• もっと見る
イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

« 2019年05月 | Main | 2019年07月 »

検索
検索語句
<< 2019年06月 >>
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            
最新記事
最新コメント
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
プロフィール

中東イスラム世界社会統合研究会さんの画像
日別アーカイブ
https://blog.canpan.info/meis/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/meis/index2_0.xml
独外相のイラン訪問は目立った成果なく終了[2019年06月11日(Tue)]
6月10日、イラン核合意の当事国である独のマース外相が、イランを訪問し、ザリーフ外相と会談し、続いてローハニ大統領と会見した。ローハニ大統領は、我々は欧州がイラン国家に対する米国の経済テロリズムに立ち向かい、それに抵抗し、JCPOA(包括的共同行動計画)に従ってその義務を果たすことを期待する、とのメッセージを伝えた。イラン側は、訪問を歓迎したものの、有効な「カード」を持たずに来訪したマース外相との間で、「奇跡」が生まれることはなかった。マース外相は、英仏独外相が1月末にイランとの貿易継続の特別目的事業体の立ち上げを宣言した「貿易取引支援機関(Instrument for Supporting Trade Exchanges:INSTEX)」を通じてのイランとの取引開始の可能性に言及することが精一杯であった。既に宣言後5か月ちかくを経過しているにもかかわらず、INSTEXを通じての取引は、未だ1件も実行されていないとのこと。そもそもINSTEXは運用が開始されても、当面原油や石油化学製品、金属など重要産品を扱うことを想定しておらず、しかも、イラン側が欧州に販売した輸出額の範囲内で、欧州の医薬品や農産物等をイランに輸出するとの仕組みであり、ユーロ等の外貨を直接イラン側が手にすることは想定されていない。遅々として進まない状況に苛立つイラン側指導部の忍耐も限界に近づきつつある。イランは、7月7日という期限を切って、イランの核開発停止の見返りにイランの経済的利益に配慮するという核合意に盛られた欧州側のコミットメントを具体化するよう求めている。さもなければ、イランはウランを3.67%まで濃縮するという約束にもはや縛られず、JCPOA以前の計画に基づいてアラク(Arak)重水炉の開発も再開する第二段階に入ると警告している。
イラン側は、トランプ政権に抵抗しようとしない欧州に失望しており、最近のザリーフ外相の発言は、「ドルによらない貿易取引を推進すべきだ」として現在の米国による世界の金融支配の下では、如何ともしがたいとの諦めがにじみ出ている。また、原油輸出についても、米国が宣言した5月以降の禁輸免除停止措置に限定的ながらあからさまに逆らっているのは、中国だけで、インドやトルコを含めほかのすべての国々がイランとの原油取引を停止したとみられている。イランの高官は、イランは、これまでの伝統的方式以外のグレイゾーンで、原油の販売を継続することになると言明しているが、これは裏返せば、通常ルートで原油を販売することはもはや困難になったことを認めたに等しい。こうした中、同じく制裁を受けているロシアが中国との間で6月5日発表された通り、両国は首脳レベルで、自国通貨での決済を拡大する方向性に合意しており、イランは、ライクマインド諸国との間で、例えば自国通貨をそれぞれプールして、貿易金融取引の決済を行うような仕組みを導入して、ドル取引や米国の金融取引通報システムSWIFTを回避する形で、最悪な状態に陥りつつある経済金融危機に耐えていこうとしている。

Posted by 八木 at 14:38 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

| 次へ