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トルコによるシリア難民の本国帰還促進と非正規移民通過阻止[2023年08月15日(Tue)]
2023年5月の大統領選挙での争点のひとつは、トルコが難民条約の枠内ではなく、「一時保護」の対象者として受け入れてきたシリア難民の本国帰還問題であった。野党候補のクルチダルオール氏は、2年以内のシリア人の本国帰還を公約に掲げていた。3百数十万人のシリア人を受け入れてきたエルドアン大統領も、トルコ国民の支持を得るため、シリア人の本国帰還に言及せざるを得ない立場にあった。選挙から2か月以上が過ぎ、エルドアン政権は、この問題でどのような取り組みを始めているのか、さらに欧州を目指すイラクやイラン、アフガニスタン人、パキスタン人等のトルコ通過をどのように阻止しようとしているのかをトルコの政権に近いデイリーサバーハ紙が次のとおり伝えている。
1. トルコによるシリア難民本国帰還促進への取り組み
●トルコのサバーハ紙によると、トルコ政府はシリア難民の祖国への送還を促進するための「アレッポモデル」実施と、不法移民のトルコ通過を阻止し、出身国に帰還させるための包括的な計画の立ち上げに向けて準備を進めている。国内の難民や不法移民に関するあらゆる問題を解消する計画の一環としてエルドアン大統領率いる与党公正発展党(AKP)と同党運営委員会、内務省は迅速な行動と法的措置を講じるための三者機構を結成した。
●トルコには、2011年にシリア内戦が勃発した際、自国の迫害や残虐行為から逃れてきた最大約370万人のシリア人が住んできた(本年4月の統計では約341万人)。シリア内戦の 10年間の戦闘で少なくとも50万人のシリア人が死亡し、1,400万人以上が人道支援を必要としているとされる。シリア北部では、トルコ政府は反政府勢力が政権軍に対する停戦・緊張緩和を維持するのを支援する一方、トルコのクルド人武装勢力掃討作戦である2016年8月の「ユーフラテスの盾」作戦、2018年1月の「オリーブの枝」作戦、2019年10月の「平和の泉」作戦が、PKKや米国が支援するPKKのシリア支部YPGなどのテロ組織から広範囲の領土を解放し、民間人の安全な再定住を可能にした。
●これまでに約55万4,000人のシリア人がトルコから新しい学校、病院、組織化された工業用地、より良いインフラが整備された(トルコ支配)地域に戻った。 トルコ南部とシリア北部で合わせて5万6000人以上の死者を出した大地震の後も、帰還者は増加した。現在、多数のシリア人が、アフリンに建てられた約10万7,000戸の仮設住宅に住んでいる。「アレッポモデル」における優先事項には、戦争で荒廃したシリア国内の住宅と失業問題の解決が含まれる。
●トルコはすでにカタールと協力し、今後3年間でイドリブとアフリン地域に設備の整った約24万戸の住宅建設の取り組みを開始している。 共同の「自主的、安全、名誉ある帰還プロジェクト」は、トルコ国境のすぐ南にあるアレッポ県に属する都市ジャラブルスで2023年5月に着工した。
●当局によると、このプロジェクトには住宅に加え、農地、商業施設、生産・工業地域、教育から医療に至るあらゆる社会設備が含まれる。シリアと国境を接するトルコ南部の県の雇用主もまた、商業活動を活性化させ、地域住民の雇用を創出するために、安全地帯から始めて隣国で事業を始めることに熱心である。
●主な焦点はアレッポでのモデルの実施であり、トルコ政府は現在、このモデルに向けてダマスカスおよびモスクワの政権と協議している。一方、トルコ当局者は以前、国境地域だけでなくシリア全土への組織的な帰還プロセスがすでにシリアとの協議の一部となっていると伝えている。 ロシアはイランとともに、アサド政権を軍事的に支援することでシリア危機に加担してきたが、両国は近年、トルコ政府とアサド政権との関係改善を助けることにも取り組んでいる
シリアやロシアとの今後の協議は、シリア人の帰還を確実にする可能性があるアレッポを中心に据え、社会経済生活を復興させることに焦点を当てることになる。国連のシリア特使は5月、庇護を求めてきた一部のシリア人はヨルダン、レバノン、イラク、エジプトなどでの雇用機会の不足や安全などの理由から、来年中に帰国するつもりだと述べた。
●エルドアン大統領は、トルコ政府が「強制的に」シリア人を送還することはできないとし、送還努力に「人道的、良心的、イスラム的」な側面を取り入れることの重要性をしばしば強調している。
2.非正規移民対策
●アレッポモデルへの取り組みと同時に、政府は非正規移民に対する措置を講じる予定である。 トルコ政府は、近年不法入国者の流入が急増しているパキスタンやアフガニスタンなどとの関係に注力している。 トルコ当局は非正規移民を自国に強制送還する一方で、(移民出身国の)受け入れを支援するために国営航空を利用している。
●もう一つの措置は、90日間のビザを持ってトルコに到着し、その後延長を希望する訪問者に対するEUの例に従うことになる。 これらの人々は、銀行口座や収入情報のほか、権利書や健康保険などの書類の提供を求められる。 かかる書類が提出されない場合、申請者にはビザや滞在許可が与えられない
●一方、トルコの労働社会保障省は不法労働者の雇用を取り締まる予定。 また、外国人労働者向けのロードマップも発表する予定で、それによると、外国人を雇用する企業は研修を受け、規制を想起し、どのような条件で外国人を雇用できるかを教える必要がある。
合計489万3,752人の外国人が暮らすトルコでは、2022年には移住民が大幅に減少したことが7月のトルコ統計局の年次移民報告書で明らかになった。流入移住民の数は前年比33.2%減の49万4,052人で、移住民の多くはロシア人であり、トルコに到着する移住民数や移住民の国籍に大きな変化が見られた。トルコ政府は「国際的不正義」が不規則移民の主な原因であるとみなしている。 トルコ当局者らは、不法移民の出身国の条件改善が必要であるとともに、摘発された不法移民に対する国際基準に沿った自主帰国の必要性があると述べている。
●トルコは、この問題への対処は国際協力が必要であると考えており、協力を確実にするために二国間、地域的、国際的なグループを設立するよう努めている。このため7月には、20以上の国や国際機関と連携し、不法移民や人身売買を防止し取り組むための「ローマ・プロセス」を立ち上げた。8月初旬、トルコは英国と協力して、欧州に向かう途中で自国の領土を通過する不法移民の流れを阻止することで合意した。 トルコと英国の警察で構成される新たな作戦センターは、人身売買グループの阻止と解体、小型ボートの横断を可能にする資材の製造と供給のため、税関データ、情報と諜報、人材と技術の共有で協力する。
https://www.dailysabah.com/politics/turkiye-eyes-new-model-for-safe-return-of-syrians/news
(参考1)「ローマ・プロセス」とは
●欧州への非正規移民流入阻止に向けての協力・連携を深めるための会合で、2023年7月23日、イタリアがホストし、アルジェリア、バーレーン、エジプト、エチオピア、ギリシャ、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、マルタ、モーリタニア、モロッコ、ニジェール、カタール、オマーン、サウジアラビア、スペイン、チュニジア、トルコ、アラブ首長国連邦(UAE)、キプロス政府はプロセスと共同行動について合意した。
(参考2)トルコへの流入・流出移住民数
●トルコ統計局のデータによると、2022年流入移住民の数は前年比33.2%減の49万4,052人で、そのうち52.9%が男性、47.1%が女性だった。2022年の流入移住民人口を国籍別にみると、94,409人がトルコ人、399,643人が外国人であった。最も注目すべきは、外国人移住人口のうち、ロシア人が25%を占め第1位となったことで、ウクライナ人は8.1%で続き、次いでイランが6.5%、アフガニスタンが5.4%、イラクが4.8%となった。一方2022年のトルコからの流出移住民人口は46万6,914人で、2021年と比べて62.3%増加した。このうち13万9,531人がトルコ人、32万7,383人が外国人だった。外国人流出移住民人口ではイラク人が20%で第1位となった。次いでイラン人が10.6%、ウズベキスタン人が7%、アフガニスタン人が6%、トルクメニスタン人が4.8%と続いた。

(解説)これまでに約55万4,000人のシリア人がトルコから新しい学校、病院、組織化された工業用地、より良いインフラが整備された(トルコ支配)地域に戻ったとされる。トルコが掲げる「アレッポモデル」構想はシリア人の帰還をさらに促進するための計画である。この計画は、急に持ち上がったものではない。エルドアン・トルコ大統領は、クルド人武装勢力駆逐のために実施した「平和の泉」作戦直後の2019年10月30日、トルコはトルコ国境南方のシリア領内のタル・アブヤドとラスアルアインの間のいわゆる「安全地帯」に総額1,510億リラ(260億ドル)の予算で「(シリア)難民の町」を建設する計画を立てたと述べた。同年10月31日大統領は、来訪したグテーレス国連事務総長と会談し、地域でのシリア難民の再定住のためのアンカラの計画に資金を提供するためにドナー会議開催を要請した。エルドアン大統領は、トルコが引き受けている当時350万人規模のシリア難民のうち、100万人ないし200万人を「安全地帯」に移動させ、シリア難民の町を建設する計画を有していることを明らかにしていた。2022年5月2日、エルドアン大統領は、トルコが影響力を有するシリア北西部の反体制派の拠点イドリブに住宅10万戸、モスク、学校、保健センターなどを建設し、シリア難民を百万人単位で、自主的に帰還させると宣言。しかし、1週間後、エルドアン大統領は「強制帰還」を否定した。今回のトルコ紙報道で、トルコは、アサド政権と距離を置くカタールと協力してイドリブとアフリンに24万戸の住宅建設を進めていることが明らかになった。アサド支配地区でも、シリア人の帰還を巡って、アサド政権ならびに後ろ盾のロシアとトルコは、帰還問題を話し合っていることが示されている。更に、トルコは、2023年8月のトルコ国内での非正規移民監視センターの設置支援に関する英・トルコ合意や、イタリアがホストした本年7月の「ローマ・プロセス」会合出席で示されたとおり、シリア難民の本国帰還だけでなく、トルコを経由して、欧州に向かうシリア人以外の非正規移民の流れも阻止しようとしていることがわかる。
https://www.gov.uk/government/publications/uk-turkey-joint-statement-on-illegal-migration/uk-turkey-joint-statement-on-illegal-migration

Posted by 八木 at 13:43 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)