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イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

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【カショーギ殺害事件(内外で防戦に追われるサウジ指導部)】[2018年10月31日(Wed)]
1.29日イスタンブールに到着したサウジのシェイク・サウード・アル・モジブ検事総長は、トルコ側のイスタンブール検事総長と会合し、翌30日には、2度目の協議のあと、トルコ側とともに、約1時間半にわたって殺害の現場になったサウジ総領事館内部を視察した。トルコ側報道によれば、サウジ側は、音声、画像を含むすべての捜査情報、証拠をサウジ側に提供するよう要請し、一方、トルコ側は、@15名の容疑者の派遣を命じたのは誰か、A地元の共謀者は誰か、B遺体はどこにあるのか等の質問を発し、18名の容疑者の身柄引き渡しによるトルコ国内での裁判の実施に協力するよう要請した模様。サウジ側は18名の供述調書を第2回目の協議ではじめて提示したが、トルコ側からみて不十分な内容であったとされる。検察当局間協議に並行して、エルドアン大統領は10月30日にも、「我々はこの事件を解決しなければならない。 言い逃れは許されず、特定の人々を守ることに理はない。サウジ側は共謀者が誰かを説明しなければならない。我々が、この問題に目をつむれば、人道に対する罪の共犯者となり、良心の呵責を負うことになる」と演説し、真相の徹底究明まで、トルコは追及の手を緩めることはないとサウジ側指導部をけん制した。
2.こうした中、初代アブドル・アジーズ国王の存命者が数少なくなった第二世代の36人の息子のひとりで、サルマン国王の弟であり、一時期サウジの王族の中でも権力中枢に位置づけられたスデイリ・セブン(初代国王の寵愛をうけたフッサ妃を母親とする7人の王子)のひとり、内相経験もあるアハマド王子が、長らくの英国滞在のあと、10月30日午前1時半リヤドに舞い戻った。空港では、写真撮影等はなく、サウジの公式メディアも報じなかったものの、ムハンマド・ビン・サルマン(通称MbS)皇太子が出迎えた模様。アラブ系メディアによれば、アハマド王子は、サウジのイエメン内戦介入等を批判し、サウジの現執行部に批判的で長らく帰国を躊躇っていたが、今回、英米の治安機関に身の安全の保障を求め、帰国したとされる。欧米各国や国連機関(注:30日、ミチェル・バチェレ国連人権高等弁務官も政治的考慮のない独立した調査を要求)、世界の有力メディア等からの強権的なMbS体制への批判と真相究明を求める声が高まる中、サウード王家の危機を、サルマン親子以外の有力王族が、その克服に向けてどのような行動をとるのか、それが、MbS皇太子の権力一極集中体制にくさびを打ち込むことになるのか注目される。

Posted by 八木 at 11:23 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

【カショーギ氏殺害(容疑者引き渡しを迫るトルコと拒否するサウジの綱引き)】[2018年10月29日(Mon)]
カショーギ氏殺害の真相究明・責任者の責任追及に関し、攻めるトルコと守るサウジの綱引きが激しくなっている。こうした中、サウジのサウード・アル・モジブ検事総長がイスタンブールに到着し、本29日、トルコのイスタンブール検事局のイルファン・フィダン主任検事と協議することになっている。10月26日、バーレーンの首都マナーマで開催された地域防衛フォーラムの共同記者会見で、ジュベイル・サウジ外相は、捜査が完了しない段階での、メディアや国際社会のサウジ批判は、「ヒステリック」であるとコメントし、トルコは友好国であるが、トルコ政府からの容疑者18名の引き渡し要求には応じない意向を表明した。トルコのエルドアン大統領は、26日の与党公正発展党(AKP)地方代表が出席する会合で、事件に関するサウジ側の説明は、「子供じみて」おり、(真相を語るべき)国家の真剣さを反映していないとして、@遺体はいったいどこにあるのか、A遺体を引き渡したとされる地元の協力者とは誰なのか、B誰が殺害を命じたのかと問いかけ、両国間の協力のカギは、容疑者18名にあると断じた。トルコ側は、引き渡しリストに、オタイビ総領事、トゥバイシ法医学専門家、ムトレブ治安責任者ならびに地元の協力者を含めているとされる。トルコ側は、サウジの検事総長がトルコ側の疑問や要請に応えることを期待している。
 トルコ側のメディアへの情報リークは続いており、28日には、10月2日事件当日総領事公邸を出て、約200m離れた洗車場に、2台のサウジ総領事館の車両が直行する映像とともに、洗車場の従業員が、車の外部だけでなく、内部も完璧に洗うよう指示を受けたとの供述を放映させている。エルドアン大統領は、26日、電話でカナダのトルドー首相に事件の説明を行ったとされ、27日、シリア問題協議のためにトルコを来訪したマクロン仏大統領、メルケル独首相、プーチン・ロシア大統領にも、事件の核心を説明している可能性が高い。上述のマナーマ地域防衛フォーラムに出席したマティス米国防長官はジュベイル外相と会談し、サウジ側に対して、透明性のある完全で包括的な真相を説明する必要があると伝えたとされ、攻めるエルドアン大統領に対して、サウジ側は、防戦に追われている。
 サウジの検事総長が、45名の総領事館スタッフ・関係者の供述や映像記録、音声記録を用意して事実関係の確認を求めるトルコの主任検事の質問や要請に対して、その場で一貫性のある説明ができる可能性は低く、トルコ側が提示した証拠や説明を本国にもちかえって、それを踏まえたサウジ側の対応を検討することになるとみられる。

Posted by 八木 at 10:37 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

【カショーギ氏殺害(二転三転するサウジ側の説明)】[2018年10月26日(Fri)]
25日、サウジの検察官は、これまでのカショーギ氏死因は、なぐりあいの末の偶発的なものとの主張をひっこめ、計画的な犯行であったことを認めた。当初サウジ側は、カショーギ氏は総領事館訪問後まもなく立ち去ったとし、「失踪・殺害」疑惑はでっち上げだとしていたが、16日、17日の電話でのトランプ大統領の質問には、サルマン国王、ムハンマド・ビン・サルマン(通称MbS)皇太子とも「(カショーギに)何が起きたか自分たちは全く知らない」と答えていたが、トルコ側の捜査の進展とメディアへのリーク、欧米のメディアの追求、米議会や欧州諸国の真相究明を求める声の高まりをうけて、説明内容をその都度変更せざるをえない状況におかれた。今や、殺害の関与、責任がMbS皇太子に及ぼないことを最終的な「防衛ライン」として、それ以外は、否定できない事実は追認し、トルコとも協力して真相究明に努めているとのイメージを打ち出している。今週情報収集のためトルコを訪問した米国のハスペルCIA長官はトルコ側から「公表はできない」殺害を記録した音声テープを聞かされたと報じられており(トルコのチャブシュオール外相は、自分の立場としてそれを確認することはできないとの立場を表明)、トルコ訪問で得た情報をトランプ大統領に報告したとされる。今や焦点は、@MbS皇太子の指令・関与なく、カショーギ氏殺害が計画・実行されたというシナリオを国際社会、就中トランプ政権が受け入れるのか否か(トルコが強力な証拠を握っている場合、トランプ大統領も容易には無視はできない)、A遺体はどうなったのか(井戸の液体やベオグラードの森で遺体の一部が発見される可能性がある)、B容疑者18名の置かれた状況と、今後如何なる形で裁判が実施されるのか、容疑者の供述が公表されるのか等にあてられている。国際社会は、それを踏まえて、いかなる制裁を課すかを判断することになる(25日EU議会は圧倒的多数で、拘束力のないサウジへの武器売却凍結の決議を採択した。具体的措置をとったのは、独が武器輸出を凍結し、米国は容疑者の米国入国査証を取り消した)。

(タイムライン)(各種報道とりまとめ。不正確な部分がありうる)
9月28日 カショーギ氏はイスタンブールのサウジ総領事館を訪問し、離婚証明の発出を請求したが、手続きが間に合わないとして再訪を求められた。
10月1日 サウジ本国から先遣隊3名がイスタンブールに到着。
10月2日 サウジ本国から3名が商用機で、9名がプライベート・ジェットで来訪し、第一陣は午前中に総領事館に入り、館内のドライブレコーダーを取り外す。(一行は、「カ」氏が予定の日時に現れないことも想定し、ホテルに4日間程度の予約を入れていたが、2日の作戦実行後、すべてキャンセル)
10月2日 午後1時過ぎカショーギ氏は、15名のサウジ人が待機するイスタンブールのサウジ総領事館内に入った後消息をたつ。総領事館の外でまっていたカショーギ氏フィアンセHaticeは、サウジ側関係者から、「カ」氏が既に立ち去ったと告げられる。Haticeは午後5時50分「カ」氏から戻らない場合は通報してほしいといわれていたトルコ当局者に連絡。
(このころ、「カ」氏の上着を着て、付け髭と眼鏡で変装した15名のうちのひとりマダニ容疑者が、総領事館裏口から出て、通りを歩く映像が残されている)
10月2日 総領事館を出た複数の車両のうち、黒塗りの1台は、サウジ総領事公邸に入り、他の車は違う方向に向かった(ベオグラードの森等に向かったのではないかとみられる)。
10月2日 一行15名のうち、6名が午後6時20分、7名が午後10時50分プライベートジェットでそれぞれイスタンブールを出発。
10月3日 カリン・トルコ大統領府報道官は、カショーギ氏は総領事館を立ち去っていないとの異例の発言。
10月3日 MbS皇太子は、「(カショーギ氏は)数分あるいは1時間して総領事館を立ち去ったと理解している。同人は総領事館内にいない。かくすことはない」とブルームバーグとのインタビューで発言(ブルームバーグは5日にインタビュー記事を配信)。
10月4日 トルコ外務省はサウジ大使の来訪を求め、真相究明を要請。
10月6日 トルコ当局は公式に捜査を開始。オタイビ総領事は、ロイター記者を総領事館内に招いて、誰もいないと説明した。
10月8日 エルドアン・トルコ大統領は、サウジ側の単に「総領事館を立ち去った」という言葉だけでは不十分で、その証拠を示す必要があるとして、この件を個人的にもフォローし、真相究明に努め、その結果を公表すると発言
10月8〜10日頃 米国のボルトン大統領安全保障補佐官、クシュナー上級顧問、ポンペイオ国務長官(9日)がそれぞれMbS皇太子に電話し、真相の徹底究明を求めたとされる。
10月10日 米議会上院議員22名がトランプ大統領にグローバル・マグニッキー人権責任法に基づく制裁の有無を決定するための調査開始を要請。
10月11日 サウジのチームが本件に関するトルコとの協議のため、来訪。
10月14日 (23日のエルドアン発言)サルマン国王はエルドアン大統領との電話会談で、容疑者18名を拘束し、取り調べていると伝達。
10月15日 トランプ大統領は、サルマン・サウジ国王に電話。サルマン国王はカショーギ氏の消息は何も知らないと応答したとされる。
10月16日 サウジを訪問したポンペイオ国務長官がサルマン国王、MbS皇太子と会談し、真相究明を要請。一方、トランプ大統領は、MbS皇太子に電話。皇太子はカショーギ氏の消息は何も知らないと応答したとされる。
10月16日 トルコ当局は、サウジ側の了解の下、8時間にわたってトルコ総領事館内を捜査。オタイビ総領事、トルコを出国し、サウジに帰国。
10月17日(及び18日) トルコ当局は、サウジ側の了解の下、トルコ総領事公邸を捜査。
10月19日 サウジの検察官は、サウジの当局として初めてカショーギ氏死亡を認めるとともに、総領事館内でけんかと殴り合いの結果、カショーギ氏が死亡したこと、この関連で18名を拘束し、取り調べを続けているとの予備的声明を発出し、事件が「偶発的なもの」であったと説明した。同時にカハタニ王宮府顧問、アッシーリ・サウジ総合情報庁次長を含め5名の解任と、18名の拘束、ならびにサウジの情報機関改編のため、皇太子を長とする委員会の設置の王宮令が発出された。それに引き続き、サウジ筋は、カショーギ氏の死亡は、同人を連行するための薬剤接種を「カ」氏が拒否し、騒ぎ出したため、カショーギを絞殺によるものであると説明した。
10月21日 ジュベイル・サウジ外相は、FOXニュースとのインタビューで、この殺害は「ならず者」によるもので、皇太子は承知していなかったと発言。
10月23日 トルコのエルドアン大統領は、カショーギ氏暗殺は計画的なものであり、サウジは誰が命じたのか、遺体の所在等疑問に答える必要があると議会で演説。
10月24日 MbS皇太子は、カショーギ氏殺害は、痛ましく、凶悪な犯罪で、関係者は法の裁きをうけることになると発言。
10月25日 事件の前日の10月1日、サウジ総領事館の車両が遺体遺棄の場所の下見にベオグラードの森に向けてゲートを通過する映像が公開される。また、トルコ当局は当初サウジ側に拒否されていた総領事館庭にある井戸から液体を採取。
10月25日 サウジの検察官は、トルコからの情報に基づき、カショーギ氏殺害は「計画的なもの」であったと声明。トルコ訪問を終えたハスペルCIA長官はトランプ大統領にトルコで収集した情報を報告。
これに関する電子書籍はこちらにあります。

Posted by 八木 at 15:20 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

【カショーギ氏殺害事件(サウジ指導部のリスク管理)】[2018年10月25日(Thu)]
1. カショーギ氏殺害関与が疑われているサウジのムハンマド・ビン・サルマン(通称MbS)皇太子は、カショーギ氏殺害の疑惑を回避するためのリスク管理に乗り出している。第一に「砂漠のダボス会議」セッションで初めて公にこの件に言及し、自身の関与や責任に言及することなく、事件を「凶悪犯罪」であると断じ、関係者を処罰することを明らかにした。第二に、23日にサウジ側の責任と疑問点を厳しく追及したトルコのエルドアン大統領に自ら電話し、エルドアン大統領がサウジ側指導部と一体であることを印象付けようとした。第三に、カショーギ氏の息子2名を王宮府に招いて、サルマン国王、MbS皇太子から弔意を伝え、息子サラーハ・カショーギがMbSと握手する映像を世界に配信した。これらは、サウジが逮捕したとされる18名のMbS側近や実行犯と自身(MbS)は無関係であることを内外にアピールしたものとみられる。第一の点は、仮に皇太子が「殺害しろ」という語句を使用せず、「黙らせろ」と側近に発言したのだとしても、殺害の計画者や実行犯が皇太子に極めて近い人々(下記URLアナドール通信インフォグラフィック参照)であったことからは責任は回避できない。ましてや既に1名「交通事故」ということで死亡しており、18名が公正な裁判を受けられるという保証はない。公正な裁判という点では、エルドアン大統領は、イスタンブールでの裁判を提案したが、2005年に爆弾テロで死亡したラフィーク・ハリーリ・レバノン首相(現サアド・ハリーリ首相の父親)容疑者を裁くためのハーグ近郊で実施されてきた国際法廷(「レバノン特別法廷」)のような場が設けられることが望まれる。第二の点は、エルドアン大統領は、MbS皇太子と電話で話したからと言って、サウジ側主張を認めたわけではなく、皇太子の責任がないと認めたわけでもなく、依然総領事館車両の捜査や総領事館庭の井戸の調査等を求め、サウジ側に圧力をかけ続けている。第三の点は、カショーギ氏の息子たちが望んで弔意を受け入れ、皇太子と握手したものとは思われない。息子サラーハは、渡航禁止措置を受けていた。配信されたサラーハの握手の際のこわばった表情は、すべてを物語っているとしてツイッターでの数多くの反響があったとされる。もちろん、息子たちにすれば、カショーギ氏がひとり海外に脱出して、痛烈なサウジ指導部批判記事を書き、それがサウジに留まる自分たちの生活に不利益を与え、さらに、サウジ人妻と離婚し、トルコ人のフィアンセと結婚手続きを進めようとしていたことに対して、父親への怒りはあるかもしれない。しかし、ベドウィンの掟として、暗殺団を送り込んで父親の殺害を計画し、実行した人々には「血で血を贖う」復讐の文字が思いよぎる。
(MbS皇太子の未来投資フォーラムでのカショーギ氏殺害関連発言)
●この犯罪はすべてのサウジアラビア人にとって、さらに世界中のすべての人々にとって痛ましいことであり、それは正当化できない「凶悪犯罪」である。
●疑いなくサウジとトルコ政府間の協力は特別であり、多くの人々がサウジとトルコの間に亀裂をもたらそうとして、この痛ましいことを利用しようとしていることを知っている。サウジにサルマン国王、皇太子である自分(MbS)ならびにトルコにエルドアン大統領がいる限り、この試みを成功させることはできない
●この犯罪の背後にある人々は、責任を負うことになる。最終的には正義が実現される
アナドール通信インフォグラフィック「カショーギ殺害に加わったMBS皇太子の側近たち」https://www.aa.com.tr/en/info/infographic/11926

2.サウジから送られた暗殺団によってカショーギ氏が殺害された制裁として、独のメルケル首相は先陣を切ってサウジへの武器売却の凍結を表明したが、西側首脳の武器売却に関する態度は煮え切っていない。今回の事件を通じて、サウジは国際原油価格の動向に大きな影響力を有するだけでなく、西側各国の軍需産業を支え、労働者の雇用を保証し、労働者の票を必要とする各国政府指導部にも強い影響力を維持していることが白日の下にさらされることになった。
サウジは、昨年の実績(SIPRI統計)で、世界の13.2%を占める世界最大の武器輸入国であり、米、英、スペイン、仏政府は、自国民の雇用にも関連する問題として、サウジへの武器売却とカショーギ氏殺害事件を直接リンクさせないよう模索している。米国はトランプ大統領が昨年5月サウジ訪問でまとめた1100億ドルの武器輸出を念頭に、超党派の議員20名が24日下院に武器売却凍結決議案を提出したが、それが支持を得られるかは不透明である。英国は、2017年の武器輸出の約半分をサウジが占めており、メイ首相は野党からの激しい追及に遭いながらも、武器輸出凍結を示唆していない。仏も2008年〜17年までサウジに125億ドルを売却しているが、マクロン大統領は沈黙を貫いている。スペインは、リヤドへの400発のレーザー誘導爆弾の販売を停止すると発表したが、サウジ側から売却が完了しなければ20億ドルの軍事船舶の購入を取り消すと脅され、販売停止は腰砕けになった。人権問題を掲げサウジの内政に介入したとして、サウジ側が大使の召還やサウジ人留学生に帰国を命じたカナダのトルドー首相も、武器・装備品の輸出の凍結を検討するとしつつ、それはカナダの納税者に10億ドルの負担を課すことになるとして慎重な姿勢を示している。
各国の指導者は「正義の実現」を追求するのか、business as usual として「経済的利益」を優先するのか、厳しい判断を迫られることになる。

Posted by 八木 at 12:53 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

【カショーギ氏殺害事件(したたかなエルドアン大統領の外交戦術)】[2018年10月24日(Wed)]
1.23日、エルドアン大統領は、トルコ議会でカショーギ氏失踪・殺害事件に関して演説した。現地メディアが伝えた演説の主要点は次のとおり。
(1)殺害は計画的で、これまでのあらゆる捜査情報と証拠は、イスタンブールのベオグラード森林とヤロバ県北西部の捜索結果を含め、カショーギ氏が「野蛮な」殺人の犠牲者であったことを示している。
(2)10月14日に行ったサルマン国王との電話会談で、サルマン国王は、18名の容疑者を拘束したことを明らかにした
(3)サルマン国王をはじめ、サウジ側に対し殺害事件に関与した18人の逮捕されたサウジ人の裁判がイスタンブールで行われるべきだと提案した。決定はサウジ側次第であるが、これは我々の提案であり、要求でもある。
(4)(領事関係に関する)ウィーン条約を含む国際法の枠組みの中で捜査が行われており、それは領事館の不可侵を保証しているものの、今回の殺人事件は、サウジアラビアの領域と考えられる領事館の中で起きたかもしれないが、これはトルコ共和国の国境内であることを忘れるべきではない
(5)サルマン国王のこの件へのアプローチに関する「誠実さ」と「繊細さ」に疑いはないが、サウジ側は、次の疑問に答える必要がある。
@なぜこの事件に関与したとされる15名が、殺害当日にイスタンブールに集合したのか。
A彼らは誰から、彼らの命令を受けたのか。
B事件の発生が明らかになったとき、何故(カショーギ氏が総領事館を立ち去ったとの)矛盾した発言が出たのはなぜか。
C何故公式に死亡したと認められた人物の遺体の所在が明らかになっていないのか。
D(地元の)協力者に遺体を引き渡したとの声明が公式に発表されたが、この地元の協力者とは誰なのか。
Eこれは政治的殺人であるため、他の国で犯罪に関与した共犯者がいる場合は、捜査対象に含める必要がある。

2.今回のエルドアン大統領の演説は、サウジ国内でムハンマド・ビン・サルマン(通称MbS)皇太子の肝いりで開催される「砂漠のダボス会議」と称される未来投資フォーラムの開催当日の23日にぶつけて、トルコ議会で実施された。この演説には、したたかなエルドアン大統領の外交戦術が見え隠れする。実際、トルコの捜査当局がメディアにリークしたと思われる音声テープや法医学的捜査結果等新たな具体的証拠は示されなかった。また、疑惑の中心にあるとされるMbS皇太子を名指しすることもなく、サルマン国王のメンツをつぶすこともなかった。一方で、具体的証拠を握っていることを匂わせつつ、遺体の所在等解明すべき疑問が残っていることに言及した。そして、サウジ側が応じることはないのを知りつつ容疑者18名のイスタンブールでの裁判を呼びかけた。サウジアラビアでこのままMbS体制を続けるのか否かを、サルマン国王の判断に委ねつつ、トルコは、サウジの体制を脅かす重要なカードを握りつづけるとのメッセージを送ったといえる。MbS皇太子は、たとえ今回の事態で生き残ることができたとしても、脛に傷をもち、いつ破裂するかわからない爆弾を抱え続けることになる。トルコとしては、実はこれで十分である。エルドアン大統領は、2016年7月のクーデター未遂事件以来、体制に批判的なメディア機関を閉鎖に追い込んだり、記者の大量逮捕を実行し、西側の人権活動家から強い批判を浴びてきたが、今回の件をてこに、いまや「正義の旗手」として、全世界にイメージ改善をはかる機会を得ることになった。

Posted by 八木 at 10:15 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

カショーギ氏殺害事件(隠ぺい工作、解任されたカハタニ王宮府顧問の関与ほか)[2018年10月23日(Tue)]
エルドアン・トルコ大統領は、本23日夕刻にトルコの捜査当局が知りえた事件の全容を明らかにするとは宣言し、その内容が注目されている。本件に関しては、連日トルコ側当局のリークとみられる驚くべき情報がメディアに登場している。

ひとつは、10月2日のカショーギ氏失踪当日、カショーギ氏の上着を着て、付け髭と眼鏡で変装し今や重要容疑者となったサウジ人暗殺団のひとり、ムスタファ・アル・マダニがイスタンブールサウジ総領事館の裏口から出て、立ち去る画像である。これは、当初サウジ側が主張していたカショーギ氏は既に立ち去った、総領事館内にはいないとの主張を補強するために用意したものとみられる。失踪後わずか1日後の10月3日の時点で、今回の件では何も知らず、なにも命じていないはずのムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、ブルームバーグとのインタビューで「同人は総領事館を数分後、あるいは1時間後に立ち去ったと理解している、同人は、総領事館にはいない」と公言しており、その時点で、そのシナリオをMbS皇太子が共有していたことが伺われる(唯一の反論があるとすれば、側近たちで構成される暗殺チームが、MbS皇太子にうその報告を行い、一部始終を見ていたはずのオタイビ総領事も、自身には何の利益にもならない口裏合わせを行っていたということになるが、にわかには信じられないストーリーである)。
10月22日付ミドル・イースト・アイ記事
https://www.middleeasteye.net/news/footage-saudi-suspect-wearing-khashoggis-clothes-released-turkish-investigators-1829999652
もうひとつは、10月19日王宮令で解任されたサウード・ビン・アブドッラー・アル・カハタニ王宮府顧問に関するロイターを引用した22日付ミドル・イースト・アイの記事である。これによれば、総領事館内で身柄を拘束されたカショーギ氏にカハタニ顧問がスカイプで通話し、同氏を罵倒するとともに、暗殺団一行に、「犬の首(注:カショーギ氏の「うすぎたない」頭、すなわち「殺害」を意味する)を持ち帰るように」命じたとされる。カハタニ顧問は2017年8月17日の自身のツイッターで次の通り、上司の承認なしに何もできないとつぶやいていた。
تعتقد اني اقدح من راسي دون توجيه؟ انا موظف ومنفذ أمين لأوامر سيدي الملك وسمو سيدي ولي العهد الأمين
「あなたがたは私自身の判断で他の人々を叱責できると思いますか?私はひとりの雇われ人であり、私の主人である国王と皇太子の命令の執行者です」
10月22日付ミドル・イースト・アイ記事
https://www.middleeasteye.net/news/saudi-crown-prince-aide-ran-khashoggi-murder-over-skype-report-1862820026

西側主要国首脳もサウジの説明が説得力を持っていないとみなしており、独のメルケル首相が、既に承認済の4億1600万ユーロの武器・軍事用レーダー等の供給凍結を表明した。サウジアラビアは昨年の国防費が695億ドルにたっする米国、中国に次ぐ世界第三の軍事大国であり、米、英、仏、スペイン、独の順で武器をサウジに売却しており、昨年5月のトランプ大統領の初外遊でサウジを訪問した際、米国がサウジと結んだ1100億ドルの武器・装備品の売却契約の行方、ならびに英、仏、スペインが独に続いて武器売却の見直し、あるいは凍結を行うのか注目される。

これに関する電子書籍はこちらにあります。


Posted by 八木 at 11:09 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

【サウジ人ジャーナリスト・カショーギ氏殺害(裁判権の所在)】[2018年10月22日(Mon)]
カショーギ氏失踪・殺害に関する10月19日のサウジ側の初めての公式の説明が不十分である、あるいは真相を語っていないとの批判が一部のアラブ諸国を除き、世界各国で高まっている。独、仏、英は共同でさらなる説明責任を果たすようサウジ側に求め、独はメルケル首相が武器輸出の中断の意向を明らかにした。トルコのエルドアン大統領は、トランプ大統領とも電話会談し、10月23日(火)にはこの件についてのトルコ側の捜査結果を明らかにすると宣言した。10月21日サウジのジュベール外相は、FOXニュースとのインタビューで、サウジ側が公式に発表したばかりのカショーギ氏死亡に至った状況について、「殴り合い」ではなく、サウジ側一団の帰国要請を拒絶して騒ぎ出したカショーギ氏を「絞殺」したものと、微妙に状況説明を変化させたが、疑惑の焦点にあるムハンマド・ビン・サルマン(MbS)皇太子は、この「ならず者たち」が行った作戦を全く承知しておらず、遺体がどこにあるのかも承知していないとして、皇太子を擁護しつつ、事件の核心には踏み入こまなかった。MbS皇太子は、トルコ側から捜査協力を求められていた際、「(総領事館の)敷地は国家主権の領域であるが、我々はトルコ当局に入域を許す」ことを明らかにし、その通り、失踪後2週間を経過した16日にはじめて総領事館内へ、その翌日17日に総領事公邸へトルコ側捜査当局が入ることを許可したが、サウジ人がサウジの暗殺団により、トルコ領内にあるサウジ公館内で殺害された場合の捜査権・裁判権はどこにあるのだろうか。
1963年に採択された領事関係に関するウィーン条約は、領事機関公館の不可侵(第31条)、領事官の身体の不可侵(第41条)をうたっているが、第41条第一項は、「ただし、重大な犯罪の場合において権限ある当局の決定があった場合を除く」としており、トルコ側が殺人ほう助の容疑で正式の逮捕状が出されれば、総領事を拘束することは、理論上は不可能ではない。今回オタイビ総領事は、トルコ側による公邸捜査開始の直前の16日、出国しサウジに帰国している。国際法の専門家の見方(下記URL参照)では、殺人が実行された現場の国(今回の場合はトルコ)が裁判権を行使できそうである。殺害の現場が、不可侵を有する総領事館内であったとしても、殺人犯の不可侵は存在せず、事件は原則事件が発生したトルコ側の司法が優先権をもち、事件当日総領事館内にいたことが特定されている15名(うち1名のマシュアル・サアド・アルブスターニはサウジ帰国後交通事故で死亡)を容疑者として国際手配することも理論上可能であると思われる。サウジ側は、未だ逮捕したとされる18名の氏名を明らかにしておらず、捜査継続中としている。仮にトルコ側がサウジ側に容疑者引き渡しを要請しても、サウジ側が応えるとは考えにくいが、エルドアン大統領は、「正義の旗手」として、今回の事件の容疑者を特定して、具体的証拠を示して司法手続きをとる可能性が高い。その場合、トランプ大統領は、MbS皇太子とともに沈みゆく船に乗って運命共同体となるのか、サルマン国王に働きかけ、サウジとの国と国との関係は維持しつつ、MbS皇太子に見切りをつけるよう迫るのか、ぎりぎりの判断を迫られることになる。因みに、MbS皇太子は、先月「米国の支えがなければサウジは2週間ももたない」との侮辱ともとれる発言をサルマン国王に伝えたトランプ大統領に対して、10月3日リヤドで実施(5日公表)されたブルームバーグとのインタビューにおいて、どんな友人も100%いいことばかりをいってくれるわけではなく、トランプ大統領は、99%は良い人で、悪口は1%に過ぎず、自分(MbS)はトランプ大統領と一緒に働くことをよろこんでいるとコメントしている。
http://time.com/5429365/saudi-consulate-sovereignty-territory-khashoggi/
10月19日付タイムズ紙記事

これに関する電子書籍はこちらにあります。

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サウジ人ジャーナリスト・カショーギ氏失踪事件(サウジ政府による同氏の死亡の確認)[2018年10月20日(Sat)]
1.19日、サウジ政府は事件発生後初めて検察官の予備的捜査の結果として、2日以来サウジ総領事館で消息を絶ったジャマール・カショーギ氏の死亡を確認するとともに、容疑者18名を拘束し、取り調べを続けていることを明らかにした。さらに、サウジ政府は、サウジのインテリジェンスのNO2のアッシーリ将軍とカハタニ王宮顧問の解任を発表した。さらに、今回の事態を受けて、国王令によりムハンマド・ビン・サルマン(通称MbS)皇太子の下で、緊急にインテリジェンス組織を再編するための閣僚委員会を立ち上げ、1か月以内にその結果を公表することを決定した。
国営サウジ通信によれば、10月19日サウジアラビア王国の検察官は次のように述べた。
「サウジ人ジャマール・ビン・アフマド・カショーギ失踪事件に関し、検察が実施した予備的捜査は、イスタンブールのサウジ王国領事館に同人が入館している間に出会った人々との話し合いが、喧嘩と殴り合いになり、その結果、カショーギ氏は亡くなった
検察は、この事件に対する捜査が、すべての事実を明らかにし、それらを宣言し、この事件に関与するすべての人の責任の所在を明らかにし、司法の裁きを下す準備として、全員がサウジアラビア人である18名に対して、捜査が継続していることを確認する。」
2.疑惑の焦点となっているMbS皇太子は、捜査結果を早急に公表するようポンペイオ米国務長官のリヤド訪問の際の要請、トルコ政府による捜査の進展(総領事館、公邸のみならず、遺体の一部を遺棄した可能性のある森林や総領事館ローカルスタッフの事件前後の状況の聞き取り調査を含む)とメディアへの情報提供、大手メディアの執拗な追求をうけた米国政府、議会、西側諸国政府の真相究明を求める声の高まり、23日に開幕するサウジの未来投資を話し合う「砂漠のダボス会議」への要人のキャンセル続出を受けて、「カショーギ氏は総領事館を立ち去った、何が起きたかわからない」という当初の防衛ラインを崩され、殺害を認めつつ、責任が最終的にMbS皇太子に到らないよう、最終防衛ラインを決定し、昨日の発表に至ったものとみられる。サウジ捜査当局は、18名の容疑者の名前を公表していないものの、事件当日総領事館にいたことが確認されている15名(但し、トルコメディアはうち1名がサウジ帰国後事故死したと報じている)やオタイビ総領事、ならびに今回の一切の責任を負わされそうなサウジ情報部から解任されたアッシーリ将軍、同じく解任されたカハタニ王宮府顧問が含まれている可能性が高い。
3.サウジアラビアは、世界1,2位を争う大産油国で、日本にとっても最大の石油輸入国であり、その重要性は疑いえない。ペトロ・ラービグ石油化学事業はじめ日本との大規模共同事業も数々実施されてきた。MbS皇太子がビジョン2030を掲げ、サウジの産業構造を石油依存から脱石油に向けてかじ取りしていくという方向性は間違っていない。しかし、サウジ国内では、初代アブドル・アジーズ国王の36人の息子たち第二世代で権力を継承してきた時代が、現在のサルマン国王で終盤を迎え、第三世代にバトンタッチしていく中で、物事の意思決定が、従来の有力王族間のコンセンサス方式から、権力を一手に掌握した弱冠33歳のMbS皇太子の独裁体制に移行している。物事の決定は、迅速になるものの、行き過ぎに歯止めをかける者が周りに誰一人いなくなっている。昨年だけみても、6月上旬の突然のカタールとの断交、陸海空封鎖、6月下旬の、欧米の信頼が厚かったムハンマド・ビン・ナーイフ(MbN)皇太子の突然の解任、11月上旬の腐敗防止を理由にした王族や有力ビジネスマン等200名以上のリッツカールトンの拘束(ほとんどが莫大な保釈金の供出で、軟禁を解かれたがいまだ数名以上が当局に拘束されているといわれる)、同じく同月のサウジ訪問を求められたハリーリ・レバノン首相を数日間軟禁状態においたとみられる事案が続いている。このような状況下、世界中で唯一、MbS皇太子に影響力を行使できるのは、米国だけである。疑惑の中心にある人物が、事件の責任を、側近のインテリジェンス幹部に負わせ、正義を実現するという図式は、ブラックユーモアのようであるが、トランプ政権がサウジ側の捜査結果を受け入れ、MbS体制維持を支えるのか、米国議会やメディアは追求を止めるのか、様々な証拠を握っているトルコ政府は、何時いかなる捜査結果を暴露するのかが注目され、それらは、関係当事国のみならず、日本を含む世界の安全保障や経済状況に大きな負の影響を与えかねない重大事といえる。

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カショーギ氏失踪事件(追い詰められるサウジ上層部)[2018年10月19日(Fri)]
トランプ米大統領のカショーギ氏失踪事件に対するトーンが明らかに変化してきた。大統領は、18日、エアフォースワンを離れる際、「カショーギ氏の死亡は確実にみえる」と語り、サウジ政府関係者が関与していたことが判明した場合、「サウジ政府が直面する結果は、非常に厳しいものになる」と述べた。
米国ABCは独占情報として、サウジ訪問後トルコに立ち寄ったポンペイオ国務長官は、エルドアン大統領から殺害の音声を聴かされたと報じた(国務省報道官は否定)。ポンペイオ長官は、帰国後トランプ大統領にサウジ、トルコ訪問の結果を報告するとともに、サウジ側が調査を完了するために、もう数日猶予を与えるべきだとの意見を伝えた。テレビ映像では、リヤドでムハンマド・ビン・サルマン皇太子とにこやかに握手し、挨拶を交わす姿が伝えられたポンペイオ長官であるが、メディアの撮影終了後、MbS皇太子に72時間の猶予を与えるので、その間に結果を出すよう強い調子で求めたとされる。米国内では、8名の米議会議員がサウジ政府の関与がなかったと証明されない限り、サウジへの米国製武器取引を停止すべきとの法案を提出した。23日に開幕予定の砂漠のダボス会議と称される投資フォーラムに、ラガルドIMF総裁他有力者が参加見合わせを決定したほか、動向が注目されていたムニューシン米財務長官も出席取りやめを表明した。
 国際的な圧力の高まりの中で、MbS皇太子への包囲網はますます狭められてきている。皇太子の米国他外遊に同行したマーヘル・アブドルアジーズ・ムトレブ治安担当官は、イスタンブールに到着してからいつ総領事館に入って、いつ公邸に赴き、いつホテルをチェックアウトし、空港のセキュリティを通過したか具体的時間を示して同人の行動が逐一フォローされている。
カショーギ氏がサウジの一団によって総領事館内で殺害されたことはいまやほぼ確定的になってきており、焦点は、誰が今回の作戦を命じたかに絞られてきている。トルコのデイリーサバーハ紙ほかは、MbS皇太子の指示を、誤って過剰に反応した側近の情報機関長官であるアッシーリ将軍が作戦チームに命令を下したとのシナリオを用意しているようだと報じた。MbSの間接的責任は免れないものの、「直接手は汚していない」として、人身御供を差し出し、サルマン体制発足後最大の危機を乗り越えようともがいているように見受けられる。数日後、サウジ側が提出する調査結果が万人を納得させることができるのか、イエメンへのサウジ主導のアラブ連合軍の軍事介入で、連合軍のスポークスマンを務め、世界中に顔が知られているアッシーリ将軍が、最後の1線としてすべての責任をかぶるシナリオが提出された場合、物的証拠を握るトルコや、トランプ政権はそれを受け入れるのか、カショーギ氏失踪事件は極めて機微な段階に入ってきている。

Posted by 八木 at 14:53 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

サウジ人ジャーナリスト・カショーギ氏暗殺疑惑(二次被害の恐れ)[2018年10月18日(Thu)]
ジャマール・カショーギ氏殺害疑惑に関し、10月17日トルコ側の捜査当局は前日の在イスタンブール・サウジ総領事館に続き、同日午後4時45分から総領事公邸の捜査を開始した。一方、公邸の主であるムハンマド・アルオタイビ・サウジ総領事は、16日突如出国し、サウジに帰国した。トルコのヒュッリエト紙ほかが報じたサウジのオンライン・ニュースsabqを引用して、「オタイビ総領事は解任され、捜査されるであろう」との記事は、出所とされたサイトには見当たらず、その事実関係は18日現在確認されていないが、事件当日、サウジからの暗殺チームに対して総領事は、カショーギ氏の殺害が総領事館内で実行されれば、自分もトラブルに巻き込まれるとして、そこで実施しないよう求めたところ、「もし、生きてサウジに戻りたければ、黙れ」と恫喝されたとの音声が録音されているとトルコ紙Yeni Şafakが報じたとされる。
トルコ側は、公式には一切捜査結果を発表していないが、エルドアン大統領や捜査当局からのメディアへのリークによれば、カショーギ氏が総領事館内で殺害されたことは確実であるとみている。殺害犯とされる15名のサウジ人重要参考人の中には、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子に極めて近いインテリジェンス関係者(元外交官)や警備・治安担当者、法医学専門家も含まれており、皇太子の与り知らないところで、今回のオペレーションが実施されたとは考えにくい。トランプ大統領も、まもなく捜査結果が発表されるだろうと述べており、サウジ側のオタイビ総領事帰国指示は、同総領事の不測の発言、あるいは亡命等を防ぐ目的があったのではないかとみられる。同総領事が帰国したことにより、「総領事が殺害を指揮し、責任をとって自らの命をたった」というシナリオにならないよう同総領事、ならびに殺害チームとみられる15名についても、なぞの失踪という結果にならないよう今世界の目が彼らに注がれるよう細心の注意を払うべきタイミングにあると思われる。
(17日付トルコ・ヒュッリエト・デイリーニュース)http://www.hurriyetdailynews.com/saudi-consul-in-istanbul-relieved-of-post-to-be-investigated-137983
10月17日、ワシントン・ポストは、発表を躊躇っていたカショーギ氏最後のコラムを公表した。その中で、カショーギ氏は、「アラブ諸国政府は、フリーハンドを与えられ、より大きなスピードでメディアを黙らせ続けている。アラブ世界は、外部のプレイヤーによってではなく、権力争いにまい進する自国内のプレイヤーによって課された独自の鉄のカーテンに直面している」としてアラブ世界の指導者を批判し、自由な声を発信し、届けることができるプラットフォームの必要性を訴えている。下記最後のコラムをぜひお読みいただきたい
https://www.washingtonpost.com/opinions/global-opinions/jamal-khashoggi-what-the-arab-world-needs-most-is-free-expression/2018/10/17/adfc8c44-d21d-11e8-8c22-fa2ef74bd6d6_story.html?utm_term=.9e9c13acf922

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