1.9月20日、米国の
エスパー国防長官とダンフォード統合参謀本部議長が共同記者会見に臨み、その席で、エスパー長官は
サウジアラビアとUAEからの支援要請に応えて、米国が武器の引き渡しを促進し、より多くの軍隊と装備、とりわけ
航空、ミサイル防衛戦力を湾岸地域に展開させる意向を表明し、それには3つの目標があり、第一に
サウジとUAEの防衛を強化、第二に
ペルシャ湾の商業の自由な行き来確保、第三にイランが挑戦しているとみられる
国際ルールに基づく秩序を保護し防衛するためであると発言。ダンフォード統合参謀本部議長は、追加配備の正確な詳細についてはまだ検討中であるが、派兵の規模は、「数千ではない」と発言し
、数百名規模の派兵を示唆した。因みに、米国は、イランがイラン国内から今回の攻撃を実行したと主張しているが、エスパー長官もダンフォード統合参謀本部議長も
その主張の根拠については発言しなかった。
https://www.cbsnews.com/video/the-pentagon-is-holding-a-press-conference-on-iran/2.20日フーシー派政治評議会の長であるマハディ・アル・マシュハト(Mahdi al-Mashat)は、無人偵察機やその他の武器を使用しての
サウジアラビアに対する攻撃を停止する、サウジが同様の声明を発出し、イエメンの領土に対する攻撃停止を約束することを期待する、但し、
サウジが申し出を無視すれば、それに対処する権利を維持すると発言。
3.今回のアラムコ施設攻撃被害をうけて、ポンペイオ国務長官が急遽サウジ、UAEを訪問したが、サウジに続いて、9月19日
UAEは、ホルムズ海峡等での安全航行を維持するための米主導の有志連合「国際海上保安機構(International Maritime Security Construct)」への正式参加を表明した。これにより、有志連合参加国は、米、英、豪、バーレーン、サウジ、UAEならびに事実上関与すると考えられるイスラエルを含めて、7か国となった。一方、明確に参加を否定している国は、独とイラクの二か国である。
4.米国は、イランへの最大圧力キャンペーンの一環として、
イランの中央銀行、政府系ファンドである国家開発基金ほかひとつのイラン企業に対する制裁を発動した(下記参考)。財務省は、米国がすでに外国テロ組織にしているIRGCやコッズ軍、ヒズボラ等への資金送金に関与していることを制裁の理由に挙げている。トランプ大統領は、今回の制裁は、過去最大級のものであると評している。一方、発給が遅れていた国連総会出席のための
ローハニ大統領、ならびにザリーフ外相への米国入国査証は、発給された事実が確認された。
(参考)イラン中央銀行ほかへの制裁発動に関する米財務省プレスリリース主要点(9月20日発出)
●米国財務省の外国資産管理局(OFAC)は、対テロ権限を有する大統領令( EO)13224の下で、イラン中央銀行、イラン国家開発基金(NDF)ならびにEtemad Tejarate Pars Coに対して制裁措置を発動した。イラン中銀は、イスラム革命警備隊(IRGC)、そのコッズ軍(IRGC-QF)、およびそのテロリスト代理人であるヒズボラ(Hizballah)に数十億ドルを提供した。NDFは、イランのソブリン・ウェルス・ファンドであり、理事会にイランの大統領、石油大臣、中央銀行総裁を含むイランのNDFは、主要な外貨獲得源であり、IRGC-QFとイランの国防省と国軍ロジスティクス(MODAFL)に資金提供を行ってきた。今日指定されたEtemad Tejarate Parsは、イランに本拠を置く企業であり、NDFからの資金を含むMODAFLの軍事関連購入の資金的転送を隠すために使用されている。
●サウジアラビアに対するイランの恥知らずの攻撃は受け入れられない。財務省の行動は、イラン政権がテロリストのネットワークをサポートするために使用している重要な資金調達メカニズムを標的としている。これには、コッズ軍、ヒズボラ、ならびにテロを拡散し地域を不安定化するその他の過激派が含まれる。米国は、イランの抑圧的な政権に対する最大の圧力キャンペーンを継続する。同政権は、国家の石油収入を浪費しながら、地域の侵略を通じて革命的なアジェンダを達成しようとしている。 イランの中央銀行と国家開発基金は、表面上はイランの人々の福祉を保護することを意図するとされていたが、その代わりにこの腐敗した政権によって、イランの外貨準備をテロ代理者に移動させるために使用された、とムニューシン財務長官は述べた。
●我々は、各国政府に対して、イラン政権のテロ資金部門である中央銀行との協力を継続することにより、彼らの金融システムの一体性が危険にさらされることに注意を喚起している。 我々は、イランの政権による世界的なテロへの資金提供と、その政権によって長きにわたって苦しめられている犠牲者であるイランの人びとに対する国内の弾圧を遮断するために、制裁を積極的に実施する、とシーガル・マンデルカー(Sigal Mandelker)テロ・財政インテリジェンス担当次官は述べた。
(コメント)米国が、サウジ、UAEの要請に応えて、湾岸への追加派兵を行うことで、トランプ大統領の了承が得られたとして、20日、エスパー国防長官、ダンフォード統合参謀本部議長が急遽記者会見を行った。
派兵の規模は数百名単位とみられており、
詳細については、週明け、サウジ、UAEを訪問したポンペイオ国務長官帰国後、正式に発表される見通しとなった。国防長官や統合参謀本部議長によれば、あくまで、両国の防衛能力の強化をうたったものであるとしている。これまで、サウジ国内やUAE、紅海上で、フーシー派によるとみられるミサイル攻撃やドローン攻撃が幾たびも実施されており、サウジも南の国境からの攻撃は迎撃ミサイルの発射等で、その多くを防いでいる。しかし、今回のアラムコ施設の攻撃は、サウジが写真で示した通り、ドローンと巡航ミサイルの両方から被害を受けたとすれば、ペルシャ湾で緊張が高まり、アブラハム・リンカーンやB52戦略爆撃機、パトリオット迎撃システムの湾岸展開後に、
米軍の防衛偵察機能を掻い潜って実施されたものといえ、米国としては、世界一であるはずの米軍の能力を誇示するうえでも、
二度と同じ攻撃被害が発生することを食い止める必要に迫られており、そのため、追加展開は、領空の監視強化と対空ミサイル防衛能力の強化に焦点があてられるとみられる。