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トランプ大統領はイスラエル・パレスチナ間の新和平プラン「世紀の取引」を発表[2020年01月29日(Wed)]
1月28日、トランプ大統領は、「パレスチナ人とイスラエル人の生活向上のためのビジョン」(A Vision to Improve the Lives of the Palestinian and Israeli People)と題する新和平プランを発表した。プランの全体はホワイトハウスのサイトからアクセスできる。プランの中でも特に重要な米国が描くイスラエルとパレスチナの将来の概念図(下記URL参照)、エルサレム、難民、ガザについて、次のとおり概略を紹介する。
(新和平プラン全体)https://www.whitehouse.gov/wp-content/uploads/2020/01/Peace-to-Prosperity-0120.pdf
(概念図)https://www.middleeasteye.net/sites/default/files/styles/article_page/public/images-story/map_israel_palestine_deal.png?itok=o_gXU9Er
1.米国提示のプランに基づくパレスチナとイスラエルの概念地図
●概念地図は、国連安保理決議 242の精神で、次のような方法で境界線を再描画する可能性を示すように設計されている。
@ イスラエル国のセキュリティ要件を満たしている。
Aパレスチナ人に領土を大幅に拡大する。
Bイスラエル国の有効な法的および歴史的主張を考慮に入れる。
Cアラブ人またはユダヤ人の強制的な人口移動を回避する。
Dそれぞれの国内のイスラエル人とパレスチナ人の両方のモビリティを強化する。
Eイスラエルとパレスチナの飛び地のニーズに対応するための実用的な輸送解決策を提供する。
Fパレスチナ国の商業的実行可能性と経済的独立性を高める。
Gガザの発展と成功を強化するために、潜在的に重要なガザの拡張を提供する。
H パレスチナ国家の地域経済および世界経済への統合を促進する。

●イスラエル国と米国は、1967年以前の領土の100%(国連安全保障理事会決議242と一致する信念)をイスラエル国がパレスチナ人に提供する法的拘束力があるとは考えていない。このビジョンは公平な妥協であり、1967年以前のヨルダン川西岸とガザの領域に合理的に匹敵する領土を含むパレスチナ国家を想定している。
●このビジョンは、橋、道路、トンネルで構成される最先端のインフラストラクチャー解決策を通じてパレスチナ国内の移動を最大限に促進し、パレスチナ国の境界をはるかに超えて大きなメリットをもたらすパレスチナ国も想定している。たとえば、パレスチナ国は、ヨルダン川西岸とガザ間の効率的な移動を可能にする高速輸送リンクの恩恵を受け、イスラエル国の領土の上または下を通過する。 1967年以前には存在しなかったこの交差点は、パレスチナ人のためのイスラエルとパレスチナの平和協定の価値を大幅に高め、パレスチナ人とイスラエルをより広範な中東につなぐ新しい地域インフラの一部となるように設計される。
●パレスチナ国が独自の港を開発するまで(注:ガザ沖合に人工島を建設し港を設置する計画)の間、パレスチナ国はイスラエルのハイファ港とアシュドッド港の特定の指定施設への特別なアクセスの恩恵を受け、イスラエルの安全を損なうことなく、パレスチナ国に商品を出し入れする効率的な輸出手段を備えることができる。
●イスラエル国は、安全で認められた国境を持つことで利益を得るであろう。入植地を解体する必要はなく、イスラエルの入植地の大部分を隣接するイスラエルの領土に組み込む。隣接するパレスチナ領土内にあるイスラエルの飛び地は、効果的な輸送システムを通じてイスラエル国の一部となり、イスラエル国に接続される。
● ヨルダン川西岸地区のイスラエル人の約97%が隣接するイスラエル領土に組み込まれ、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人の約97%が隣接するパレスチナ領土に組み込まれる。土地の交換は、1967年以前のヨルダン川西岸地区とガザ地区に相当する規模の土地をパレスチナ国に提供する。
●隣接するイスラエル領土内に留まっているが、パレスチナ国の一部である飛び地に位置するパレスチナ人の住民は、パレスチナ国の市民になり、彼らが別の方法を選択しない限り、その場に留まる選択肢を有する。彼らはパレスチナ国に接続するアクセスルートを持っている。彼らは、そのようなパレスチナの飛び地の内部で、ゾーニングと計画を含むパレスチナの文民管理の対象となる。彼らは差別されず、適切なセキュリティ保護を受ける。そのような飛び地とアクセスルートは、イスラエルのセキュリティ上の責任の対象となる。
● 隣接するパレスチナ領土内に留まっているが、イスラエル国の一部である飛び地に位置するイスラエルの住民は、別の方法を選択しない限り、その場に留まり、既存のイスラエルの市民権を維持するオプションをもつ。彼らはイスラエル国に接続するアクセスルートを持つことになる。彼らは、そのようなイスラエルの飛び地の内部で、ゾーニングと計画を含むイスラエルの文民管理の対象となる。彼らは差別されず、適切なセキュリティ保護を与えられる。そのような飛び地とアクセスルートは、イスラエルのセキュリティ上の責任の対象となる。
●イスラエルの国家安全保障にとって重要なヨルダン渓谷は、イスラエルの主権下におかれる。このような主権にもかかわらず、イスラエルはパレスチナ政府と協力して、パレスチナ人によって所有または管理されている既存の農業企業が、イスラエル国によって許可された適切なライセンスまたはリースに従って、中断または差別なく継続するための合意に向け交渉する必要がある。
● 10年以上にわたり、ガザはテロ組織であるハマスに支配されており、何千人ものイスラエル人の殺害と不法行為に責任を負っている。ガザ、ハマス、PIJ、その他のテロ組織は人々の生活の改善に専念するのではなく、イスラエルの破壊に専念している。同時に、彼らはパレスチナ人を残忍に弾圧し、パレスチナ人の生活を改善するために数億ドルを流用して、数千のロケットとミサイル、数十のテロトンネル、および他の致命的な能力の戦争機器に燃料を供給した。ハマスの恐怖と誤った支配の結果、ガザの人々は大規模な失業、広範囲にわたる貧困、電気と飲料水の大幅な不足、および大規模な人道危機を引き起こす恐れのある問題に苦しんでいる。このビジョンは、ガザのパレスチナ人に豊かな未来を与えることを目的としている。それはガザ近郊のパレスチナ人にイスラエルの領土に割り当てられる可能性を提供する。ガザの差し迫った人道的ニーズに対応するためにインフラストラクチャーを迅速に構築し、結果としてパレスチナの都市や町を構築し、ガザの人々の繁栄を助けまることになる。
●ガザの人々にとっての重要な改善は、イスラエルとの停戦、ガザの完全な非武装化、および国際社会が予測可能な将来の紛争によって破壊されることはない投資に安全かつ快適に新しい資金を投入することを可能にするガバナンス構造が構築されるまで、起きないであろう。
2.エルサレムの政治的状況
●平和を達成する上で最も複雑な問題の1つは、エルサレムの政治的地位の問題を解決することである。
●1967年より前、分割されたエルサレムはこの地域の大きな緊張の源であり、ヨルダン軍とイスラエル軍は有刺鉄線で分離され、イスラエルのエルサレム居住者は狙撃兵の火事で危険にさらされた。
エルサレムの分割は、アメリカ合衆国の1995年のエルサレム大使館法の政策声明と矛盾する。和平プロセスに関与したすべての元大統領は、エルサレムが物理的に再び分割されるべきではないことに同意している。
●2017年12月6日、アメリカ合衆国を代表して、トランプ大統領はエルサレムをイスラエルの首都として認めた。大統領はまた、エルサレムにおけるイスラエルの主権の特定の境界は、当事者間の最終的な地位交渉の対象となることを明らかにした。分割されたエルサレムを分割された状態に戻すこと、特に地球上で最も繊細な地域の1つに2つの独立した治安部隊を置くことは重大な間違いだと考えている。
●市の物理的な分割を避ける必要があるが、現在、すでにエルサレムのアラブ地域(すなわち、Kafr Aqab、およびShuafatの東部)を他の地域から分離しているセキュリティ障壁が存在する。この物理的な障壁はそのままにしておき、両当事者の首都間の境界線として機能する必要がある。
エルサレムはイスラエル国家の主権下の首都のままであり、分割されていない都市のままでなければならない。パレスチナ国の主権下の首都は、Kauf Aqab、ShuafatとAbu Disの東部を含む既存のセキュリティバリアの東と北のすべてのエリアにある東エルサレムのセクションにあり、Al Quds(注:アラビア語でエルサレムの意味)またはパレスチナ国によって決定された別の名前を付けることができる。
●このビジョンにより、イスラエルの首都エルサレムに住むアラブ人は、1949年の休戦線を越えて、既存のセキュリティ領域の中で、次の3つのオプションのいずれかを選択できます。
@イスラエル国の市民になる
Aパレスチナ国の市民になる
Bイスラエルの永住者としての地位を保持する

●長年にわたり、これらの地域の一部のアラブ人(約6%)がイスラエル市民になることを選択しており、将来、これらの地域のアラブ人はそのオプションを利用できるようになる。
これらの地域の他のアラブ人居住者は、パレスチナ国の市民になることを選択することにより、パレスチナの政治的アイデンティティを受け入れたいと思うかもしれない。これらの地域に住むアラブ人の多くは、イスラエルやパレスチナとは別の政治的アイデンティティを維持したいと望んでおり、それによって彼らは独自のアイデンティティと歴史に誇りを持つことができる。このオプションは引き続き利用できるはずである。

3.難民の帰還の権利
●アラブ・イスラエル紛争は、パレスチナ難民問題とユダヤ難民問題の両方を生み出した。ほぼ同数のユダヤ人とアラブ人が、アラブ/イスラエルの紛争により追放された。それ以来、ほぼすべてのユダヤ人がイスラエルまたは世界中の他の国で受け入れられ、永久に再定住した。
●一方、避難したアラブ人は、非常に多くの地域で孤立しており、この地域の多くのアラブ諸国で市民として生活することを妨げられている。たとえば、クウェート政府が(イラクのクウェート侵攻後)、米国とその連合軍による解放に続いて、暴力と経済的圧力を通じて、パレスチナ人の同国からの体系的な排除が開始された。クウェートのパレスチナ人の人口は、侵略前の40万人から約25,000人に減少した。
●レバノンでは、パレスチナ人は何十年もの間、レバノンで生まれた人でも差別され、労働市場に参入することを妨げられてきた。彼らは、ほとんどの場合、財産を所有したり、法律、医学、工学などの望ましい職業に就くことを禁じられている。雇用を得るために、パレスチナ人は政府発行の労働許可証を受け取る必要があるが、パレスチナ難民に与えられるものはほとんどない。すべてのアラブ諸国の中で、ヨルダン王国は勇敢にヨルダンのパレスチナ人をケアしようとしていることを認識しなければなりらない。
イスラエル国がパレスチナ難民の受け入れに同意することを要求する提案、または難民の補償のために数百億ドルを約束する提案は、現実的ではなく、信頼できる資金源が特定されたことはない。現実に、世界は7000万人以上の世界的な難民と避難民を支援するのに十分な資金を見つけるのに苦労している。何十年もの間、米国はパレスチナ難民のニーズを支援することにコミットしてきた。パレスチナ難民は過去70年間にわたって大いに苦しんできた。 1950年から2017年まで、米国は約61億5,000万ドルを国連救援事業機関(UNRWA)に拠出した。過去10年間だけで、米国は約29億9000万ドル(2017年度で31億6,000万ドル)を拠出し、UNRWAへのすべての拠出の28%を占めた。残念ながら、パレスチナ難民はより広範な中東のチェス盤でチェスとして扱われ、彼らとホスト国に対して空約束がなされてきた。イスラエルとパレスチナの紛争を解決するためには、パレスチナ難民問題に対する公正で現実的な解決策を見つけなければならない。
●アラブ諸国とイスラム教徒の国から逃げることを余儀なくされたユダヤ人難民も苦しんだ。ほとんどがイスラエル国に定住し、一部は他の場所に定住しました。失われた資産の補償を含むユダヤ人難民問題にも対処しなければならない。さらに、イスラエル国は、それらの国からのユダヤ人難民を吸収する費用の補償に値する。ユダヤ人難民に関連する問題に対する公正で現実的な解決策は、イスラエルとパレスチナの平和協定とは別の適切な国際メカニズムを通じて実施されなければならない。
●イスラエル・パレスチナ和平協定は、難民または移民の地位に関連するすべての申し立ての完全な終了と解放を規定するものとする。パレスチナ難民によるイスラエル国への帰還または吸収される権利はない
●イスラエルとパレスチナの平和協定に基づく難民の権利を得るには、このビジョンの発表日時点で、UNRWAにより難民として登録されている必要がある。 UNRWAの難民の定義への言及は、申立人の世界を定義し、パレスチナ難民トラストの受託者に適切な分配方法を決定するための最も広い柔軟性を提供するために活用されるものである。イスラエルとパレスチナの平和協定が存在しない場合、難民の地位は、多世代の永続的な方法を含め、この定義を参照することによって決定されるべきであるという解釈を米国が受け入れたことを意味しない。 UNRWAの任務と、誰が難民を構成するかという多世代にわたる定義は、難民危機を悪化させた。いかなる状況においても、すでに定住地に移住した人(イスラエル・パレスチナ和平協定でさらに定義される予定)は、再定住の資格がなく、下記の補償の対象となる。この計画は、恒久的な居住地を探しているパレスチナ難民のための3つの選択肢を想定している。
@パレスチナ国への吸収
A 現在のホスト国でのローカル統合(それらの国の同意が必要)
Bパレスチナ難民の第三国定住に参加することに同意するイスラム協力機構の加盟国で、毎年最大5,000人(合計50,000人)の難民の受け入れ(これらの個々の国の合意に従う)。
米国は他の国と協力して、現在のホスト国の懸念や制限を考慮に入れるなど、このようなオプションの実施のための枠組みを確立する。
4.ガザ
●ガザの人々は、ハマスの抑圧的な支配の下であまりにも長い間苦しんでいる。彼らは人質や人間の盾として悪用され、いじめられて服従させられてきた。ハマスはガザの人々を失敗させ、ガザの人々の生活を改善するためにこれらの資金を使用する代わりに、イスラエル国を攻撃するために、国際ドナーから提供された資金を含めガザのパレスチナ人に属するお金を流用した。
●イスラエルが15年ほど前にガザから撤退したのは、平和を前進させるためでした。代わりに、国際的に認められたテロリスト集団であるハマスは、領土の支配権を獲得し、数千のロケットの発射を含むイスラエルへの攻撃を増加させた。ハマスの指導の下で、ガザの住民は極度の貧困に苦しんでいる。何年も進歩がなく、ガザの統治構造がガザの人々により多くの破壊と支援につながる対立を引き起こすテロリストによって運営されている限り、ドナー・コミュニティは疲弊し、追加の投資に消極的である。国際社会が新しい道筋を追求するために団結する場合、このサイクルは壊れる可能性がある。
イスラエル国は、イスラエル・パレスチナ和平協定に基づく義務を次の場合にのみ実施する。
(ガザクライテリア)
@パレスチナ自治政府またはイスラエル国に受け入れられる他の国内または国際機関は、ガザを完全に管理する。
A ハマス、PIJ、およびガザのその他すべての民兵組織およびテロ組織は武装解除される。
Bガザは完全に非武装化される
交渉中に、当事者は上記の@〜Bを順守するための時間枠に同意する。
●すべてのイスラエルの捕虜とイスラエル兵士の遺体が以前に成功していなかった場合、イスラエルとパレスチナの平和協定の署名時に、すべてのイスラエルの捕虜と遺体を返還しなければならない。
● ハマスがパレスチナ政府で何らかの役割を果たす場合、ハマスは、カルテットの原則を採用し、明確にイスラエル国を承認し、非暴力にコミットし、すべてのテロリストグループの武装解除を含む、当事者間の義務を受け入れることにより、イスラエル国との平和の道にコミットしなければならない。米国は、上記のすべてが発生しない限り、パレスチナ政府がハマス、PIJ、またはその代理人のメンバーを含めないことを期待している。
●国際社会は、ガザの完全かつ検証可能な非武装化に対して、大規模な投資という形で補償を提供する用意があるべきである。これらの基準が満たされ、マイルストーンが達成されると、段階的なアプローチで一連の投資と国家建設援助が提供され、経済ビジョンを実施する準備が整う。このセクションで「ガザ基準」と題された基準はすべて、このビジョンでは「ガザ基準」と呼ばれる

(コメント)米国は、昨年6月にトランプ大統領娘婿のクシュナー上級顧問が中心となって、「世紀の取引」といわれる和平プランの「経済的側面」に焦点をあてたワークショップをバーレーンの首都マナーマで開催した。パレスチナ代表団は、2017年12月にトランプ大統領がエルサレムはイスラエルの首都であると宣言し、翌年5月に大使館のエルサレム移転を強行したことに抗議して、米国との外交関係が事実上凍結されており、同ワークショップをボイコットした。同会合には、イスラエル代表団も出席しなかった。政治的側面を含む「世紀の取引」の全体像は、イスラエルの二度にわたる総選挙で、ネタニヤフ首相が連立内閣発足に失敗し、公表が遅れていた。今回トランプ大統領は、ネタニヤフ首相とそのライバルの野党連合「青と白」のガンツ共同代表をホワイトハウスに招いて会談し、その後、ネタニヤフ首相同席のもと、新和平プランの公表に踏み切った。この狙いは、まず第一に、3月2日に予定されている第三回目の総選挙でのネタニヤフ首相の支援(但し、ガンツ氏を招くことで野党連合勝利の際にも保険をかけておく)並びにイスラエル寄りの立場をとることでキリスト教福音派を取り込み、11月3日に予定されている大統領選挙において勝利することを目指した選挙戦略の一環であると考えられている。今回、トランプ政権は、概念図の中で、将来のパレスチナ国家の支配予定地を示した。パレスチナ人支配地区は、幹線道路、橋、またはトンネルで結ばれているものの、イスラエルの安全保障上の懸念が生じれば簡単に遮断できるような印象をうける。水資源には直接的なアクセスはない。和平合意により、パレスチナ人は暫定的にイスラエルのハイファとアシュドッド港へのアクセスが確保されることになる。和平プランで特徴的なのは、@西岸とガザはトンネルで結ばれるものの、西岸のパレスチナ支配地には、イスラエル入植地がほぼそのまま残ること。また、Aエルサレムは、宗教的なアクセスは現状通りすべての宗教に認めるとしつつ、エルサレムはイスラエルの主権下で分割されないこと、パレスチナ人には、現在の治安上の境界外の東エルサレム近郊を首都として認め、「アルクドス」(アラビア語でエルサレム)と呼んでもよいとして妥協を求めていること、B難民の帰還の権利は基本的に認めず、現在レバノン、シリア、ヨルダン等のホスト国に居住するパレスチナ人は、ホスト国あるいはイスラム諸国会議機構に所属する国々に吸収されるか、補償をうけることを選択することで、難民の帰還の権利を最終的に終了させること、Cガザは完全に非武装化され、パレスチナ政府あるいはそれに同等する機関の支配を受け入れること、ハマスが支配に参加するのであれば、イスラエル国を明確に受け入れ、武装解除すること等が条件として、パレスチナ人からイスラエルに対する「牙」を完全に取り去ることである。港湾や空港については、イスラエルとパレスチナの平和協定の署名から5年後、ガザ基準の完全な満足を前提として、パレスチナ国は、イスラエルの安全と環境の要件を満たした場合、人工島を作成する権利を有するとされ、ガザの海岸でガザにサービスを提供する港(「ガザ港」)と小型航空機用の空港を開発することが可能になる(ガザ港と小さな空港の場所は、交渉中に決定されとのこと)が、あくまでも、イスラエルのよる治安上の条件をクリアーする必要がある。

今回の米和平プランをトランプ大統領は、パレスチナ人はすぐには飛びつかないかもしれないが、最終的にパレスチナ人も受け入れることになり、双方にウィン・ウィンのものであると自負した。一方、パレスチナ側当局者は今次プランを世紀のペテンであるとして拒否する意向を表明している。

Posted by 八木 at 12:54 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

アマゾンCEOの携帯電話ハッキング疑惑で再び注目されるサウジのMBS皇太子[2020年01月28日(Tue)]
アマゾンCEOで米国の有力政治紙ワシントン・ポストの所有者であるジェフリー・ベゾス氏の携帯電話から大量の個人情報を含むデータが、サウジのムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)皇太子個人のWhatsAppアカウントから送信されたMP4ビデオファイルを2018年5月1日に受領後から大量に流失しはじめたことが明らかになった。ワシントン・ポストでは、一昨年までサウジ人の著名なジャーナリストであったジャマール・カショーギ氏が皇太子に批判的な投稿をコラムに掲載しており、サウジ政府は、それに神経を尖らせていたとみられている。カショーギ氏は、その後、2018年10月2日、トルコ人女性との婚姻に必要な書類を受け取りに、在イスタンブールのサウジ領事館を訪問した際に本国から派遣され、待ち伏せていた15名の暗殺団により殺害されたことが明らかになった。ベゾス氏の携帯からの大量のデータ流出について、ベゾス氏のITチームが、フォレンジック分析を行い、かなり高い確率で、MBS皇太子からWhatsAppで送られたファイルに忍び込まれていたハッキングツールで、データの流失が始まったと結論付けている。これに、国連の人権チームで、カショーギ氏殺害に関するレポートをまとめた国連特別報告者であるカラマール女史ほか1名が、声明を発出し、本件の米政府や関係機関による調査を求めた。自社製のスパイウェアを使用されたとの疑惑が生じているイスラエルのサイバー機器企業NSOは関連を否定するとともに調査に協力する用意がある旨表明した。サウジ政府は、疑惑を「馬鹿げたこと」であると一蹴している。
(参考1)国連人権特別報告者による声明(於ジュネーブ、2020年1月22日)
国連の人権専門家は、基本的な国際人権基準に違反して、2018年にサウジアラビア王国の皇太子に属するWhatsAppアカウントがデジタルスパイウェアを活用したことを示唆する情報に深刻な懸念を抱いている。ワシントン・ポストの所有者でありAmazonのCEOであるジェフリー・ベゾス氏の監視を可能にするものである。
独立した専門家で、超法規的殺害に関する国連特別報告者のアグネス・カラマール、および表現の自由に関する国連特別報告者のデビッド・ケイは次のように述べた。
●我々が受け取った情報は、沈黙させるためではないにしても、ワシントンポストのサウジアラビアの報告に影響を与えるために、ベゾス氏の監視に皇太子が関与する可能性を示唆している。この申し立ては、特定された敵対者や、自国民や自国民以外を含むサウジ当局にとってより戦略的に重要な者たちを対象とする監視のパターンを指し示す他の報告を補強するものである。これらの申し立ては、2018年のサウジ人のワシントンポストのジャーナリストであったジャマール・カショーギ殺害への皇太子の関与に関する主張の継続的な評価にも関連している。
●ベゾス氏の携帯電話およびその他の電話のハッキング疑惑は、米国および他の関係当局による即時の調査を要求するものである。これには、特定された敵を標的とする取り組みにおける皇太子の継続的、複数年にまたがる、直接的および個人的な関与の調査が含まれる。
●この報告されたベゾス氏のサーベイランスは、民間企業によって開発および販売され、その使用を司法管理することなくある政府に移転されたとされるソフトウェアを通じてのものであり、真実であれば、制約のないスパイウェアのマーケティング、販売の結果生じる被害の具体例である。デジタル手段による監視は、その悪用の容易さから保護するために、司法当局ならびに国内および国際的な輸出管理制度によるものを含む、最も厳格な管理下に置かれなければならない。民間監視技術の販売および移転に関する一時的禁止の必要性が高まっていることを物語っている。
●ベゾスのハッキングとサーベイランスの状況とタイミングは、イスタンブールでカショーギ氏を標的にし、殺害した作戦を皇太子が命じた、扇動した、あるいは計画を知っていたが少なくとも停止しなかったという申し立てについて、米国およびその他の関連当局によるさらなる調査の支援の必要性を強化する。
●サウジアラビアがカショーギ氏の殺害を調査し、責任があるとみなした人々を起訴したとき、ベゾス氏とアマゾンを、同氏がまずワシントンポストの所有者であることをもって狙った大規模なオンラインキャンペーンをひそかに実施していた。
●人権理事会によって任命された2人の専門家は、ベゾス氏のiPhoneが2019年5月1日にサウジアラビア王国のMBS皇太子が個人的に利用したWhatsAppアカウントから送信されたMP4ビデオファイルを介して「中程度から高い確率」で侵入されたと評価したベゾス氏のiPhoneに関するフォレンジック分析結果を知った。 分析によると、皇太子とベゾス氏は、ハッキング疑惑の前月に互いの携帯/ WhatsApp番号を交換していた。フォレンジック分析では、皇太子のアカウントからMP4ビデオファイルを受信して数時間以内に、電話からの大量かつ(ベゾス氏の電話の)前例のないデータの流出が始まり、データの流出が突然29,156%増加して126 MBになることが判明した。 その後、データ流失の急上昇は、数か月にわたって検知されずに継続し、ベゾス氏の電話のビデオ受領前の430KBのデータ流失水準よりも106,032,045%(4.6 GB)高いレートで増加した。
●フォレンジック分析では、サウジの政府関係者によって購入および活用されたことが広く報告されている製品であるNSOグループのPegasus-3マルウェアなど、サウジアラビアの他の監視事例で特定された著名なスパイウェア製品を使用して侵入が行われた可能性が高いと評価された。 これは他の情報と一致する。 たとえば、デバイスへのPegasusのインストールを可能にするプラットフォームとしてのWhatsAppの使用は十分に確認されており、Facebook / WhatsAppによるNSOグループに対する訴訟の対象となっている。
●申し立てはまた、反体制派や特定された敵を標的にしたサウジのその他の証拠によって補強されている。たとえば、米国は2人のTwitter従業員と1人のサウジ国民に対して、「特定のTwitterユーザーのアカウントの個人情報にアクセスし、その情報をサウジアラビア王国政府関係者に提供するそれぞれの役割」について刑事訴訟を起こした。米国の検察によれば、3人の個人全員がサウジアラビアの違法代理人であると告発されており、サウジアラビア政府の指示と管理の下で、「反体制派や著名な批判家から個人データを標的にして入手する」ことに従事してきた。
●特別報告者は、ベゾス氏の携帯電話のハッキングに関する申し立ては、反体制派や政治的敵対者に対するキャンペーンを主導する皇太子の広く報告された役割とも一致していることに留意している。 ベゾス氏の電話のハッキングは、2018年5月から6月にかけて発生し、ペガサス・マルウェアを使用して、ジャマール・カショーギの2人の親しい同僚であるヤヒヤ・アッシーリ(Yahya Assiri)とオマル・アブドルアジーズ(Omar Abdulaziz)の電話もハッキングされた。
●2018年5月のベゾス氏の電話がハッキングされたとされる時期は、ジャマール・カショーギ氏が、ワシントンポスト紙の著名なコラムニストであり、その記事は皇太子の支配についての懸念をますます高めていた時であった。 2018年10月2日、サウジアラビア政府当局者は、トルコのイスタンブールにあるサウジアラビア領事館でカショーギ氏を殺害した。ポスト紙は失踪と殺人捜査の実質的な報道をすぐに開始し、サウジアラビアでの皇太子の支配に関連する多くの側面での報告にまで拡大した。
●フォレンジック分析によると、ベゾス氏の電話のハッキングに続いて、2018年11月と2019年2月に、皇太子はベゾス氏にWhatsAppメッセージを送信し、彼はベゾス氏の私生活に関する公けの情報源からは入手できない個人情報および秘密情報を明らかにしたと伝えられている。同じ時期に、ベゾス氏はサウジアラビアのソーシャルメディアで王国の敵対者として広く標的にされていた。これは、ベゾス氏とアマゾンに対する大規模な隠密裡のオンラインキャンペーンの一部であり、主に同氏がワシントンポストの所有者であったことをもって明らかに彼を標的にしていた。国連の専門家はさらに、サウジの検察官によってカショーギ氏の誘拐を扇動したと名指しされたサウード・アル・カハタニ(Saud al-Qahtani)氏は、ポスト紙を激しく非難し、ベゾス氏と所有企業のボイコットを呼びかけるオンラインキャンペーンの組織化にも繰り返し関与していたことに留意した。
●この声明の付録には、2019年に行われたベゾス氏のデバイスの専門家のフォレンジック分析に関する詳細が記載されている。特別報告者は、カショーギ氏殺害に対する責任の調査と、ジャーナリスト、人権擁護者、およびメディアアウトレットの所有者を威嚇するためのスパイウェアの不当な使用を許可するサーベイランス産業の役割の拡大について調査を続けることを期待している。
https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=25488
(参考2)NSO声明
●NSOは、ジェフ・ベゾス氏の電話のハッキング疑惑に関して公開された物語にショックを受け、唖然としている。この話が真実ならば、そのようなサービスを提供しているすべての機関による完全な調査に値し、彼らのシステムがこのような悪用に使用されていないことを保証すべきである。これらの話が最初に数か月前に表面化したときに述べたように、我々の技術はこの例では使用されなかったと明確に言うことができる。
●これらのタイプの監視システムの悪用は、サイバー・インテリジェンス・コミュニティの評判を落として、正当なツールを使用して深刻な犯罪やテロと戦う能力に負担をもたらす。この分野のすべての関係者は、システムが不正使用されないことを保証するために、我々が導入したような厳格な手順と技術的制御を実行することを期待している。
●これらのタイプの物語は、監視コミュニティが我々のリードに従い、厳格な人権ポリシーを実施し、コンプライアンスに則って行動する必要性を強調している。
●この種のポリシーを最初に実行するサイバー企業として、これらの問題を完全に理解し、監視機器の販売および使用において人権の保護を保証するためのガイドラインと能力を設定しようとする国連、ベゾス氏あるいはその他の機関と喜んで協力していきたい。
https://www.nsogroup.com/Newses/535/
(参考3)ガーディアン紙が伝えたベゾスCEOの携帯からの情報流出に関するタイムライン
•2017年6月21日MBSとして広く知られているムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は、サウジアラビアの皇太子に指名された。
•2017年7月17日 トランプ大統領は、MBSの西洋人顧問と、ナショナルエンクワイアーを発行するAmerican Media Inc(AMI)のCEOであるデイビッド・ペッカー(David Pecker)との私的ディナーをホワイトハウスで開催。
•2017年9月28日MBSは、サウジアラビアでデイビッド・ペッカーと皇太子の西洋人顧問と会見。
•2017年9月 側聞されるところでは、MBSは、ワシントン・ポストで重要なコラムを執筆しているジャマール・カショーギに対して「弾丸」を使いたいとトップの補佐官に伝えたとされる。
•2018年3月19日 MBSは、米国内の最上級なVIP、ビジネスリーダー、政府関係者に対するサウジアラビアの評判を高めるためのツアーに参加するため米国に到着。
•2018年3月20日 トランプ大統領はホワイトハウスでMBSと会談し、大統領は彼らを「良い友達」と呼んだ。
•2018年3月26日 AMIは、サウジアラビアとMBSを称賛する約100ページの高級な雑誌を発行。
•2018年4月4日 MBSは、ハリウッドでの晩さん会に主賓として招かれた。 晩さん会にはAmazon CEOのジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)が出席した。
•2018年5月1日 ジェフ・ベゾスとMBSは、Whats Appのアドレスを交換しており、情報筋によると、同日皇太子からベゾスに送られたテキストメッセージには、携帯電話に侵入した悪意のあるファイルが含まれていたと考えられている。
•2018年5月 ジェフ・ベゾスは、親密でプライベートなテキストメッセージをガールフレンドに送信
•2018年10月2日 ジャマール・カショーギがトルコのサウジ領事館で殺害された。
•2019年1月10日 ナショナル・エンクワイアーは、親密なテキストメッセージを含む、ベゾスの婚外交際を暴露し公開
•2019年2月7日 ジェフ・ベゾスは、ナショナル・エンクワイアーによる恐喝を告発するブログ投稿を公開。
•2019年2月8日 サウジアラビアは、ベゾス記事の出版への関与を否定。 AMIは追ってサウジ関与の主張を退け、ベゾスのガールフレンドの疎遠な兄弟によって、事件がこっそり伝えられたものであると主張。
•2019年3月30日 ベゾスのセキュリティチーフであるGavin de Beckerは、サウジがベゾスの携帯電話にアクセスできたと調査者が高い信頼で結論付けたとするディリービースト(Daily Beast)の記事を公開。
•2019年6月19日 国連特別報告者のアグネス・カラマールは、サウジアラビアがジャマール・カショーギの計画的殺人に責任があるという信頼できる証拠を見つけたと報告。
•2020年1月21日 ガーディアン紙は、ベゾス氏がMBSの個人アカウントから送信されたWhatsAppメッセージを受信した後、2018年5月にベゾス氏の携帯電話が明らかに「ハッキング」されたと報じた。情報筋によると、大量のデータが数時間以内に携帯電話から盗み出された。ガーディアン紙は、盗まれたとされる資料の正確な性質、またはそれを使って何が行われたのかについては知識を持ち合わせていない。
https://www.theguardian.com/technology/2020/jan/22/jeff-bezos-un-calls-for-investigation-into-alleged-saudi-hack

(コメント)2018年10月2日に、カショーギ氏がイスタンブールのサウジ領事館で殺害された後、サウジ政府はカショーギ氏の領事館訪問後の行方は知らないと主張していたが、18日後に殺害を認めた。ベゾス氏は、カショーギ氏がワシントン・ポストのコラムニストを務めていたこともあり、失踪直後から、カショーギ氏の事件を取り上げ、その後のサウジ政府の対応ならびに、サウジ政府の対応を擁護するトランプ政権も強く批判してきた。こうした中、2019年1月10日サウジと関係の深い米企業AMIが所有するナショナル・エンクワイアー誌がベゾス氏の不倫疑惑を報じた。ベゾス氏側はこの情報は、同氏の携帯がハッキングされ個人情報が流出した結果であるとみている。カショーギ氏の殺害については、サウジで11名が起訴され、裁判プロセスが進行しているが、いまだ被告の名前は公表されておらず一審で5名に死刑、3名に有期刑、3名が証拠不十分で解放されたものの、本国で暗殺団の指揮にあたったとされるカハタニ元王宮顧問は起訴もされておらず、さらにその上で、暗殺団の動きを認識していた可能性が高いMBS皇太子については、国家機関の長としての管理責任は認めたものの、事件への関与の疑惑は一切否定している。事件の現場となったトルコのエルドアン大統領や、有力メディアは本件を執拗に追求してきたが、サウジとの経済関係を重視するトランプ大統領をはじめ、ロシアや西欧各国は、MBS追求には二の足を踏み、カショーギ事件の風化もささやかれる状況にあった。今回のベゾス氏形態のハッキング疑惑は、ベゾス氏とMBS皇太子が個人携帯のWhatsAppを介する通話関係を結ばなければ生じなかったものであり、スパイファイルを忍び込ませたのは、皇太子自身ではないにしても、皇太子の承認がなければ、実行できるものではないとみられる。国連の特別報告者の問題提起に国際社会は積極的に応えるのか、あるいはこれまでどうり、「business as usual 」で何事もなかったように振舞うのかについては後者の可能性が高いが、カショーギ氏殺害に関与した疑惑から解放されようとしていたタイミングで、今回のハッキング疑惑が明らかになったことで、MBS皇太子の信頼性に打撃になることは間違いない。

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新井春美研究員執筆のトルコの意外な結婚事情レポートのご紹介[2020年01月26日(Sun)]
ガバナンスアーキテクト機構上席研究員で当研究会共同運営者である新井春美さん執筆「結婚は『必ずするもの』から『しなくてもいいもの』へ “一夫多妻制”禁止 離婚OK トルコの意外な結婚事情」が、フジプライムオンラインに掲載されており、当研究会サイトでもリンクを貼らせていただくことになりました。エルドアン大統領の下で、トルコの世俗的国家としての性格が、イスラム的に変化したのではないかという印象もありますが、トルコでは、人口の9割がイスラム教徒でありながら、「一夫多妻制」が認められておらず、女性の家事負担が増加し、離婚も増えているという大変興味深いトルコの結婚事情を解説されています。

https://www.fnn.jp/posts/00049067HDK

Posted by 八木 at 09:56 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

リビア問題に関するベルリン合意と今後の課題[2020年01月21日(Tue)]
1月19日、ベルリンにリビア問題関係国が参集し、リビア危機への対応が話し合われ、会合終了後合意文書が署名された。同合意(参考1)では、とりあえず、トリポリを拠点とするシラージュ暫定政権と東部を支配するハフタル将軍率いるレバノン国民軍(LNF)間の停戦、諸外国の武器禁輸等を監視し、実施をフォローするための軍事委員会の設置とそのメンバー5名ずつの指名が実現した。しかし、双方の溝は深く、会合終了後のシラージュ暫定政府首相はアルジャジーラとのインタビューで、ハフタル将軍と再び交渉のテーブル着くことはないと不信感を露わにした(参考2)。

(参考1)リビア問題に関するベルリン会合合意文書関心部分訳(1月19日ベルリンで署名)
前文
1. メルケル首相の招待で、今日のリビアに関するベルリン会議は、アルジェリア、中国、エジプト、フランス、ドイツ、イタリア、ロシア、トルコ、コンゴ共和国、アラブ首長国連邦、英国、米国政府ならびに、国連、アフリカ連合、欧州連合、アラブ連盟の高いレベルの代表が参加した。
2.我々参加者は、2019年9月26日、ニューヨークでの第74回国連総会のマージンでフランスとイタリアによって招集された外相レベルの会議のリビアにおける政治的、安全保障上、および人道的状況に関する共同議長の声明に留意する。
3.我々は、リビアの主権、独立、領土保全、国家統一への強いコミットメントを再確認する。リビアが主導し、リビアが所有する政治プロセスのみが紛争を終結させ、永続的な平和をもたらすことができることを再確認する。
4.リビアの紛争、国内の不安定性、外部からの干渉、制度的分裂、大量の未確認の武器の拡散、略奪の経済は、人身売買業者、武装グループ、テロ組織に肥沃な土壌を提供することにより、国際の平和と安全に対する脅威であり続けている。これにより、アルカーイダとISISはリビア領土で勢力を拡大し、リビアおよび近隣諸国で作戦を開始することができた。それは、地域における不法移民の不安定な波と人道状況の重大な悪化を促進した。我々は、これらの構造的ガバナンスとセキュリティの問題に対処する上でリビア人を支援することにコミットする。
5.国連事務総長(SRSG)ガッサン・サラーメ特別代表が国連安全保障理事会(UNSC)に提出した3点計画の支援に取り組んだ「ベルリン・プロセス」の唯一の目的は、リビアの危機に対する平和的な解決策を支援するための国際社会の取り組みを統一しようとする国際連合を支援することである。リビアには軍事的解決策は存在しない。
6.我々は、武力紛争ならびにリビアの内政への干渉を控えることにコミットし、すべての国際的アクターに同じことを行うよう促す。
7.我々は、2015年のリビア政治合意(LPA)とその制度、UNSC決議2259(2015)、その他の関連する国連安保理決議およびパリ、パレルモ、アブダビで合意された原則、およびアフリカ連合とそのリビアに関する国家元首と政府のハイレベル委員会、アラブ連盟、欧州連合およびリビア国内の和解、平和と安全、政治対話に基づいてリビアの安定化を目指す近隣諸国の重要な役割に基づき、リビアの包括的な政治的和解プロセスを促進するうえでの国連の中心的役割を認識している。これらすべての国際機関は緊密に協力する。この関連で、我々は2020年春のアフリカ連合和解フォーラムの組織を歓迎する。
8.我々は、国連リビア支援ミッション(UNSMIL)およびSRSGサラーメ特使の橋渡しと調停努力を全面的に支援する。リビアの永続的な解決には、さまざまな側面に同時に対処する包括的なアプローチが必要であることを強調する。
停戦
9. 1月12日以降の暴力の著しい減少、1月13日にモスクワで行われた交渉、および停戦協定への道を開くことを目的とした他のすべての国際的イニシアチブを歓迎する。我々は、関係者全員に、敵対行為の持続的停止、エスカレーションの停止、および恒久的な停戦のための努力を倍増させるよう求める。この点に関して、国連事務総長特別代表の重要な任務を再度強調する。我々は、LPA34、国連安保理決議2420および2486で言及されているすべての当事者による武装集団および民兵の解体に向けた信頼できる手順を含む、信頼できる、検証可能な、順序付けられた、相互的な手順を求めている。それがリビア領土での航空作戦を含むすべての敵対行為の包括的かつ永続的な停止につながることを期待する。我々は、重火器、大砲、航空機、およびそれらの宿営地の再配備を求める。
10.我々は、停戦プロセスの開始からリビアの全領土内および全域で、紛争当事者による、または紛争当事者の直接支援によるすべての軍事行動の終了を求める。
11.我々は、囚人や遺体の交換などの信頼醸成措置の制度を要請する。
12.我々は、リビアの武装グループおよび民兵の動員解除および武装解除の包括的なプロセス、およびその後の国家のシビリアン、治安および軍事機関への適切な要員の統合を、個別に、かつ武装グループの要員および専門家の評価に基づいて進めることを求める。このプロセスを支援するたよう国連に呼びかける。
13.我々は、開発、安全保障、人権が相互に強化されることが、テロに対抗する効果的かつ包括的なアプローチにとって不可欠であることを認識し、国連憲章および国際法に従って、あらゆる手段によってリビアでテロと闘う必要性を再確認する。我々はすべての当事者に対し、国連に登録されているテロリストグループからの分離を求める。この観点で、アートに従って。 LPAの35条に従って、国連安全保障理事会によって指定されたテロリストの個人および団体と戦う取り組みを歓迎する。
14.我々は、国連安保理決議 2368およびISIL(Da'esh)、Al-Qaida、および指定された個人、グループ、および団体に関するその他の関連する決議、とりわけ指定された個人の旅行の禁止と団体の資金およびその他の金融資産または経済的資源の凍結に関する規定を遅滞なく履行することを求める。我々は、国連安保理決議2322に従って、外国のテロリストの脅威に対抗するための協力の強化を再確認する。
15.我々は、停戦の履行を監視および検証するための技術委員会の即時設置などを通じて、締約国間の停戦交渉を促進するよう国連に要請する。
16.我々は、国連安保理に対し、停戦協定を実行させるため協定に違反していると認められる者及び加盟国に対しこれらを執行するための適切な制裁を課すよう要請する。
17.我々は、加盟国に対し国連安保理決議2486(2019)に沿って、停戦を効果的に支援するために必要な人員と装備のリビア国連支援ミッション(UNSMIL)への提供を支援することにコミットするよう要請する。
武器禁輸
18.我々は、国連安全保障理事会決議1970(2011年)によって確立された武器禁輸、およびリビアからの武器の拡散を含む理事会によるその後の決議を明確かつ完全に尊重し、実施することにコミットする。すべての国際的アクターに同じことを求める。
19.我々はすべてのアクターに、軍事能力を高めるための資金調達や傭兵の調達を含む、紛争を悪化させたり、安保理の武器禁輸措置や停戦と矛盾する活動を控えるよう求める。
20.我々は、国連指定テロリスト個人およびグループへの支援を停止するようにとの呼びかけを再度強調する。テロ行為のすべての加害者は責任を負うべきである。
21.我々は、海上、空中および地上の監視を含む能力の範囲内で、特に衛星画像などの追加リソースの提供を通じて、国連および管轄の国内および国際当局による現在の監視メカニズムの強化に取り組む。
22.我々は、UNSMIL、国連安保理、安保理決議1970(2011)に基づいて設立された委員会、および決議1973(2011)に基づいて設立された専門家パネルに、情報共有を含む、武器禁輸の潜在的な違反について通知することコミットし、すべての国際的なアクターが同じことをするよう呼びかける。
23我々は、国連の専門家パネルがそのような違反を効果的に文書化して報告し、違反の調査を支援し、すべての国際的アクターが同じことをするよう促すことにコミットする。我々は、同パネルが、国連安保理の武器禁輸の違反について調査し、関連するUNSC委員会が継続的に注意喚起するよう奨励する。我々は、国連専門家パネルを支援し、完全に協力することにコミットする。
24.我々は、すべてのアクターに対し、安保理の武器禁輸または停戦に違反していることが判明した者に対して、本日以降、国家ベースの実施措置を含め、UNSC制裁を適用および執行するよう求める。
政治プロセスへの帰還(略)
治安部門改革(略)
経済金融改革
37.我々は、すべてのリビアの主権機関、特にリビア中央銀行(CBL)、リビア投資局(LIA)、国営石油公社(NOC)および会計検査局(AB)を復旧させ、尊重し、統一性、一体性ならびに合法的なガバナンスが重要であることに留意する。それらの機関の取締役会は、包括的で、代表制を有し、活動的でなければならない。
38.我々は、これらのリビア当局からの要請に応じて、国家所有の原則に完全に従って、透明性、説明責任、および有効性を改善するための技術支援を提供し、監査プロセスを含め、これらの機関を国際基準に適合させ、リビアの収入の分配に関する苦情に関するすべての異なる地域の代表が出席するリビア国内対話を用意する。私たちは、リビア政治協定と関連のリビアの法律に従って、関連のリビアの監視機関、特に監査局、行政監視局、国家腐敗防止局、検察局、および関連する議会委員会の能力の向上を求める。
39.国営石油公社(NOC)は、国連安保理決議2259(2015)および2441(2018)に沿ったリビア唯一の独立し合法的な石油会社であることを強調する。我々は、すべての関係者に対し、その施設の安全を引き続き保証し、すべての石油施設とインフラストラクチャーに対するいかなる敵対行為も控えるよう求める。 NOCの管理外のリビア原油およびデリバティブの販売または購入を通じて、リビアの石油インフラストラクチャーに被害を与えようとする試み、リビアの人々に属するエネルギー資源の不法な搾取を拒否し、石油収入の透明で公平な分配を求める。我々は、透明性を改善するというコミットメントの証拠として、NOCによる石油収益の月刊報告発行を高く評価する。
40.我々は、リビアの金融および経済機関の代表との経済対話を支持し、経済構造改革の実施を奨励する。この対話を促進するために、リビアの政府関係者と専門家で構成され、国の制度的および地理的多様性を反映した包括的なリビア専門家経済委員会の設立を支援する。
41.我々は、リビアの自治体のエンパワーメントを支援し、中央政府に、特に南部でのローカルガバナンスを維持するために必要な資金配分の提供に全面的にコミットするよう要請する。
42.深刻な影響を受けた地域、とりわけベンガジ、デルナ、ムルズク、サバ、シルテ、トリポリの各都市での再建プロジェクトを優先的に開発するために、リビアの全領土に対する権限を行使する新たな代表的かつ統一された政府の下で、すべての地域における開発と復興を支援するリビアの復興メカニズムの設置を奨励する。
43.我々は国連安保理に対し、リビア国民の利益のためにリビア投資局(LIA)資産を維持する目的で、LIA資産を凍結し、リビアの金融および経済機関の財務見直しが必要なことを強調する。関連のリビア当局は、LIAとその子会社の信頼できる包括的な監査を含め、LIAの完全性と統一を促進する。
国際的人道法と人権の尊重(略)
ファローアップ
51.我々は、国連事務総長、リビアの特別代表、ベルリンプロセスの議長に、このプロセスと会議の結果をリビア国民に伝えるよう呼びかける。シラージュ首相とハフタル将軍が、これらの結論の付属書として添付されている運用化の支援においてUNSMILが提案した軍事5 + 5委員会の代表者を指名したことを歓迎する。 5 + 5委員会で実質的かつ真剣な話し合いを可能にするために、会議のすべての参加者は、休戦が尊重される限り、さらなる軍事展開や作戦を控えることを宣言する。
52.我々は、これらの結論を附属書として添付したリビア事務総長特別代表による、これらの結論の運用化に対する全面的な支持を表明する。
53.リビアに関するベルリン会議は、紛争の根底にある要因に包括的に対処することにより、リビア危機を決定的に終わらせるために設計されたリビア主導およびリビア所有の広範なプロセスにおける重要なステップの1つであることに同意する。リビアに関するベルリン会議のフォローアップは重要な役割を果たしている。上記のコミットメントの実行可能な活動への転換を成功させることが重要であり、国連だけでなく参加者自身および潜在的に他の加盟国や国際機関も、正確な指標、役割、責任を特定することが重要である。
54. これにより、国際連合の支援の下、リビアに関するベルリン会議の今後の調整を維持するために、今日のリビアに関するベルリン会議に参加したすべての国と国際機関で構成される国際フォローアップ委員会(IFC)を形成する。 IFCは2つのレベルで会合を開催する。:
55.a)シニア幹部職員レベルでの1つの全体会議。UNSMILの議長、さらに移動する共同議長と場所と毎月会合する。 IFCは、これらの結論の実施に対する進捗を追跡し、必要に応じてレバレッジを行使する。各セッションの終わりに、特定の成果またはコンプライアンスを確認する結論が提示される。
56.b)4つの技術作業グループ。最初の実施段階で月に2回開催される専門家レベルでの非公開会議を開催する。ワーキンググループはこれらの結論の集合体に基づいて行動する。各グループは、国連代表者が率いる。非公開セッションでは、参加者は、(i)実施の障害に対処し、(ii)関連情報を共有し、(iii)国連安全保障理事会の権限を損なうことなく運用要件と支援を調整する。
57我々は、このリビアに関するベルリン会議の結論を国連安全保障理事会が考慮するよう促し、SRSGサラーメ代表とUNSMILにベルリンのプロセスの枠組みでなされたコミットメントの実施を支援するよう呼びかける。
https://www.libyaherald.com/2020/01/20/the-berlin-conference-on-libya-conference-conclusions/

(参考2)アル・シラージュ・リビア暫定政府首相のアル・ジャジーラとの独占インタビュー
●リビアと国境を接していないアラブ首長国連邦がなぜリビアの国内に軍事基地を設置しているのかわからない。
●国民和解政府が危機から抜け出すための信頼できるパートナーを見つけられなかったため、以前の経験を考えると、ベルリン会議の結果について警戒しつつも楽観主義を持っている。
●ハフタル将軍への支援国がリビア問題に関する彼らの立場を見直すことを望む。
●ハフタル軍が油田の封鎖を続けた場合、リビアは壊滅的な状況に直面する.。外国の勢力がハフタルに直ちに石油港の再開を迫るべきである。
●港の再開と石油収入の再分配を結びつけるハフタルの要求を拒否した。
●ベルリン会議の停戦と政治協議の呼びかけを尊重するが、ハフタルとは二度と同じテーブルに座らない。

(コメント)1月19日のリビア問題に関するベルリン合意は、トリポリを支配するシラージュ暫定政府軍とリビア東部を拠点にしてトリポリ制圧を目指すハフタル将軍率いるレバノン国民軍の停戦を実現する第一歩として、評価される。シラージュ政権を支持するトルコと、ハフタル将軍を支持するロシア、UAE、エジプトが参加したことで、双方の支持国が武器の供給や傭兵の派遣等を控えるきっかけになったことに意味がある。シラージュ首相とハフタル将軍とも、停戦や武器禁輸をフォローアップする10名で構成される軍事委員会の設置に合意し、それぞれ5名ずつの委員を指名したことも評価される。他方で、シラージュ暫定政府首相のUAEへの不信感、ハフタル将軍と二度と同じテーブルにつかないとの発言、ハフタル将軍の石油収入の配分に関する提案をシラージュ首相が拒否したことなど、双方の溝は全く埋まっていないことが認識され、今次合意が維持されるには、国連のみならず、関係国がどこまで真剣に合意を守り、信頼醸成に努めるのかという意思にかかっていることが伺われ、とりわけ、双方の陣営を支えるロシアとトルコが関係国を抑え込むためにどのまでの影響力を発揮できるのかが鍵となる。

Posted by 八木 at 20:20 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

10日後にイランによるアル・アサド空軍基地へのミサイル攻撃による米軍兵士負傷の事実を確認した米中央軍と8年ぶりに金曜礼拝の説教を行ったハメネイ最高指導者[2020年01月18日(Sat)]
2020年1月8日の、イラク国内のアイン・アル・アサド空軍基地に対するイランの弾道ミサイル攻撃では、トランプ大統領は一部の施設に被害は出たことは認めたものの、米軍兵士に被害は出ていないと発言していた。しかし、10日後の1月17日、米中央軍は、米軍兵士が脳震とうとみられる被害をうけ、すでに独に8名、クウェートに3名搬送されていた事実を初めて認めた(参考1)。米側は脳震とうは数日して症状が出てくることがあると補足説明しているが、駐留米軍のうけた被害が、当初の米側の発表より、深刻であったことを物語っている(下記URLよりPressTVの記事参照)。
一方、イラン国内では、2012年以来8年ぶりに、ハメネイ最高指導者がテヘランのイマーム・ホメイニ・グランドモスクで金曜礼拝を主導し、説教した(参考2参照)。

(米兵11名負傷に関するイランのPressTV報道)https://www.presstv.com/Detail/2020/01/17/616392/11-troops-wounded-Iranian-missile-attack

(参考1)イランのミサイル攻撃による米軍負傷者に対する治療と進行中のスクリーニングに関する米中央軍スポークスマン声明(2020年1月17日)
●1月8日のアル・アサド空軍基地に対するイランの攻撃で米国の軍人は殺害されなかったものの、数人は爆風による脳震とう症状の治療を受け、現在もチェックを受けている。標準的な手順として、爆風の近くにいたすべての隊員は外傷性脳損傷のスクリーニングを受け、適切とみられる場合は、より高いレベルのケアのために移送される。攻撃の数日後、警戒を解かれた一部の軍人はイラクのアル・アサド空軍基地から独のランドスチュール地域医療センターに移送された。クウェートのアリフジャン・キャンプにも追加のスクリーニングのために他の人が送られた。スクリーニング後に任務遂行に支障がないと判断された場合、隊員はイラクに帰任することが期待されている。個々人の医学的状態について語ることはしない。現時点で、8人がランドスチュールに移送され、3人がアリフジャン・キャンプに移送された。キャプテンビルアーバン、米国中央軍司令官
https://www.centcom.mil/MEDIA/STATEMENTS/Statements-View/Article/2059793/statement-regarding-treatment-and-ongoing-service-member-screening-for-injuries/

(参考2)ハメネイ師金曜礼拝主要点(2020年1月17日)
1.神の手
●イスラム革命防衛隊(IRGC)のミサイルが米軍基地を破壊したその日は神を物語る日の一つであった。IRGCの対応は米国の恐ろしい超大国のイメージに対する大きな打撃であった。神を物語る日とは、ある出来事で神の手を感じることを意味する。イランで数千万人、イラクや他の国で数十万人が、コッズ部隊の指揮官の血を称えるために街頭に出てきた日である。IRGCミサイルが米軍基地を攻撃した日は神を物語る別の日であった。我々は、この2日間に神の意思を目撃した。それらの日は歴史を作るターニングポイントであり、普通の日ではない。ある国が力と沈着さを呼び起こして、世界の傲慢でごろつきの勢力をそのようなやり方で平手打ちを加えたことは、神の力の手が関与していることを示している。
●シオニストが支配するメディア帝国と米政権のテロリスト幹部は、我々の親愛なる偉大な司令官を非難するために最善を尽くしたが、全能の神は状況を一変させ、イランだけでなく様々な国で、人々は彼の魂を祈り、米国とシオニストの旗を燃やした。
●地域全体でテロとの戦いで最も優れ、強力な司令官であったソレイマーニ将軍の暗殺が、不名誉な米国政府にさらに不名誉をもたらした。この勇敢な殉教者を暗殺する際に、米国人は戦場で彼に立ち向かうことはなく、密かにかつ臆病な形で犯罪を犯し、それは彼らにより多くの不名誉をもたらした。確かに、数百人のグループは、イランの同情的で祝福された司令官のイメージを侮辱したが、街頭では、ハッジ・カーセム(ソレイマーニ将軍)を称えて、無数の大群衆が参集したではないか。米国人はイランの人々と一緒に行動したことはなく、露骨に嘘をついている。 そのとおりであれば、それはこの国の心臓に有毒な短剣を突き付けていることを意味する。 もちろん、彼らはこれまで失敗しており、今後は酷いことはできないであろう。
2.ウクライナ航空機の誤った撃墜
●テヘラン郊外でのウクライナ旅客機の誤った撃墜で生じた命の損失はつらい悲劇である。説明したIRGC司令官に感謝するが、あいまいさが残っている。事件をフォローアップし、同様の事件の再発を真剣に防止する必要がある。敵の目標は、「偉大な出来事」(ソレイマーニ将軍のために行われた葬儀と米軍基地に対するIRGCのミサイル攻撃)を覆い隠すことだったが、彼ら(米国)は間違えた。我々は、遺族と悲しみを分かち合い、敵の陰謀と誘惑に立ち向かい、心が痛みと悲しみに満ちていたにもかかわらず、敵(米国)の望みに反して行動した(被害者の)両親や遺族に感謝する。この飛行機に搭乗していた愛すべき人を亡くした母親のひとりが私に手紙を書いて、「私たちはイスラム共和国とあなたの志しのそばに立っている」と伝えてくれた。 これには勇気、洞察、高い意識が必要である。
3.欧州3国への見方
邪悪な英国政府、仏政府、およびドイツによる最近の動きは、国内の最近の展開を覆い隠すことを目的としていた。彼らは、核問題を安全保障理事会に再び持ち込むとイランを脅迫した。幸いなことに、イラン当局はこれに強く反応した。これら諸国は、サッダーム・フセインに強制された戦争中にできる限り支援を提供したのと同じ3カ国である。独政府はサッダーム・フセインに化学兵器と装備を提供し、我々の都市と戦線を標的にした。これらの攻撃の影響は、退役軍人の遺体からも明らかである。仏政府は、元イラク独裁者にスーパーエテンダードの攻撃用戦闘機を提供し、それらは1980年代のイランの石油タンカーを標的とするために使用された。これらは彼らの記録に基づくものである。英国政府はイランの敵とサダム・フセインへの支援に全力で取り組んでいた。これらが彼らの背景にあり、今日も同じように行動している。彼らをこのように見なければならない。(米国が共同行動計画(JCPOA)から撤退した後)欧州3国政府は話し合いの中で、無意味な発言を続けた。最初の日から、私はこれらの3つの政府を信用しなかった彼らは何もせず、米国に奉仕するであろう。今からほぼ1年後、彼らが文字通り米国の小作人であることが明らかになるであろう。彼らは三国の主人である米国でさえ、イランを跪かせることに失敗することを知らねばならない。欧州人は会談のテーブルにつくときでさえ、彼らの交渉は欺瞞と策略がまじりあっている。彼らは交渉の席に着く人たちであるが、 交渉テーブルにいる「紳士」はバグダッド空港で(ソレイマーニ将軍を暗殺した)テロリストそのものである。彼らは同じ人物であり、差異はない。彼らは着替えるだけである。ベルベットの手袋の後ろに鋼の手が隠されている。彼らは、我々が信頼できるものには到底なれない。
4.イラン国民へのメッセージ
強くなることは、イラン国家が前進する唯一の方法である。 強くなるように努力すべきである。 交渉には問題はない。もちろん、米国とではなく、他の国と交渉する。力は単なる軍事力だけではない。 国の経済も強化する必要がある。 石油への依存は終わらなければならず、国は石油への依存を取り払わなければならない。 科学技術の飛躍を続けなければならない。そうすれば、イランはそれほど遠くない未来に強力になり、敵がイスラム共和国を脅かすことさえしなくなる。
5.イラク国民他同盟国へのメッセージ
●戦場でソレイマーニ将軍と対決することを敢えて避けた米国人は、バグダッドの空港で同行者と一緒に暗殺することを選択した。いま一度、イラクとイランの血が流され、地上で混じり合った。ソレイマーニ将軍の暗殺は、両国間の分裂を目論む外国の支援計画に失敗をもたらした。計画には、多くのお金が投入され、無責任な人々たちが、イランのイラク国民とイラクのイラン国民に対する悪意を助長するために使われた。イラクにおける米国の目標は内戦を引き起こし、最終的には国を分断し、その抵抗勢力を根絶することである。シリアやレバノンなどの国々における外国の支援による対立と不安定性も、イラクを標的にした「敵の扇動」の一部である。敵に抵抗し、それを恐れないことは、これらの国々の解放につながる「唯一の道」である。
https://www.presstv.com/Detail/2020/01/17/616396/Iran-Leader-Khamenei-Friday-prayers-worshippers

(コメント)8年ぶりにハメネイ師が直接金曜礼拝の説教を行ったことは、ウクライナ航空機を誤って撃墜し、その事実を3日間、イラン政府が隠ぺいしていたことに対する一部国民の怒りの高まりを放置しておくことは、一時期の燃料価格高騰で高まった国民の政府・指導体制への怒りを再燃させ、事態をコントロール不能に追い込み、ひいては体制の維持にも影響が及びかねないことを懸念して、その沈静化、国内の引き締めに出たものとみなすことができる。金曜礼拝の中で、ハメネイ師は、ソレイマーニ将軍殺害を数百万人のイラン国民が街頭に出て悲しんだこと、ならびにイラク国内の米軍基地にミサイルを撃ち込んで反撃したことに、「神の手」が差し伸べられたと感じると評して、間接的に、イラン国民に対して米国に踊らされることなく、神の意思に従うよう求めたものとみることができる。ハメネイ師はイラン側によるウクライナ航空機撃墜について、真相究明、再発防止に取り組むとともに、犠牲者の母親のひとりの手紙を紹介して、誤射したイラン政権側への国民の怒りを鎮めようとしている。一方、イランの核合意の第5段階目の履行停止に反応し、国連での制裁再開をちらつかせた欧州3か国に対しては、サッダーム・フセイン時代の欧州のイラク支援を引き合いに出して、これら3国は信頼できないと激しく非難した。一方、イラク、シリア、レバノンの親イラン・グループには、ともに抵抗を続けるようアピールしているこのような中、1月8日のイランIRGCのアイン・アル・アサド基地へのミサイル攻撃では、トランプ大統領の米軍兵士の人的被害は出ていないとの当初声明にもかかわらず、17日米中央軍は、11名の米軍兵士が脳震とうで独、クウェートに搬送されていた事実を10日後に発表した。米軍兵士に死者は出なかったとされるが、イランの攻撃は、事前通報したイラクを通じて米軍にも伝わっていたとみられるにもかかわらず、当初伝えられたより、大きな被害をアル・アサド空軍基地と米軍兵士にもたらしていたことが明らかになった。トランプ大統領は、米兵負傷の事実は把握しながら、イランとの本格的な戦闘突入により泥沼に入ることを回避するため、あえて、この事実を公表しなかったものとみられる。

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オマーンのカブース国王逝去とハイサム新国王就任(主な弔問者)[2020年01月17日(Fri)]
1月11日のカブース国王逝去をうけ、ハイサム新国王は12日以降世界各国から多数の弔問使節を受け入れた。主な外国からの訪問者は、現地報道等から次のとおり。(順不同)
(アラブ諸国)
1. サバーハ・クウェート首長
2. タミーム・カタール首長
3. ハマド・バーレーン国王、サルマン・ビン・ハマド・バーレーン皇太子
4. サルマン・サウジ国王
5. ムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子(UAEの事実上の指導者)
6. アブドッラー2世ヨルダン国王
7. ハーディ・イエメン大統領
8. カイス・サイード・チュニジア大統領
9. イスマイル・オマール・ゲレ・ジブチ大統領
10. ムハンマド・ビン・ラーシドUAE連邦副大統領(ドバイ首長)
11. アッバース・パレスチナ暫定自治政府大統領
12. シェリーフ・イスマイール・エジプト首相
13. アブドルアジーズ・ジェラード・アルジェリア首相
14. フアード・ムハンマド・フセイン・イラク副首相
15. スーダン統治評議会弔問使節
16. UAEのシャルジャ、アジュマン、ラスアルハイマ、フジャイラ、ウムアルカイワイン各首長
17. モウレイ・ラシード・モロッコ国王兄弟
18. ナジーブ・ミカティ・レバノン元首相
19. ハニーヤ・ハマース代表
(中東域内)
1.オクタイ・トルコ副大統領
2.ザリーフ・イラン外相
(域外)
1. ウィリアム・アレキサンダー・オランダ国王
2. チャールズ英国皇太子
3. ボリス・ジョンソン英国首相
4. 安倍総理
5. サルコジ元仏大統領
6. ベン・ウォーレス英国防長官
https://www.oman.de/fileadmin/pdf/Death_Qaboos_OmanObserver_13-01-20.pdf
https://gulfnews.com/world/gulf/oman/mohammed-bin-rashid-and-saudi-king-salman-in-oman-to-give-condolences-after-passing-of-qaboos-1.68979076

2.ネタニヤフ・イスラエル首相声明(2020年1月11日)
●私はオマーンの人々に哀悼の意を表し、スルタン・カブース・ビン・サイードの逝去に際して深い悲しみを分かち合う。約一年前、彼は妻と私を重要で非常に感動的な訪問に招待し、 彼は、地域の平和と安定を前進させ、我々の地域の平和と安定を前進させるためにたゆまぬ努力をした優れたリーダーであった。
オマーンの外交政策と地域の平和のための仕事が続くと語ったハイサム・ビン・ターレクの新国王任命とその発言について、新国王に祝意を表する。
https://www.gov.il/en/departments/news/spoke_oman110120

(コメント)中東アラブ情勢のウォッチャーにとって、ある国の指導者の逝去に際して、どの国がどのようなレベルで弔問使節を派遣し、あるいはメッセージを発するかは、その国がどのような外交政策を展開してきたのか、どの国と友好関係を維持してきたのか、また、その国が域内でどのような重みを有するのかを知るうえで重要な機会となる。
まず、アラビア半島の国々をみると、GCC諸国内ではサウジ他すべて国のトップ(UAEは実権を握っているアブダビ皇太子)が弔問に訪れた。イエメンもハーディ(正統)政府大統領が訪問した。一方で、アラビア半島以外のアラブ諸国については、トップとしてアブドッラー2世ヨルダン国王とチュニジア大統領、ジブチ大統領、パレスチナ暫定自治政府大統領が出席したが、域内大国エジプトやイラクは、No2の対応となった。シリアは、アサド大統領が新国王に弔電を発出したほかは、ダマスカスのオマーン大使館にシリア外務省ミイカード副大臣が弔問に訪れるにとどまったことが報じられている。
米国との緊張が高まるイランのザリーフ外相の来訪や、ハマースのハニーヤ代表の来訪もオマーンが培ってきた外交の特徴、独特のネットワークを示すものとして注目される。2018年10月オマーンを訪問してカブース国王と会談したイスラエルのネタニヤフ首相は、声明を発出し、オマーン国民に弔意を表明した。イスラエルからは1994年に当時のラビン首相が外交関係のないアラブ諸国への訪問としては初めてオマーンを訪問しており、以来、この外交的パイプを維持してきている。旧宗主国の英国は、チャールズ皇太子、ジョンソン首相、国防長官が弔問に駆け付けた。日本は、安倍総理の中東歴訪中にカブース国王が亡くなったため、安倍総理のオマーン訪問は、ハイサム新国王に日本国を代表して弔意を表し、閣議決定した海上自衛隊船舶のオマーン湾ほか派遣について説明し、オマーンの港湾使用の可能性について、要請を行う絶好の機会となった。2008年文化遺産大臣時代、外務省賓客として訪日したハイサム新国王と皇太子時代会見したことのある天皇陛下は、カブース国王逝去にあたっての弔電を発出し、地元紙でも大きく取り上げられた。
エリザベス女王、プーチン大統領、周近平主席、マクロン大統領は新国王に弔電を送り、トランプ大統領はカブース国王の逝去を悲しむとの声明を発出した。

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トルコ・シリア情報機関トップの会談が両国国営メディアで公にされた意味[2020年01月15日(Wed)]
1月13日、トルコの情報機関MITのハカン・フィダン長官とシリアのアサド政権の国家治安局長アリ・マムルークがモスクワで会談した。会談は、シリア国営通信SANA、トルコの通信社TRTほか各メディアが報じた。トルコとシリアの情報機関が、内戦中も非公式に接触していたとみられるが、両国の情報機関のトップ同士の会談の事実が公にされるのは極めて異例。シリアにおける緊張緩和措置は、アサド政権を支えるロシアとシリアの反体制派を支えるトルコが中心になり進められてきたが、トルコは、2011年にアサド政権による民主主義抗議運動への弾圧に反発し、アサド政権との関係を打ち切るとともに、ロシア軍の介入によりシリア内戦におけるアサド政権の軍事的優位が明らかになったあとも、シリア政府高官との直接接触を避けてきた。またトルコは、シリア内戦を逃れてきた350万人以上のシリア難民を受け入れ、イドリブにおけるシリア反体制派のスポンサーを担うとともに、シリアとの国境沿いに2016年8月と2018年1月、さらに2019年10月に越境進軍し、シリア国内の国境地帯を、実効支配している。

トルコ・シリアの情報機関トップは、イドリブの停戦維持のほか、トルコがPKKと同根のテロ組織とみなすクルド人民防衛隊(YPG)のユーフラテス川東方域の国境地帯からの排除についても協力の必要性を話し合ったものとみられる。シリアのアサド政権は、内戦当初、反体制派武装勢力の攻勢に苦しみ、戦線を広げないために、クルド人勢力のシリア北東部、北西部での事実上の自治を黙認してきた。しかし、ISIS掃討作戦で、クルド人勢力が米主導の有志連合と協力し、米軍を後ろ盾にその支配を強化しようとしたことで、徐々に溝が広がり始め、2016年8月にはアサド政府軍は、シリア北東部ハッサケのクルド人部隊に空爆を加えたことがあった。2019年10月のトランプ大統領のシリア北部からの米軍撤退発言をうけ、トルコは「平和の泉」作戦を発動し、シリア北部のユーフラテス川東域の国境沿いに進軍し、ロシアとの間で「安全地帯」設置と同地域からのクルド人部隊の退去、ロシアとの共同パトロールを含む合意を結んだ。シリアのアサド大統領は、同合意について、シリアの主権と領土の一体性を維持する立場に変わりはないことを強調したうえで、シリアの全領土の回復を目指す第一歩として、トルコ・ロシア合意に反対しないとの立場を明らかにしていた。シリア・トルコ間には、1998年にシリアの領土からPKK分子を排除することを謳ったアダナ合意が存在する。この合意に基づき、PKKの党首アブドッラー・オジャランはシリアから追放され、1999年2月逃亡先のケニアで逮捕され、トルコに戻され、当初死刑判決、その後終身刑の判決をうけ、現在もイムラル島の刑務所に収監されている。トルコのチャブシュオール外相は、アダナ合意は失効したとは述べていないが、現在のアサド政権にはその履行の能力がないと述べていた。ロシアのラブロフ外相は、アダナ合意に基づき、トルコ・シリア関係(アサド政権)の正常化に近づけたいという意向を有している。今回のモスクワでのトルコ・シリア両情報機関トップの会談の成果は直ちに公になるものではないが、通常裏方である情報機関同士の会談を両国の国営メディアがあえて公表したことで、シリア政府が、PKKとのパイプを有するYPGを取り締まることができるのであれば、すなわち、アダナ合意の内容を履行することができるのであれば、トルコは将来的に北シリアに留まるものではないことを示唆するとともに、「安全地帯」から依然完全退去していないとみられるYPG要員の域外への退去に協力を求めた可能性がある。PKK/YPG対策で、シリア政府がトルコに協力するのであれば、トルコ政府としてもアサド政権との対話を拡大していく可能性を示唆したものともとらえることができる。
もちろん、この結果、最大の貧乏くじを引かされるのは、PYD(クルド民主統一党)とその軍事組織YPGである。YPGとその女性部隊YPJは、米主導の有志連合に協力して、シリア拠点のダーエッシュ(ISIS)支配からの解放に献身し、1万1千名の犠牲を払ったが、米国に見捨てられ、トルコとの関係を重視するロシアやその影響下にあるアサド政権からも見捨てられる恐れが強まっている。

アリ・マムルーク国家安全局長は、スンニー派の湾岸諸国首脳とも一定のパイプを有しているほか、1月5日のテヘラン市内でのカーセム・ソレイマーニIRGCコッズ部隊司令官の葬列にも駆け付け、アサド大統領からハメネイ最高指導者への弔意を伝えている。
https://www.alaraby.co.uk/english/news/2020/1/14/turkish-syrian-regime-intelligence-chiefs-meet-in-moscow

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中東の緊張緩和に努めてきたオマーンのカブース国王死去とハイサム新国王の就任[2020年01月12日(Sun)]
1.2020年1月11日、オマーンのカブース国王(スルタン・カブース・ビン・サイード・アル・サイード)が死去した。享年79歳であった。国王は、1940年11月18日オマーン南部のドファール州の州都サラーラ生まれで、ポルトガル支配を終わらせたブーサイード王朝の直系子孫であった。王朝は1741年にブーサイード家の最初の創設者(イマーム・アフマド・ビン・サイード)に遡り、王家は国の支配権を引き継いでおり、継続的に支配している最も古いアラブの家族の1つと考えられている。カブース国王は、インドとサンドハーストの王立陸軍士官学校で軍事教育を受け、1964年に帰国、1970年に無血クーデターで父親から権力を奪取した。首相、国防大臣、財務大臣、外務大臣、軍の指揮官を兼務した。カブースは、父のスルタン・サイード・ビン・タイムールと王妃マズーン・アル・マシャニの間に生まれた唯一の子供であった。国王は1976年にいとこと結婚したが、すぐに離婚し、再婚せず、子どもはいなかった。
https://www.aljazeera.com/news/2015/04/oman-sultan-qaboos-bin-al-dies-79-150420113058189.html
2.1996年にカブース国王によって公布されたオマーン基本法によれば、「後継者は王族の一員であり、スルタンの死から3日以内に王家評議会によって選ばれなければならない」と規定されている。この規定の下で、評議会内の協議で後継者を選択できない場合、カブース国王によって書かれた封印された手紙が開かれ、その中に後継者名が記されることになっていた。1997年カブース国王は、フォーリン・アフェアーズ誌とのインタビューで、「私はすでに優先順位をつけて2人の名前を書き留め、2つの異なる地域の封印された封筒に入れた」と述べていた。基本法第5条には、「オマーン国国王はサイイド・トルキー・ビン・サイード・ビン・スルタンの直系男子であり、オマーンのイスラム教徒を両親にもつ正当な息子でなければならない」と規定されている。今回、王家評議会の要請に基づき、王族の前で国防評議会が前カブース国王の後継指名書簡を開封し、1954年生まれのカブース前国王のいとこのハイサム(ハイサム・ビン・ターリク・アル・サイード)殿下の国王就任が決まったとされる。
https://arabi21.com/story/1236533/هيثم-بن-طارق-تاسع-سلاطين-عمان-ووصية-قابوس-بروفايل
3.ハイサム新国王は、国家基本法に従い、11日朝、オマーンの新たな国王としてオマーン評議会緊急会合において、就任の法的誓約を行った。国王に就任の上、カブース国王の葬儀にも立ち会った。新しい国王は、2002年2月以来国王就任まで文化遺産大臣を務めたほか、将来のビジョン「オマーン2040」委員会の委員長であり、かつて、外務省事務総長(ナンバー2)等さまざまな役職を歴任した。カブース国王の特使をしばしば務めたこともある。王位を継承する子供や兄弟がいなかった前国王とは異なり、ハイサム国王には、娘2人と息子2人の4人の子供がいる。新国王には、タラル、アサード、カイス、シハブ、アダム、ファリス、カミラ、アマルという8人の兄弟がいる。
https://www.aljazeera.com/news/2020/01/haitham-bin-tariq-named-successor-oman-sultan-qaboos-200111060309444.html

(コメント)イラン包囲網を強めようとするサウジが主導するGCCにあって、オマーンは、イランも含め全方位外交を展開し、中東地域の緊張緩和に独特の役割を果たす国として知られている。11日に就任したハイサム新国王は、TV演説で国民に向け、カブース国王の足跡を継承し、他の国の内政に干渉することなく、人々と国家間の平和的共存に基づく外交政策を採用し、すべての紛争に平和的で友好的な解決策を提供し、呼びかける、と語った。
オマーンは、2015年のイラン核合意の交渉を進めるための米・イラン間の事前協議の場を提供したことがある。また、イエメン内戦についても、フーシー派とサウジとの間の橋渡しを行ったこともある。長年アラブと対立関係にあったイスラエルともパイプを有しており、昨年10月には、ネタニヤフ首相夫妻がマスカットを訪問し、カブース国王と会談している。中東和平多国間会議の成果である中東海水淡水化研究センター(MEDRC)のメンバー国には未だイスラエルが名を連ねている。緊張が高まるホルムズ海峡の船舶航行の安全についても、イランと海峡の半分に責任を有するオマーンの役割は極めて重要である。ハイサム新国王は、日本政府の招待に応じ、2008年3月末外務省賓客として訪日し、オマーンの将来を担う重要人物として当時皇太子の天皇陛下とも会談した経緯がある。安倍総理の今次中東3か国歴訪においてオマーン訪問は、図らずも新国王に弔意を伝え、日本とオマーンとの友好関係を確認し、中東地域の緊張緩和に向けて双方の取り組みを確認する極めて貴重な機会になることは間違いない。

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トルコ・ストリーム・ガスパイプライン完成の意味[2020年01月10日(Fri)]
1月8日、トルコのエルドアン大統領は、プーチン・ロシア大統領、ヴーチッチ・セルビア大統領、ボリソフ・ブルガリア首相の出席を得て、イスタンブールで、トルコ・ストリーム天然ガスパイプラインの完成式を開催した。トルコ・ストリーム天然ガスパイプラインの総容量は315億立方メートルで、そのうちの一本はトルコ国内の消費者向けに157.5億立方メートルのガスを西シベリアから運び、他の一本は、トルコ経由でロシアの天然ガスを欧州に輸送するために建設された。
ロシアから欧州への天然ガスの輸送については、2011年以来運用されている年間生産量550億立方メートルのノルド・ストリームプロジェクトは、バルト海を経由してロシアのガスを直接ドイツに運んでいる。さらに、ロシアの国営エネルギー会社ガスプロムが主導するノルドストリーム2はほぼ完成しており、年間生産能力はほぼ同じで、最初のパイプラインルートとほぼ並行して稼働している。合わせて、欧州大陸の4分の1の年間ガス需要に対応している。今回完成したトルコ・ストリーム天然ガスパイプラインの2番目のラインでは、トルコ経由で157.5億立方メートルのガスを欧州に輸送することになる。トルコの企業BOTASは、トルコ国内の既存のガスグリッドに接続する最初のラインを建設し、Gazprom-BOTAS合弁会社が運営する2番目のラインは、トルコのトラキア地域のトルコと欧州の国境まで延長される。
プーチン大統領は完成式典でスピーチし、今回のプロジェクトは、黒海横断の1800km以上のパイプラインを海底に敷設する必要があったが、そのうちの何か所かは2km以上の深さにあったこと、建設業者は最新の設備を利用することで、1日に6kmを超えるパイプラインの水中最速設置の世界記録を打ち立てたと自負した。

(コメント)トルコ・ストリーム天然ガスパイプラインの完成は、ロシア・トルコ関係を強化し、トルコのエネルギー需要に応えるという意味合い以上に、ロシアとトルコの地中海沿岸地帯における影響力拡大を目指す戦略的重要性を有している。1月2日、ギリシャ、キプロス、イスラエルは、全長1900kmの欧州イタリア方面を結ぶ総額60億ユーロとみられる東地中海ガスパイプライン建設計画に署名した。この計画に、世界でトルコのみが承認している北キプロス共和国とトルコが除外されているとして、トルコは強く反発し、昨年11月27日、トルコはリビアの暫定政権との間で軍事治安協力と海上境界設定にかかる2つの覚書に署名した。エジプト、UAE、ロシア、仏が事実上支援するハフタル将軍率いるリビア国民軍(LNA)のトリポリ攻勢を凌ぐ必要に迫られているシラージュ暫定首相は、エルドアン大統領に対して、トルコ軍の派遣を求め、大統領は実際に議会の承認を得て実際にトルコ軍部隊(注:一部にトルコが支援するシリア反体制派部隊も含まれているとされる)を派遣した。一方、エルドアン大統領は、リビアとの間で海上境界設定の合意を結び、ギリシャ、キプロス、イスラエルの東地中海パイプラインがトルコ・リビアのいずれかの海域を通過せざるを得なくなる状況をつくることで、トルコを巻き込まない東地中海パイプライン構想はあり得ないという立場を鮮明にすることとなった。また、トルコ・ストリームの2本目のラインを使用すれば、地中海海底に莫大な費用をかけてパイプラインを建設するより、安価に欧州への天然ガスの輸送が可能になるとアピールする狙いもある。東地中海では、巨大なガス田が発見され、イスラエル、キプロス、エジプトがそれぞれ天然ガスの開発計画を進めており、どのルートで、どの国々が協力して、どこにガスを輸送するのか、関係国の凌ぎあいが激化している。
(東地中海パイプラインに関するロイター記事)https://www.reuters.com/article/us-greece-cyprus-israel-pipeline/greece-israel-cyprus-sign-eastmed-gas-pipeline-deal-idUSKBN1Z10R5
(アナドール通信記事)https://www.aa.com.tr/en/economy/turkeys-key-gas-pipeline-to-be-launched-wednesday/1695468
(ロシア大統領府発表)http://en.kremlin.ru/events/president/news/62553

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ソレイマーニIRGC司令官殺害後の展開(IRGCのイラク国内米軍基地攻撃他)[2020年01月08日(Wed)]
1.1月6日、殺害されたソレイマーニ・イスラム革命防衛隊(IRGC)コッズ部隊司令官の遺体を運ぶテヘラン市内の葬列には、司令官の死を悼む数百万人のイラン国民が参集した。ソレイマーニ司令官の娘ザイナブは、「米国とシオニズム(関係者)は、父の殉教が抵抗戦線でより多くの人間の本能を目覚めさせたことを知るべきである。 それは彼らの人生を悪夢にし、クモの巣を粉砕するであろう」と語った。遺体は、その後7日故郷のケルマンに移送された。ケルマンでの葬列には、多くの民衆が参集し、棺に近づこうとした群衆が押し倒されて、少なくとも56名が圧死し、200名以上が負傷した。
https://www.presstv.com/Detail/2020/01/06/615474/Iran-General-Soleimani-funeral-procession-Tehran-Abu-Muhandis

2.1月7日、イラン議会は、トランプ大統領の命令で、米軍がIRGCコッズ部隊のソレイマーニ司令官が殺害されたことをうけ、米国防総省と関連企業・機関を、テロリストに指定する動議を233人の議員全員満場一致で可決した。米国務省は、昨年4月15日 IRGCを外国テロ支援組織に指定(4月8日発表)していた。イランは、これに対抗し、米政権を「テロ・スポンサー国家」に指定し、「米中央軍司令部(CENTCOM)およびその系列部隊を「テロ集団」に指定していた。
議会はさらに、イランの国家開発基金から2億ユーロを、ソレイマーニ将軍の後任のエスマイール・ガーニィ(Esmail Ghaani)准将が率いることになったIRGCコッズ部隊に割り当てるよう政府に要請する決議を行った。
https://www.presstv.com/Detail/2020/01/07/615554/Iran-parliament-pentagon-terrorist

3. IRGCは、ソレイマーニ司令官殺害の報復として「殉教者ソレイマーニ」作戦を発動し、イラク西部のアンバール県のアイン・アル・アサドの米国空軍基地を標的に、数十発(注:実際には10数発の模様)の地対地ミサイルを撃ち込んだと発表。国防総省スポークスマン、ジョナサン・ホフマンは声明で、標的となった基地はアル・アサド空軍基地であり、イラクのクルディスタン地域のエルビルにある基地も攻撃されたと発言し、攻撃の事実を確認した。IRGCは声明の中で、「米国の同盟国がテロリスト軍の基地を提供していることを警告する。イラン・イスラム共和国に対するあらゆる形態での攻撃の起点となる国はIRGCの標的にされるであろう」としてイスラエルほか同盟国にも警告を発した。ザリーフ外相は、「イランは、国連憲章の第51条に基づいて、イランの市民と高官に対する愚かな武装攻撃がそこから開始された基地を標的として、自衛のための釣り合いのとれた措置を講じ、実行した。我々は、エスカレーションや戦争を求めていないが、攻撃から自らの身を守る。」とツイートした。トランプ大統領は、「すべては順調。ミサイルは、イラクにある2つの軍事基地でイランから発射された。 現在被害と損害を評価中。 ここまではうまくいっている。米国は、世界で最も強力で装備の整った軍隊を保有している。 明日の朝に声明を発表する。」と発言。現時点まで、米軍兵士に死者は確認されていない
https://www.presstv.com/Detail/2020/01/07/615621/IRGC-Ain-al-Assad-airbase-Anbar-province-

(コメント)米軍に殺害されたIRGCコッズ部隊のソレイマーニ司令官の葬列にはテヘランでも、マシュハドでも、ケルマンでも数百万人規模が参集した。最終的に埋葬された司令官の故郷ケルマンにも多数が参集し、棺に近づこうとした民衆56名が圧死した。テヘランでの追悼式典でソレイマーニ司令官の死に涙したハメネイ最高指導者は、米国で今回の事件に関わった者に厳しい復讐を誓った。ソレイマーニ司令官の死を悼むシーア派民衆は、三代目イマーム・フセインの殉教のイメージを重ね合わせている。司令官の棺を運ぶ車両には、ソレイマーニから流された血を共有し、痛みを分かち合うため、次から次に群衆から布が投げられ、それを車両上の関係者が投げ返す姿が切れ間なく目撃された。
現地時間8日未明のイラク国内の米軍駐留基地へのミサイル攻撃は、ハメネイ最高指導者が宣言した3日間の国内の喪が明けた直後に実施された。イランは、イラク政府に攻撃を通告したとされる。ミサイル攻撃実行後、ザリーフ外相は、ソレイマーニ司令官殺害作戦の起点となった基地への国連憲章51条に基づく自衛的行為であったと述べていること、また、現時点で米軍兵士の被害は入っておらず、今回の攻撃自体はかなり抑制的なものであったことが認識される。しかし、トランプ大統領がこれに反応し、イラン国内のIRGC基地等を攻撃すれば、IRGCや傀儡部隊が、イラクやシリアの米軍基地、あるいはイスラエルへの攻撃の可能性もあり、当面、トランプ大統領が日本時間8日夕にも発出するとされる声明が注目される。1月7日イラン議会は、米国防総省とその関連企業、組織全体をテロリストに指定しており、さらに、IRGCは、UAEに対して米軍がザフラ基地からイラン国内を標的に発進すればUAEを標的にすると警告しており、同時にイスラエルに対しても警告を発した。米軍がイラン国内の標的を攻撃すれば、一挙に域内の米軍基地あるいは米の友好国を巻き込んで報復合戦が始まることが懸念される。

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