ホルムズ海峡の事実上の封鎖による産油国・消費国への影響[2026年03月06日(Fri)]
イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)広報部は、3月5日未明、アラビア湾(ペルシャ湾)北部海域で米国の石油タンカーが標的となり、火災が発生したことを確認したと発表した。IRGCは、ホルムズ海峡を違法に通航しようとする船舶を追跡し、攻撃するとして、米国、欧州、イスラエル、そしてそれらの同盟国の軍艦および商船の通航は許可されないと警告したとされる。IRGCは、ホルムズ海峡の航行は国際法および戦時規則に従い、イランの管理下にあることを強調した。
1.イラク:イラクの原油生産量は日量400万〜430万バレルで推移している。輸出量は通常320万〜340万バレルで、その大半はペルシャ湾奥のバスラ南部のターミナルから出荷されている。中国とインドが全体の約3分の2を占めており、イラクはアジアにとって最も重要な重質原油供給国の一つとなっている。ホルムズ海峡を通じた輸出が制限される中、イラクはすでに生産停止を開始しており、報道によると、日量約150万バレルの生産が停止しており、混乱が続いた場合、その数字は日量300万バレルに近づく可能性があるとみられている。イラク原油は重質油であり、輸出の約3分の2を占める中国とインドの製油所は、約210万〜250万バレル/日を取り扱っており、両国のイラク原油を扱ってきた製油所は主にこれらの重質油向けに構成されており、イラク産原油の代替は容易ではないとみられる。
2.サウジ:サウジは、OPECの中でも、日量約200万バレル程度の最も原油生産余力を残す国であるが、ホルムズ海峡封鎖は余力を生かした生産が出来ないことを意味する。エネルギー調査会社ケプラーのデータによると、サウジは2026年2月に日量720万バレル前後の原油を輸出し、そのうちホルムズ海峡経由が638万バレルとのこと。サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは、一部の原油輸出ルートを、イランから攻撃されるリスクがあるホルムズ海峡を避けて東西パイプライン(日量500万バレル程度)を経由して紅海沿岸の港湾都市ヤンブーへの原油輸送に切り替える方針とみられている。
3.UAE: UAEはホルムズ海峡を通らずにオマーン湾(フジャイラ港)へ至るパイプライン(日量約150万バレル)を保有している。UAEも日量100万バレル程度の最も原油生産余力を有するとみられている。
4.中国:米国とイスラエルによるイランへの攻撃が激化する中、中国がホルムズ海峡を通過する原油輸送船とカタールの液化天然ガス(LNG)輸送船の安全な航行を認めるようイランと協議している趣き。中国はイランからの原油の約9割を輸入してきた関係にあるが、湾岸アラブ諸国との関係も深く、石油輸入の約45%を同海峡経由で輸入しているとされる。イランとは伝統的に友好関係にあるものの、湾岸アラブ諸国とも強い結びつきがあり、ホルムズ海峡封鎖は、エネルギー大消費国中国経済に大きな打撃を与えるため、原油タンカーとカタールのLNG輸送を妨害しないようイラン側に求めているとみられる
5.ロシア:2026年3月5日、米国外国資産管理局(OFAC)はロシアからインドへの石油販売の一部を許可する一般販売許可133号を発行した。ペルシャ湾での紛争の激化により主要産出地域が遮断される中、インドは燃料購入の選択肢が広がる。このライセンスは1ヶ月間有効で、3月5日東岸時間12:01までに船舶(制裁対象船舶を含む)に積み込まれたロシア産原油および石油製品の販売、引き渡し、荷下ろしに関連する取引が対象となり、インドに輸送され、インド企業が購入することが条件となる。この措置は4月4日午前0時1分(東岸時間)に失効する。インド石油公社は直ちにロシア産原油購入を開始した趣き。
6.日本:ホルムズ海峡封鎖で最も、影響をうける国のひとつが日本であるとみられている。2025年日本の原油輸入の94%は、中東からであった。2025年12月現在の石油備蓄日数は、国家備蓄が146日分(原油4179万キロリットル)、民間備蓄101日分(同1372万)、産油国共同備蓄7日分(同207万)で、合わせて254日分(同7445万)となる。すなわち、輸入がなくとも8カ月程度持ちこたえることができることを示唆しているものの、封鎖が長引けば、原油価格の高騰、LNG価格の高騰は避けられないとみられ、国民生活を直撃する可能性も排除されない。石油元売り会社が日本政府に対して石油の国家備蓄の放出を要請している模様。
https://ofac.treasury.gov/recent-actions/20260305_33
https://oilprice.com/Energy/Crude-Oil/Iraqi-Supply-Loss-Could-Expose-the-Real-Limits-of-OPEC-Spare-Capacity.html
(コメント)スコット・ベッセント米財務長官はXへの投稿で、「原油が世界市場に流れ続けるよう、財務省はインドの精製業者によるロシア産原油の購入を30日間の暫定免除とする。この意図的に短期的な措置は、すでに海上に(タンカーで)漂着している原油の取引のみを認可するものであるため、ロシア政府に大きな経済的利益をもたらすことはない。」と述べた。インドの昨年12月のロシア産原油の輸入量は前月の日量190万バレルから激減し、同80万バレルにとどまった。さらに、当初インド向けだった少なくとも5つの貨物が中国行きに振り替えられた。インドの製油所へのロシア産原油の到着量は1月に減少した一方で、ロシア以外からの原油の流入量は増加した。インドの大手石油精製会社マンガロール石油精製化学は同月中旬、ロシアからの原油の輸入を停止し、ベネズエラからの調達の可能性を探り始めた。インドの石油精製部門の中核を担うインディアン・オイル、バーラト・ペトロリアム、リライアンス・インダストリーズも、3月と4月のロシア産原油の積荷供給に関するトレーダーからの提案を受け付けなくなっていた。一方、中国の昨年12月のロシア産原油輸入量は日量150万バレルに達し、過去11カ月間の平均値である同120万バレルを上回った。ロシア産原油の行き先が、ほぼ中国に限定される中、OFACによる今回の例外的措置は、期間限定であるものの、ロシアにとっては一息つけるものであった。プーチン大統領は、エネルギー価格が高騰するタイミングをとらえ、EUによるロシア産天然ガス輸入禁止措置を逆手にとって、EUの措置開始に先立ち、ロシア側がEUへのLNG供給を停止することを検討すると発言し、エネルギー価格高騰を煽っている。こうした中、イラン情勢悪化とホルムズ海峡の事実上の封鎖により、影響をほとんど回避できる国と色濃く影響を受ける国の線引きが明確になりつつある。
(参考)EUの対ロシア制裁第19弾:ロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入が禁止される。短期契約に基づく輸入ついては2026年4月25日から、長期契約(2025年6月17日以前に締結されたもので、契約期間が1年以上のもの)の場合は2027年1月1日から禁止となる
1.イラク:イラクの原油生産量は日量400万〜430万バレルで推移している。輸出量は通常320万〜340万バレルで、その大半はペルシャ湾奥のバスラ南部のターミナルから出荷されている。中国とインドが全体の約3分の2を占めており、イラクはアジアにとって最も重要な重質原油供給国の一つとなっている。ホルムズ海峡を通じた輸出が制限される中、イラクはすでに生産停止を開始しており、報道によると、日量約150万バレルの生産が停止しており、混乱が続いた場合、その数字は日量300万バレルに近づく可能性があるとみられている。イラク原油は重質油であり、輸出の約3分の2を占める中国とインドの製油所は、約210万〜250万バレル/日を取り扱っており、両国のイラク原油を扱ってきた製油所は主にこれらの重質油向けに構成されており、イラク産原油の代替は容易ではないとみられる。
2.サウジ:サウジは、OPECの中でも、日量約200万バレル程度の最も原油生産余力を残す国であるが、ホルムズ海峡封鎖は余力を生かした生産が出来ないことを意味する。エネルギー調査会社ケプラーのデータによると、サウジは2026年2月に日量720万バレル前後の原油を輸出し、そのうちホルムズ海峡経由が638万バレルとのこと。サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは、一部の原油輸出ルートを、イランから攻撃されるリスクがあるホルムズ海峡を避けて東西パイプライン(日量500万バレル程度)を経由して紅海沿岸の港湾都市ヤンブーへの原油輸送に切り替える方針とみられている。
3.UAE: UAEはホルムズ海峡を通らずにオマーン湾(フジャイラ港)へ至るパイプライン(日量約150万バレル)を保有している。UAEも日量100万バレル程度の最も原油生産余力を有するとみられている。
4.中国:米国とイスラエルによるイランへの攻撃が激化する中、中国がホルムズ海峡を通過する原油輸送船とカタールの液化天然ガス(LNG)輸送船の安全な航行を認めるようイランと協議している趣き。中国はイランからの原油の約9割を輸入してきた関係にあるが、湾岸アラブ諸国との関係も深く、石油輸入の約45%を同海峡経由で輸入しているとされる。イランとは伝統的に友好関係にあるものの、湾岸アラブ諸国とも強い結びつきがあり、ホルムズ海峡封鎖は、エネルギー大消費国中国経済に大きな打撃を与えるため、原油タンカーとカタールのLNG輸送を妨害しないようイラン側に求めているとみられる
5.ロシア:2026年3月5日、米国外国資産管理局(OFAC)はロシアからインドへの石油販売の一部を許可する一般販売許可133号を発行した。ペルシャ湾での紛争の激化により主要産出地域が遮断される中、インドは燃料購入の選択肢が広がる。このライセンスは1ヶ月間有効で、3月5日東岸時間12:01までに船舶(制裁対象船舶を含む)に積み込まれたロシア産原油および石油製品の販売、引き渡し、荷下ろしに関連する取引が対象となり、インドに輸送され、インド企業が購入することが条件となる。この措置は4月4日午前0時1分(東岸時間)に失効する。インド石油公社は直ちにロシア産原油購入を開始した趣き。
6.日本:ホルムズ海峡封鎖で最も、影響をうける国のひとつが日本であるとみられている。2025年日本の原油輸入の94%は、中東からであった。2025年12月現在の石油備蓄日数は、国家備蓄が146日分(原油4179万キロリットル)、民間備蓄101日分(同1372万)、産油国共同備蓄7日分(同207万)で、合わせて254日分(同7445万)となる。すなわち、輸入がなくとも8カ月程度持ちこたえることができることを示唆しているものの、封鎖が長引けば、原油価格の高騰、LNG価格の高騰は避けられないとみられ、国民生活を直撃する可能性も排除されない。石油元売り会社が日本政府に対して石油の国家備蓄の放出を要請している模様。
https://ofac.treasury.gov/recent-actions/20260305_33
https://oilprice.com/Energy/Crude-Oil/Iraqi-Supply-Loss-Could-Expose-the-Real-Limits-of-OPEC-Spare-Capacity.html
(コメント)スコット・ベッセント米財務長官はXへの投稿で、「原油が世界市場に流れ続けるよう、財務省はインドの精製業者によるロシア産原油の購入を30日間の暫定免除とする。この意図的に短期的な措置は、すでに海上に(タンカーで)漂着している原油の取引のみを認可するものであるため、ロシア政府に大きな経済的利益をもたらすことはない。」と述べた。インドの昨年12月のロシア産原油の輸入量は前月の日量190万バレルから激減し、同80万バレルにとどまった。さらに、当初インド向けだった少なくとも5つの貨物が中国行きに振り替えられた。インドの製油所へのロシア産原油の到着量は1月に減少した一方で、ロシア以外からの原油の流入量は増加した。インドの大手石油精製会社マンガロール石油精製化学は同月中旬、ロシアからの原油の輸入を停止し、ベネズエラからの調達の可能性を探り始めた。インドの石油精製部門の中核を担うインディアン・オイル、バーラト・ペトロリアム、リライアンス・インダストリーズも、3月と4月のロシア産原油の積荷供給に関するトレーダーからの提案を受け付けなくなっていた。一方、中国の昨年12月のロシア産原油輸入量は日量150万バレルに達し、過去11カ月間の平均値である同120万バレルを上回った。ロシア産原油の行き先が、ほぼ中国に限定される中、OFACによる今回の例外的措置は、期間限定であるものの、ロシアにとっては一息つけるものであった。プーチン大統領は、エネルギー価格が高騰するタイミングをとらえ、EUによるロシア産天然ガス輸入禁止措置を逆手にとって、EUの措置開始に先立ち、ロシア側がEUへのLNG供給を停止することを検討すると発言し、エネルギー価格高騰を煽っている。こうした中、イラン情勢悪化とホルムズ海峡の事実上の封鎖により、影響をほとんど回避できる国と色濃く影響を受ける国の線引きが明確になりつつある。
(参考)EUの対ロシア制裁第19弾:ロシア産液化天然ガス(LNG)の輸入が禁止される。短期契約に基づく輸入ついては2026年4月25日から、長期契約(2025年6月17日以前に締結されたもので、契約期間が1年以上のもの)の場合は2027年1月1日から禁止となる
Posted by 八木 at 15:58 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)



