イランによるホルムズ海峡の事実上の封鎖と石油戦略備蓄の緊急放出
[2026年03月12日(Thu)]
3月11日、イラン革命防衛隊(IRGC)は、米イスラエルによる対イラン戦争の中、ホルムズ海峡の主要水路であるホルムズ海峡の閉鎖が世界のエネルギー市場を混乱させ続けていることを受け、ホルムズ海峡を石油の「1リットルたりとも」通過させないと発表した。
IRGC本部ハタム・アル・アンビヤの報道官は、米国、イスラエル、あるいはその同盟国と関係のある船舶は「正当な標的」とみなす。あなたがたは、原油価格を人為的に引き下げることはできない。1バレル200ドル程度を予想しなさい、と報道官は声明で述べた。WTI原油価格は、8日、一時バレル119ドルに急騰し、その後、戦争終結が近いとのトランプ発言をうけて、80ドル台に急落したが、11日にホルムズ海峡周辺でタンカーを含む3隻の船舶がイラン側の攻撃をうけ,さらにイラク領海で2隻のタンカーが被害をうけたことをうけて、90ドル台に上昇している。
1. 日本の原油戦略備蓄放出声明(3月11日)
高市早苗首相は、原油輸入が大幅に減少する見通しとなったことから、国際エネルギー機関(IEA)の下で協調放出の決定を待たず、16日にも日本単独で備蓄を放出することを決定したと明らかにした。まず民間備蓄15日分と、3月下旬以降から国家備蓄1カ月分を放出し、一刻も早く国内の精製事業者にも届ける方針。これは約8000万バレルに相当し、22年にロシアのウクライナ侵攻に伴う価格高騰を受けて放出した合計2回の2250万バレルを大きく上回る。産油国との共同備蓄も迅速に活用する考えを示した。また中東情勢を背景にガソリン価格が1リットルあたり200円を超える可能性も否めないと説明。緊急的な激変緩和措置を講じ、小売価格を全国平均で170円程度に抑制する考えも示した。経済産業省によれば、170円を超える部分について全額補助し、19日出荷分から支給する方針。現在の制度の残額約2800億円を活用するとのこと
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-03-11/TBQDJKKJH6V400
2. IEAの戦略備蓄放出合意に関する声明(3月11日)
国際エネルギー機関(IEA)加盟32カ国は3月11日、中東紛争に起因する石油市場の混乱に対処するため、緊急備蓄から4億バレルの石油を市場に供給することに全会一致で合意しました。
IEA加盟国は12億バレルを超える緊急備蓄を保有しており、さらに6億バレルの産業備蓄が政府の義務として保有されています。今回の協調備蓄放出は、1974年に設立されたIEAの歴史上、6回目となります。これまでの共同行動は、1991年、2005年、2011年、そして2022年に2回実施されています。
2026年2月28日に始まった中東紛争により、ホルムズ海峡を通る石油の流れが阻害され、原油および石油精製製品の輸出量は現在、紛争前の10%未満となっています。このため、地域全体の事業者は、生産の停止または大幅な削減を余儀なくされています。
2025年には、ホルムズ海峡を平均日量2,000万バレルの原油および石油製品が通過しました。これは世界の海上石油貿易量の約25%に相当します。
https://www.iea.org/news/iea-member-countries-to-carry-out-largest-ever-oil-stock-release-amid-market-disruptions-from-middle-east-conflict
3.クリス・ライト米国エネルギー長官による戦略備蓄放出声明(3月11日)
3月11日、IEA加盟32カ国は、トランプ大統領の要請に全会一致で同意し、各国の備蓄から4億バレルの石油および石油精製品を協調放出することでエネルギー価格を引き下げることにしました。この取り組みの一環として、トランプ大統領はエネルギー省に対し、来週から戦略石油備蓄から1億7,200万バレルを放出することを承認しました。計画放出量に基づくと、放出には約120日かかります。トランプ大統領は、戦略石油備蓄を責任を持って管理することでアメリカのエネルギー安全保障を守ると約束しており、今回の措置はその約束へのコミットメントを示すものです。アメリカの石油備蓄を枯渇させ、損なわせた前政権とは異なり、アメリカは今後1年以内に、これらの戦略備蓄を約2億バレル(放出する量より20%多い)以上補充する準備を整えました。しかも、納税者の負担は発生しません。
47年間、イランとそのテロ支援勢力はアメリカ国民の殺害に執着してきました。彼らはアメリカとその同盟国のエネルギー安全保障を操作し、脅かしてきました。トランプ大統領の下で、そのような時代は終わりを迎えようとしています。安心してください。アメリカのエネルギー安全保障はこれまで以上に強固です。
https://www.energy.gov/articles/united-states-release-172-million-barrels-oil-strategic-petroleum-reserve
4.イラク領海でのタンカー被害
3月12日にかけて、バスラ近郊のイラク領海内で、2隻のタンカーが被害をうけた。うち1隻は、バスラ・ガス社が生産したガスコンデンセートを積んでいた。2隻目のタンカーは攻撃当時空だったとされる。バスラ・ガス社の株式はイラクが51%、残りの49%は石油大手シェルと日本の複合企業三菱商事が保有している。同タンカーは、マーシャル諸島船籍のタンカー「セーフシー・ヴィシュヌ」とマルタ船籍のタンカー「ゼフィロス」で、この事件で1人が死亡、数人が負傷したとみられる。
https://shafaq.com/en/Economy/Tanker-hit-near-Basra-carried-gas-condensate-says-expert
(コメント)ホルムズ海峡の事実上の封鎖で、原油市場の最大の関心事は中東からの供給停止がどの程度続くのか、主要輸入国がどのように反応するかに焦点があたっている。IEA加盟32カ国は、史上最大規模の4億バレルの石油の緊急備蓄放出で合意した。日本は、高市首相が8000万バレルに相当する量を放出すると表明した。米国エネルギー省長官は、来週から1億7,200万バレルを放出することを大統領が承認したと発表した。
ホルムズ海峡は原油と石油製品が日量約2000万バレル通過しているが、船主や保険会社は大規模な紛争が進行する中で船舶が被害を受けるリスクを取りたがらないため実質的に封鎖された状態にある。海事安全保障・リスク管理会社によると、3月11日にホルムズ海峡で3隻の船舶が飛翔体による攻撃を受けた。これには、オマーンの北約11海里(約18キロ)の海域で攻撃を受けたタイ船籍の貨物船も含まれている。海上交通へのリスクにもかかわらず、トランプ米大統領は、船舶に対しホルムズ海峡の通航を継続するよう促した。そして、機雷敷設を行うイランの艦艇複数を沈めたとしている。一方、イラン側は、米国、イスラエル、あるいはその同盟国と関係のある船舶は「正当な標的」とみなすこと、原油価格は、バレル200ドルに跳ね上がるだろうと警告を発している。IEAによる石油の戦略的備蓄の緊急放出決定4億バレルは、ウクライナ危機の総量1億8千万バレルを上回るものであり、原油価格の低下を促すことは間違いないものの、ホルムズ海峡は、LNGタンカーも通航しており、ホルムズ海峡通過船舶を標的とすることは、軍事力では圧倒的に不利な非対称戦争を強いられているイランにとって国際社会に停戦の必要性をアピールする最も効果的かつ限られた手段であり、ホルムズ海峡でのイラン側の作戦は当面、鎮静化するとはみられない。そのため、中東産の原油に依存する日本を含むアジア諸国が最も大きな打撃をうける可能性がある。
IRGC本部ハタム・アル・アンビヤの報道官は、米国、イスラエル、あるいはその同盟国と関係のある船舶は「正当な標的」とみなす。あなたがたは、原油価格を人為的に引き下げることはできない。1バレル200ドル程度を予想しなさい、と報道官は声明で述べた。WTI原油価格は、8日、一時バレル119ドルに急騰し、その後、戦争終結が近いとのトランプ発言をうけて、80ドル台に急落したが、11日にホルムズ海峡周辺でタンカーを含む3隻の船舶がイラン側の攻撃をうけ,さらにイラク領海で2隻のタンカーが被害をうけたことをうけて、90ドル台に上昇している。
1. 日本の原油戦略備蓄放出声明(3月11日)
高市早苗首相は、原油輸入が大幅に減少する見通しとなったことから、国際エネルギー機関(IEA)の下で協調放出の決定を待たず、16日にも日本単独で備蓄を放出することを決定したと明らかにした。まず民間備蓄15日分と、3月下旬以降から国家備蓄1カ月分を放出し、一刻も早く国内の精製事業者にも届ける方針。これは約8000万バレルに相当し、22年にロシアのウクライナ侵攻に伴う価格高騰を受けて放出した合計2回の2250万バレルを大きく上回る。産油国との共同備蓄も迅速に活用する考えを示した。また中東情勢を背景にガソリン価格が1リットルあたり200円を超える可能性も否めないと説明。緊急的な激変緩和措置を講じ、小売価格を全国平均で170円程度に抑制する考えも示した。経済産業省によれば、170円を超える部分について全額補助し、19日出荷分から支給する方針。現在の制度の残額約2800億円を活用するとのこと
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-03-11/TBQDJKKJH6V400
2. IEAの戦略備蓄放出合意に関する声明(3月11日)
国際エネルギー機関(IEA)加盟32カ国は3月11日、中東紛争に起因する石油市場の混乱に対処するため、緊急備蓄から4億バレルの石油を市場に供給することに全会一致で合意しました。
IEA加盟国は12億バレルを超える緊急備蓄を保有しており、さらに6億バレルの産業備蓄が政府の義務として保有されています。今回の協調備蓄放出は、1974年に設立されたIEAの歴史上、6回目となります。これまでの共同行動は、1991年、2005年、2011年、そして2022年に2回実施されています。
2026年2月28日に始まった中東紛争により、ホルムズ海峡を通る石油の流れが阻害され、原油および石油精製製品の輸出量は現在、紛争前の10%未満となっています。このため、地域全体の事業者は、生産の停止または大幅な削減を余儀なくされています。
2025年には、ホルムズ海峡を平均日量2,000万バレルの原油および石油製品が通過しました。これは世界の海上石油貿易量の約25%に相当します。
https://www.iea.org/news/iea-member-countries-to-carry-out-largest-ever-oil-stock-release-amid-market-disruptions-from-middle-east-conflict
3.クリス・ライト米国エネルギー長官による戦略備蓄放出声明(3月11日)
3月11日、IEA加盟32カ国は、トランプ大統領の要請に全会一致で同意し、各国の備蓄から4億バレルの石油および石油精製品を協調放出することでエネルギー価格を引き下げることにしました。この取り組みの一環として、トランプ大統領はエネルギー省に対し、来週から戦略石油備蓄から1億7,200万バレルを放出することを承認しました。計画放出量に基づくと、放出には約120日かかります。トランプ大統領は、戦略石油備蓄を責任を持って管理することでアメリカのエネルギー安全保障を守ると約束しており、今回の措置はその約束へのコミットメントを示すものです。アメリカの石油備蓄を枯渇させ、損なわせた前政権とは異なり、アメリカは今後1年以内に、これらの戦略備蓄を約2億バレル(放出する量より20%多い)以上補充する準備を整えました。しかも、納税者の負担は発生しません。
47年間、イランとそのテロ支援勢力はアメリカ国民の殺害に執着してきました。彼らはアメリカとその同盟国のエネルギー安全保障を操作し、脅かしてきました。トランプ大統領の下で、そのような時代は終わりを迎えようとしています。安心してください。アメリカのエネルギー安全保障はこれまで以上に強固です。
https://www.energy.gov/articles/united-states-release-172-million-barrels-oil-strategic-petroleum-reserve
4.イラク領海でのタンカー被害
3月12日にかけて、バスラ近郊のイラク領海内で、2隻のタンカーが被害をうけた。うち1隻は、バスラ・ガス社が生産したガスコンデンセートを積んでいた。2隻目のタンカーは攻撃当時空だったとされる。バスラ・ガス社の株式はイラクが51%、残りの49%は石油大手シェルと日本の複合企業三菱商事が保有している。同タンカーは、マーシャル諸島船籍のタンカー「セーフシー・ヴィシュヌ」とマルタ船籍のタンカー「ゼフィロス」で、この事件で1人が死亡、数人が負傷したとみられる。
https://shafaq.com/en/Economy/Tanker-hit-near-Basra-carried-gas-condensate-says-expert
(コメント)ホルムズ海峡の事実上の封鎖で、原油市場の最大の関心事は中東からの供給停止がどの程度続くのか、主要輸入国がどのように反応するかに焦点があたっている。IEA加盟32カ国は、史上最大規模の4億バレルの石油の緊急備蓄放出で合意した。日本は、高市首相が8000万バレルに相当する量を放出すると表明した。米国エネルギー省長官は、来週から1億7,200万バレルを放出することを大統領が承認したと発表した。
ホルムズ海峡は原油と石油製品が日量約2000万バレル通過しているが、船主や保険会社は大規模な紛争が進行する中で船舶が被害を受けるリスクを取りたがらないため実質的に封鎖された状態にある。海事安全保障・リスク管理会社によると、3月11日にホルムズ海峡で3隻の船舶が飛翔体による攻撃を受けた。これには、オマーンの北約11海里(約18キロ)の海域で攻撃を受けたタイ船籍の貨物船も含まれている。海上交通へのリスクにもかかわらず、トランプ米大統領は、船舶に対しホルムズ海峡の通航を継続するよう促した。そして、機雷敷設を行うイランの艦艇複数を沈めたとしている。一方、イラン側は、米国、イスラエル、あるいはその同盟国と関係のある船舶は「正当な標的」とみなすこと、原油価格は、バレル200ドルに跳ね上がるだろうと警告を発している。IEAによる石油の戦略的備蓄の緊急放出決定4億バレルは、ウクライナ危機の総量1億8千万バレルを上回るものであり、原油価格の低下を促すことは間違いないものの、ホルムズ海峡は、LNGタンカーも通航しており、ホルムズ海峡通過船舶を標的とすることは、軍事力では圧倒的に不利な非対称戦争を強いられているイランにとって国際社会に停戦の必要性をアピールする最も効果的かつ限られた手段であり、ホルムズ海峡でのイラン側の作戦は当面、鎮静化するとはみられない。そのため、中東産の原油に依存する日本を含むアジア諸国が最も大きな打撃をうける可能性がある。
Posted by 八木 at 15:39 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)



