する条件は存在せず、(合意に対するパレスチナの批判に応えて)UAEは独立国家であり、イスラエルとの関係の性質を決定するのはパレスチナ人ではないはコメントしたと報道。
4. エリー・コーエン・イスラエル情報相は16日、イスラエル陸軍ラジオへの声明で、他の湾岸諸国およびアフリカのイスラム諸国と他の正常化合意が締結される、バーレーンとオマーンは間違いなくリストに上がっており、さらに、私の見方では、アフリカの他の国々、特にスーダンとの平和協定の機会が来年やってくるであろう。
5. 米国の「NBC」チャンネルへのインタビューでロバート・オブライエン米国国家安全保障アドバイザーは、正常化にむけての最大の目標はサウジアラビアであり、サルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン皇太子がこの成果を達成することを期待しており、それがサウジアラビアとアラブ人、イスラム教徒にとって素晴らしいことになることを理解してほしいと語った。
(コメント)2002年のアラブ首脳会議で、当時のアブドッラー・サウジ皇太子のイニシアティブで、アラブ諸国のイスラエルとの和平の条件として、「領土と平和の交換」の原則が打ち出された。すなわち、イスラエルが占領地から撤退するのと引き換えに、アラブ諸国は、イスラエルと国交を正常化するとの原則である。ネタニヤフ首相は、今回のUAEとの和平により、イスラエルは何もアラブ側に譲歩することなく、和平を勝ち取ったとして、「領土と平和の交換の原則」の終焉を宣言した。UAEは公然とこの原則にもはや縛られないことを宣言し、バーレーンやオマーンは、UAEとイスラエルとの国交正常化合意を歓迎しており、UAEに続く可能性が高い。問題は、サウジである。当時ファハド国王に替わって、実質的サウジの指導者であったアブドッラー皇太子がイニシアティブをとり、アラブ諸国がすべて賛同した原則を、現サウジ指導部が無視できるのかが今後の注目点である。大統領選挙を控えるトランプ大統領としては、外交の成果をアピールするうえで、ぜひともサウジとイスラエルの関係正常化という歴史的合意をもたらしたと国民にアピールしたいところであるが、イスラエル側も繰り返し述べているようにヨルダン渓谷を含む西岸の入植地の一部併合の凍結は、あくまで、一時的なものであり、「領土」に関して、何の得点もないまま、MBS皇太子がサウジのアラブ和平提案を自ら壊すことを実行するのか、それをアラブ諸国民が認めるのか、非常に機微な状況にあるとみられる。なお、オマーンは、2018年10月ネタニヤフ首相夫妻が、オマーンを訪問し、当時のカブース国王と会談しており、バーレーンは、2019年米国の「世紀の取引」の経済版のワークショップをホストしており、イスラエルと国交正常化合意を結んでも驚きではない。また、スーダンは、イエメンにおけるサウジ主導のアラブ連合軍に地上軍を派遣しており、サウジ・UAEの働きかけがあれば、イスラエルとの和平に進む可能性は十分存在する。一方、パレスチナ側は、今回の合意は「背中から刺された」と同じアラブ諸国の裏切り行為と考えており、西岸では、ムハンマド・ビン・ザーイド皇太子が裏切り者として、皇太子の写真が燃やされ、糾弾されている。
https://www.rt.com/news/498143-west-bank-uae-israel/
https://www.aljazeera.net/news/politics/2020/8/16/%D8%A7%D9%84%D8%AA%D8%B7%D8%A8%D9%8A%D8%B9-%D8%A7%D9%84%D8%A5%D9%85%D8%A7%D8%B1%D8%A7%D8%AA-%D8%A5%D8%B3%D8%B1%D8%A7%D8%A6%D9%8A%D9%84

Posted by 八木 at 08:27 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

イスラエルとUAEのアブラハム合意[2020年08月14日(Fri)]
8月13日、トランプ大統領は、イスラエルとUAEが両国関係の完全な正常化に合意したと発表した。アラブ諸国のイスラエルとの関係正常化は、1979年のエジプト、1994年のヨルダンに続いて、アラブ諸国では3番目で、湾岸アラブ諸国では先陣を切ることになる。トランプ政権は、今回の合意を、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教共通の一神教の祖とされるアブラハム(アラブ名ではイブラヒーム)に因んで、「アブラハム合意」と名付けられるべきとコメントした。今後2-3週間のうちに、トランプ大統領が両国首脳を米国に招いて、和平合意式典を大々的に行うことになる見通し。イスラエルとUAEの関係正常化は、トランプ大統領にとって大統領選挙前の最大の外交的得点になると考えている。パレスチナ側は、裏切り行為であるとして激しく反発している。
(参考)米、イスラエル、UAE共同声明(2020年8月13日)
本日、ドナルド・J・トランプ大統領、イスラエルのベンジャミン・ネタニヤフ首相、アブダビの皇太子であり国軍の最高副司令官であるシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン殿下がスピーチし、イスラエルとアラブ首長国連邦の関係の完全な正常化に合意した。
この歴史的な外交の突破口は、中東地域の平和を前進させ、3人の指導者の大胆な外交とビジョン、そしてアラブ首長国連邦とイスラエルの勇気がこの地域の大きな可能性を解き放つことを示す証である。 3か国すべてが多くの共通の課題に直面しており、今日の歴史的な成果から相互に利益をもたらす。
イスラエルとアラブ首長国連邦からの代表団は、投資、観光、直行便、セキュリティ、通信、技術、エネルギー、医療、文化、環境、大使館の相互設置、およびその他の相互の利益に資する分野に関する二国間協定に署名するために今後数週間のうちに会合する。 中東の最もダイナミックな2つの社会と先進経済の間に直接的なつながりを開くことは、経済成長を加速し、技術革新を強化し、人と人とのより緊密な関係を築くことによって地域を変革する。
この外交的突破の結果として、そしてアラブ首長国連邦が支持するトランプ大統領の要請により、イスラエルは、大統領の和平ビジョンで概説されている分野に対する主権宣言を一時停止し、いまや、アラブとイスラム世界他の国々との関係の拡大に努力を集中するであろう。 米国、イスラエル、アラブ首長国連邦は、他の国とのさらなる外交的突破が可能であると確信しており、この目標を達成するために協力していく。
アラブ首長国連邦とイスラエルは、コロナウイルスのワクチンの治療と開発に関する協力を直ちに拡大し、加速させる。 共同作業することでこれらの取り組みは、地域全体のイスラム教徒、ユダヤ人、キリスト教徒の命を救うのに役立つ。
この関係の正常化と平和的な外交により、米国にとって最も信頼できる2つの地域パートナーが結集することになる。 イスラエルとアラブ首長国連邦は、中東の外交、貿易、安全保障の協力を拡大するための戦略的アジェンダを立ち上げるために、米国と協力する。 米国とともに、イスラエルとアラブ首長国連邦は、地域の脅威と機会に関する同様の見解を共有し、外交的関与、経済統合の強化、安全保障の調整を通じて安定を促進するという共通のコミットメントを共有している。 本日の合意は、アラブ首長国連邦、イスラエル、そしてその地域の人々のより良い生活につながるであろう。
米国とイスラエルは、2020年1月28日に開催されたトランプ大統領が和平ビジョンを発表したホワイトハウスのレセプションにアラブ首長国連邦が登場したことを感謝の意を込めて想起し、アラブ首長国連邦による関連の支持声明に感謝の意を表明した。 締約国は、イスラエル・パレスチナ紛争への公正で包括的かつ永続的な解決策を達成するために、この点で引き続き努力する。 和平のビジョンに記載されているように、平和的に訪れるすべてのイスラム教徒はアルアクサモスクを訪れて祈ることができ、エルサレムの他の聖地はあらゆる宗教の平和的な崇拝者のために開かれたままである必要がある。
ネタニヤフ首相とシェイク・ムハンマド・ビン・ザーイド・アル・ナヒヤーン皇太子は、トランプ大統領の地域の平和への献身と、それを達成するために彼が取った現実的でユニークなアプローチに深い感謝の意を表する。
https://www.palestinechronicle.com/full-text-joint-statement-of-the-united-states-the-state-of-israel-and-the-united-arab-emirates/

Posted by 八木 at 11:21 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

サウジ皇太子に対し、米国連邦地裁は出頭を命じる[2020年08月11日(Tue)]
8月7日、サウジアラビアの実質的な指導者であるムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)皇太子に対して、暗殺の標的にされ未遂に終わったとされるサウジアラビアの元上級諜報機関員サアド・アルジャブリ(Saad al-Jabri)による訴訟の提起をうけて、コロンビア特別区連邦地方裁判所から召喚状が発行された。召喚状は、MBSがジャブリ殺害のため、カナダに暗殺団を派遣したとし非難してジャブリが訴訟を提起した翌日であった。召喚状は、訴訟の公式通知であり、被告人に向けて発行され、出廷しない場合は、被告人の不利益になる可能性が大きい。
●サウジ政府は、元上級諜報員を解任したうえ、汚職の容疑で、アルジャブリを王国に送り返すよう各国に要請し、アルジャブリの送還を求めてインターポールに国際手配を依頼していたが、インターポールはそれに応じていなかった。
●MBSに加えて12人を特定した召喚状は、被召喚者が出頭しない場合、要求された救済策に対して、欠席で裁判が行われる、と付け加えた。
●MBSはトランプ大統領とポンペイオ国務長官に、いわゆる訴追免除の公文書をを発行するよう激しく働きかけている。それは、米国の外交関係および国家元首または高官との関係に干渉するとの理由で、裁判所に訴訟を却下するよう求めている。11月(米国の選挙)がサウジアラビアにとって死活的重要性を持っており、皇太子がポンペイオ長官とトランプ大統領と話し合って、彼をこの状況から救い出すよう求めている。
●8月6日にワシントンDCの米国連邦地方裁判所に提起された106ページの訴訟状(下記URLからPDFファイルが閲覧できる)で、カナダの永住者であるサアド・アルジャブリは、ムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)皇太子がタイガー隊と呼ばれる殺し屋のグループをジャブリ殺害のため派遣したと主張した。
●彼は米国諜報機関との密接な関係と若い皇太子の活動を詳細に知っていることで、彼が標的とされたと主張している。
●ジャブリが自分の殺害を見越して残した記録ほど、ジャブリの心境と記憶以上に、被告MBSに関する機微で、屈辱的で恥ずべき情報を保持している場所はほとんど存在しない、それが被告であるMBSが、ジャブリを殺害したいと考えている理由であり、そして被告MBSは過去3年間にわたってその目的を達成するために動いてきた理由である、とジャブリは訴訟状で主張している。
●訴訟状によればMBSの「個人的傭兵グループであるタイガー隊と呼ぶメンバーは、イスタンブールのサウジアラビア領事館でのカショギの殺害からおよそ2週間後の2018年10月中旬に観光ビザでトロントのピアソン空港に到着した。
●2つのバッグの法医学ツールを持ち、犯罪現場の偽装工作を経験した法医学担当者、すなわち、骨のこぎりでカショーギを解体した法医学専門家とまったく同じ犯罪証拠部門の指揮官を含むタイガー隊被告が、観光ビザで 秘密裏にカナダに入国し、別々の入り口から入国を試みることで、カナダ国境警備の発見を回避しようとした、と主張。
●訴訟状によれば、ジャブリが標的とされたのはMBSへの反対意見を食い止めるためのキャンペーンの一環である。
●訴訟状はさらに、MBSのプライベートオフィスの責任者であり、ムハンマド・ビン・サルマン・ビン・アブドルアジーズ財団(MiSK財団としても知られている)の代表取締役であるバーデル・アルアスカル(Bader Alasaker)が、米国において被告人MBSの名声を傷つける人物を標的とする秘密のエージェントのネットワークを構築していたと指摘。
●MiSKは、MBSの慈善団体であり、サウジの若者を育成し、教育、クリエイティブおよびデジタルメディア、テクノロジー、文化、芸術のイニシアチブを通じて国の将来の経済に貢献することを目的としている。MiSKは、サウジの学生をフェローシップを通じて米国の名門大学に派遣することで知られている。
●秘密作戦に関して、訴訟状は2017年9月頃に正体不明の被告である「ジョンドー1」がマサチューセッツ州ボストンのマンダリンオリエンタルの家族向のアパートに物理的監視を行い、サアド博士の住居へのアクセスを試みたと主張している。
●訴訟状では、サウジアラビアとマルタの二重市民であるアルジャブリ氏を殺害する計画は、タイガー隊のメンバーが、さまざまな入国口を通じてカナダに入ろうとしたにもかかわらず、カナダ国境局のエージェントを説得できなかったために阻止されたと述べている。
●訴訟状は、MBSがジャブリを本国に連れ戻して殺害するために、ジャブリの2人の子供たちの拘留を命じ、彼らは3月中旬に行方不明になり、他の親類も5月に逮捕され拷問されたと主張している。但し、訴訟状の主張は現時点では証明されていない。
(参考)他の被告
@サウード・アル・カハタニ元王宮府顧問(ジャマール・カショギ殺害を指揮したとされている人物)
Aアハメド・アル・アッシーリ元総合情報庁副長官(同上)
Bバーデル・アル・アサーケル(MBSの側近で、MiSK財団代表取締役)
C米国在住のボストン大学の学生Layla Abuljadayel(ジャブリの妻に、娘に求婚者がいると主張して連絡を取ったとされている)
D米国在住のハワード大学の大学院生Youssef al Rajhi(ジャブリの息子のハーリドと知り合い、夕食の連絡を取って会い、ジャブリがどこにいるか質問)。

米国連邦地裁MBS皇太子他12名に召喚状を発行
https://www.middleeasteye.net/news/us-saudi-arabia-mbs-court-summons-saad-jabri
ジャブリ元サウジ諜報員MBSほかを提訴
https://www.aljazeera.com/news/2020/08/saudi-spy-accuses-mbs-hit-squad-attempting-kill-200806184401589.html
提訴状https://www.courtlistener.com/recap/gov.uscourts.dcd.220747/gov.uscourts.dcd.220747.1.0.pdf

(コメント)2018年10月2日にイスタンブールのサウジ領事館で、サウジ政府が15名の暗殺団を派遣して、サウジの著名なジャーナリストであり、ワシントンポストのコラムニストとして知られたジャマール・カショギ氏殺害と同様の手口で、サウジ政府が「タイガー隊」とよばれる暗殺団をカナダに派遣して、元サウジ情報部の上級諜報員で、ムハンマド・ビン・ナイエフ(通称MBN)(前)皇太子の下で働いていたサアド・アルジャブリ氏を殺害しようとした件で、ジャブリ氏が8月6日ワシントンDCの連邦地裁に対してMBS皇太子ほか12名を提訴し、8月7日連邦地裁は、MBS皇太子他12名の出頭を求めたという内容である。
サウジ本国では、2017年6月に皇太子の座からほぼ強制的に引きずりおろされたMBN前皇太子が、本年、汚職容疑で拘束されていると伝えられており、その側近で、米国や西側の情報機関と密接に協力して信頼関係を構築してきたジャブリ氏が、MBN失脚後、身の危険を感じ、カナダに脱出した際、口封じのために暗殺が試みたと訴訟状は主張している。
ジャブリ氏が今、訴えを起こした理由として、3月にサウジ本国にいる息子2名との連絡が取れなくなっていること、5月には、ジャブリ氏の兄弟が治安部隊に連行され、その後連絡をとれなくなっていることから、家族の身の安全のためにも迅速な行動が必要だと考えたとみられる。
ジャブリ氏は、サウジの上級諜報員として、サウジ王宮内部の事情は知り尽くした人物であり、親族のみならず、かつての上司であるMBNの身の危険を案じた可能性もある。
MBS皇太子に直接召喚状が発せられたことで、出頭しない場合、被告サイドに不利な判決が言い渡されることは確実であり、MBS皇太子は、現在、トランプ大統領、ポンペイオ国務長官に対して、米国の外国要人との特別な関係にかんがみ、訴訟を無効にする決定を行うよう働きかけているとされる。カショギ殺害事件では、サウジの裁判で、5名に死刑判決が下されたものの、カショギ氏の息子が死刑を求めないと宣言したことで、全員放免されたとされる。暗殺団を本国から指揮したとされるカハタニ元王宮府顧問やアッシーリ元情報部副長官も起訴されず、国際標準の裁判が行われなかったとの批判が出ており、事件現場を抱えるトルコは、本年サウジ人被告人21名に対する欠席裁判を開始し、裁判が進行している。

Posted by 八木 at 10:15 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

モディ首相出席のイスラム教モスク跡地でのヒンドゥー教寺院起工式[2020年08月06日(Thu)]
8月5日、インドのモディ首相は、1992年に破壊されていたインド北部のアヨーディヤのバブリ・モスク跡地にでのラーマ寺院の起工式に出席し、ヒンドゥー教の宗教的な歌詞を唱えながら寺院の建設の開始を象徴する9つの石のブロックに祈りを捧げた完成までに3年半かかると見込まれている。式典には、現下のコロナウィルス感染拡大の最中、175名の聖者、司祭、ヒンドゥー教徒およびイスラム教徒のコミュニティ代表のみが式典に招待された。さまざまなヒンズー教の寺院やシーク教の神社から送られた2,000個の土鍋に入れられたインドの川からの水が現場に注がれた。寺院の幅は約72メートル(235フィート)、長さ91.5メートル(300フィート)、高さ49メートル(161フィート)で、5つのドームがあり、総面積は約7,804平方メートル(84,000平方フィート)である。式典は、約3,000人の治安部隊員が主要道路をバリケードで囲み、すべての商店やビジネスが閉鎖されている中で実施された。
(コメント)
モディ首相率いるインド人民党(BJP)が選挙マニフェストで長い間、カシミールの係争中の地域ジャム・カシミール州の自治を剥奪し、ムガール時代のモスクがかつて建っていた場所にヒンドゥー教のラーマ寺院を建設することを公約していたため、モディ首相にとっては、公約を実施したということになる。
今回のヒンドゥー教寺院起工式は、昨年11月にインドの最高裁判所がウッタル・プラデシュ州の係争中の土地にヒンドゥー教寺院を建設することを認めた判決に従ったもので、多くのヒンズー教徒は、彼らの神ラーマがその場所で生まれたと信じており、イスラム教の皇帝バブールがその寺院の上にモスクを建てたと主張している。
バブリ・モスクは、1992年12月にヒンドゥー教徒の暴徒によって破壊され、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒による大規模な暴力が起こり、約2,000人、主にイスラム教徒が死亡した。最高裁判所の評決により、破壊されたモスクの場所にヒンドゥー寺院を建てることになった。コロナ感染拡大とイスラム教徒との衝突を避けるために大規模な治安部隊が投入されていなければ、この歴史的な事態を目撃するために何百万人ものヒンドゥー教徒がアヨーディヤに参集した可能性がある。
注目すべきは、画期的な式典に招待された人々に、最高裁判所の訴訟で主なイスラム教徒の訴訟者となったイクバル・アンサリが含まれていることであり、同人は、現在はアヨーディヤでのヒンドゥー教寺院の建設を支持している。最高裁は、昨年11月、近くのサイトに新しいモスクを建設するために、イスラム教徒に2ヘクタール(5エーカー)の土地を与えるように命じている。イスラム側の指導者が旧バブリ・モスクの跡地にヒンドゥー教寺院の建設を認めたことで、ヒンドゥー教徒、イスラム教徒の緊張緩和につながるのか予断を許さない。
なお、7月には、トルコのエルドアン大統領がアヤソフィアのモスク化を実行しており、このタイミングでのモディ首相のヒンドゥー教寺院建設開始は、エルドアン大統領を意識した自身の支持基盤にアピールする行為と考えられる。
https://www.aljazeera.com/news/2020/08/indian-pm-modi-lays-foundation-ram-temple-razed-mosque-site-200805090217486.html


(これまでの経緯)
•2019年11月9日、インドの最高裁判所は5名の判事の一致した判断として、1992年にヒンドゥー教の暴徒が破壊したインド北部のアヨーディヤで460年前に建設されたバブリ・モスクの跡地2.77エーカーを、条件に応じてヒンズー教寺院建設を監督する信託団体に引き渡す必要があると裁決を下した。一方で、アヨーディヤの別の土地5エーカーをイスラム教徒グループに引き渡すと裁決した。

1992年のヒンドゥー教徒暴徒によるバブリ・モスクの破壊は、1947年のインド独立以来、この国が経験した最も激しい宗教的暴動を引き起こした。イスラム教徒は中世時代のモスクで何世紀も祈りを捧げ、一方、ヒンドゥー教徒は自分たちの神ラーマ(宇宙、世界の維持、平安を司る神ヴィシュヌ神の化身。叙事詩「ラーマーヤナ」の主人公)が以前モスクが存在していた場所で誕生したと信じている。

下記の経緯からわかるように、歴代インド政府、司法当局は、この問題を宗教間対立、憎悪を引き起こしかねない事案として、慎重に対応してきた。しかし、モディ首相率いるインド人民党(BJP)は、「ヒンドゥー至上主義」を掲げ、インドを母国としないイスラム教やキリスト教などの少数宗派への宗教的抑圧を強化してきた(仏教はインドで誕生した宗教として、保護されている)。モディ政権は、8月に国内で唯一イスラム教徒が多数を占める北部ジャム・カシミール州の自治権を剥奪し、10月31日、西部の「ジャム・カシミール」と東部の「ラダック」に2分割し、それぞれを中央政府の直轄地とし、中央政府による統治を強めている。今後、政府は、最高裁判所の判決を実行する形で、アヨーディヤのモスク跡にヒンドゥー寺院建設に着手し、さらに、現在各宗派ごとに認められている宗教儀式に関する統一民法典の制定を目指すとみられている。

インドの最高裁判所は、今回、ヒンドゥー教徒過激派によるモスク破壊行為を違法と判断しつつ、インドの多数派であるヒンドゥー教徒のラーマ信仰の想いを、イスラム教徒が中世以来現実に維持してきたモスクの所有権の上に位置づけたことになる。聖地エルサレムをみればわかるとおり、ユダヤ教徒にとっての聖地ソロモン王の神殿の一部であった嘆きの壁のうえに、ムスリムにとっての聖地岩のドームとアルアクサ・モスクの併存は、イスラエル支配の下、常に緊張状態にあり、高裁での同じ敷地内の2/3をヒンドゥー教徒側が、1/3をムスリム側が管理するという案を覆し、敷地全体をヒンドゥー教徒側に与え、ムスリム側には、別の土地を与えるという最高裁が下した解決策は、現場での衝突を避けるための知恵であるとの見方もできないではないが、結局のところ、多数派ヒンドゥー教徒の声を重視したものであり、現在のBJPの「ヒンドゥー至上主義」の流れからは、イスラム教徒の反発は避けられそうにない。
(経緯)
1528年 バブリ・モスクは、最初のムガール帝国君主であるバーブルの支配下に建設。
1949年12月23日 ヒンズー教の神ラーマの偶像がモスクの内部に置かれ、政府はバブリ・モスクを「係争中の財産」と宣言し、その門は閉鎖された。それ以来、モスクではイスラム教徒は祈ることが出来なくなった。
1950-61年 ヒンドゥー教徒側は、施設内で儀式を行う権利を求め、一方、イスラム教徒側からは、施設の所有の確認を求めるイスラム教徒のグループまで、4つの民事訴訟が裁判所に提起された。
1984年 ヒンドゥー教寺院の建設を先導するために、ヒンドゥー教徒グループによって委員会が設置された。
1990年 右翼のインド人民党(BJP)のリーダーであるLKアドヴァニは、モスクに替わってラーナ寺院を建設する全国的なキャンペーンを主導した。
1992年12月6日 ヒンドゥー教徒の暴徒は、モスクをがれきに変えた。全国で暴動が発生し、約2,000人が死亡した(犠牲者の多くはモスリムとされる)。
1992年12月16日 モスクの解体から10日後、中央政府は事件を調査するためにリベルハン委員会を設置した。
2003年 考古学者は、サイトにヒンズー教の寺院が存在していたのか判断するために、裁判所主導の調査を開始。調査によると、モスクの下に神殿が見つかったとされるが、多くの考古学者とイスラム教徒はこの発見に異議を唱えている。
2009年6月 リベルハン委員会は報告書を提出し、Advaniを含むBJPの上級指導者がモスク破壊の裁判を受ける必要があると指摘。
2010年9月 アラハバード高等裁判所の3人の裁判官は、争点となった場所はヒンズー教徒とイスラム教徒の間で共有されるべきであると判決を下した。裁判所は、2.77エーカー(1.12ヘクタール)の敷地の3分の2がヒンズー教徒グループ(Nirmohi Akhara派とRamlalla Virajman)に属し、残りはイスラム教徒グループ(スンニ中央ワクフ委員会、UP)に属するとの判断を示した。
2011年5月 インドの最高裁判所は、ヒンドゥー教徒とイスラム教徒のグループによる控訴後、高等裁判所の判決を一時停止した。
2017年3月 インドの最高裁長官・司法長官は、ヒンズー教徒とイスラム教徒の間の法廷外の解決を提案。
2017年4月19日 最高裁判所は、モスク破壊事件で、与党党首のAdvani他14名に対する陰謀罪を復活させた。
2017年12月5日 最高裁判所は、係争中の13件の控訴のヒアリング開始。
2018年9月27日 最高裁判所は、この事件を5人の裁判官による憲法裁判に付託することを拒否。 10月29日に新しく構成された3人の裁判官の法廷で審理されるケースとみなした。
2019年1月25日 インド最高裁判所長官(CJI)のゴゴイ長官は、5人の裁判官のベンチを設置し、前任者による3人の裁判官の法廷を設置するという以前の命令を覆えした。新しいベンチには、ゴゴイ裁判長ほか4名の判事で構成された。
2019年3月8日 最高裁判所は、元最高裁判所判事を長とする調停委員会を設置し、法廷外の和解を促した。
2019年8月2日 調停が失敗に終わった。
2019年10月16日 最高裁判所は審理を終了。 5人の裁判官の法廷が判決を準備。
2019年11月9日 最高裁判所は、条件に基づき、ヒンズー教寺院の建設を監督するために、土地を信託に引き渡さなければならないとの判決を下した。アヨーディヤの別の土地がイスラム教徒グループに引き渡されるとあわせ、裁決した。
https://blog.canpan.info/meis/monthly/201911/1

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ベイルートの港付近での大規模爆発[2020年08月05日(Wed)]
1.レバノン当局は、首都ベイルートの港での大規模な爆発で少なくとも73人が死亡し、約3,700人が負傷したと語った。
8月4日の爆発は都市全体に衝撃波を送り、首都の郊外でさえ広範囲にわたる被害を引き起こした。ベイルート港に停泊中のイタリア商船も被害を受けた。
レバノンの内務大臣ムハンマド・ファハミは、爆発は明らかに港の倉庫に保管されていた硝酸アンモニウムが原因であると述べた(2750トンもの硝酸アンモニウムが倉庫に保管されていた趣き)。
2.レバノン大統領ミシェル・アウンは爆発の後に国の高等防衛評議会を招集した。会議後以下が発表された。
@調査委員会は、5日以内に誰が爆発の責任者であったかを明らかにするよう命じられた。
A被害者の家族には補償が支払われる。
B 輸入路は、レバノン北部のトリポリ港に(臨時に)設定される。
3. イスラエルとヒズボラは、それぞれ爆発には無関係であるとの声明を発出した。
https://youtu.be/oKFupx9x0-k?t=8
https://www.aljazeera.com/news/2020/08/huge-explosion-rocks-lebanon-capital-beirut-live-updates-200804163620414.html
https://www.aljazeera.com/indepth/inpictures/pictures-lebanon-capital-beirut-shaken-massive-explosion-200804162150133.html

Posted by 八木 at 07:53 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

リビアで、シリア人同士が暫定政権側、ハフタル将軍側に分かれて戦う背景[2020年08月04日(Tue)]
シリアの内戦で体制派、反体制派に分かれて戦ってきた武装勢力は、今やリビアにおいて西部のシラージュ暫定政権を支援するトルコ側と東部のハフタル将軍側を支援するロシア・UAE・エジプトを中心とするグループ側に分かれて、リビア内戦に参戦している。それに関するトルコ紙の報道内容を紹介する。
(参考) トルコのディリー・サバーハ記事主要点
https://www.dailysabah.com/politics/syrian-regime-sends-more-arms-fighters-to-haftar-libyan-army-says/news
●8月2日、リビア軍は、ロシアの貨物機がハリーファ・ハフタル将軍に忠実な軍隊に新しい軍事輸送を行ったと主張した。アナドル通信によれば、軍のシルテ・ジャフラ共同作戦部隊のスポークスマンに話として、イリューシンタイプの輸送機は8月1日弾薬を運ぶ5便をシルテとジュフラ県に運航させ、さらに2便はリビアで2番目に大きな都市であり、ハフタル軍の中心基地であるベンガジへシリアのアサド政権側に忠実な兵士を輸送したと語った。

●2019年4月以降、ハフタル軍はリビアの首都トリポリとリビア北西部の他の地域を攻撃し、民間人を含む1,000人以上の死者が発生した。ハフタル軍は、アラブ首長国連邦(UAE)、エジプト、ロシアの支援を受けており、国連公認の暫定政府は、トルコに支えられている。

●国際的に承認されたリビア政府軍は最近、ハフタル軍の攻勢に対して重要な勝利を収め、ハフタル部隊をトリポリと戦略都市であるタルフーナから駆逐した。

●ハフタル軍がトリポリに向けて進軍を開始して以来、外国の傭兵と武器がリビア国内に持ち込まれ、中でも、ロシアとUAEが最大の支援者となった。 7月24日、アフリカのための米軍司令部(AFRICOM)は、ロシアを「ワグナーグループに物資や設備を提供することにより、リビアで(和平に)役立たない行動をとっている」と非難し、傭兵組織ワーグナーがトリポリとその周辺の民間地域に地雷と即席爆発装置を敷設したという証拠写真を明らかにした。

(参考)ワグナーグループがシリア人を雇っているとの参考記事
https://www.reuters.com/article/us-libya-security-syria-russia-exclusive/exclusive-russian-hiring-of-syrians-to-fight-in-libya-accelerated-in-may-idUSKBN23E06H

(コメント)
UAEは、リビアで、東部を拠点とするハフタル将軍側を公然と支援しており、一方、トルコは、首都トリポリを拠点に国際的に承認されたシラージュ暫定政権を支援している。2019年12月にはリビア暫定政権・トルコは軍事協力のための覚書に署名している。トルコは、トルコがシリア国内で実効支配するシリア反体制派民兵をリビアに送り込んでいるとみられている。一方、UAEはシリアのアサド政権に働きかけ、アサド政権近い民兵をリビアに送り込んでいるとみられ、これにロシアの傭兵ワグナーグループが加わり、エジプトも軍隊の派遣を躊躇わないとしており、リビアの紛争は、@シラージュ暫定政権+トルコ、Aハフタル将軍率いるリビア国民軍(LNA)+UAE+エジプト+ロシア+(サウジ)+(仏)、といった外国勢力が複雑に絡み合う代理戦争的様相を呈している。

UAEはサウジと並んで、米国にとって中東におけるもっとも強固と目される同盟国のひとつであるが、意外にもアサド政権に接近している。UAEは、アサド政権と公の関係を断っていたアラブ諸国の中で最も早く2018年12月にダマスカスに大使館を復帰させ、シリアのアラブ連盟加盟凍結も解除するよう求めている。この背景には、UAEの実質的支配者であるムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子のトルコ政府、とりわけエルドアン大統領への反発ムバダラ基金を通じてリビアに長年食い込んできたリビアでの権益維持への並々ならぬ意欲を反映したものと考えられる。

ダマスカスには、2020年3月、ハフタル将軍側のリビア大使館が開設されている。アサド大統領は、UAEやエジプトとの協力を通じて、アラブ世界への復帰を果たしたいとの願望を有している。

Posted by 八木 at 11:43 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

UAEバラカ原発の稼働開始[2020年08月03日(Mon)]
8月1日、アラブ首長国連邦(UAE)は、バラカ原子力発電所の運転を開始したと発表した。韓国電力公社(KEPCO)とともに発電所を建設、運営しているエミレーツ原子力エネルギー公社(ENEC)は、プレスリリースで、子会社のNawah Energy Companyが、アブダビのアル・ダフラ地域にあるバラカ原子力発電所の1号機の始動に成功したと発表した。原子炉1号機には、3月に燃料棒を装填されており、1号機の核燃料の分裂が「臨界」を達成し、分裂によって生じたエネルギーで、熱を発生させ、生じた水蒸気で、タービンを回転させて発電が開始された。UAEは当初2017年の稼働開始の予定であったが、3年間遅れ、当初予算を数十億ドル超過しているとのこと。
今回の原発稼働で、アラブ世界では最初の、中東では、イランのブシェーリ原発に次いで二番目で、世界では33番目の原発が稼働することになった。フル稼働の暁には、5600MW、国内の電力供給の1/4を賄うことになるとみられている。中東では、トルコとエジプトがロシア製原発の導入計画を進めている。
UAEは、使用済み核燃料の再処理を行わないことで、米国と合意しており、核開発の意図はないと考えられる。一方で、下記URLのアルジャジーラ記事によれば、欧州の最近の原子炉では標準装備となっている@メルトダウンが発生した場合に原子炉の炉心が格納容器の建物に侵入するのを文字通り阻止する「コアキャッチャー」がないこと、A原子炉がミサイルまたは戦闘機の攻撃を受け破損した際に生じる放射性物質の放出を防ぐために、格納容器の建物にいわゆる「ジェネレーションIII多層防御」の補強を欠いているとして安全性に疑問を呈する研究者の見方を掲載している。さらに、湾岸諸国は、ペルシャ湾をはさんで、密集しており、多くの国々が、海水淡水化に頼っており、ペルシャ湾の海洋汚染あるいは、放射性物質の大気中への拡散で、周辺国に被害が出ても、現在、責任の所在を明らかにし、補償を行う取り決めがないため、湾岸諸国が集団的に原子力事故責任条約を発展させることが非常に重要であるとの指摘がある。

(参考)UAE原発の経緯
1.当初計画
●UAEは世界有数の石油輸出国だが、2020年に4万メガワットと予想される電力需要を賄うため、原子力発電所の建設を計画した。
●発想は、石油資源は輸出に回して外貨を稼ぎ、国内の電力を含むエネルギー需要は、石油以外の手段で賄う。
●総額400億ドル規模の大型事業で、2017年にアラブ湾岸地域初となる1号機の稼動を計画している。2020年までに1400メガワットの原子炉4機の完成を目指した。
2.激しい受注競争
(1)入札参加者
@韓国連合:韓国電力公社(KEPCO)、現代建設、サムスンC&T、斗山重工業など
A仏連合:仏電力公社(EDF)、アレバなど
B日米連合:日立、ゼネラル・エレクトリック(GE)、エクセロン
(2)結果
2009年12月、アラブ首長国連邦(UAE)の原子力発電所建設をめぐる受注競争で、韓国企業連合が契約を獲得した。原子炉4機の建設・運営を請け負う。
• 安値攻勢:韓国は新興国の原発需要への対応に躍起、輸出実績づくりで安値受注。
• 韓国の提案は、新型加圧水型軽水炉「APR1400」。一方、日米連合は、時代遅れともいわれる沸騰水型軽水炉。
• 60年の運転保証:韓国電力が原発運転中の技術トラブル、事故などを含め運転保証を60年間適用する
• 稼働率:韓国は原発設備稼働率90%をアピール、日本は安全検査がらみで65%にとどまっていた。
• 大統領の陣頭指揮:今回のUAE原発をめぐって経済界出身(現代建設社長)の李明博韓国大統領が陣頭指揮で取組み、大統領は、最終段階の開札段階で直接アブダビに乗り込んだ。
(ENECプレスリリース)
https://www.enec.gov.ae/news/latest-news/safe-start-up-of-unit-1-of-barakah-nuclear-energy-plant-successfully-achieved/
(アルジャジーラ記事)
https://www.aljazeera.com/news/2020/08/uae-starts-operations-arab-world-nuclear-power-plant-200801101118964.html

Posted by 八木 at 15:01 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)