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社会デザイン学会で承認された中東イスラム世界社会統合研究会が運営する団体ブログです。
中東イスラム世界社会統合研究会公式サイト http://meis.or.jp
社会デザイン学会研究会案内 http://www.socialdesign-academy.org/study/study_application.htm
日本とイスラム世界とのネットワーク強化を目的として、以下の項目で記事を発信していきたいと考えています。
日本とイスラム世界との出会い:日本人や日本がどのようなきっかけでイスラム世界への扉を開いていったかを紹介します。
イスラム世界で今注目されている人物:イスラム教徒であるか否かを問わず、イスラム世界で注目されている人物を紹介していきます。
イスラムへの偏見をなくすための特色のある活動:イスラムフォビア(Islamophobia)と呼ばれるイスラム教への偏見、イスラム教徒排斥、イスラム教徒警戒の動きが非イスラム世界で高まっています。これらの偏見や排斥をなくすための世界の各地で行われている特色のある活動を紹介していきます。
中東イスラム世界に関心を抱くあなたへの助言:さまざまな分野で中東・イスラム世界に関心を抱き、これから現実に接点を持っていこうと考えておられるあなたへのアドバイスを掲載します。

情報共有:当研究会のテーマに関連したイベント、活動、寄稿などの情報を提供しています。

新着情報:中東イスラム世界社会統合研究会公式サイトの「中東イスラム世界への扉」に、現地駐在の本田圭さんから投稿のあった2020年11月の「UAE、ある日の砂漠」と題する紀行文を掲載しました。UAEの砂漠がとても魅力的なので、ぜひ一度アクセスしてみてください。
http://meis.or.jp/products/door2me/OnceUponATimeInUAEDesert01.php




MKO創始者で現NCRI議長の夫マスウード・ラジャヴィ死亡の報道 [2023年10月31日(Tue)]
このブログでは、去る8月7日「驚きのアルバニア当局によるイランの反体制組織ムジャヒディーン・ハルクMKO」の活動制限」と題して、アルバニア当局によるムジャヒディーン・ハルク組織(MKO、あるいはMEK)のリーダーで、イラン国民抵抗評議会(NCRI)マルヤム・ラジャヴィ暫定議長のアルバニア政府による入国禁止措置などを投稿した。https://blog.canpan.info/meis/archive/534
これに関連して、2023年10月29日、イランのタスニム通信は、長らく表舞台に姿を現さなかったマルヤムの夫でMKOの創始者でもあるマスウード・ラジャヴィ(1948年生まれ)が3年前に病気で、米国の保護監視下で死亡していたと報じた。
イランのタスニム通信は、ムジャヒディーン・ハルク組織(MKO)の首謀者が3年前に心臓発作で死亡した経緯について新たな詳細を入手したとの記事を発信した。主要点は次のとおりである。
1.ある治安関係者はタスニム通信に対し、MKOの元代表マスウード・ラジャヴィ氏(マルヤムNCRI議長の夫)が、闘病と心臓発作を経て3年前に死亡したと語った。2003年の米軍のイラク侵攻後、ラジャヴィ氏は米軍の作戦中に足と顔に重傷を負い、そのため亡くなるまで公の場から姿を消した。ラジャヴィ氏はイラクからヨルダンに逃れ、そこで糖尿病と高血圧を発症したと伝えられている。 身元の追跡特定を避けるため、医療センターで治療を受けることができなかったとされる。
2.その後、ラジャヴィ元代表の健康状態が悪化し、視力を失い、片足を切断された。2010年代初頭、イラク民衆勢力からMKOに対する圧力が高まり、イランがテロ組織とみなすイラクのアシュラフ・キャンプへの攻撃を開始したため、MKO部隊はイラクから海外に逃走するためにあらゆる努力を払った。 しかし、その後拠点となったアルバニアへの移動には、米国と英国が指定したテロ組織のリストから除外する必要があった。 MKOをブラックリストから除外するために米国が提示した条件の1つは、マスウード・ラジャヴィ元代表が会合やイベントに姿を現さないことだった。 米国は彼の写真さえも公開しないよう求めていた。
MKOメンバーに対する米国の計画の1つは、彼らをアジア、アフリカ、欧州の数カ国に定住させることであったが、イラクでのMKO部隊の状況が非常に危機的となったことをうけて、MKO指導者らはイラクから欧州への集団移動の条件を受け入れた。
3.消息筋によると、マスウード・ラジャヴィ氏は死亡するまで米国の警護下で不特定の場所に保護されていたという。 イラン生まれでファゼル博士という別名で活動する内科医アッバース・シャケリ氏は、米国に移送される前にマスウード・ラジャヴィ元代表の治療を担当していた。シャケリ氏は1986年にイランからイラクに逃れ、MKOに加わったが、現在はジアディン・アブドルラザギという偽名でパスポートを持ちフランスに居住している。シャケリ氏とは別に、ラジャヴィ氏のマッサージ師やボディーガードなど、他の多くの内部関係者が2021年以降、欧州の多くの国に移動している。この情報筋は、マスウード・ラジャヴィの名で時折発表される声明は、MKOメンバーらに対して彼のいわゆる救世主としての性格を復活させることを目的としており、死亡した元代表の古い写真がMKO声明とともに表示されるのはそのためである、と結論づけた。
4.MKOメンバーはイラクで長年を過ごし、イラクの元独裁者サッダーム・フセインの庇護を受け、武装した。 彼らは1980年から1988年のイラク・イラン戦争ではサッダーム側に味方し、サッダーム政権崩壊後誕生したシーア派政権により、居場所を失い、2012年に米国がMKOのテロ組織指定を解除し、翌年アルバニアに移動し、アシュラフ3キャンプを拠点に活動していた。
https://www.tasnimnews.com/en/news/2023/10/29/2980064/details-emerge-in-death-of-mko-ringleader-massoud-rajavi

(参考)マスウード・ラジャヴィ氏とは如何なる人物か(アルジャジーラ報道)
1948年生まれの、1979年のイランイスラム革命につながる運動に取り組んだ人物の一人だった。政治学の学位を取得して卒業した彼は、当時モハマド・レザー・シャー・パフラヴィーに反対する左翼グループであったMEKに参加した。彼はグループのリーダーとして浮上したため、シャーの治世下で何年も刑務所に収監されたが、イラン革命成功後、他の政治犯らとともに釈放された。しかし、最高指導者の権限の範囲などを巡って、誕生したばかりの共和国指導者ホメイニ師と仲違いするまで、そう時間はかからなかった。大統領選挙や議会選挙でも落選したラジャヴィ氏は、新イスラム共和国の指導者らと不仲で弾劾されたイラン初代大統領バニー・サドル氏とともに1981年にイランからパリに亡命した。両者は力を合わせ、MEKの統括組織としてイラン抵抗国家評議会を設立し、イラン体制に代わるものとして主張した。 しかし、ラジャヴィ大統領がイラン革命政権に対してより暴力的なアプローチを望んでいたため、両者は意見が一致しなかった。ホメイニ師の新秩序に対抗するために、MEKはすでに爆撃を含む一連の攻撃を開始しており、イランでは多くの民間人が死亡した。彼らは多くの暗殺を組織し、その中で最も注目を集めたのが、イラン第2代大統領ムハンマド・アリー・ラジャイと当時の首相ムハンマド・ジャバド・バホナールを殺害したものである。 彼らは現最高指導者アヤトラ・アリ・ハメネイさえ殺害しようとしたとされる。
https://www.aljazeera.com/news/2023/10/30/former-mek-leader-massoud-rajavi-died-under-us-guard-says-iran-media
(コメント)マルヤム・ラジャヴィ現NCRI代表の夫でMKO(MEK)の創始者マスウード・ラジャヴィ元代表がなぜ表舞台に20年にわたって姿を現さないのか不思議に思う人も多かったのではないかと思われる。マルヤム・ラジャヴィ現NCRI代表は、毎年パリで開催されてきたイラン解放イベント(フリーイラン)の大集会では、欧米、イスラエルなど現在のハメネイ・イラン政権に反発する政治家や企業家など多数を集めイランの革命体制の終焉・打倒を訴えていた。とりわけ、トランプ政権をささえていたペンス元副大統領(次回大統領選挙共和党内レースから離脱)やジュリアーニ弁護士、ボルトン元大統領補佐官など著名人多数が、集会に出席して、気勢をあげていた。その中で、創始者マスウードが登場することは決してなかった
今回のタスニム通信の報道通りであれば、マスウードは長らく病気を患い、また、かつてサッダーム・フセインと協力関係にあったことにもかんがみ、米国治安当局から、表舞台には出ることは許さないという条件で、マルヤム以下のMKOメンバーの活動を認めてきたことが判明した。2023年6月に、アルバニア治安当局は、ティアラ近郊のアシュラフ3キャンプを急襲し、仏に逃れたマルヤム代表の再入国も禁止し、アシュラフ3キャンプは、アルバニア当局の厳しい規制下に置かれたとされる。MKOメンバーのカナダ移動計画も持ち上がっているとのことだが、順調には進んでいない模様。MKOは、イラン革命体制が、イラン国民からの支持を受けていないことを示す有力なカードとして扱われてきた側面があるが、イラン現政権からみれば、民間人や政府要人17000人を殺害した「テロ組織」であり、イランの現体制を支持していない国民からも必ずしも、MKOは歓迎されているわけではない。米国やフランスは、MKOメンバーをどこに移動させ、どのように支援していくのか、その方向性ははっきりしていない。但し、仮にトランプ政権が復活することになれば、改めてMKOに追い風が吹くことはありえないことではない。

Posted by 八木 at 12:00 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

中東情勢の緊迫化で存在感を増すカタール[2023年10月24日(Tue)]
カタールは、アラビア半島のアラビア湾(ペルシャ湾)側に突き出た半島国家で、人口は外国人を含めて300万人に満たず、うちカタール国籍者は10%強しかいないとみられている。その国の政治的、経済的影響力が今注目されている。とりわけ、今回のハマスの人質となった米国人親子2名の解放のほか、イスラエル人女性高齢者2名の解放も報じられた。さらに、現在、外国籍との二重国籍者50名程度の解放の話が進んでいるとも報じられている。なぜ、カタールは、このような仲介活動を行うことができるのであろうか。
1. カタールの政治力
カタールは、サーニー家が支配する首長制国家で、現在の元首は、シェイク・タミーム・ビン・ハマド・アールサーニー首長である。2013年6月25日に父親のハマド前首長から元首の座を引き継ぎ、現年齢43歳においても世界で最も若い君主であるといわれる。このカタールの政治力を引き出しているのは、長年培ってきたイスラム主義勢力とのネットワークと石油・天然ガスを背景にした財政力である。カタールには、米中央軍の基地である約1万人の兵員を抱えるウデイド空軍基地が存在する。親米国家でありながら、イスラム過激組織指導者、あるいは過激な行動を容認する精神的指導者であるとされる人物も国内に受け入れてきた。その代表的人物は、エジプト出身のユースフ・アルカラダーウィ師である。同師は、ムスリム同胞団の精神的指導者で、イスラム主義者に強い影響力を有していたが、2022年9月26日カタールのドーハで死去した(アラブ紙が報じた同師の主なファトワ下記1のとおり)。現在、イスラエルと戦闘状態に入っているハマスの最高指導者イスマイール・ハニーヤ政治局員もカタールに事務所を構える。10月7日のハマスの襲撃後のイスラエル軍によるガザ完全包囲の中で、なぜ、ハニーヤ指導者が、ガザを抜け出て、カタールでイラン外相等と会談できたのか不思議に思った人も多いと思われるが、ハニーヤはカタール政府に2013年以来客人として迎入れられており、ガザにいたわけではない。すなわち、ハマスに直接影響力を行使できるのが、カタール政府といえる。もちろん、ガザの現場では、ハマスの軍事部門アル・カッサーム旅団を率いるムハンマド・ディーフ司令官や、ハマスと連携するイスラム聖戦(イスラミック・ジハード)も存在し、政治部門と軍事部門は立場が完全に一致するとはいえないものの、それでもカタールからの要請をハマスは無視することはできない
カタールは、テロ組織を支援しているとの理由で、2017年6月5日から隣国サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトから外交関係を打ち切られ、陸海空の封鎖を受けてきたが、この間、トルコなどの支援も受けて、この危機を乗り越えることができた。トルコもカタールと並んで同胞団にパイプをもつ国であり、アラブ4か国のカタール封鎖時には、いち早くトルコ軍部隊を派遣して、軍事的緊張拡大を抑制した。ハマスは、エジプトで、ムバラク政権を崩壊させたムスリム同胞団とは思想的に近い関係にある「イスラム抵抗運動」と呼ばれるイスラム主義組織であり、カタールは、ハマスや同胞団も支援しているとして、アラブ4か国にテロ支援国家呼ばわりされ、このような組織との関係を断つこと、アルジャジーラなどカタールが資金提供しているメディアを閉鎖することなどを要求したが、2021年1月上旬アラブ4か国は、見返りを得ることなくカタール封鎖を解くことになった。さらにカタールは、アフガニスタンのタリバーンと米国トランプ政権との和平交渉の場を提供してきた。トランプ政権による和平合意を引き継いだバイデン政権は、2021年8月アフガニスタンから完全撤退した。アフガニスタンからは多くの避難民が国外に逃れた。女性の就労や教育などの人権問題が悪化し、経済的にも新たな援助が入らず、疲弊している。2021年8月の親米アフガン政権崩壊後、世界中のどの国もタリバーン政権下のイスラム国家を承認していないが、2023年9月現在、15か国が大使館をカブールで開いているとされ、西側の多くの国々は、カタールで、必要に応じて、タリバーン政権側と接触しているとされる。

(参考1)アル・カラダーウィー師の物議を醸したファトワ
2003〜2005年:イスラエルおよびユダヤ人に対するジハードを呼びかけるファトワを複数回発した。その中で、パレスチナに住むユダヤ人成人は全員「占領者、戦闘員」であり、戦争の正当な標的であるとした。
2004年:イラクに駐留する米軍に対する反乱を正当化し、戦う者の殺害を容認した。
2010年:自爆テロは本当の意味での自殺ではなく、作戦を実行した結果としての事故的な死であり、聖戦における名誉ある犠牲であり殉教であると見なされると主張した。
(参考2)米国とタリバーンとの和平交渉を仲介したカタール
2020年2月29日 米国トランプ政権とタリバーンは、カタールのドーハでアフガニスタンに「平和をもたらすための合意」に署名。 米国とNATOの同盟国は、武装勢力が合意を支持した場合、14か月以内(2021年4月末まで)にすべての軍隊を撤退させることになった。トランプ政権からアフガン合意を引き継いだバイデン政権は、米軍は、同時多発テロからちょうど20年後の2021年9月11日までにアフガニスタンから撤退する予定を表明。その後、ガーニ政権支配地を次々に奪還したタリバーン部隊は 2021年8月15日、カブールに侵攻、支配し、欧米軍は8月末までに完全撤退。

2. カタールの経済力
カタールは液化天然ガス(LNG)の輸出量で、カタールは米国、豪州とトップを争っており、2022年のBPほかの統計では、カタールが1位を僅差でライバルを退けたとされる。カタールには、ガス輸出国フォーラムの事務局も置かれている。ロシアやイランもメンバー国である。カタールはノースフィールドガス田拡張プロジェクトを実施中。なお、カタールは産油国でもあるが、OPECからは脱退している。
(1)North Field拡張プロジェクトは同国北東部のRas Laffanに位置し、ノースフィールド東(North Field East:以下、NFE)プロジェクトと呼ばれる第1段階の拡張計画では4基のLNGトレイン(トレイン1〜4)が建設され、ノースフィールド南(North Field South:以下、NFS)プロジェクトと呼ばれる第2段階の拡張計画では2基のLNGトレイン(トレイン5・6)を建設するプロジェクトであり、同国のLNG生産能力を現在の年産7,700万トンから2027年に1.26億トンにまで引き上げる計画
(2)欧米は、カタールのノース・フィールド拡張プロジェクトに協力
• 第一段階(目標年2025年)ノース・フィールド東ガス田の開発(事業費:約288億ドル、LNG生産能力1.1億トン)右矢印1カタール・エナジーは、2022年6月トタルエナジーズ(仏)、エニ(イタリア)、コノコフィリップス(米)、エクソンモービル(米)、シェル(英)の5社とパートナーシップ合意を発表
@エクソン:6.25%、Aトタル:6.25%、Bシェル:6.25%、Cエニ:3.125%、Dコノコ:3.125%、Eカタール・エナジー75%
• 第二段階(目標年2027年)ノース・フィールド南ガス田の開発(事業費約150億ドル、LNG生産能力1.26億トン)右矢印12022年9月以降、トタルエナジーズ(仏)、シェル(英)、コノコフィリップス(米)が契約に調印。
@トタル:9.375%、Aシェル:9.375%、Bコノコ(6.25%)、Cカタール・エナジー(75%)


(参考)日本とカタールとのLNG取引
カタールは、長年LNGを長期契約の基づき日本に供給してきた。
カタールは、2021年末でLNG供給の長期契約を打ち切った日本に替わり、中国との間で27年間のLNG長期供給契約締結(2022年11月21日)した。年間400万トン、26年開始見込み。ロシアのウクライナ侵攻をうけて、最大の発電事業者のJERAは、2022年12月27日、オマーンとの間で10年程度の長期契約を結び、2025年以降、年間で235万トンのLNGを新たに輸入することで基本合意した。JERAは23年10月には、UAEとの間で2年間80万トンの供給契約を結んだ。カタールは日本との関係解消を望んでいるわけではなく、2022年の安倍元総理国葬にはタミーム首長が出席し、昭恵夫人に弔意を表明し、2023年7月18日には、サウジ、UAEに次いで、カタールを訪問した岸田総理は、日・カタール首脳会談で、日本側は、両国間のLNG協力の重要性を強調した。

Posted by 八木 at 10:55 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

注目のインド・中東・欧州新経済回廊構想の打ち上げ[2023年09月11日(Mon)]
2023年9月9日、ニューデリーでのG20首脳会議の機会に、米国、インド、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、EUの首脳は、インド・中東・欧州新経済回廊構想実現に向けての覚書に署名した。
@ インドからUAE、サウジアラビア、ヨルダン、イスラエルを経由して欧州までの鉄道路線と港湾接続を統合し、スムーズかつ迅速な物流を実現する。
Aエネルギーインフラを開発し、グリーン水素の製造とすべてのパートナーへの輸送を可能にする。
Bこの地域を接続する新しい海底ケーブルを設置し、電気通信とデータ転送を強化する。

(解説)G20サミットには、中国の習近平国家主席、プーチン大統領は出席せず、期待された米中トップ会談は実現しなかった。具体的な成果が懸念される中、議長役のモディ首相は、9月9日の初日に、ウクライナ侵攻を行ったロシアを直接名指し批判せず、当初難航が予想されたG20首脳宣言をまとめて発出することに成功した。今回のG20には正式メンバー国以外に多数の国の首脳が招かれたが、その中のひとりは、UAEのムハンマド・ビン・ザーイド大統領である。正式メンバーであるサウジアラビアの代表は、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子(首相)であった。首脳会議の機会を利用して、中東の2首脳にバイデン米大統領、モディ首相、EUのフォンデアライエン委員長が加わり、インド・中東・欧州新経済回廊構想実現に向けての覚書が署名された。先の2023年8月のBRICS首脳会議では、サウジ、UAE、エジプト、イラン、エチオピア、アルゼンチンの6か国に加盟正式招待が発出され、2024年1月に、11か国に拡大の予定となっており、7月に開催された上海協力機構(SCO)にはイランが正式メンバーとなり、さらに、サウジ、カタール、エジプトが対話パートナー国となり、欧米とは一線を画し、中国が影響力を有するブロックが中東の主要国を取り込むことになり、G7・EUブロックとの間で世界秩序の二極化が進むのではないかとみられていた。
こうした中で、今回のインドから中東を経由して欧州を結ぶ新経済回廊構想の打ち上げは、グローバルサウス台頭における米国のメッセージであり、@拡大BRICSやSCOは、G7・EUブロックと対立するものではないとのインドや中東産油国の立場、A欧米やインドによる中国の一帯一路構想とは別の経済回廊構築を進める意向を反映したものと考えられる。この関連で、イタリアのメローニ首相は中国代表の首相に一帯一路構想参加辞退を伝えたといわれる。欧州にとっては、14億人の人口を抱えるインドとの物流の大幅向上が可能になり、中東の産油国UAEやサウジにとっては、イスラエルを巻き込んだ地域開発を加速することになる。とくにサウジは、イスラエルにも近い地域でNEOMという新未来都市、物流拠点、娯楽スポーツ施設の建設を開始しており、イスラエルとの関係正常化、ハイテク分野での協力推進を後押しするとみられる。なお、イスラエルは、今回の署名には加わっていないが、新経済回廊構想は、米、イスラエル、UAE、インド、EU間で話し合われてきたとされ、鉄道の発着点がハイファ港になること、また、グリーン水素をはじめとする新エネルギーの輸送や電気通信・データ送信のための海底ケーブルがイスラエルと欧州を結んで設置される計画であることから、イスラエルにとっての利益は大きく、既にイスラエルは実質的な計画の推進者となっている。カショギ殺害事件で冷却化したMBS・バイデン関係は、昨年7月のバイデン大統領のサウジ訪問でもぎくしゃくしていたが、今回のニューデリーでMBSとバイデン大統領は、モディ首相を交えて満面の笑みを浮かべていたのが印象的であった。ただし、サウジアラビアは、ロシアとも協力してOPECプラス枠内で原油の減産調整を継続し、ガソリン価格は高騰を続けており、サウジは、欧米寄りに再び舵を切ったというより、自国にとって利益のある国々とは、欧米の価値観にかかわらず、協力を続けるということである。なお、この計画実現で影響が出るとみられるのは、スエズ運河通行収入が減少するエジプトであるが、サウジは、地域開発にエジプトも巻き込む形で、違う形でエジプトも恩恵を受けることができるよう配慮するとみられる。
https://www.ndtv.com/india-news/g20-summit-in-delhi-the-significance-of-europe-mid-east-india-trade-corridor-plan-explained-4375429
https://www.opindia.com/2023/09/pm-modi-joe-biden-india-eu-gulf-rail-shipping-corridor/amp/

Posted by 八木 at 10:58 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

拡大BRICSの世界経済に与えるインパクト[2023年08月26日(Sat)]
2024年1月に発足する拡大BRICS11か国の各種指標と世界シェアは次のとおり。
GDP、人口、商品輸出では、現BRICS5か国と比べて伸びは少ないが、石油関連では大きく伸びる。すなわち、石油輸出国と消費国を結びつける枠組みが誕生するというのが拡大BRICSの最大の特徴である。
@総人口は36億人(世界人口の46%)で G7の人口の4倍以上。追加6か国のうち、1億人を超えるのは、エチオピア (1 億 2,650 万人) とエジプト (1 億 1,270 万人)。(World Population Review公表数字)
A面積は4,850万平方キロメートルで36%をカバーし、G7の2倍。(tass 報道)
B2023年のGDP予測では合計がわずかに増加して30.8兆ドルとなり、世界シェアの29.3%となる見込み(現5か国のGDPは27 兆 6000 億ドルで世界全体の 26.3% に相当)。一方、購買力平価(PPP)で見たGDPは 65兆ドルで世界シェア37.3%、G7は29.9%(IMF23年予想。購買力平価GDPはtass 報道)
C石油埋蔵量は世界の44.35%。 G7諸国(米国、英国、ドイツ、イタリア、カナダ、フランス、日本)3.9%(tass 報道)
D石油生産に占める BRICS の世界シェアは 拡大後20.4% から 43.1% に増加(Energy Institute Statistical Review of World Energy統計)
E穀物について、2021年の統計で小麦総収穫量は世界全体の49%(G7諸国では19.1%)。米収穫量は55%(G7諸国は2.6%)(tass 報道)
Fアルミニウム生産量79%(G7:1.3%)とパラジウム生産量77%(G7:6.9%)ハイテク用重要金属の世界生産シェアの点でも有利になるとみられる。(tass 報道)
G世界の鉱工業生産総額の38.3%を占める(G7は30.5%)。但し、輸出シェアの点ではG7が依然として有利であり、その輸出シェアは28.8%。(拡大BRICSは23.4%)(tass 報道)
H商品輸出に占める世界シェアは 20.2% から 25.1% に増加(WTO統計)。
https://www.visualcapitalist.com/visualizing-the-brics-expansion-in-4-charts/
https://tass.com/economy/1664817/amp

Posted by 八木 at 13:20 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

OPECプラスを彷彿させるBRICSプラスの誕生[2023年08月25日(Fri)]
8月22日から24日まで、南アフリカのヨハネスブルグで開催されたBRICSサミットが、24日、首脳宣言を発出して閉幕した。事前に関心を持たれていたBRICSメンバー国の拡大については、アルゼンチン、サウジアラビア、UAE、エジプト、エチオピア、イランの6か国に正式招待が発せられ、2024年1月から正式メンバーになることが決定した。また、BRICS共通通貨については、新通貨の決定の発表はなかったものの、「現地通貨、決済手段及びプラットフォームの問題を検討し、次回サミットまでに我々に報告する」よう求め、BRICSメンバー間の貿易・金融決済の新たな仕組みを検討することとなった。また、新開発銀行(NDB)については、ジルマ・ルセフ元ブラジル大統領を総裁に選定し、新興国による新興国向けの融資を強化していくこととなった。また、NDBの新メンバーにエジプト、UAE、バングラデシュの3か国が加わったことが発表された。
(参考1)BRICSヨハネスブルグ会合首脳宣言の中での注目項目
44項. 私たちは、迅速で、安価で、透明で、安全で包括的な決済システムの広範な利点を認識している。BRICS 諸国における国境を越えた決済に関する G20 ロードマップのさまざまな要素のマッピングについて、BRICS決済タスクフォース(BPTF) のレポートを期待している。国境をまたぐ決済システムの相互リンクを含む決済インフラに関するBRICS諸国による経験の共有を歓迎する。私たちは、これによりBRICS間の協力がさらに強化されると信じている。そしてBRICSメンバー間ならびに他の発展途上国との貿易や投資の流れを促進するための決済インフラに関する更なる対話を奨励する。
我々は、BRICSメンバー間ならびに他の貿易パートナーとの間で、国際貿易や金融取引において現地通貨の使用を促進することの重要性を強調する。我々は、BRICS間のコルレスバンキングネットワークの強化ならびに現地通貨での決済を可能にすることを奨励する。
45項. 我々は、必要に応じて財務大臣及び/又は中央銀行総裁に対し、現地通貨、決済手段及びプラットフォームの問題を検討し、次回サミットまでに我々に報告するよう任務を与える。
46項. 我々は、加盟国のインフラと持続可能な開発の促進における 新開発銀行(NDB)の重要な役割を認識する。 我々は、元ブラジル大統領ジルマ・ルセフ女史が新開発銀行(NDB)総裁に就任したことを祝福し、彼女がNDBの任務を効果的に達成するためのNDBの強化に貢献すると確信している。 私たちは、NDBが2022年から2026年の一般戦略の実現に向けて、持続可能な開発、メンバー拡大の着実なプロセス、コーポレート・ガバナンスと運営効率の改善に向けて最も効果的な資金調達ソリューションを提供し、維持することを期待している。 私たちは、バングラデシュ、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)という 3 つの新しい NDB メンバーを歓迎する。 我々は、NDB が知識共有プロセスにおいて積極的な役割を果たし、そのガバナンス・メカニズムに従い、国の優先事項と開発目標を考慮して、運営政策に加盟国のベストプラクティスをもたらすことを奨励する。 私たちは、NDB が新興諸国によって新興諸国 のために設立された機関としての独特の地位を備えていることから、グローバルな多国間開発銀行 ファミリーの重要なメンバーであると考えている。
91項.我々は、アルゼンチン共和国、エジプト・アラブ共和国、エチオピア連邦民主共和国、イラン・イスラム共和国、サウジアラビア王国及びアラブ首長国連邦を、2024年1月1日からBRICSの正式加盟国として招待することを決定した。
94項. ブラジル、インド、中国、南アフリカは、ロシアが2024年にBRICS議長国に就任し、ロシアのカザン市で第16回BRICS首脳会議が開催されることを全面的に支持する。
(参考2)NDBとは:JETROによれば、NDBは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ共和国のいわゆるBRICS諸国によって、BRICS諸国やその他の新興国のインフラや持続可能な開発プロジェクトに融資を行う目的で、2015年に設立された。本部は中国・上海市に所在する。総裁は、創設メンバーのBRICS諸国から選出され、任期は5年。現在の加盟国は、BRICSの5カ国に加えて、バングラデシュ、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)が新たに加わった。2022年12月時点の融資承認総額は328億ドルで、うちブラジル向けが50億ドルを超える。承認されたプロジェクト数は96件。
(解説)今回のBRICSメンバーシップ拡大は、事前の予想を超えた6か国で、それぞれ国際的、地域的に影響力を有する国々が選定された。まず、サウジ、UAEはいずれも中東の大産油国である。イランは米国の制裁下にあるものの、石油・天然ガスを有する資源大国であり、BRICSの発展の潜在力を有する国である。一方、エジプトは、かつての影響力はないものの、アラブ連盟本部をホストするアラブ世界の取りまとめ国で、アラブ諸国最大の人口を有する国である。エチオピアは、AUの本部をホストするアフリカの中心的国家のひとつである。アルゼンチンは、中南米で、ブラジル、メキシコに次ぐ経済力を有する国で、BRICS拡大の第一段階として、これらの国々が選ばれたことに違和感はない。BRICSの中でも、欧米の経済・金融支配に反発するロシアや中国にイランが加わった一方、G7や欧米に対立することを望まないインドや南アにアルゼンチンが加わることで、BRICSが既存の世界秩序と折り合いをつけるのか、あるいは競合する方向性を強めるのか、現時点ははっきりしない。しかし、拡大BRICSが世界のエネルギー資源国と巨大エネルギー消費国をカバーすることで、その影響力、存在感が増すことは疑いがない。いわば、OPECプラスを彷彿とさせるBRICSプラスの誕生ともいえる。今回は、メンバー諸国間の新たな決済手段としてのBRICS新通貨の発表には至らなかったが、産油国がBRICSに加わることで、メンバー間の特にエネルギー取引における自国通貨使用が拡大すると予想され、さらにオイルマネーが投入されることで新興国自身が新興国を支援するNDBの資金力、融資力が増すことは間違いなく、新興国が訴えてきたIMFなど国際金融機関内での先進国優位の決定権の見直しが進まなければ、独自にNDBを通じた影響力を行使していくことになると思われる。
https://www.thepresidency.gov.za/content/xv-brics-summit-johannesburg-ii-declaration-24-august-2023

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孤立感を深めるロシアのプーチン大統領[2023年08月24日(Thu)]
8月23日午後6時11分(GMT15時11分)オンライン追跡機関Flightradar24は、ロシアの民間軍事会社ワグネルの創始者で代表のプリゴジン氏搭乗の自家用航空機エンブラエル・レガシー600(飛行機番号RA-02795)がレーダーから機影が消滅したことを確認した。

ソーシャルメディアに投稿されたビデオクリップには、プライベートジェットとみられる飛行機が地上に落下する様子が映っていた。

民間航空機関によれば、レガシー 600 は 2002 年に就航を開始し、2020 年に生産が終了するまで 300 機近くが生産された。その間、レガシー600が関係した事故は2006年9月29日にブラジルから米国に向かう途中で同国の国内線として運航されていたボーイング737とエンブラエル・レガシー600がブラジル内陸部で空中衝突を起こしたゴル航空1907便墜落事故(Gol Transportes Aéreos Flight 1907)1件のみとされる。その事故で、エンブラエル機は墜落を免れたが、ボーイング737型機は左翼を大きく損傷し機体制御を失ったまま空中分解して墜落、乗員乗客154名全員が死亡した。レガシー600の機体は損傷したが、パイロットは着陸し、死傷者は出なかった。

このケースはあくまで、空中衝突であり、レガシー600は技術的問題が少なかったことがわかる。プリゴジン氏一行は当然、搭乗前に、綿密に機体チェックを行っていたと考えられ、ここで浮上するのは、レガシー600が撃墜されたのではないかという疑惑である。

モスクワからサンクトペテルブルクに向かって飛行中であったレガシー600機は北西部トベリ州で墜落し、搭乗機には、プリゴジン氏に加えて、元ロシア特殊部隊オペレーターで民間軍事会社の共同創設者とされるドミトリー・ウトキン氏も搭乗し、米国がワグネル副長官とみているワレリー・チェカロフ氏も搭乗していた。他の乗客はセルゲイ・プロプースチン、エフゲニー・マカリアン、アレクサンダー・トットミン、ニコライ・マトゥエフの4名で、乗組員3名と合わせて10名が犠牲になったとみられる。

ワグネル系のSNS「グレーゾーン」は、プリゴジン「暗殺」は壊滅的な結果をもたらすだろう。命令発出者は軍の雰囲気や士気を全く理解していない。これは全ての者への教訓である。 最後まで行きつくことになるであろう、と指摘し、ロシア軍の対空防御システムが飛行機を撃墜したことを示唆した。 同報告によると、近くの住民らは墜落前に「特徴的な防空射撃が2度行われた」と聞いたという。 「これは、ビデオの1つにある上空での反転の痕跡によって確認されている」と付け加えた。 SNSテレグラムのマッシュ報道によると、地元住民は衝突前に2回大きな衝撃音を聞いたとされる。他にも、航空機搭乗前に、高級ワインを入れた箱が送られ、その中に爆薬が仕掛けられたという憶測である。バイデン大統領は、事実関係は承知していないとしていながらも、この出来事は「驚き」ではないとコメントした。すなわち、墜落を巡る状況は、プリゴジン氏とワグネルの幹部が一緒に移動する機会を狙って、政権上層部の指示で、搭乗機が撃墜された、すなわち、プリゴジン氏とその幹部が、6月の軍事クーデターの試みの代償を払って、形を整えて粛清されたとみられることである。因みに、8月18日付で、ワグネルと関係が深いとみられていた国軍副司令官で航空宇宙軍司令官のスロビキン大将が解任されている。
プリゴジン氏搭乗機が墜落した8月23日には、クリミア半島西側の村に設置されていたロシア軍が誇るS-400対空防衛システムが、同日午前10時にウクライナ軍によって破壊炎上する画像も広く流された。クリミア半島はもはや安全ではなく、戦場になるというメッセージである。8月23日、ブリンケン国務長官は、ビデオメッセージで、「クリミアは、ウクライナの領土であり、米国はロシアの違法な併合を認めず、クリミアを含む全ての領土への支配回復を支援する」と述べた。

ウクライナ戦線には、米国製戦闘機F-16の投入も決定しており、米国の外交トップがクリミア半島も戦場となるお墨付きを与えたことで、プーチン大統領は、今後の戦場での被害拡大に備える必要が出てくる一方で、かつての強力な友軍を「おそらく」自らの手で粛清するという事態に陥り、内憂外患の様相を呈しはじめている。プーチン大統領の権威失墜を象徴するかのように、8月20日、ロシアの月への無人探査機スプートニクは月面に衝突しミッションは失敗したが、インドの無人探査機「チャンドラヤーン3号」は8月23日、月の南極地点への着陸に成功し、モディ首相の威信を高めた。8月22日、ヨハネスブルグで開始されたBRICSサミットでビデオメッセージを送ったプーチン大統領は、事前に録画したが映像を送り、17分のスピーチは、生の声ではなく、吹き替えであったとされる。クレムリンのウェブサイトからは、生の声が聴けるものの、何回もせき込む様子が確認され、非常に不安定な精神状態・健康状態にあったのではないかと想像される。

ただ、ロシアのトップが孤立感を深めることが世界の安全につながるかといえば、おそらくそうではなく、緊急事態を避けるためのプーチン大統領と直接話し合える外国の指導者の存在はますます重要になってきている。
https://www.rt.com/russia/581735-prigozhin-plane-crash-facts/
https://www.trtworld.com/europe/russias-prigozhin-is-dead-in-plane-crash-wagner-group-confirms-14624886
https://www.newsweek.com/video-huge-explosion-crimea-ukraine-targets-russia-missiles-1821837

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本日開催のBRICS首脳会議での議論の注目点 [2023年08月22日(Tue)]
世界の目は今、南アフリカの首都ヨハネスブルグに向けられている。第15回BRICS首脳会議は8月22日から24日まで同地で開催される。BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字である。正式メンバー5か国の首脳のうち、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が発出されているロシアのプーチン大統領を除いて、4か国首脳は対面で参加し、ロシアはラブロフ外相を派遣し、プーチン大統領はオンラインで参加が予定されている。南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領から69カ国の首脳がサミットに招待されており、イランのライシ大統領は既に南アに向け出発したとされる。

BRICSには、40カ国以上が加盟に関心を示し、うち、23カ国が正式に申請書を提出したとされる。23か国には、アラブ8か国アルジェリア、バーレーン、エジプト、クウェート、モロッコ、パレスチナ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)が含まれ、さらに、バングラデシュ、イラン、カザフスタン、ナイジェリア、セネガル、エチオピア、ベラルーシ、ボリビア、アルゼンチン、ベネズエラ、ベトナム、キューバ、ホンジュラス、インドネシア、タイが含まれている。サウジアラビアやUAE、イランをはじめとして、エネルギー資源国が多数含まれていることがわかる。

現在のロシアを除くBRICSメンバー国は、欧米の対ロシア制裁には参加していない。加盟を正式に申請したとされる国々にも対ロシア制裁に加わっている国は見当たらない。こうした中、南アで開催されるサミットの注目点を挙げれば次のとおり。
@メンバー国拡大の可能性右矢印1一部の国々の参加が承認されるのではないかとの観測が出ている。新たにブロックに参加する可能性が高いのは、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、アルゼンチンの3カ国との見方が出ている。
ABRICS新通貨発行右矢印1ブロック内では、ロシアが欧米の金融制裁を受けている関係で、石油やガス取引をドルやユーロでなく自国通貨で行うケースが増えているとされる。米国がドルを金融制裁の武器として使用していることから、ロシアだけでなく、メンバー国外のイランやベネズエラなど制裁下にある国々も、拡大BRICSで使用できる通貨ができれば、より貿易の幅が広がると期待している。
BBRICS新開発銀行右矢印1BRICS加盟国は、欧米が事実上支配する世銀やIMFではなく、BRICSとして独自に開発銀行を立ち上げ、途上国、新興国を積極的に支援していく必要性を認識し始めている。但し、それには、資金力が必要であり、そのためにも、サウジやUAEといった主要な産油国をBRICSのメンバーとして受け入れるのではないかとの観測が出ている。

(解説)国際社会において、いわゆるグローバル・サウスの存在感が増している。5月のG7広島サミットでも、招待国として、オーストラリア、ブラジル、コモロ〔アフリカ連合(AU)議長国〕、クック諸島〔[太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国〕、インド(G20議長国)、インドネシア(ASEAN議長国)、韓国、ベトナムが参加し、グローバル・サウスをG7陣営に如何に取り込むかが重要なアプローチのひとつであった。2023年5月に開催された上海協力機構(SCO)外相会談の最重要議題の一つは、加盟国間取引の脱ドル化であった。インドとロシアはすでに貿易関係において自国の通貨を使用し始めている。 ウクライナ危機を受けた西側の対ロシア制裁をうけて、ロシア政府は米ドルとユーロへの依存を減らすために貿易決済に各国通貨を利用することに熱心である。 国際システムにおける脱ドル化プロセスの加速については、中国も貿易における自国通貨「元」の使用を働きかけている。 SCO での議論には、自国通貨の使用を拡大したいという地域大国の意図も反映されていた。2023年7月4日、オンライン形式で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議には、ロシア同様米国の金融制裁を科されているイランが9番目のメンバー国として正式に承認された。首脳会議で発出されたニューデリー宣言には、「加盟国は、関心のある加盟国間で自国通貨による貿易決済の比率の段階的な拡大に向けたロードマップの実施に賛成した。」と記載されている。ロシアのウクライナ侵攻開始後、ロシアの値引きされた原油のインドへの輸出量が大幅に拡大しているものの、ロシアは、インド・ルピーを手に入れても、それで購入できる産品は限られており、BRICS共通通貨のようなより使い勝手のよい、使用範囲が限定されない通貨に関心を有していると思われ、一方、中国は、「元」取引が拡大する中で、BRICS共通通貨にこだわる理由は少ないと思われる。但し、BRICS各国ならびに加盟に関心を持つ国々の中では、取引の脱ドル化の方向性を支持する国が多いと思われ、その点でも、BRICS拡大会合の議論が注目される。さらに、BRICSにサウジアラビアやUAEあるいはG20のメンバー国であるアルゼンチンを正式メンバーあるいは準メンバーに迎入れるのか否かも注目される。SCOもBRICSも他の枠組みと対立あるいは競合するものではないとの建前ではあるものの、欧米主導の国際枠組みへの挑戦であることは疑いなく、欧米は、BRICS内でも特に関係が良好なインドなどと密接に連絡を取り合い、BRICSが中国やロシアの意向を反映しすぎないよう牽制するものとみられる。
https://watcher.guru/news/8-arab-countries-request-to-join-brics-alliance#google_vignette
https://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/brics-economies-catching-up-with-combined-gdp-of-g7-countries-piyush-goyal/articleshow/102917384.cms?from=mdr
https://newseu.cgtn.com/news/2023-08-20/2023-BRICS-Summit-The-Agenda-1mnl4xlQb8k/index.html

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サウジアラビアのサッカー・クラブへの大物スター選手移籍の背景 [2023年08月16日(Wed)]
2023年8月15日、サウジアラビアのサッカー1部リーグのアル・ヒラールは2025年までに2年契約でパリ・サンジェルマン(PSG)からブラジル代表FWネイマール(現在31歳)を獲得したことを発表した。

サウジアラビアとアジアで最も成功したクラブのひとつであるアル・ヒラールは66のトロフィーを獲得し、リーグ優勝18回、アジアチャンピオンズリーグ優勝4回の記録を保持している。サウジの政府系ファンドである公的投資基金(PIF)は、2023年6月にリーグチャンピオンのアル・イティハド、アル・アハリー、アル・ナスル、アル・ヒラールが関与するスポーツクラブへの投資・民営化計画を発表して以来、リヤドに本拠を置くサッカー・クラブにとってチーム戦力の強化は優先事項となっている。サウジプロリーグのシーズンは、5億ドル近くを費やして欧州のチームから多くの有力選手やコーチを招聘し、11日に開幕した。

ポルトガル代表フォワードのクリスティアーノ・ロナウドは昨シーズン、カタール・ワールドカップ直後にアル・ナスルに加入し、一方アル・イティハドはレアル・マドリードから仏人ストライカーのカリム・ベンゼマと契約した。欧州サッカー連盟(UEFA)チャンピオンズリーグ優勝者のリヤド・マフレズ、エドゥアール・メンディ、ロベルト・フィルミーノがアル・アハリーと契約した。

ネイマールは2017年、世界最高額となる2億2200万ユーロでバルセロナからカタールの政府系ファンドが所有するパリ・サンジェルマン(PSG)へと加入。通算173試合で118ゴールを記録し、5度のリーグ優勝などのタイトル獲得に貢献してきた。しかし先般、ルイス・エンリケ新監督から戦力外通知を受けたとされる。移籍金額は、公式には発表されていないものの、3億ドルが保証されているとされる。

なお、サウジの有力選手獲得は失敗した事例もあり、バルセロナとPSGでネイマールの長年のチームメイトであるアルゼンチン代表のメッシは、アル・ヒラールを訪問し、サウジアラビア訪問でPSGから出場停止処分を受けた後、一説によれば3億ドルのサウジプロリーグとの大型契約を回避し、本年6月に米国のデビッド・ベッカム率いるMLSクラブのインテル・マイアミへの加入を決めた。アル・ヒラールはエムバペにも史上最高額の7億7,500万ドルの1年契約を提示したが、獲得を逃したとされる。

(解説)サウジの実質的指導者ムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)皇太子が2016年に立ち上げた国家開発計画「ビジョン2030」((計画発表当時は副皇太子)に向け、サウジアラビアは、経済・財政の脱石油、経済構造の多角化・多様化を推進し、若者や女性に雇用や娯楽を提供し、政権への長期にわたる国民の支持を得ようとしている。そのなかで、スポーツも国民の支持と世界の注目を集めるうえでの重要なツールとなっている。サウジアラビアは、2030年の「ビジョン2030」達成の記念行事をいくつも考えていると思われ、例えば、2029年に砂漠の国サウジで、人工雪を降らせて、アジア冬季スポーツ大会をメガプロジェクトNEOM(新未来の意味)領域内トロイェナで開催ホストすることが既に決まっている。そして、2030年にはFIFAワールドカップのホスト国のひとつになることも狙っている。2022年11月、MBS皇太子は、訪日の観測もあった中で、カタールでのFIFAワールドカップ・ドーハ大会の開幕式に駆け付け、インファンティーノFIFA会長と親しく懇談した。サウジは、2021年英国内でも反対意見が強かったサッカーのイングランド・プレミアリーグに所属するニューカッスル・ユナイテッドの買収を完了した。買収額は3億500万ポンドとされる。これらの関連資金拠出は、サウジの石油売却資金がベースとなる公的投資基金PIFのファンドから実施されている。サウジの財政均衡石油価格は、IMFの2023年の予測で80.9ドルと推測されている。すなわち、サウジのスポーツ分野を含む巨大プロジェクトを動かしていくには、バレル80ドル以上の石油価格を維持する必要があり、そのため、様々な欧米首脳からのアプローチにかかわらず、サウジはOPECプラスの枠内で、減産調整を維持し、石油価格の維持に努めている。
https://jp.reuters.com/article/soccer-saudi-alh-neymar-idCAKBN2ZQ1E1
https://www.forbes.com/sites/brianbushard/2023/08/15/neymar-joins-saudi-club-al-hilal-with-record-300-million-contract-report-says/?sh=715c2a051575

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トルコによるシリア難民の本国帰還促進と非正規移民通過阻止[2023年08月15日(Tue)]
2023年5月の大統領選挙での争点のひとつは、トルコが難民条約の枠内ではなく、「一時保護」の対象者として受け入れてきたシリア難民の本国帰還問題であった。野党候補のクルチダルオール氏は、2年以内のシリア人の本国帰還を公約に掲げていた。3百数十万人のシリア人を受け入れてきたエルドアン大統領も、トルコ国民の支持を得るため、シリア人の本国帰還に言及せざるを得ない立場にあった。選挙から2か月以上が過ぎ、エルドアン政権は、この問題でどのような取り組みを始めているのか、さらに欧州を目指すイラクやイラン、アフガニスタン人、パキスタン人等のトルコ通過をどのように阻止しようとしているのかをトルコの政権に近いデイリーサバーハ紙が次のとおり伝えている。
1. トルコによるシリア難民本国帰還促進への取り組み
●トルコのサバーハ紙によると、トルコ政府はシリア難民の祖国への送還を促進するための「アレッポモデル」実施と、不法移民のトルコ通過を阻止し、出身国に帰還させるための包括的な計画の立ち上げに向けて準備を進めている。国内の難民や不法移民に関するあらゆる問題を解消する計画の一環としてエルドアン大統領率いる与党公正発展党(AKP)と同党運営委員会、内務省は迅速な行動と法的措置を講じるための三者機構を結成した。
●トルコには、2011年にシリア内戦が勃発した際、自国の迫害や残虐行為から逃れてきた最大約370万人のシリア人が住んできた(本年4月の統計では約341万人)。シリア内戦の 10年間の戦闘で少なくとも50万人のシリア人が死亡し、1,400万人以上が人道支援を必要としているとされる。シリア北部では、トルコ政府は反政府勢力が政権軍に対する停戦・緊張緩和を維持するのを支援する一方、トルコのクルド人武装勢力掃討作戦である2016年8月の「ユーフラテスの盾」作戦、2018年1月の「オリーブの枝」作戦、2019年10月の「平和の泉」作戦が、PKKや米国が支援するPKKのシリア支部YPGなどのテロ組織から広範囲の領土を解放し、民間人の安全な再定住を可能にした。
●これまでに約55万4,000人のシリア人がトルコから新しい学校、病院、組織化された工業用地、より良いインフラが整備された(トルコ支配)地域に戻った。 トルコ南部とシリア北部で合わせて5万6000人以上の死者を出した大地震の後も、帰還者は増加した。現在、多数のシリア人が、アフリンに建てられた約10万7,000戸の仮設住宅に住んでいる。「アレッポモデル」における優先事項には、戦争で荒廃したシリア国内の住宅と失業問題の解決が含まれる。
●トルコはすでにカタールと協力し、今後3年間でイドリブとアフリン地域に設備の整った約24万戸の住宅建設の取り組みを開始している。 共同の「自主的、安全、名誉ある帰還プロジェクト」は、トルコ国境のすぐ南にあるアレッポ県に属する都市ジャラブルスで2023年5月に着工した。
●当局によると、このプロジェクトには住宅に加え、農地、商業施設、生産・工業地域、教育から医療に至るあらゆる社会設備が含まれる。シリアと国境を接するトルコ南部の県の雇用主もまた、商業活動を活性化させ、地域住民の雇用を創出するために、安全地帯から始めて隣国で事業を始めることに熱心である。
●主な焦点はアレッポでのモデルの実施であり、トルコ政府は現在、このモデルに向けてダマスカスおよびモスクワの政権と協議している。一方、トルコ当局者は以前、国境地域だけでなくシリア全土への組織的な帰還プロセスがすでにシリアとの協議の一部となっていると伝えている。 ロシアはイランとともに、アサド政権を軍事的に支援することでシリア危機に加担してきたが、両国は近年、トルコ政府とアサド政権との関係改善を助けることにも取り組んでいる
シリアやロシアとの今後の協議は、シリア人の帰還を確実にする可能性があるアレッポを中心に据え、社会経済生活を復興させることに焦点を当てることになる。国連のシリア特使は5月、庇護を求めてきた一部のシリア人はヨルダン、レバノン、イラク、エジプトなどでの雇用機会の不足や安全などの理由から、来年中に帰国するつもりだと述べた。
●エルドアン大統領は、トルコ政府が「強制的に」シリア人を送還することはできないとし、送還努力に「人道的、良心的、イスラム的」な側面を取り入れることの重要性をしばしば強調している。
2.非正規移民対策
●アレッポモデルへの取り組みと同時に、政府は非正規移民に対する措置を講じる予定である。 トルコ政府は、近年不法入国者の流入が急増しているパキスタンやアフガニスタンなどとの関係に注力している。 トルコ当局は非正規移民を自国に強制送還する一方で、(移民出身国の)受け入れを支援するために国営航空を利用している。
●もう一つの措置は、90日間のビザを持ってトルコに到着し、その後延長を希望する訪問者に対するEUの例に従うことになる。 これらの人々は、銀行口座や収入情報のほか、権利書や健康保険などの書類の提供を求められる。 かかる書類が提出されない場合、申請者にはビザや滞在許可が与えられない
●一方、トルコの労働社会保障省は不法労働者の雇用を取り締まる予定。 また、外国人労働者向けのロードマップも発表する予定で、それによると、外国人を雇用する企業は研修を受け、規制を想起し、どのような条件で外国人を雇用できるかを教える必要がある。
合計489万3,752人の外国人が暮らすトルコでは、2022年には移住民が大幅に減少したことが7月のトルコ統計局の年次移民報告書で明らかになった。流入移住民の数は前年比33.2%減の49万4,052人で、移住民の多くはロシア人であり、トルコに到着する移住民数や移住民の国籍に大きな変化が見られた。トルコ政府は「国際的不正義」が不規則移民の主な原因であるとみなしている。 トルコ当局者らは、不法移民の出身国の条件改善が必要であるとともに、摘発された不法移民に対する国際基準に沿った自主帰国の必要性があると述べている。
●トルコは、この問題への対処は国際協力が必要であると考えており、協力を確実にするために二国間、地域的、国際的なグループを設立するよう努めている。このため7月には、20以上の国や国際機関と連携し、不法移民や人身売買を防止し取り組むための「ローマ・プロセス」を立ち上げた。8月初旬、トルコは英国と協力して、欧州に向かう途中で自国の領土を通過する不法移民の流れを阻止することで合意した。 トルコと英国の警察で構成される新たな作戦センターは、人身売買グループの阻止と解体、小型ボートの横断を可能にする資材の製造と供給のため、税関データ、情報と諜報、人材と技術の共有で協力する。
https://www.dailysabah.com/politics/turkiye-eyes-new-model-for-safe-return-of-syrians/news
(参考1)「ローマ・プロセス」とは
●欧州への非正規移民流入阻止に向けての協力・連携を深めるための会合で、2023年7月23日、イタリアがホストし、アルジェリア、バーレーン、エジプト、エチオピア、ギリシャ、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、マルタ、モーリタニア、モロッコ、ニジェール、カタール、オマーン、サウジアラビア、スペイン、チュニジア、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、キプロス政府はプロセスと共同行動について合意した。
(参考2)トルコへの流入・流出移住民数
●トルコ統計局のデータによると、2022年流入移住民の数は前年比33.2%減の49万4,052人で、そのうち52.9%が男性、47.1%が女性だった。2022年の流入移住民人口を国籍別にみると、94,409人がトルコ人、399,643人が外国人であった。最も注目すべきは、外国人移住人口のうち、ロシア人が25%を占め第1位となったことで、ウクライナ人は8.1%で続き、次いでイランが6.5%、アフガニスタンが5.4%、イラクが4.8%となった。一方2022年のトルコからの流出移住民人口は46万6,914人で、2021年と比べて62.3%増加した。このうち13万9,531人がトルコ人、32万7,383人が外国人だった。外国人流出移住民人口ではイラク人が20%で第1位となった。次いでイラン人が10.6%、ウズベキスタン人が7%、アフガニスタン人が6%、トルクメニスタン人が4.8%と続いた。

(解説)これまでに約55万4,000人のシリア人がトルコから新しい学校、病院、組織化された工業用地、より良いインフラが整備された(トルコ支配)地域に戻ったとされる。トルコが掲げる「アレッポモデル」構想はシリア人の帰還をさらに促進するための計画である。この計画は、急に持ち上がったものではない。エルドアン・トルコ大統領は、クルド人武装勢力駆逐のために実施した「平和の泉」作戦直後の2019年10月30日、トルコはトルコ国境南方のシリア領内のタル・アブヤドとラスアルアインの間のいわゆる「安全地帯」に総額1,510億リラ(260億ドル)の予算で「(シリア)難民の町」を建設する計画を立てたと述べた。同年10月31日大統領は、来訪したグテーレス国連事務総長と会談し、地域でのシリア難民の再定住のためのアンカラの計画に資金を提供するためにドナー会議開催を要請した。エルドアン大統領は、トルコが引き受けている当時350万人規模のシリア難民のうち、100万人ないし200万人を「安全地帯」に移動させ、シリア難民の町を建設する計画を有していることを明らかにしていた。2022年5月2日、エルドアン大統領は、トルコが影響力を有するシリア北西部の反体制派の拠点イドリブに住宅10万戸、モスク、学校、保健センターなどを建設し、シリア難民を百万人単位で、自主的に帰還させると宣言。しかし、1週間後、エルドアン大統領は「強制帰還」を否定した。今回のトルコ紙報道で、トルコは、アサド政権と距離を置くカタールと協力してイドリブとアフリンに24万戸の住宅建設を進めていることが明らかになった。アサド支配地区でも、シリア人の帰還を巡って、アサド政権ならびに後ろ盾のロシアとトルコは、帰還問題を話し合っていることが示されている。更に、トルコは、2023年8月のトルコ国内での非正規移民監視センターの設置支援に関する英・トルコ合意や、イタリアがホストした本年7月の「ローマ・プロセス」会合出席で示されたとおり、シリア難民の本国帰還だけでなく、トルコを経由して、欧州に向かうシリア人以外の非正規移民の流れも阻止しようとしていることがわかる。
https://www.gov.uk/government/publications/uk-turkey-joint-statement-on-illegal-migration/uk-turkey-joint-statement-on-illegal-migration

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米・イラン収監者交換とイラン凍結資金解放合意[2023年08月11日(Fri)]
イランが最重要事項として取り組んでいる諸外国によるイランの凍結資金の解放に向け、各種報道ならびに米国務長官のコメント等から進展があったとみられる。

1.8月10日ニューヨーク・タイムズが報じたところによれば、米・イラン両政府は、米国で収監されているイラン人数人と引き換えに、イランで収監されている米国人5人(イランとの二重国籍者)の解放と、最終的に韓国の銀行で凍結されているイランの石油販売代金約60億ドルへのアクセスを認めることで合意に達した。イランはイラン系米国人の二重国籍者5人を軟禁状態で刑務所から釈放した。悪名高きイランのエヴィン刑務所から解放されたのは、シアマック・ナマジ氏、エマド・シャルギ氏、モラド・タフバズ氏で、いずれも根拠が不明確なスパイ容疑で投獄されてきた。名前を公表していない他の2人のうち1人は科学者、もう1人は実業家とされる。うち一人は女性で、すでに刑務所を出て軟禁状態にあったとされる。

(1)拘束されていた米国人解放に向けてのイラン・米間の秘密交渉
●米国とイランの交渉に詳しい関係者らによると、オマーン、カタール、スイスが仲介した合意はここ数カ月で具体化され、双方が数週間にわたって最終調整に取り組んできた。ホワイトハウスの中東・北アフリカ調整官ブレット・H・マクガーク氏は2023年5月初めにオマーンの当局者らと会談し、イランとの捕虜交換について協議した。オマーン滞在中、マクガーク氏はイラン当局者らとの間接協議を行い、イランがウラン燃料の濃縮を核兵器の製造に必要なレベル以下に制限し、対ロシアへの軍事援助を制限するという目標を掲げ、その見返りに、米国は国際場裡でイランに対する制裁を強化したり、その他の特定の懲罰的措置を追求しないことを伝え働きかけを行っていたとされる。
(2)拘束されていた米国人のイラン出国に向けての行程
●米国は、韓国で凍結されてきたイランの石油販売代金である凍結資産約60億ドルをカタール中央銀行の口座に移すことを了承。 この口座はカタール政府によって管理され、イランが医薬品や食品などの人道的購入の代金を業者に支払う場合にのみこの資金にアクセスできるようになる。
@凍結資金が韓国の銀行からカタールの銀行口座に到着次第、拘束されていた米国人はイランからの出国を許可されるが、イランに帰属する多額の資金を移動させるために必要な許可や制裁免除の事務手続きが複雑なため、手続きには4〜6週間かかると予想されている。
Aカタールが合意の仲介で中心的な役割を果たしたことから、イランで拘束されてきた5名の米国人は政府専用機でカタールの首都ドーハに搬送される見通し。
B米国で拘束されているイラン人数名も交換のためにドーハへ出国することができる。 しかし、多くの人が家族とともに米国に住んでおり、彼らがそれを望むかどうかは不明。
https://www.nytimes.com/2023/08/10/us/politics/iran-us-prisoner-swap.html?campaign_id=190&emc=edit_ufn_20230810&instance_id=99750&nl=from-the-times
2.今回の合意に関するブリンケン国務長官のコメント(2023年8月10日 於:ワシントンD.C.)
●イランで不当に拘束されている5人の米国人に関しては、まず彼らが刑務所から釈放されて自宅軟禁に移されたことは前向きな一歩だ。 しかし、これは彼らの米国への帰国につながることを私は期待し、期待するプロセスの始まりにすぎない。 私が何度も言っているのを聞いたことがあると思うが、私にとって世界中でイランを含む多くの国で不当に拘束されている米国人の安全、安寧に配慮し、特に負傷者を帰国させるためにできる限りのことを行う以上の優先事項はない。
●この5人の米国人については、彼らの刑務所への拘留は現政権よりも前から行われており、長期にわたって続いている。 一人はイランで8年間不法投獄されている。 したがって、今回の動きは前向きな一歩である。 しかし、私は結論を先取りしたくない。なぜなら、彼らを実際に帰国させるためには、やるべきことがまだあるからである。 私の信念は、これは彼らの悪夢と彼らの家族が経験した悪夢の終わりの始まりであるということである。 このプロセスの完了と同胞の帰国を危険にさらしたくないので、我々が何をしているのか、あるいは取り組んでいるのかについては、詳細には立ち入るつもりはない。
●いくつかのことをはっきりさせておきたい。今回の対応のすべてにおいて、イランはいかなる制裁緩和も受けることはない。 我々が米国人をイランから帰国させるための取り組みを行う場合、イラン自身の資金が使用され、制限された口座に送金されることになり、その資金は人道的目的にのみ使用できる。 我々が科している制裁において人道的活動に対する免除は最初から存在している。
●我々は(イランに対する)すべての制裁を引き続き実行する。 我々は、ウクライナに対する侵略戦争のためにロシアに無人機を供給するなど、地域内外におけるイランの不安定化活動に対して断固として反発し続ける。 そして、今回の努力のどれもがそれを損なうものではない。 これらは完全に別のトラックの話である。 我々は米国民を帰国させることに注力してきたが、我々や他の多くの国が強く反対しているイランの他の活動に対しては引き続き強力な行動をとっていく。
●国務省は米国人5人と連絡をとっている。 今日我々は彼らと話をした。 言うまでもなく、彼らは刑務所から出られてとても喜んでいると思うが、我々はこのプロセスを確実に完了させ、彼らを家族の元に連れ帰りたいと考えている。
https://www.state.gov/secretary-antony-j-blinken-and-mexican-foreign-secretary-alicia-barcena-at-a-joint-press-availability/
(補足)この合意の下ではイランは、食糧と医薬品、および軍事用途を持たない限定的な医療機器など人道的な商品に限ってしかドーハの銀行に発注することができず、ドーハの銀行が韓国から送金された口座の資金の中から商品の代金を支払い、カタールの企業が商品をイランに配送することになり、イランは解放される資金には直接アクセスすることはできないとされる。すなわち、イラン側には外貨はもたらされない。米国バイデン政権は、イランにさまざまな制裁を科しているが、人道目的の取引はそもそも制裁の対象になっておらず、イランは米国から見て地域の安定に害を与える活動に資金を投入することはできず、また、今回の合意の最重要な狙いは、不当に拘束されてきた米国人の解放であるとして、今回の合意を正当化している。米国内では、ペンス元副大統領はじめ共和党の有力政治家が、バイデン政権の今回の取り組みを非難している。イラン政府は、韓国からの石油販売代金の回収について、韓国側はこれまで幾度も支払う用意があるとイラン側に伝えてきたにもかかわらず、一向に約束を果たそうとはしていないとして、苛立ちを隠しておらず、凍結資金の回収を巡って、国際調停に訴える意見も出ていた。イランは、2022年3月に英国からシャー時代の戦車代金前払い金の回収に成功しており、また、本年6月にはイラク政府もイランへのエネルギー代金支払いに同意したと報じられており、凍結資金の解放に向けては、資金の用途に対する制限付きながら一歩一歩成果を積み上げている。なお、今回の米・イラン間の合意成立においても、2021年のアフガニスタンに関する米・タリバーン間の合意にカタールが貢献したこと、2015年のイラン核合意成立前の米・イラン秘密交渉にオマーンが貢献したことなど、対外的に多様なパイプを有する湾岸のアラブ国家が重要な役割を演じてきたことが伺われる。

Posted by 八木 at 14:04 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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