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イスラエル軍・米軍のイランへの攻撃(市民、環境、経済への取り返しのつかない打撃を如何に回避するのか)[2026年03月10日(Tue)]
米・イスラエル両軍のイラン攻撃によって、イラン指導部や軍事施設の被害だけではなく、民間人の被害、健康・環境への悪影響、世界のエネルギー状況の悪化など、次々と副作用が拡大している
(1)小学生多数が犠牲になったミナブ小学校の悲劇:イランの通信社Mehrが新たに公開した動画は、2月28日にイランのミナブ市で少なくとも165人の子供を含む175名が殺害された学校付近にミサイルが着弾した瞬間を捉えている。オンライン調査団体ベリングキャットによって初めて位置情報が特定され、同団体は、映像に映っている兵器は米国製のトマホーク巡航ミサイルのようだと述べた。兵器情報会社アーマメント・リサーチ・サービス代表はNBCニュースに対し、映像は「トマホークミサイルを映しているようだ」と語った。さらに、「交戦国を考慮すると、これは米国の攻撃を示唆している」と付け加えた。ベリングキャットはまた、この戦争においてトマホークミサイルを保有していることが知られている唯一の当事者は米国であると指摘した。トランプ米大統領は先週末、小学校への攻撃はイランによる可能性が高いと主張した。一方、ヘグゼス国防長官は、事件から数日を経過した時点でも、米当局が事件を依然として「調査中」であると述べ責任を明確にしていなかった
3月8日、米議会民主党上院議員6人が、イランの学校への攻撃が米軍によるものである可能性を示唆する分析結果に「恐怖」を覚えると述べた。ブライアン・シャッツ上院議員、パティ・マレー上院議員、ジーン・シャヒーン上院議員、ジャック・リード上院議員、マーク・ワーナー上院議員、クリス・クーンズ上院議員は共同声明で、「独立した分析は、この攻撃が米軍によって行われた可能性を強く示唆しており、もしこれが事実であれば、中東における数十年にわたる米軍の軍事行動の中で最悪の民間人犠牲者事例の一つとなるだろう」と述べた。
https://www.bellingcat.com/news/2026/03/08/video-shows-us-tomahawk-missile-strike-next-to-girls-school-in-iran/
(2)一般市民の健康や環境汚染を引き起こす石油施設破壊:2026年3月8日、イスラエルによるイランの石油施設への空爆により、テヘランで黒い雨(black rain/oily rain)が観測された。この現象は、破壊された石油・燃料貯蔵施設から大量の煙とすすが放出され、それが雨雲と混ざり合う「大気洗浄作用(atmospheric scavenging)」によって黒い粒子が地上に降ってきたもの。
●3月7日から8日にかけての夜間、イスラエル軍の攻撃をうけ、イスラエル軍の空爆によりテヘラン北西部のシャフラーンほかの石油貯蔵所や石油精製所(アグダシエ、シャフラン、カラジなど)など30カ所が空爆を受け、大規模な火災が発生。その後、黒い雨が市内全域で観測された。市内は黒い煙に覆われ、街中、車、建物の屋根が黒い油性の煤(すす)で覆われた。 イラン赤新月社は、この雨が有害な炭化水素や硫黄、窒素酸化物を含む強酸性(pH4.0程度)のものであると警告。住民からは、目の痛み、喉の痛み、呼吸困難、頭痛、皮膚の火傷のような症状が報告されている。 テヘラン知事は住民に対し、外出時にマスクを着用し、不要な外出を控えるよう呼びかけた。 テヘランはアルボルズ山脈の南麓に位置し、周囲の山々が2〜4kmの高さにそびえ立つ半閉鎖盆地を形成しており、市街地上空の大気循環を著しく制限しているため、テヘランの人々は、火災現場からの距離、周囲の建築環境、建物の構造、屋外で過ごした時間、そして天候によって、異なる濃度の汚染物質に長期間さらされることになるおそれがある。
●また、水質汚染も懸念されている。シャーラン石油貯蔵施設から流出した原油がテヘランの雨水排水路に入り、爆発的に発火したとの報告がある。テヘランには、周囲の山々からの雨水や雪解け水を排水するための、広範かつ複雑な雨水排水路網が整備されている。流出した原油製品、あるいは後に雨水排水路に流入した堆積汚染物質がどこに排出されるかを正確に予測することは困難。しかし、流出はテヘランの南北に広がる地形に沿って進み、自然の水域や農業用土壌に流入し、浅層地下水が汚染される可能性がある。
https://ceobs.org/black-rain-the-health-and-environmental-risks-from-tehrans-oil-fires/
(3)トランプ大統領が気にする原油価格の高騰と株価下落
3月9日、WTI原油先物価格は一時バレル120ドル近く跳ね上がり、それをうけて世界の株式市場で株価が急激に下落(日本では一時4千円近く下落)した。米大統領は9日、南部フロリダ州で記者会見し、対イラン軍事作戦は「間もなく終結するだろう」との見通しを示した。投資家サイドでは、10日目に入った米イスラエル両軍の作戦長期化への懸念が広がり、原油価格が急騰する中、トランプ大統領は会見で、早期終結の可能性を示唆し、「5000以上の目標を攻撃した、われわれは全ての(イランの)戦力を壊滅させた」と成果を誇示。ホルムズ海峡封鎖状態が続いているが、米艦艇が護衛し、通航可能な状態にしておきたいと表明。さらに、イラン攻撃で中東地域が不安定化し、原油価格が上昇したことについては、「価格が上がることはわかっていたが、予想よりも小幅な上昇に留まった」と主張。原油価格を抑制するためとして、「一部の国への関連する経済制裁を事態が収束するまで解除する」と表明し、(報道によれば、プーチン大統領とも電話会談の上ロシアに対する制裁の解除を示唆した。一方、主要7カ国(G7)が戦略石油備蓄の協調放出など必要な対策を講じる姿勢を示したことをうけ、原油先物は下げに転じ、さらに「戦争終結が近い」トランプ発言をうけてウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)先物は1バレル=90ドルを下回った。片山財務大臣によれば、G7財務相は、3月9日オンラインで、石油備蓄共同放出の可能性を協議したとのこと。
(過去の備蓄放出例)
ウクライナ危機による国際エネルギー市場における供給のひっ迫に対処するため、2022年3月及び4月のIEA臨時閣僚会議において、石油備蓄の協調放出を決定
ウクライナ危機におけるIEA協調放出:総量1億8千万バレルのうち、日本は、2,250万バレルの放出を決定。
@22年3月 総量6千万バレルのうち日本は750万バレル(民間備蓄より)
A22年4月 総量1億2千万バレルのうち、日本は1500万バレル(国家備蓄9百万バレル、民間備蓄6百万バレル)放出
(過去のIEA協調放出)
・1991年湾岸戦争:1,505万バレル(総量:10,750万バレル)
・2005年ハリケーン・カトリーナ:732万バレル(総量:6,000万バレル)
・2011年リビア情勢悪化:750万バレル(総量:6,000万バレル)
https://www.bloomberg.com/jp/news/articles/2026-03-10/TBMHRCKJH6XL00

(コメント)トランプ大統領にイラン攻撃継続を躊躇わせる要素があるとすれば、それは何であろうか。上記のとおり、ひとつは民間人の犠牲の拡大である。イスラエルは、米・イスラエル軍の共同作戦で、開戦後わずか40秒で、ハメネイ最高指導者を含む40人のイラン指導者を排除したと成果を誇示した。しかし、宣戦布告もなく発射され、目標に精密誘導されているはずのミサイルは、ミナブの小学校を直撃し、少なくとも165名の子どもの命を奪った。トランプ政権は未だにこの責任を認めていないが、情報分析を行うベリングキャットによれば、当該ミサイルは、米製のトマホークであることにほぼ間違いがないとのこと。当然、米情報部は、この被害がなぜ発生したか承知しているはずであるが、未だに詳細を明らかにしていない。さすがに米民主党上院議員もトランプ政権の対応を非難している。次に、主に、イスラエル軍が、イランの原油貯蔵施設、精製施設に激しい空爆を行い、それらの施設に大規模な火災を発生させることで一般市民に甚大かつ広範な健康被害や環境汚染を引き起こし始めていることである。民間インフラ攻撃で民間人を巻き込み、長期の被害を与えることがみえている作戦が続けられていることに憂慮せざるをえない。最後に、トランプ大統領に最も響くのは、原油高や株価の大幅下落という経済指標の悪化やガソリン価格の高騰という米国民生活への打撃である。トランプ大統領の「戦争終結は間近」という一言で、原油価格は下落し、株価も回復した。被害が拡大する一方の戦火を煽り続けることがイランだけでなく、周辺国さらには自国ならびに世界経済にどういう結果を招くかということを側近や米議会、西側指導者、そしてまもなく会談が予定されている中国習近平国家主席が、停戦を働きかけてほしいと願うばかりである。

Posted by 八木 at 12:06 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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