MBSとの関係修復を決断したエルドアン大統領の思惑[2022年04月30日(Sat)]
4月28日、トルコ大統領府はエルドアン・トルコ大統領が、紅海の都市ジッダのアッサラーム宮殿でサウジアラビアのサルマン国王とムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)皇太子と公式会談したと発表した。
その後MBS皇太子がエルドアン大統領とテタテ会談を行い、MBSとエルドアン大統領の和解を意味する抱擁の写真が公開された。
トルコ司法当局は、著名なサウジ人ジャーナリストで、ワシントンポストのコラムニストでもあったジャマール・カショギ氏が2018年10月2日、イスタンブールのサウジ領事館で、本国から派遣された15名のグループによって殺害された事件に関し、容疑者26名に対して実施してきた欠席裁判をサウジアラビアに移管する決定を行っており、両国関係を修復する上でサウジアラビアが求めていた主要な条件のひとつをクリアーしていた。
2018年の事件直後からエルドアン大統領は、カショギ氏殺害をうけて、その真相究明と責任の所在を徹底的に追求し、当初は、カショギ氏行方不明として、殺害を否定していたサウジアラビア政府が、殺害の事実を認めざるをえないまでに追い詰め、その後実施されたサウジ国内での裁判とその結果についても認めず、サウジ側裁判とは別に、トルコ国内で裁判プロセスを進行させていた。エルドアン大統領は、サウジの「最高レベル」が殺害命令を出したと非難し、MBSの責任を強く示唆していた。
エルドアン大統領は、今次訪問にあたり、「補強の月」であるイスラム教徒の聖なるラマダン月の終わりを訪問の適切な時期として選び、両国共通の努力で、我々は過去の関係を乗り越え、同胞間の絆が強まると述べた。
(コメント)今回のエルドアン大統領のサウジ訪問と、MBSとの和解は、2018年10月に起きた世界を震撼させたカショギ氏殺害事件を、トルコは忘却の彼方に追いやり、サウジアラビアとの間で、新たな経済発展のための関係強化に取り組むということを意味する。世界の人権擁護者やカショギ氏のトルコ人婚約者にとっては、「驚き」かつ「信じたくない」エルドアン大統領の動きであったに違いない。しかし、世の中は、プーチン大統領のウクライナ侵攻により、過去の「人権侵害」にとどまっているわけにはいかない、もっと大規模な「人権侵害」が行われているではないか、という雰囲気で、カショギ殺害事件も過去のものにしようとする流れが強まっている。長年ロシアのエネルギー供給に頼ってきた欧米は、原油の代替供給元として、サウジアラビアに期待をかけている。ウクライナ侵攻後、サウジでの受刑者の大量処刑直後、ジョンソン英国首相は、サウジを訪問し、対面で、原油の供給増をMBSに要請した。就任前には、MBSの責任を追及するとしていたバイデン大統領も、MBSが殺害に関与した可能性が高いというインテリジェンスレポートの要旨を公開したものの、その後、MBSに制裁をかけることは控えた。今次ウクライナ危機を発端とするエネルギー価格高騰にあたって、バイデン大統領は、MBSに要請を行おうとしたが、サウジ側から電話会談を断られたそうである。エルドアン大統領も、ロシアからの天然ガス供給、原発建設に頼っている一方、エネルギー供給元の多様化の必要、ならびにトルコの通貨リラの下落でインフレが加速し、国民生活が困窮、2023年に予定されている大統領選挙での再選に黄色信号が灯りはじめており、背に腹は代えられないという思いで、サウジとの関係修復を決断したものとみられる。
https://www.middleeasteye.net/news/turkey-saudi-arabia-erdogan-trip-revive-ties-khashoggi
その後MBS皇太子がエルドアン大統領とテタテ会談を行い、MBSとエルドアン大統領の和解を意味する抱擁の写真が公開された。
トルコ司法当局は、著名なサウジ人ジャーナリストで、ワシントンポストのコラムニストでもあったジャマール・カショギ氏が2018年10月2日、イスタンブールのサウジ領事館で、本国から派遣された15名のグループによって殺害された事件に関し、容疑者26名に対して実施してきた欠席裁判をサウジアラビアに移管する決定を行っており、両国関係を修復する上でサウジアラビアが求めていた主要な条件のひとつをクリアーしていた。
2018年の事件直後からエルドアン大統領は、カショギ氏殺害をうけて、その真相究明と責任の所在を徹底的に追求し、当初は、カショギ氏行方不明として、殺害を否定していたサウジアラビア政府が、殺害の事実を認めざるをえないまでに追い詰め、その後実施されたサウジ国内での裁判とその結果についても認めず、サウジ側裁判とは別に、トルコ国内で裁判プロセスを進行させていた。エルドアン大統領は、サウジの「最高レベル」が殺害命令を出したと非難し、MBSの責任を強く示唆していた。
エルドアン大統領は、今次訪問にあたり、「補強の月」であるイスラム教徒の聖なるラマダン月の終わりを訪問の適切な時期として選び、両国共通の努力で、我々は過去の関係を乗り越え、同胞間の絆が強まると述べた。
(コメント)今回のエルドアン大統領のサウジ訪問と、MBSとの和解は、2018年10月に起きた世界を震撼させたカショギ氏殺害事件を、トルコは忘却の彼方に追いやり、サウジアラビアとの間で、新たな経済発展のための関係強化に取り組むということを意味する。世界の人権擁護者やカショギ氏のトルコ人婚約者にとっては、「驚き」かつ「信じたくない」エルドアン大統領の動きであったに違いない。しかし、世の中は、プーチン大統領のウクライナ侵攻により、過去の「人権侵害」にとどまっているわけにはいかない、もっと大規模な「人権侵害」が行われているではないか、という雰囲気で、カショギ殺害事件も過去のものにしようとする流れが強まっている。長年ロシアのエネルギー供給に頼ってきた欧米は、原油の代替供給元として、サウジアラビアに期待をかけている。ウクライナ侵攻後、サウジでの受刑者の大量処刑直後、ジョンソン英国首相は、サウジを訪問し、対面で、原油の供給増をMBSに要請した。就任前には、MBSの責任を追及するとしていたバイデン大統領も、MBSが殺害に関与した可能性が高いというインテリジェンスレポートの要旨を公開したものの、その後、MBSに制裁をかけることは控えた。今次ウクライナ危機を発端とするエネルギー価格高騰にあたって、バイデン大統領は、MBSに要請を行おうとしたが、サウジ側から電話会談を断られたそうである。エルドアン大統領も、ロシアからの天然ガス供給、原発建設に頼っている一方、エネルギー供給元の多様化の必要、ならびにトルコの通貨リラの下落でインフレが加速し、国民生活が困窮、2023年に予定されている大統領選挙での再選に黄色信号が灯りはじめており、背に腹は代えられないという思いで、サウジとの関係修復を決断したものとみられる。
https://www.middleeasteye.net/news/turkey-saudi-arabia-erdogan-trip-revive-ties-khashoggi
Posted by 八木 at 15:00 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)