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イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

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米国のイラク戦争開始に立ちはだかった稀有な政治家シラク(元)仏大統領[2019年09月30日(Mon)]
9月26日、ジャック・シラク元仏大統領(1995-2007)が86歳で逝去した。30日には、マクロン大統領が主宰して国葬が執り行われる。葬儀には、歴代の仏大統領のほか、外国要人も出席の予定で、ロシアのプーチン大統領も参列する予定。シラク大統領の外交で、とりわけ記憶に残っているのは、2003年ブッシュ大統領が、英国を巻き込んでイラクへの軍事介入を行おうとした際、最後まで「NO」を貫きとおしたことが印象的である。国連安保理で、パウエル国務長官がサッダーム・フセインは大量破壊兵器を隠し持っているとして大見得を切り、軍事侵攻を正当化しようとしたのと対照的に、側近のドビルパン外相は、仏政府を代弁して熱く戦争に強く反対した。シラク大統領は、当時、「戦争は常に最後の手段であり、失敗を認めることであり、常に最悪の解決策である。なぜなら、それは死と悲惨をもたらすからである」と述べ、米国の方針に断固立ちふさがった。
シラク大統領は、2005年2月、ベイルートの車爆弾テロで殺害されたラフィーク・ハリーリ(元)首相(スンニー派、サウジのゼネコン「オジェ」の事業で成功して政治家になった人物。現在のレバノン首相のサアド・ハリーリはラフィークの息子)の盟友であり、悲しみと怒りはすさまじく、この事件の背後にあるとみられたシリアのバッシャール・アサド大統領を糾弾し、長らくの懸案だったシリア軍のレバノンからの撤退を実現させた。
2007年5月に退任後、シラク夫妻は、パリのセーヌ川沿いのハリーリ元首相のアパートに一時的に転居したとされる。サアド・ハリーリ現首相は、シラク大統領逝去の報に接し、「私は殉難者父ラフィーク・ハリーリ首相の魂の友であり、家族の兄ともいえる親愛なる友人を個人的に失なった。」とコメントした。

Posted by 八木 at 14:58 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

8月25日のナジュラーン軍事作戦の戦果を5週間後に発表したイエメン・フーシー派[2019年09月30日(Mon)]
イエメン(反体制派)軍スポークスマンのサリー准将は、次のように、「神に賜った勝利作戦(Operation Victory from God)」の戦果を発表し、関連動画を公開した。
●イエメン国境付近のサウジ領内ナジュラーンで、待ち伏せ攻撃を含む作戦が実施された。
●サウジアラビア軍のメンバーとサウジアラビアの支援を受けたイエメンの戦闘員500名以上が殺害され、あるいは負傷した。
●サウジアラビアの将校を含む、サウジ主導のアラブ連合軍の2,000人以上の人員が捕虜となった(注:大半はイエメン軍兵士)。
●数百台のピックアップトラック、装甲車、装甲兵員輸送車(APC)、および工作車が捕獲された。少なくとも15台の他の車両が破壊された。
(一部動画を含むアルジャジーラ記事)https://www.aljazeera.com/news/2019/09/yemen-houthi-rebels-release-saudi-attack-video-190929130644121.html

(コメント)関連動画の公開で明らかになったのは、ナジュラーンでの作戦が実行されたのは8月25日であり、その作戦は72時間続いたとされるが、フーシー派の発表は約5週間後の9月28日であったということである。直前に何があったのかを振り返っておきたい。
8月13日 イランのハメネイ最高指導者は、フーシー派のムハンマド・アブドル・サリーム報道官を、フーシー派高官としては初めて公式にテヘランで会見し、フーシー派代表のアブドル・マーリク・フーシーからの親書を受け取った。
8月17日 アブドル・マーリク・フーシーは、演説の中で、今後友好国との外交活動、とりわけイランとの外交を重視する姿勢を明らかにした。
8月18日 フーシー派の初めての外国大使として、イブラヒーム・ムハンマド・ダイラミーが駐イラン(フーシー派)大使に任命された。
8月25日 フーシー派によるナジュラーン作戦開始(以後72時間作戦継続)
8月28日 UAE空軍によりアデンおよびアビヤン県ザンジバルへの同日夜半からイエメン政府軍に対する10回の空爆で300名以上の死傷者発生。
9月14日 サウジ・アラムコ石油施設2か所がドローン、巡航ミサイルによって被弾。フーシー派はドローン10機を使用して攻撃を行ったとの声明発出(米は、これを否定し、イランからの攻撃であったと主張)
9月20日 フーシー派は、サウジへの軍事攻撃の一方的停止を発表

8月28日のUAE軍によるイエメン南部分離主義者への空爆は、アラブ連合軍内部の亀裂を物語るものとして、驚きであったが、この直前、ナジュラーンに駐屯するハーディ政権側のイエメン政府軍が、フーシー派の軍事攻勢で大打撃を受けていたことが明らかになった。政府軍は混乱し、アデンでの反乱にも効果的に対処できなかったものと思われる。また、ハメネイ師がナジュラーン作戦の直前にフーシー派代表団と初めて公式に会見していたことは、8月25日の軍事作戦の計画概要が、イラン側に伝えられていた可能性が高いことを示唆している。サウジ側からは、8月の時点でも、今回のフーシー派によるプレス発表後でも、公式な反応はなく、フーシー派の発表内容を肯定も否定もしていない。8月25日の作戦の戦果をフーシー派が5週間隠していたことは謎であるが、9月20日のフーシー派のサウジ攻撃停止声明は、一連のサウジ攻撃能力を最大限アピールした直後に発せられた点に注目する必要がある。

Posted by 八木 at 10:05 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

サウジ領内ナジュラーンにおけるフーシー派によるサウジ軍将校を含む同盟軍数千名拘束報道[2019年09月29日(Sun)]
9月14日のアラムコ石油施設への攻撃・被災に続き、9月28日、事実であれば、サウジにとって大きな衝撃となる声明が、イエメン反体制のフーシー派軍スポークスマンから発せられた。これによれば、主に親サウジのイエメン正統政権(ハーディ政権)軍の3個旅団がフーシー派から攻撃をうけ、サウジ軍の司令官や将校、兵士を含め、数千人が捕虜になったとされる。捕虜は、サウジ主導連合軍の報復攻撃を避けるため、安全な場所で、拘束されていると発表された。フーシー派はアラムコ施設攻撃の犯行声明を発出したが、米、サウジは、同攻撃はサウジにとっての南側(フーシー派の拠点であるイエメン北部)ではなく北側から実行されたものでイランに責任があると非難した。今回の声明が事実に基づくものであるとすれば、2015年3月のサウジ主導のアラブ連合軍のイエメン内戦介入以来、サウジとその同盟軍が陸上で喫した最大の軍事的敗北といえる。フーシー派は今回の作戦の詳細と結果について、近く公表するとしており、その発表が注目されている。なお、フーシー派は9月20日にサウジへの攻撃の一方的停止を宣言し、同様の措置をサウジがとることを呼び掛けていたが、サウジ側からは反応がなかった。今回のフーシー派の声明に対するサウジ政府の反応は、29日朝の時点では確認されていない。

(反体制派政府)軍(フーシー派)スポークスマン・ヤヒヤ・サリー准将声明(9月28日)
●(サウジの)ナジュラーン地区で敵に大規模攻勢をしかけ、甚大なる損害を与えた。
第一に、敵軍の3個旅団の完全な壊滅。それには、軍用装備、兵士、指揮官が含まれる。
第二に、数百台の車両や装甲車両を含む大量の武器の押収。
第三に、敵軍の数千人が捕虜となった。その多くは(ハーディ政権側についた)裏切り者であり、欺いた者たちであり、何百人も殺害され、負傷した。
第四に、捕虜には、サウジ軍の多数の指揮官、将校、兵士が含まれる。
第五に、作戦開始からわずか72時間で、私たちの軍は裏切り者で構成される3個旅団とサウジ部隊からなる敵を完全に包囲し、破壊し、壊滅させ、捕虜にし、戦場の何百キロ平方の土地を解放した。
●(アンサラールッラー運動、アブドル・マーリク・アル・フーシーの)指導部の指示の下で、すべての捕虜は、イスラム、イエメンの習慣と伝統、人道的倫理の原則に従って扱われる。我が軍は、侵略の連合軍による報復攻撃から降伏した数千の敵軍捕虜を保護するために働いた。
●捕虜のすべての家族に、(反体制)イエメン軍とその同盟者がサウジ主導の空爆に対する被害から彼らを救うためにさらなる措置を取ることを保証する。
●イエメン国防軍のいくつかの特殊部隊が異なる地理的地域での作戦に参加し、ナジュラーンの数百平方キロメートルの土地を支配できる。
(フーシー派公式サイト:アラビア語)https://www.ansarollah.com/archives/281553

Posted by 八木 at 10:11 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

70日ぶりにイラン当局から解放された英国籍タンカー「ステナ・インペロ」[2019年09月28日(Sat)]
英国籍タンカー「ステナ・インペロ」は、9月27日、7月19日以来拘束されていたバンダル・アッバース港を出港し、ドバイのラシード港に向かったことが確認された。ホルモズガン港湾当局も声明で、その事実を認めた。ローハニ大統領は、9月26日記者会見の席で、司法手続きが最終段階にあり、まもなく解放されるであろうと述べていた。9月25日の時点では、環境汚染に関する問題で、罰金等が科される可能性が指摘されていたが、船を私有するスウェーデンのステナ・バルク社によれば、その件での訴えは寄せられなかったとのこと。9月24日ニューヨークの国連本部で、スウェーデン新外相とローハニ大統領が会見しており、その席で、解放が最終決定したものとみられる。船は、9月28日、ラシード港付近に到着し、これから乗組員の健康チェック等が行われるとのとのこと。
一方、8月15日、ジブラルタル当局から解放された(「グレース1」改め)「エイドリアン・ダリヤ1」号は、未だシリアのタルトゥース沖に留まっており、28日時点で積み荷は空にはなっていないとの見方をタンカー追跡サイトは指摘している。
(「エイドリアン・ダリヤ1」号衛星画像)https://pbs.twimg.com/media/EFjEyDPWsAAG5Hr.jpg
(ステナ・インペロ出航の画像)https://pbs.twimg.com/ext_tw_video_thumb/1177472806193221633/pu/img/FgWKJbwfejLkY0QK?format=jpg&name=small
(ステナ・インペロ解放の声明)https://www.stenabulk.com/statement/stena-impero

Posted by 八木 at 14:08 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

直接対話が成立しなかった米・イラン間のさらなる緊張の拡大[2019年09月27日(Fri)]
国連総会の機会に、イラン・米首脳会談の可能性が無くなったのと相前後して、9月26日米国防総省は、サウジへの米軍による対空防衛システムの追加配備を発表した。同時に、5月2日のイラン産原油輸入国への制裁免除終了後にイラン産原油の取引に関与した外国企業への制裁として、米国務省は9月25日、中国企業6社と経営責任者5名に制裁を発表した。
1.米国防総省声明(9月26日)
サウジアラビア王国に対する最近の攻撃を踏まえて、そして同国の招きに応じ、マーク・T・エスパー国防長官は9月26日、米国が王国に次の装備を配備すると発表した。
@ パトリオット対空ミサイルシステム1基
A センチネルレーダー(迎撃システムと連動した対空監視レーダー)4基
B 約200人のサポート要員
今次展開は、王国の軍事および民間の重要インフラに対する空とミサイル防衛を強化する。この展開により、この地域における米軍のすでに顕著なプレゼンスを一層増大させる。長官はさらに以下の装備を、追加展開のための準備に入れることを承認した。
(1)2基のパトリオット対空ミサイル発射システム
(2)1基の終末高高度防衛ミサイルTHAAD(弾道弾迎撃ミサイルシステムのこと)
https://www.defense.gov/Newsroom/Releases/Release/Article/1972415/dod-statement-on-deployment-of-us-forces-and-equipment-to-the-kingdom-of-saudi/

2.米国務省の制裁発表主要点
(1)以下の中国企業は、イランからの石油輸送の重要な取引に故意に関与したために、大統領令13846の下で、制裁を科されることとなった。
@China Concord Petroleum Co.、Limited
AKunlun Shipping Company Limited
BPegasus 88 Limited
CCOSCO Shipping Tanker(Dalian)Seaman&Ship Management Co、Ltd.United
(2)米国は、上記の4社のうち1社以上を所有または管理しており、制裁対象となる行為を認識していた次の2社に追加制裁を課した。
DKunlun Holding Company Ltd.
ECOSCO Shipping Tanker(Dalian)Co.、Ltd
(3)さらに米国は、上記の6社のうち1社以上の執行役員である次の5名、すなわち、Bin Xu、Yi Li、Yu Hua Mao、Luqian Shen、Yazhou Xuに制裁を科した。
(4)問題の取引は、2019年5月2日の中国によって、輸入規制対象免除(SRE)の終了後に行われ、そのSREの対象から外れていた。今回の措置は、本日指定された特定のエンティティを標的にしており、、親会社または企業グループ内の他のエンティティを標的にはしていない。
https://www.state.gov/the-united-states-imposes-sanctions-on-chinese-companies-for-transporting-iranian-oil/

Posted by 八木 at 09:50 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

注目のローハニ・イラン大統領の国連一般討論演説(HOPEを掲げつつ、限界を示した大統領)[2019年09月26日(Thu)]
9月25日、ローハニ・イラン大統領は第74回国連総会一般討論演説の中で、米国を除く域内諸国の協力により、ペルシャ湾、オマーン海、ホルムズ海峡の安全保障の確保を目指す「ホルムズの平和への取り組み」(通称HOPE)への参加を呼び掛けた。これは、地域の安全は、米国をはじめとする外国勢力に委ねるのではなく、利害を共有する域内諸国が協力して、自分たちの安全と利益を守るべきであるとの考えに基づくもので、イランに対する包囲網を築き、イランに対する抑止力を形成することで、湾岸地域の安全確保を主導している米国の有志連合構想の真逆をいく提案である。先般のG7ビアリッツ・サミット以来、米・イラン間の仲介に乗り出した仏のマクロン大統領は、ニューヨークで異例の2回ローハニ大統領と会談し、トランプ大統領との対話を呼びかけたが、一般討論演説の中でローハニ大統領は、制裁が解除されない限り、交渉には応じないと宣言し、今回の国連総会出席の機会をとらえた米・イラン首脳会談の見通しはほぼ消滅した。ローハニ大統領が、トランプ大統領との直接会談に臨むには、ハメネイ最高指導者の了承を取り付け、IRGCをはじめとする国内強硬派を押さえこむ必要があるが、米側から具体的な制裁緩和の提示もなく、むしろ、イラン中央銀行等に対する制裁も強化され、IRGCへの資金供給のパイプを米国が実力で遮断しようとしている中で、ローハニ大統領は、最高指導者説得の材料を得られなかったといえる。マクロン大統領としては、自分はできりかぎりの努力を払ったが、イラン側がそれに乗っかってこなかったと自己の立場を擁護するものとみられる。
(参考)ローハニ大統領一般討論演説注目点(9月25日)
●この地域の安全は、武器や介入ではなく、米軍の撤退を通じて提供される。中東の平和と安全を達成する究極の方法は、「内なる民主主義、外との外交」である。
地域の安全は、外国政府から購入することも、提供を受けることもできない。我々の隣人の平和、安全、独立は我々自身のものである。米国は隣人ではない。あなたがたの隣人はイラン・イスラム共和国である。…我々は、お互い隣人であり、米国はそうではない。
●米国はいかなる国の擁護者でも保護者でもない。国の委任状を他の国に委任せず、他の国に管理権を与えない。この地域の問題は米国が対処するには大きすぎる。アフガニスタン、イラク、シリアの問題を解決することができず、過激主義、タリバニズム、およびデダアエッシュ(注:「イスラム国」のこと)ニズムの先導者であった国は、より高度な問題を解決することはできない。
●我々は外国人の挑発的な介入を容認せず、我々の安全と領土の一体性に対するあらゆる種類の攻撃行為にしっかりと対応しなければならない。
●イランは、ペルシャ湾およびホルムズ海峡の海洋安全保障の管理者として、戦略的地域における展開の影響を受けるすべての国々に、「ホルムズの平和への取り組み」(Hormuz Peace Endeavor :HOPE)と呼ばれるイニシアチブへの参加を呼びかける。
●このイニシアチブには、集団的エネルギー安全保障、航行の自由、およびホルムズ海峡とその先にある国々との間の石油およびその他の[エネルギー]資源の自由な流れを提供するための協力などのさまざまな分野が含まれる。
●我々は、国家の尊厳と生計に対して歴史に最も厳しい制裁を適用した人々(すなわち米政府)による交渉への招きを信じることができない。 女性と子供たちを含む8,300万人のイラン人の生活に対し圧力を加え、犯罪を犯したことは、米政府高官に歓迎され、彼らの誇りの源になった。イランの国民は、これらの犯罪を決して忘れないし、許すことはない
●我が国を代表して、制裁の下での交渉に対する我々の反応は「いいえ」であることを発表したい。政府とイランの人々は、過去1年半の最も厳しい制裁に直面して断固とした態度をとり続けており、貧困、圧力、制裁の武器を使用してイランを降伏させようとする敵と決して交渉しない。交渉を開始する唯一の方法は、米国がその(核合意の)約束に戻ることであり、交渉の道が開きたいのであれば、まず制裁を止めなさい
https://www.presstv.com/Detail/2019/09/25/607100/Iran-Rouhani-United-States-Peace-Initiative-Hormuz-Strait-Persian-Gulf-tanker-attack-UN-General-Assembly

Posted by 八木 at 09:34 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

欧州はアラムコ石油施設の攻撃の責任はイランにあると断定[2019年09月24日(Tue)]
9月23日からニューヨーク国連総会で各国首脳の演説が開始されるが、それに合わせて、これまでイランへの直接非難を控えていた仏、独に英国を加えた欧州3国首脳は、9月14日に発生したサウジのアラムコ施設への攻撃の責任はイランにあると断定し、それ以外の合理的な説明はありえないとした。この声明の中で注目されるのは、イランにミサイル開発を含む地域の安全保障ならびに2025年以降を見据えた長期的な核開発防止のための交渉を開始するようイランに求めていることである。これは、これまでトランプ政権が従来から求めてきたラインに近い立場であり、サウジ主要石油施設への攻撃を契機に潮目が変化していることが認識される。これに対して、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)が反発することは必至で、ローハニ大統領がそれを押さえこむことは困難で、2015年イラン核合意はまさに崩壊の瀬戸際に立たされている。ニューヨークを訪問したローハニ大統領に対して、米国政府は国連本部、宿泊先、代表部以外の訪問を禁止する措置を講じている。

(参考) 仏、独、英三国首脳共同声明(9月23日)
●仏、独、英国の指導者である我々は、とりわけ世界的な不拡散体制を支え、中東の安定を維持するという、共通の安全保障上の利益を想起する。
●2019年9月14日にアブカイク(Abqaiq)およびフライス(Khurais)で発生したサウジ領内の石油施設に対する攻撃を最も強い表現で非難し、この文脈においてサウジアラビア王国とその人びととの完全な連帯を再確認する。
イランがこの攻撃の責任を負っていることは我々には明白である。他に合理的な説明はない。さらに詳細が確実になるよう継続的な調査をサポートしていく。
●これらの攻撃はサウジアラビアに対して実行されたものであるが、それらはすべての国に関係し、主要な紛争のリスクを高める。これらは、イエメンで進行中の紛争に対する政治的解決策を見つけることを含め、地域の安定と安全に向けて集団的な取り組みの重要性を強調している。攻撃はまた、持続的な外交努力とすべての関係者との関与を通じて、地域に緊張緩和をもたらす必要性を強調している。
●この点で、2015年7月14日にイランと合意し、国連安全保障理事会において全会一致で承認されたJCPoAへの継続的なコミットメントを想起する。我々はイランに対して、合意遵守のレベルを低下させた決定を撤回し、その下での義務に完全に従うよう再度促す。我々は、イランに対し、JCPoAと包括的保障措置協定の枠組みの中でIAEAに完全に協力するよう求める。
●地域の安定と安全を保証するための集団的取組の重要性を認識し、我々はイランが核計画の長期的枠組み、ならびにミサイル・プログラムおよびその他の伝搬手段を含む地域の安全保障に関連する問題に関する交渉を受け入れる時が来たという我々の確信を繰り返す。
●2019年7月14日の共同宣言、ならびにビアリッツで採択されたG7結論に基づき、国際的な平和と安全を維持するために、中東の緊張の緩和に関心のあるすべての関連パートナーとの対話を促進し、条件を整えるための外交的努力を継続することにコミットする。我々は、イランがこのような対話に参加し、さらなる挑発とエスカレーションを控えるように促す。
https://www.gov.uk/government/news/joint-statement-by-the-heads-of-state-and-government-of-france-germany-and-the-united-kingdom

Posted by 八木 at 11:19 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

ローハニ大統領の国連総会演説を前に英国籍タンカー「ステナ・インペロ」を解放するイラン[2019年09月23日(Mon)]
9月22日、イランのファルス通信社がイランのホルモズガン州アッラーモラド・アフィーフィポール(Allahmorad Afifipour)港湾海事局長の発言として伝えたところによれば、英国籍の石油タンカー「ステナ・インペロ(Stena Impero)」の拘束終了を求めた裁判所命令に従い、この船は65日間の拘束後まもなく解放され、バンダル・アッバース港から国際水域への移動を開始する、「(英国の船舶による)海事法違反に関する最終判決は法的手段を通じて決定され、その司法結果は間もなく発表される」と述べた。スウェーデンの公共放送局SVTは、船を所有するステナ・バルク(Stena Bulk)社最高経営責任者エリク・ハネル(Erik Hanell)の発言を引用し「22日朝、数時間以内に「ステナ・インペロ」が解放されるといの情報を受領した。船を解放するという政治的決定が下されたと理解している。」と述べた。
(関連報道)https://www.presstv.com/Detail/2019/09/22/606863/Stena-Impero-Iran-

7月19日、イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)海上部隊は高速パトロール船で、ペルシャ湾ホルムズ海峡を航行中の英国籍の石油タンカー「ステナ・インペロ」の進路を塞ぐとともに、ヘリから特殊部隊員をタンカー甲板に降下させ、同船を拿捕した。スウェーデンの海運会社ステナ・バルク(Stena Bulk)が所有する3万トンの「ステナ・インペロ」はサウジアラビアのアルジュベイル港に向かうはずであったが、国際的なシーレーンを離れてイランのカシム(Qeshm)島に向かって北上したことが、海上交通追跡データで確認されていた。乗組員は23名で、船長を含む18名がインド人、3名がロシア人、そのほかラトビア人、フィリピン人各一名で構成されていた。9月5日ステナ・バルク社は、乗組員のうち7名が解放されたと発表した。イランの軍事筋は国営メディアに対して、英国のタンカーが拿捕された理由は、タンカーが小型漁船に衝突し、乗組員に被害者が出ていること、ホルムズ海峡の海上ルートを守らず、自動識別システム(AIS)をオフにし、国際水域を汚染し、イランの警告無視したためであると語り、海事規則違反で裁判手続きが進行していた。

(コメント)イラン側は、英国籍タンカー「ステナ・インペロ」号がペルシャ湾で小型漁船に衝突し、乗組員に被害者が出ているにも拘わらず、同タンカーが救難通信にも応えず、AISもオフにして航行を続けたため拿捕したと主張しているが、小型漁船の被害が如何なるものか明らかになっておらず、漁船との衝突が主要原因というよりは、やはり7月4日に英国領ジブラルタル当局によってイランの大型タンカー「グレース1(のちにエイドリアン・ダリヤ1号に改称)」が拘束されていたことへの報復が主要な要因であったと考えられる。タンカーは、EUの制裁下にあるシリアに原油を届けないというイラン側の書面の約束により、8月15日ジブラルタルの裁判所の決定を経て解放された。このため、直接のタンカー同士の解放の取引という形態は避けながらも、早晩、「ステナ・インペロ」号も解放されるとみられていた。しかし、米国は、8月16日、連邦地裁が「エイドリアン・ダリヤ1」号の押収命令を発出し、8月30日、米財務省は、「エイドリアン・ダリヤ1」号を売国外国資産管理法(OFAC)に基づく資産凍結義務を課すSDNリストの「カウンター・テロリズム」の分類の下で指定し、船長に制裁リストに加え、船とその積み荷の行方を厳しく追及した。一方、イラン側は原油の積み荷を未公表のバイヤーに売却し、原油がシリアに届けられたとの観測が強まり、状況が複雑化したことが、「ステナ・インペロ」号の解放にも影響が出ていたとみられる。本23日からの国連総会で、ローハニ大統領は、外国軍隊のプレゼンスを排除し、ペルシャ湾周辺国による海上交通の安全を守るためのイラン主導のイニシアティブを呼び掛ける見通しであり、その直前に、イランから域内諸国ならびに国際社会にイランの善意のジェスチャーを示す観点から、このタイミングをとらえて、「ステナ・インペロ」号が解放される見通しとなったと考えられる。

Posted by 八木 at 09:59 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

急展開するイランを巡る情勢(その2)[2019年09月21日(Sat)]
1.9月20日、米国のエスパー国防長官とダンフォード統合参謀本部議長が共同記者会見に臨み、その席で、エスパー長官はサウジアラビアとUAEからの支援要請に応えて、米国が武器の引き渡しを促進し、より多くの軍隊と装備、とりわけ航空、ミサイル防衛戦力を湾岸地域に展開させる意向を表明し、それには3つの目標があり、第一にサウジとUAEの防衛を強化、第二にペルシャ湾の商業の自由な行き来確保、第三にイランが挑戦しているとみられる国際ルールに基づく秩序を保護し防衛するためであると発言。ダンフォード統合参謀本部議長は、追加配備の正確な詳細についてはまだ検討中であるが、派兵の規模は、「数千ではない」と発言し、数百名規模の派兵を示唆した。因みに、米国は、イランがイラン国内から今回の攻撃を実行したと主張しているが、エスパー長官もダンフォード統合参謀本部議長もその主張の根拠については発言しなかった
https://www.cbsnews.com/video/the-pentagon-is-holding-a-press-conference-on-iran/
2.20日フーシー派政治評議会の長であるマハディ・アル・マシュハト(Mahdi al-Mashat)は、無人偵察機やその他の武器を使用してのサウジアラビアに対する攻撃を停止する、サウジが同様の声明を発出し、イエメンの領土に対する攻撃停止を約束することを期待する、但し、サウジが申し出を無視すれば、それに対処する権利を維持すると発言。
3.今回のアラムコ施設攻撃被害をうけて、ポンペイオ国務長官が急遽サウジ、UAEを訪問したが、サウジに続いて、9月19日UAEは、ホルムズ海峡等での安全航行を維持するための米主導の有志連合「国際海上保安機構(International Maritime Security Construct)」への正式参加を表明した。これにより、有志連合参加国は、米、英、豪、バーレーン、サウジ、UAEならびに事実上関与すると考えられるイスラエルを含めて、7か国となった。一方、明確に参加を否定している国は、独とイラクの二か国である。
4.米国は、イランへの最大圧力キャンペーンの一環として、イランの中央銀行、政府系ファンドである国家開発基金ほかひとつのイラン企業に対する制裁を発動した(下記参考)。財務省は、米国がすでに外国テロ組織にしているIRGCやコッズ軍、ヒズボラ等への資金送金に関与していることを制裁の理由に挙げている。トランプ大統領は、今回の制裁は、過去最大級のものであると評している。一方、発給が遅れていた国連総会出席のためのローハニ大統領、ならびにザリーフ外相への米国入国査証は、発給された事実が確認された。

(参考)イラン中央銀行ほかへの制裁発動に関する米財務省プレスリリース主要点(9月20日発出)
●米国財務省の外国資産管理局(OFAC)は、対テロ権限を有する大統領令( EO)13224の下で、イラン中央銀行、イラン国家開発基金(NDF)ならびにEtemad Tejarate Pars Coに対して制裁措置を発動した。イラン中銀は、イスラム革命警備隊(IRGC)、そのコッズ軍(IRGC-QF)、およびそのテロリスト代理人であるヒズボラ(Hizballah)に数十億ドルを提供した。NDFは、イランのソブリン・ウェルス・ファンドであり、理事会にイランの大統領、石油大臣、中央銀行総裁を含むイランのNDFは、主要な外貨獲得源であり、IRGC-QFとイランの国防省と国軍ロジスティクス(MODAFL)に資金提供を行ってきた。今日指定されたEtemad Tejarate Parsは、イランに本拠を置く企業であり、NDFからの資金を含むMODAFLの軍事関連購入の資金的転送を隠すために使用されている。
●サウジアラビアに対するイランの恥知らずの攻撃は受け入れられない。財務省の行動は、イラン政権がテロリストのネットワークをサポートするために使用している重要な資金調達メカニズムを標的としている。これには、コッズ軍、ヒズボラ、ならびにテロを拡散し地域を不安定化するその他の過激派が含まれる。米国は、イランの抑圧的な政権に対する最大の圧力キャンペーンを継続する。同政権は、国家の石油収入を浪費しながら、地域の侵略を通じて革命的なアジェンダを達成しようとしている。 イランの中央銀行と国家開発基金は、表面上はイランの人々の福祉を保護することを意図するとされていたが、その代わりにこの腐敗した政権によって、イランの外貨準備をテロ代理者に移動させるために使用された、とムニューシン財務長官は述べた。
●我々は、各国政府に対して、イラン政権のテロ資金部門である中央銀行との協力を継続することにより、彼らの金融システムの一体性が危険にさらされることに注意を喚起している。 我々は、イランの政権による世界的なテロへの資金提供と、その政権によって長きにわたって苦しめられている犠牲者であるイランの人びとに対する国内の弾圧を遮断するために、制裁を積極的に実施する、とシーガル・マンデルカー(Sigal Mandelker)テロ・財政インテリジェンス担当次官は述べた。

(コメント)米国が、サウジ、UAEの要請に応えて、湾岸への追加派兵を行うことで、トランプ大統領の了承が得られたとして、20日、エスパー国防長官、ダンフォード統合参謀本部議長が急遽記者会見を行った。派兵の規模は数百名単位とみられており、詳細については、週明け、サウジ、UAEを訪問したポンペイオ国務長官帰国後、正式に発表される見通しとなった。国防長官や統合参謀本部議長によれば、あくまで、両国の防衛能力の強化をうたったものであるとしている。これまで、サウジ国内やUAE、紅海上で、フーシー派によるとみられるミサイル攻撃やドローン攻撃が幾たびも実施されており、サウジも南の国境からの攻撃は迎撃ミサイルの発射等で、その多くを防いでいる。しかし、今回のアラムコ施設の攻撃は、サウジが写真で示した通り、ドローンと巡航ミサイルの両方から被害を受けたとすれば、ペルシャ湾で緊張が高まり、アブラハム・リンカーンやB52戦略爆撃機、パトリオット迎撃システムの湾岸展開後に、米軍の防衛偵察機能を掻い潜って実施されたものといえ、米国としては、世界一であるはずの米軍の能力を誇示するうえでも、二度と同じ攻撃被害が発生することを食い止める必要に迫られており、そのため、追加展開は、領空の監視強化と対空ミサイル防衛能力の強化に焦点があてられるとみられる。

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急展開するイランを巡る情勢[2019年09月19日(Thu)]
サウジアラムコ石油施設への攻撃を契機に、イランを巡る情勢が急展開している。いくつかの動きを整理すれば次のとおり。
1.9月18日、サウジアラビア軍スポークスマンは、記者会見の中で、サウジアラムコの2か所の石油関連施設への攻撃は、イランがスポンサーとなり実行されたもので、イエメンから飛来したものではなかったと主張した。
(参考)サウジ軍スポークスマン記者会見(9月18日)のポイント
●記者会見では、攻撃に使用されたとされる巡航ミサイルとドローンの破片を公開
●トルキー・アル・マーリキ大佐によれば、使用された武器の種類は、攻撃がイエメンから行われたものではないことが証明されたと主張。ドローンと巡航ミサイルの能力は、以前の攻撃からサウジ側は十分把握していると発言。
(参考:RT解説)攻撃に使用されたミサイルは、ソ連が設計した巡航ミサイルKh-55の複製である可能性がある。イランはウクライナから取得し、独自の武器に開発している。しかし、これはイランがそのような攻撃を開始したという決定的な証拠とはみなされない。イランがイエメンのフーシー派に武器を販売することは「ほとんど公然の秘密」であり、さらに、フーシー派が巡航ミサイルを発射するために特殊な専門家は必要なく、データを入力し、発射するだけで、彼らの責任を完全には排除することはできないとしている。
●18日、フーシー派は水曜日に(従来の犯行声明に追加し)攻撃は、「3つの場所」から実行され、使用されたドローンは「今回初めて明らかにされる」と付け加えた。
一方、イラン政府当局者は、サウジアラビアの記者会見で発表されたイラン犯行説は決定的でないとして拒否した。
(サウジが公開した武器破片の画像を含むRT記事)https://www.rt.com/news/469096-saudi-accuses-iran-oil-attack/?utm_source=browser&utm_medium=push_notifications&utm_campaign=push_notifications

2.イランの国営メディアは18日、ローハニ大統領とザリーフ外相が米ニューヨークで開会される国連総会を欠席する可能性が高まっていると報じた。イランと対立する米国によるビザ発給手続きが遅れているためで、ローハニ大統領については、査証が間に合わなければ自動的にトランプ大統領との会見の可能性は消滅する。ザリーフ外相については、米財務省の制裁対象に指定されており、前回の訪問時には、国連本部とイラン外交使節、公邸以外のニューヨーク市街の訪問を禁じられている。米国は国連施設本部ホスト国として、すべての国連加盟国の国連総会出席を認める義務がある。
 
3.18日サウジアラビアは、サウジ石油施設への攻撃のあと、ホルムズ海峡とバブ・アルマンデブ海峡、ならびにオマーン湾の船舶の自由航行と安全を守ることを目的とする米国主導の「国際海上保安機構」(いわゆる「有志連合」)への参加を表明した。

4.イランを巡る情勢を協議するため、トランプ大統領はポンペイオ国務長官をサウジに派遣し、サウジ側と14日に起きた石油施設に対する攻撃の詳細、今後の対応を中心に話し合う予定。米国務省は17日、ポンペイオ国務長官がサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)を17〜19日の日程で訪問すると発表した。ムハンマド・ビン・サルマン(MBS)皇太子と会談する予定。一方、米国防総省は、攻撃に使用された兵器を特定するための専門家をサウジに派遣し、攻撃の全容解明に取り組んでいるとされる。ダンフォード統合参謀本部議長はロンドンで記者団に対し、イエメンのフーシー派による犯行との見方に否定的な考えを示した。トランプ大統領はカリフォルニア州に移動する大統領専用機内で記者団に対し、イランのローハニ大統領との首脳会談について「いかなる可能性も排除しない。だが会談しない方が良いかと思っている」と語り、会談の可能性は一段と遠のいている。

Posted by 八木 at 08:26 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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