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海外での投票結果からみえてくるクルド系トルコ人の動向[2018年06月29日(Fri)]
6月24日に投開票が行われたトルコの大統領選挙・議会選挙では、エルドアン大統領が52.59%の得票率で勝利し、与党公正発展党(AKP)は単独では過半数(300議席)には達しなかったものの、295議席を確保し、民主主義行動党(MHP)と人民連合を組んで、合計で344議席の安定多数を確保しました。この結果、エルドアン大統領は、少なくとも今後5年間強力な実権型大統領として、政権運営を担うことになりました。

そのエルドアン大統領が最も警戒しているのが、2016年7月にクーデター未遂事件を起こしたとされるギュレン派の支持者と、トルコがテロ組織と分類するクルド労働者党(PKK)支持者の動向です。もちろん、ギュレン派として立候補している候補者も、PKK代表として立候補している候補者もいないので、直接的な支持者の割合は不明ですが、前者については、少なくともAKPを含む与党連合には投票せず、共和人民党(CHP)や国民連合を組む優良党(IYI)ほかに流れるとみるのが自然で、後者については、クルド系の人民民主主義党(HDP)支持者の層の大きさをみることで、PKKに心情的に近い人々がどの程度いるのかを推測することができます。

この選挙結果の詳細は、アナドール通信のウェブサイトから閲覧することができます。議会選挙の在外投票で、HDPの得票率が他の政党との比較で最も高かった国は、英国(49.21%)、フィンランド(48.05%)、イラク(47.89%)、日本(44.29%)、スイス(40.78%)、スウェーデン(37.1%)、ウクライナ(29.52%)の7か国でした。投票数で言えば、独の母数が一番大きく、65万票のうち9万6千票がHDP支持、次に仏で15万9千票のうち、約3.9万票がHDP支持。3番目に英国で、2万5百票がHDP支持でした。因みに日本は母数が小さいため、HDP支持票は7百票強でした。大統領選挙をみると、HDPの元共同代表で、トルコの刑務所に収監中でありながら立候補したデミルタシュ候補が1位を取った国は、日本とイラクだけでした。イラクは、投票率が10%強で、投票者数も3百数十なので、インパクトは小さいですが、極東の国で、トルコ政府とも良好な関係にある日本は、なぜかクルド系の支持率が世界の中でもひときわ目立っているといえます。因みに、法務省の在留外国人統計で、2017年6月1日現在のトルコ人の在留者数は、5167名でした。


Posted by 八木 at 15:34 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

イスラム教徒が少数派の国におけるアザーン(礼拝への呼びかけ)[2018年06月20日(Wed)]
イスラム教国を訪問すると、1日5回、近くのモスクから「アッラーフ・アクバル」から始まる礼拝への呼びかけを耳にします。「アザーン」(礼拝への呼びかけ)です。異教徒にとっては、特に日の出前の呼びかけが苦手だというひともいます。しかし、郷に入れば郷に従えで、イスラム教徒が多数の国では、通常摩擦は起きません。しかし、キリスト教徒が多数の欧州、とりわけドイツではイスラム教国と同じというわけにはいかないようです。19日のトルコ紙報道(下記ヒュッリイェト記事参照)によれば、ベルリンのモスクでアザーンが禁止されているにもかかわらず、トルコの旗を掲げたムアッジン(呼びかけ者)がアザーンを唱える画像が紹介されました。その際治安当局は、介入しなかったとのことです。一方、2月ドルトムント周辺の町のモスクから発せられる金曜日週1回の祈りの呼びかけを、1km離れたところに住むキリスト教徒の夫婦が、中止を求めて裁判を起こして勝利したとの報道(下記DW記事参照)があります。夫婦は、アザーンを自分たちのキリスト教の信仰と相いれないとして訴えを起こし、モスク側は、たかだか週1回2分の呼びかけで、もっと近くに住む人たちからも一切苦情はなかったと反論。これに対して、裁判所は、アザーンのメッセージ内容に踏み入ることはなく、地域住民の理解が必要であるとの手続き面を重視し、アザーン中止の判断を下したとのことです。現地のイスラム教徒にとっては、1日5回ではなく週1回に限定しているのに、なぜ、苦情が来るのかという思いがあると思われますが、多数派の社会に入っていくとき、独特のアイデンティティを有する少数派は、コミュニティの願望を絞り込み、対話によって多数派にそれを認めさせるという忍耐力と説得力が求められます。
http://www.hurriyetdailynews.com/loudspeakers-used-for-call-to-prayer-in-berlin-despite-ban-133494
(6月19日付ヒュッリイェト・デイリーニュース報道)
http://www.dw.com/en/german-court-bans-mosque-from-call-to-prayer-in-oer-erkenschwick/a-42432256(2月2日付けDeutsche Welle記事)
(参考)アザーンの誦句
アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)
アシュハド・アン・ラー・イラーハ・イッラッラー
(アッラー以外に神はいないと証言する)
アシュハド・アンナ・ムハンマダン・ラスールッラー
(ムハンマドがアッラーの使徒であると証言する)
ハイヤー・アラッサラー(祈りに来なさい)
ハイヤー・アラルファラー(栄光のために来なさい)
アッラーフ・アクバル(アッラーは偉大なり)
ラー・イラーハ・イッラッラー(アッラー以外に神はいない)
الله أكبر
أشهد أن لا اله إلا الله
أشهد أن محمدا رسول الله
حي على الصلاة
حي على الفلاح
الله أكبر
لا إله إلا الله

Posted by 八木 at 10:42 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

祝福されるラマダン明け大祭(عيد الفطر المبارك)[2018年06月15日(Fri)]
イード・アルフィトルとは、「断食を破る(breaking the fast)」お祭りという意味で、一か月にわたる日中の断食を実行するラマダン月明けをイスラム教徒がお祝いする大祭で、国により差がありますが、イスラム教徒が多く住む国では、通常3日間程度休日になります。サウジアラビアやエジプト、中東北アフリカの国々、およびインドネシア、マレーシア等で、イード開始は6月15日(金)となり、新月が確認できなかった インド、パキスタンは16日(土)となるようです。アラビア語では、「祝福された」という意味の「ムバーラク المبارك Mubarak」という形容詞をつけて、イードの喜びを分かち合います。アルジャジーラの記事によれば、アラビア語以外を母国語とする国では次の表現が使われているようです。
https://www.aljazeera.com/news/when-is-eid-al-fitr-170608081041638.html
(6月14日付アルジャジーラ記事)
リンク Ciid wanaagsan – ソマリア
リンク Mutlu Bayramlar – トルコ
リンク Selamat Idul Fitri – インドネシア.
リンク Selamat Hari Raya - マレーシア、ブルネイ、シンガポール
リンク Barka da Sallah – ナイジェリア
ラマダン月が明ける前日の6月14日がロシアでのサッカーワールドカップの開幕日にあたり、プーチン・ロシア大統領、ムハンマド・ビン・サルマン・サウジ皇太子が見守る中、ロシアとサウジ・チームが闘い、ロシアがサウジに5-0で圧勝しました。ふと、この大敗の原因として、サウジ・チームが断食を実行していたのではないかと気になりました。同じことが気になるひとも多いようで、関連の記事を見つけましたので、興味のある方はご一読ください。
http://www.arabianbusiness.com/sport/398663-world-cup-sparks-debate-on-ramadan-fasting (6月13日付アラビアン・ビジネス記事)
サウジ・チームは、旅行中は断食を行わなくてもよいというイスラム法の例外規定が援用されていたようです。但し、5行のひとつである断食を実行するかどうかは、個人がアッラーとの関係で、どう判断するかの問題で、断食を行っていた選手がいても不思議はありません。また、イスラム教徒が旅行中の例外規定を援用しても、ラマダン月以外にその埋め合わせをすることが求められています。因みに、中東北アフリカからは、サウジ以外に、エジプト、モロッコ、イラン、チュニジアがワールド・カップに出場しますが、本15日試合するエジプト以降のチームは、断食の直接的影響を回避することになります。ワールドカップ開催前のラマダン期間中の強化試合において、エジプト・チームは3試合に全敗したものの、断食を続ける意思は変わらなかったとのことです。FIFAガイドラインは、イフタール(ラマダン期間中の日没後の最初の食事)後、3-4時間は試合を行わないようにと勧告しているそうです。

中東のみならず世界中の人びとが、富裕国であるか貧困国であるかを問わず、サッカー、とりわけ、ワールド・カップに夢中になります。それは、サッカーはどの国に行っても、子どもたちがボールひとつあれば通りの一角で、ゲームができるからです。これだけ裾野のひろいスポーツは他にありません。中東では、今も紛争が続いていますが、平和の祭典ワールド・カップと祝福されたイード・アルフィトルが紛争終結のきっかけになることを願ってやみません。
寄稿:八木正典

Posted by 八木 at 11:26 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

ジブラン・ハリール・ジブランの描く世界[2018年06月13日(Wed)]
レバノン北部山岳部のブシェーリ村にハリール・ジブラン博物館があります。ジブラン・ハリール・ジブランは、1883年にマロン派キリスト教徒の一家に生まれたレバノン人で、少年時代に家庭の事情で米国に移動し、一旦レバノンに戻るものの、再び出国し、パリ、ボストンを経由し、1923年にニューヨークで、今も世界中で読まれている「預言者(Prophet)」を出版し、文筆家、詩人、画家として広く知られるようになりました。1948年48歳の若さで亡くなりましたが、遺体はブシェーリ村に戻され、修道院を修復・拡張したジブラン記念博物館には、遺品や440点の絵画が納められています。
(博物館URL)http://www.gibrankhalilgibran.org/Home/

ネット上でも画像検索「Gibran Khalil Gibran paintings」でご覧になるとお感じになると思いますが、魂が肉体から解き放されて、レバノンの山々に浮遊している絵や、どこかの入り口に導かれる絵など幽体離脱を思い出させる作品が数多く目に付きます。著書「預言者」は、神の言葉を預かる預言者アルムスタファが、12年間住み慣れたオルファレーズの街で、彼を故郷の島に連れ帰る迎えの船を待つ決別の時に、長年彼を信じてきた女祈祷師アルミトラをはじめ、街の住民から発せられる27のテーマについてアルムスタファが答える形式をとっています。この中でも、一貫したメッセージは、生命エネルギーは永遠であり、再生されるということです。アルムスタファは、出発の間際に人々に伝えます。「オルファレーズのひとびとよ。私は風と共に行きます。しかし、空しく消えては行かない。知ってほしいのです。さらに深い沈黙のなかから私が帰ってくることを」 (佐久間彪訳「預言者」至光社1990)として再来を約束します。また、子どもについて質問された際、「あなたの子は、あなたの子ではありません。あなたを通ってやってきますが、あなたのものではない」(同上)と諭します。そして、最後に船の出発を見届けたアルミトラが、アルムスタファが語った言葉「ほどなく、風の上での暫しの休らいの後、もうひとりの女が、私を産む。」(同上)を思い出し、文章が終わっています。

レバノンの山脈地帯や隣接するシリアやイスラエルに、ドルーズ教徒の村々が点在します。ドルーズ教徒は、レバノンの選挙制度の下では、大きく分けてイスラム・ブロックに属していますが、その起源は、シーア派の一派イスマイール派がチュニジアで興したファーティマ朝の多数派から分離した第6代イマーム・ハーキムを神格化したグループで、独自の聖典を持ち、輪廻転生を信じており、イスラム教の異端というよりも独自の宗教集団といった方がふさわしいほどです。アラビア語で輪廻転生はtaqammus(تقمص)といいます。Taqammusは、シャツ(قميص)を次々と脱ぎ捨てるという意味で、肉体は滅びても、魂は新たな肉体を見つけて生命体としての誕生を繰り返すということを指します。ハリール・ジブランがそのドルーズの教義にどの程度なじんでいたのかはわかりません。しかし、彼の描く著書、絵画は、「魂の永遠さ」を物語っています。

天皇陛下が来年5月に退位されます。「預言者」は美智子皇后陛下の愛読書であると聞いたことがあります。退位された後、長年の重責から解放された美智子さまが、ご自由にブシェーリのジブラン博物館や近くのレバノン杉の森やマロン派修道院等を探索される機会があればすばらしいと思います。

文責:八木正典

Posted by 八木 at 12:08 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

人々の分断の象徴:壁(かべ)の建設[2018年06月11日(Mon)]
6月9日、トルコ当局は、911kmに及ぶトルコ・シリア国境において、6県に隣接する764kmの境界にコンクリート・ブロックの壁の建設を完了したと発表しました。壁の建設は、ISISの活動が活発化し、かつ、PKKとの和平交渉が停止した2015年に工事が開始されたとのことで、完成された壁は、高さ3m、幅2mで、最新の電子監視システムを備えているとのことです。壁は、イランとの国境でも144kmが完成しつつあるとのことです。ISISがイスラム国を宣言して以降、シリア・イラクとトルコとの国境で、ジハーディストの往来や麻薬や石油等の密売・密輸が増大しているとしてトルコ政府は非難を浴び、国境管理を強化し、壁の建設はその一環でした。一方、ISISが支配地域を次々と失っていく中で、トルコの狙いは、トルコがテロ組織とみなすクルド労働者党(PKK)と同根のテロ組織とみなすシリアのクルド人勢力クルド民主統一党(PYD)とその軍事部門クルド人民防衛隊(YPG)の往来を断つことに主眼が置かれているとみられます。
https://www.dailysabah.com/war-on-terror/2018/06/09/turkey-finishes-construction-of-764-km-security-wall-on-syria-border
(6月6日付アナドール通信記事)

壁は、外敵から仲間を守る盾となる一方、人々の分断と他者排斥の象徴でもあります。壁は歴史的に世界各地で建設されてきました。一番有名なのが、紀元前3世紀に中国秦の始皇帝が匈奴等の異民族の侵入を防ぐために建設したとされる「万里の長城」です。現在確認できるのは6千kmほどといわれますが、2012年に中国国家文物局が発表したところでは、もともと全長21,196kmに達していたとされます。第二次大戦後有名になったのが、「ベルリンの壁」です。東西冷戦の影響で、1961年8月13日、東ドイツは、それまで往来が自由であった東ベルリンと西ベルリンの間に約48kmの壁を建設し、それを含め、西ベルリンの周囲約155kmを封鎖しました。東ドイツの壁建設は、東独人が西ベルリンを経由して西独に脱出する人が続出したのを抑えるための措置でした。壁のために家族が引き裂かれ、西ベルリンに逃れようとした人々が東側警備兵によって多数殺害されました。壁は、1989年11月9日崩壊しました。因みに筆者は、かつてチャーリー・チェックポイントを通過して、西ベルリンから東ベルリンを訪問したことがあります。西ベルリンの賑わいとは対照的に、静かで重々しい雰囲気であったことを覚えています。

最近ではトランプ米大統領の大統領選挙戦での選挙公約に挙げられた「メキシコとの壁」の建設があげられます。大統領は、就任後間髪をいれずに2017年1月25日、不法移民の流入阻止等を理由にメキシコ国境約3058kmに沿って壁を建設するとの大統領令に署名しました。建設費用をメキシコ側に負担させる計画でしたが、メキシコ側が拒否しました。2017年秋には、高さ9mの壁の試作品が制作されました。壁の建設費用は、216億ドルにおよぶとのことですが、議会は承認していません。因みに、現在でも、1052kmにわたってフェンスは設置されているとのことです。

話を中東に戻します。世界最大の「天井のない監獄」といわれているのがガザです。ガザ地区では、狭い土地の中で、200万人近くが生活していますが、イスラム系の政治組織ハマースが主導権を握っており、2007年以来封鎖措置を受けています。現在もフェンスで遮断されていますが、イスラエルは、2017年8月「スマートウォール」という地中から地上6mに達する壁を、全長51kmの境界線に沿って建設することを明らかにしました。地下トンネル設置等の地中での活動を探知する機能を有し、建設費は8億5千万ドル(CNN報道)とのことです。これだけではなく、2018年5月イスラエルがハマース戦闘員の海上からのイスラエル領侵入を防ぐためにガザ地区の海底にも「インペネトラブル」という海中封鎖の壁を建設することが明らかになりました。建設費用はやはり8億3300万ドル(タイムズ・オブ・イスラエル報道)とのことです。ガザでは、本年6月1日、ガザの境界近くで、パレスチナ人の負傷者の手当を行っていた21歳の女性看護師ラザン・アル・ナッジャールRazan al-Najjar)がイスラエルの狙撃兵に撃たれて死亡しました。このニュースは、ガザの封鎖とガザの人々の絶望に対する世界の無関心に警鐘を鳴らしています。
http://www.middleeasteye.net/news/twitter-hits-back-israeli-attempt-smear-slain-gaza-medic-razan-al-najjar-971140690
(6月7日付ミドル・イースト・アイ記事)

Posted by 八木 at 16:09 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

分析レポート「アラブ4か国によるカタール封鎖1年を振り返る 」紹介[2018年06月08日(Fri)]
本年6月5日で、サウジ、UAE、バーレーン、エジプトのアラブ4か国がカタールとの外交関係の断絶、陸海空の封鎖を発表してまる1年になります。昨年6月アラブ4か国は、カタールに対して13項目の要求を突き付けて完全受け入れを迫りました。その後1年を振り返り、13項目の要求に対してカタールがいかなる対応をとったのか、4か国の思惑と誤算、今後の見通し等についての分析レポートを公開しました。
執筆者 八木正典
(記事リンク)http://meis.or.jp/products/gulfstat/QatarBlockadeFourYears.php

Posted by 八木 at 10:12 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)