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サウジ人ジャーナリスト・カショーギ殺害欠席裁判開始と英国による制裁発動[2020年07月07日(Tue)]
2020年7月3日、イスタンブールの裁判所で、2018年10月2日にサウジのイスタンブール領事館で殺害されたるサウジ人ジャーナリスト・ジャマール・カショーギ(Jamal Khashoggi)の殺害に関与した疑いで起訴された20人のサウジ人容疑者の欠席裁判が開始された。
(これまでの経緯)https://blog.canpan.info/meis/archive/385
(サウジでの一審判決)https://blog.canpan.info/meis/archive/288
1. トルコでの欠席裁判の開始
 7月3日、イスタンブール第11刑事裁判所は本件に関する最初のヒアリングを開始した。最初のヒアリングは、イスタンブール検察庁が作成した117ページに及ぶ起訴状の朗読から始まった。起訴状は、サウジアラビア情報局の元副長官であったアハマド・アル・アシーリ、および王宮府元顧問であったサウード・カハタニの両名を「恐ろしい意図による計画的殺人を扇動した」と糾弾した。他の18人は「おぞましい意図と拷問」で殺害を行ったとして告発されている。
●トルコ司法当局は、殺害犯はジャマールを窒息させて死体を切り裂いた後、遺体を焼却することで死体を処分しようとした可能性があると推察している。
●起訴状によれば地元の技術者で、総領事館で働いていたデミール氏は、カショーギが近くの領事館に入った後、総領事公邸に呼ばれた、そこには5〜6人がいた…彼らは私にタンドール[オーブン]に火を入れるよう求めた。パニックのような雰囲気があった、総領事の庭のオーブンに加えて、肉の串焼きと小さなバーベキューを見た、オーブンの周りの大理石のスラブは、まるで化学薬品で掃除されたかのように色が変わっていたと証言した。起訴状によれば、領事の運転手は、総領事は生のケバブを地元のレストランから購入するように命じた、と証言。起訴状によると、デミール氏は、窓を覆った車が到着したときにガレージの扉の開閉を手伝うことを申し出たが、庭をすぐに出るように命じられた。(注:トルコの検察は、ケバブの購入は、ジャマールの遺体焼却をごまかすための偽装工作とみている)
TRT動画 https://youtu.be/UvHIGRNu8XA
https://www.aljazeera.com/amp/news/2020/07/khashoggi-trial-consulate-worker-told-light-oven-200703180203828.html

2.カショーギ氏のアラブ・ジャーナリスト育成奨学金構想
●ワシントン・ポストのコラムニストでサウジの著名なジャーナリストであったジャマールはトルコと米国で若いアラブ人ジャーナリスト育成のための奨学金を設立する計画を表明していた。彼はそのようなイニシアチブに投資する勇敢なアラブ人のビジネスパーソンがまだいると信じていた。彼はサウジ王国の多くの当局者が3カ国でそのような共同奨学金プログラムを作成する彼の計画を承認するとさえ信じていた。彼は、サルマン国王が海外の若いジャーナリストを教育することのメリットを認めるだろうと強く主張していた。彼がひとつ間違っていたのは、もはや国を(実質的に)運営していたのは、古い王ではなく、彼の野心的な息子であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子(MBS)であり、皇太子はずっと前にジャマールの死の判決に署名していたということであった。
https://www.dailysabah.com/opinion/columns/a-lit-oven-for-khashoggi
3.サウジの裁判のその後
●サウジ国内では、起訴された11名のうち、第一審で5名が死刑、3名が有期刑、3名が証拠不十分で無罪の判決を受けていたが、5月22日のラマダン月のライラ・トル・カダル(定めの夜)にジャマールの息子が、死刑判決を受けたものを許すとの声明を発出し、刑の執行猶予が決定されたため、全員が解放されているとのこと。ちなみに、カハタニ元王宮府顧問は、サウジの裁判プロセスで起訴さえされていない。
https://www.cnn.ph/world/2020/5/23/Jamal-Khashoggi-sons-pardon-father-killer.html
4.英国政府の制裁発動
●7月6日、英国は、人権侵害者を処罰する新しい英国の権限の下で、ロシア、サウジアラビア、ミャンマー、北朝鮮からの数十の個人や組織に経済制裁を科した。ドミニク・ラーブ外相は、制裁は「近年の悪名高い人権侵害」の背後にいる人々を標的とし、血塗られた資金洗浄を止めることを目的としたと述べた。英国外務省によると、英国の最初の制裁は、セルゲイマグニツキー弁護士の虐待と死に関与したとされるロシア人25名と、ジャーナリストのジャマール・カショーギの殺害に関与したサウジアラビア国民20名を対象とする。サウジ名のリストには、サウジアラビアの元王室顧問であったサウード・カハタニと、元情報諜報局の責任者であったアハマド・アルアッシーリ将軍が含まれる。
https://www.aljazeera.com/ajimpact/uk-sanctions-saudis-russians-magnitsky-powers-200706165359282.html

(コメント)5月22日のラマダン月の終わりのライラ・トル・カダル(定めの夜)にジャマールの息子たちは、父親を殺した者を赦免したことを発表した。サウジの法律によると、殺人事件の被害者の息子からの赦免は法的執行猶予としての効果を発揮する。昨年12月、サウジの一審の判決で、サウジ人5人の政府職員に死刑が宣告された。被害者の家族が赦免を認めた場合、加害者の家族は、カショーギの家族に、流された血の代償として賠償金を支払う責任がある。彼らが支払いをする余裕がない場合、国家は加害者の家族の代わりにすでに家族に支給された国家の見舞金に加えて支払うことができるとされる。昨年、殺害の補償として家族が数百万ドルの現金と資産を受け取ったと報じられたが、息子たちは、彼らがサウジ政府から血の代償としてのお金を和解のために受け取ったことを否定した。事件後本件を調査した国連の特別報告者であるアグネス・カラマールは、家族の赦免について、「サウジアラビアは、ジャマール・カショーギの事件に正義をもたらさないことを繰り返し証明してきた。これは、サウジの免責パズルの最後のピースであり、世界中の聴衆の前で演じられる正義のパロディの最後の行為である。殺人者は自由に歩きまわることなる。 」とコメントした。家族でさえ許しているとして本件を過去のものにしたいサウジ指導部と、それを欠席裁判の形で許さないトルコ政府、あくまで、MBS指導部を擁護するトランプ政権と、殺人事件を起こしておきながら何事もなかったかのように暗殺団全員が自由になるのだけは許容できないとする英国政府の対応から、「正義」の判断は、それぞれがおかれた立場の違い、思惑の違いからかくも変化するものなのか思い知らされる気がする。

Posted by 八木 at 14:08 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)