CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

« 中東イスラム世界に関心を抱くあなたへの助言 | Main

検索
検索語句
<< 2021年02月 >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28            
最新記事
最新コメント
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
プロフィール

中東イスラム世界社会統合研究会さんの画像
日別アーカイブ
https://blog.canpan.info/meis/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/meis/index2_0.xml
ジャマール・カショギ氏殺害に関する米国国家情報局要約版報告書公開[2021年02月27日(Sat)]
2月26日、米国国家情報局(ODNI)は、2018年10月2日にトルコのサウジ領事館内で殺害された、ワシントンポストのコラムニストで著名なサウジ人ジャーナリストであったジャマール・カショギ氏をサウジアラビア皇太子ムハンマド・ビン・サルマン(MBS)が、同人を「捕捉するか殺害する」ことを目的としたトルコのイスタンブールにおける作戦を承諾していたと分析評価した報告書の4頁の要約版を公開した。
(主要点)
• カショギ殺害の時点で、皇太子は、側近たちが託された職務を果たすことに失敗した場合、解雇されるか、逮捕されるかもしれないとの恐怖を利用したものとみられる。これは、側近たちが、MBSの命令に逆らったり、彼の了承なしに機微な行動をとることは出来そうにもないことを示している。
• 2018年10月2日、15名で構成されるサウジのチームは、イスタンブールに到着した。チームには、王宮のサウジ調査・メディア問題センター(CSMARC)で勤務し、あるいは関連する役人が含まれていた。作戦時、CSMARCは、MBSの身近な側近であったサウード・カハタニが長を務めていた。カハタニ氏は、2018年央時点で、皇太子の承諾がなければ、決定を下すことができないと公に述べていた
• チームには、サウジ王宮府護衛隊の一部である急速介入部隊(RIF)として知られるMBSのエリート護衛部隊メンバー7名が含まれていた。この部隊は、MBSのみに従い、王国内外での反逆者を抑圧するための早くからの作戦に、皇太子の指示で直接関与していた。我々は、RIFのメンバーは、MBSの承諾なしにはカショギ作戦に参加できなかったと判断する。
皇太子は、カショギを王国への脅威とみなした。彼を黙らせるために必要であれば、暴力的な手法をとることを広く支持した。サウジの役人たちがカショギに対する作戦を事前に練っていたものとみられるものの、どれくらい前から彼らが彼を傷つけようとしていたのかはわからない。
• 我々は、以下の人物が、MBSに代わってカショギ殺害に関与し、命令され、責任を有することに高い確信を有している。我々は、これらの人物が作戦がカショギの死に至ることを事前に承知していたのかについてはわからない。
@ サウード・カハタニ(元王宮府顧問)
A マーヘル・ムトリブ(チーム代表格。カショギと在英大使館同僚)
B ナーイフ・アルアリーフィ
C ムハンマド・アルザハラーニ
D バドル・アルウタイバ
E アブドルアジーズ・アルハウサーウィ
F ワリード・アブドッラー・アルシヒリー
G ハーリド・アルオタイバ
H サアル・アルハラビィ
I ファハド・シハーブ・アルバラウィ
J メシュアル・アルブスターニ
K トルキー・アルシヒリー
L ムスタファ・アルマダニー(殺害当日カショギに変装)
M サイフ・サアド・アルカハタニ
N アフマド・ザイド・アッシーリ(元情報部副長官)
O サラーハ・アルトゥバィギ(法医学者)
P ムハンマド・アルオタイバ

(コメント)ヘインズ国家情報長官は、上院のヒアリングで、2019年に議会で可決された法律を遵守し、カショギ殺害に関する報告書を公開することを約束していた。報告書は、サウジ王室と緊密な関係を共有し、サウジを米国の対中東戦略の中心に据えたトランプ政権によって、1年以上にわたって公の場から遮断されていた。2月25日、バイデン大統領はMBSの父親サルマン国王と電話会談して、報告書を公表する旨通報した。サウジ外務省は報告書の内容を虚偽であり、その評価を完全に拒否するとしたうえで、王国は、その指導者、主権、および司法制度の独立性を侵害するいかなる措置も拒否する、と補足した。ブリンケン国務長官は、この報告書の評価にもかかわらず、MBS皇太子自身に対しては、制裁を科さないことを明言した。一方、アッシーリ元情報部副長官と「タイガー部隊」として知られる組織としてのRIFが財務省の制裁リストに追加された。
https://www.axios.com/khashoggi-report-365166be-7092-483c-b739-411193a91d2a.html
国家情報局https://www.dni.gov/files/ODNI/documents/assessments/Assessment-Saudi-Gov-Role-in-JK-Death-20210226v2.pdf
https://www.middleeasteye.net/news/khashoggi-murder-advocates-decry-us-failure-impose-sanctions-mbs
https://home.treasury.gov/policy-issues/financial-sanctions/recent-actions/20210226

Posted by 八木 at 15:56 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

サウジの女性活動家ルジャイン・アルハスルールの解放確認[2021年02月11日(Thu)]
2月11日、サウジ人の女性活動家ルジャイン・アルハスルールが1001日ぶりにサウジの刑務所から釈放され、自宅に帰還したことが確認された。2020年12月28日、リヤドの特別刑事裁判所は彼女に有罪判決を下し、刑期の半分を停止して5年8か月の禁固刑を言い渡していた。これをうけて、バイデン米大統領をはじめ世界の政治家、人権活動家が歓迎のメッセージを発出。但し、彼女の家族によれば、彼女は、未だに保護観察中で、旅行を禁止され、控訴プロセスの知らせを待っている状態で、完全に「自由」になったわけではないとのこと。
(アルハスルールについて)
@サウジアラビア国内で最も活発な女性の権利活動家の1人。 その活動は、サウジ国家の制限的な男性保護制度の廃止、女性の運転の許可、家庭内暴力の犠牲者のための避難所の設立を含む3つの分野に焦点をあてたものであった。
A国家治安部隊は2018年5月15日にハスルールを逮捕し、以後、彼女は、拘束され続けていた。彼女は、刑務所で拷問・虐待を受けていたと主張している。
https://www.middleeasteye.net/news/saudi-arabia-loujain-hathloul-activist-returns-home-prison

(参考1)バイデン大統領釈放歓迎コメント(米時間2月10日、国防総省)
はじめに、サウジアラビア政府が著名な人権活動家であるルジャイン・ハズルー− -loul −、l-o-u-l −を刑務所から釈放したという歓迎のニュースがある。 彼女は女性の権利を擁護する強力な人物であり、彼女を釈放したことは正しいことである
Before I begin, I have some welcome news that the Saudi government has released a prominent human rights activist, Loujain al-Hathlou − -loul − excuse me, l-o-u-l − from prison. She’s a powerful advocate women’s rights, and releasing her was the right thing to do.
https://twitter.com/i/status/1359600888902516743
(参考2)国務省コメント(米時間2月10日 プライス報道官)
QUESTION: And last one on Saudi Arabia, the release of Loujain al-Hathloul – do you have any comment on her release?
MR PRICE: Well, we have – we have seen those reports. And certainly her release would be a very welcome development. What I can say is that promoting and advocating for women’s rights and other human rights should never be criminalized. We have watched this case very closely. And certainly as we continue to monitor developments there, her release would be a very welcome development.

Posted by 八木 at 09:59 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

イランによる韓国籍タンカーの拿捕[2021年01月07日(Thu)]
1月4日イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)は、ペルシャ湾で韓国籍の7,200トンの石油化学製品を運搬するタンカー「ハンクック・ケミ(MT Hankuk Chemi)」が「海洋環境法違反」の疑いで拿捕し、バンダル・アッバース港沖に搬送させたことが確認された。イラン側声明によると、船の乗組員は韓国人、ベトナム人、インドネシア人、ミャンマー人20名で構成されていた。この船はサウジアラビアのジュベイルからアラブ首長国連邦のフジャイラまでの運航を予定していた。船は釜山を拠点とする船会社DM Shipping.Coによって運営されている。
1月5日、韓国の外交部は、駐ソウル・イラン大使を招致し、タンカーの即時解放を要求した。韓国政府は、軍がすでに海賊対策で派遣している駆逐艦をこの海域に向かわせるとともに、即時釈放を求めて、交渉のためにイランに代表団を派遣した。
イランは、IRGC海上部隊がホルムズ海峡近くで船の進行を妨げ、乗組員を人質として保持していることを否定した。しかし、イラン政府のスポークスマン、アリ・ラビエイは、今回の行動が米国主導の制裁措置のために韓国の銀行で凍結された約70億ドルの資産の差し押さえに関連していることを確認したようで、5日の記者会見で、「我々は、そのような主張に慣れているが、仮に人質取りがあったとしても、我々が所有者である70億ドルを根拠のない理由で人質に取っているのは韓国政府である。」と指摘し、韓国政府が本来、イラン側に戻すべき差し押え資産の解放を求めた。
(コメント)2019年5月、6月にペルシャ湾周辺で、6隻のタンカーが被弾し、その後、7月にイランタンカー「グレース1」のジブラルタル当局による拿捕を受けて、英国のタンカーであるステナ・インペロがIRGC海上部隊によって拿捕されたこと等を踏まえ、2019年11月7日米主導で、海上交通の安全を守るための有志連合(International Maritime Security Construct :IMSC)が正式に発足し、その連絡事務所が米第五艦隊が本部を置くバーレーンに設置された。韓国は、有志連合を構成する8か国の1か国とみられている。韓国政府は、駆逐艦の派遣を決定したものの、軍事的解決は望んでおらず、外交的に問題の解決を図りたいとの考え。イラン側は、乗組員を人質にしていることを否定したが、トランプ政権の終了を控え、米国の経済制裁によって、諸外国に凍結されていたイランの資産の返還を今後各国に求めていくものとみられる。
https://youtu.be/StvdHJv8OL8

Posted by 八木 at 16:26 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

カタールとアラブ封鎖4か国との関係修復のアル・ウラー宣言[2021年01月06日(Wed)]
1月5日、サウジ北西部のアル・ウラーで開催されたGCC首脳会議で、参加各国代表は「連帯と安定」宣言に署名した(注:宣言の具体的内容は公表されていない)。GCCの封鎖3か国(サウジ、UAE、バーレーン)と今回外相を派遣したエジプトはカタールへの封鎖を解除し、カタールはサウジアラビア、UAE、バーレーンに対する世界貿易機関(WTO)への提訴を取り下げるとみられている(注:5日の現地報道によれば、サウジ・カタール国境は開かれたものの、未だ往来する車両はない模様。またサウジ以外の3か国がどのタイミングで、どのように封鎖を解除するのかは、今後見守る必要がある)。 各国はまた、お互いを攻撃するメディアキャンペーンを終了することに同意した模様。
第41回GCCサミットの参加者は、次のとおり。
@ クウェート:ナワーフ首長(Emir Sheikh Nawaf Al Ahmad Al Sabah)
A カタール:タミーム首長(Sheikh Tamim bin Hamad Al Thani)
B オマーン:ファハド副首相(Deputy Prime Minister Fahd Bin Mahmoud),
C サウジ:ムハンマド皇太子(Crown Prince Mohammed bin Salman)
D バーレーン:サルマン皇太子(Crown Prince Salman bin Hamad Al Khalifa)
E UAE:ムハンマド副大統領兼首相(ドバイ首長)(UAE Vice President Sheikh Mohammed bin Rashid Al Maktoum)
F GCC事務局:ナーイフ事務局長(Nayef al-Hajraf, secretary-general of the Gulf Cooperation Council (GCC) )
G シュクリー・エジプト外相
H クシュナー米大統領特別顧問
(コメント)タミーム首長のアル・ウラー空港到着時、MBS皇太子が空港に出迎え、抱擁を交わした。湾岸諸国では、外国要人の来訪時、誰が空港に出迎えるかが重要で、それが、受け入れ国が、来訪者をどのようにみているかを如実に物語っている。今回のサミットでは、サウジ側のトップは、サルマン国王ではなく、MBS皇太子であった。3年半の断交を経て、サウジは、カタールが、封鎖4か国が課した13項目の要求のいずれにも応じなかったにもかかわらず、何事もなかったかのようにカタールのトップを迎え入れたことになる。封鎖4か国の中でも、カタールに対して最も厳しい立場をとってきたのは、サウジではなくUAEであったとみられている。UAEは米政府がカタールを「テロ支援国」に指定するようロビイングをしていたことが明らかになっている。UAEは、エジプト同様、テロ組織に指定しているムスリム同胞団に同情的なカタールへの批判的な見方を変えていない。今回のGCCサミットでは、UAEを代表してムハンマド・ビン・ラーシドUAE副大統領が出席したが、UAEの実質的指導者であるムハンマド・ビン・ザーイド・アブダビ皇太子が、ハリーファ大統領代行として、GCC首脳会議に出席してもおかしくないが、MBZは出席を見合わせた。MBZは、未だカタールと全面的な和解を実現したいとは思っていないのではないかと推測される。むしろ、イスラエルとの関係を促進し、カタールとその後ろ盾になってきたトルコの影響力を削ぐ形で、今後の地域戦略を進めていくものとみられる。サウジの実質的指導者MBS皇太子は、米国のバイデン新政権発足を控えて、対米関係の軌道修正を迫られている。イエメンでのハーディ政権と南部暫定評議会の連立政府樹立や今回のカタールとの和解は、サウジが主導する形で、地域の不安定要因を予め取り除いておきたいという思惑がにじみ出ている。さらに、12月28日、サウジの特別犯罪法廷がサウジ国内での女性への運転免許解禁前に解禁を訴えて拘禁されたサウジ人女性活動家ルジャイン・アルハスルール(Loujain al-Hathloul)に5年8か月の刑期を宣告し、人権団体から批判を浴びたが、彼女はこれまでの拘束期間を含めれば、あと2か月で釈放されるものとみられており、バイデン新政権に対してひとつのファイルを閉じることを意味する。MBS皇太子が気にしているもうひとつのファイルは、ナーイフ元皇太子の側近のジャブリ氏殺害未遂に絡みMBS皇太子が米国の連邦地裁に訴えられている件では、トランプ政権に免責を認めてもらいたいとの思惑もあったとみられる。今回のGCCサミットに出席したクシュナー・トランプ大統領上級顧問は、最近のアラブ4か国のイスラエルとの国交正常化の立役者であるばかりでなく、昨年12月に関係国に根回しを行って、今回のカタールと封鎖4か国との外交関係再開の最大の貢献者となった。因みに、今回のカタールと封鎖4か国の和解については、アラブ4か国の封鎖に際して、カタールを支援してきたトルコ、イランは、いずれも関係修復に対して歓迎の意向を表明している。
https://www.aljazeera.com/news/2021/1/5/saudi-says-full-ties-restored-between-qatar-and-embargo-nations
https://www.aljazeera.com/news/2021/1/5/gulf-states-sign-solidarity-and-stability-deal-at-gcc-summit
https://responsiblestatecraft.org/2021/01/05/gulf-states-end-blockade-on-qatar-now-the-heavy-lifting-begins/

Posted by 八木 at 14:10 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

3年半ぶりのアラブ4か国によるカタール封鎖解除の見通し[2021年01月05日(Tue)]
1月4日、湾岸諸国内の関係修復の調整にあたってきたクウェートのアフマド・ナーセル・アル・ムハンマド・アル・サバーハ外相は、サウジアラビアは、2017年6月以来3年半にわたって閉鎖されていたカタールとの国境を開放し、領空と海の国境を再開する予定であると発表した。この画期的な発表は、湾岸協力理事会首脳会議(GCC)の前夜に行われ、サウジとその同盟国がカタールにボイコットを課す原因となった政治紛争の問題解決に向けての途を開くこととなった。サウジアラビア、UAE(アラブ首長国連邦)、バーレーン、エジプトのアラブ4か国は、2017年6月5日にカタールが「テロ」を支援しているとの理由で、カタールと外交関係を断絶し、陸海空の封鎖を行った。この結果、カタール航空は、アラビア半島の上空のほとんどを飛行することができず、カタールと近隣諸国の人の往来も遮断されることになった。アラブ4か国は、カタールに対して、封鎖を解除し、関係を正常化する前提として、トルコ軍の撤収やイランとの関係格下げ、アルジャジーラ等のカタール系メディアの閉鎖を含む13項目の要求を突き付けていたが、カタールはそのいずれにも応じていなかった。
サウジのサルマン国王は、1月5日からサウジ国内で開催されるGCCサミット開催に際して、カタールのタミーム首長に招待を発し、タミーム首長は招待に応じ、サミットに出席するとみられている。GCC諸国内の関係修復を祝う形で、トランプ政権を代表して、クシュナー大統領上級顧問が出席する予定。
(コメント)2017年6月のアラブ4か国によるカタール断交・封鎖は寝耳に水という措置であった。同年6月4日にジュベイル外相がカイロを訪問し、シュクリ外相と会談したにもかかわらず、カタール断交・封鎖についてはひとことも発言はなかった。同5日断交・封鎖が間違いなく実施されるとの最後の念押しのための訪問であったことは間違いない。4か国は、陸海空の封鎖で早晩カタールは干上がってしまい、13項目の要求に応じるか、カタール内部でのタミーム指導体制が崩壊することを想定していた可能性がある。しかし、ムスリム同胞団に対しては同情的で、かつ、エジプトやUAEとは関係が冷却しているトルコが、間髪をいれずに軍隊をカタールに派遣したこと、カタールを陸の孤島にしないため、トルコとイランがカタールを往来する民間航空機の領空通過を認め、サウジやUAE領空から排除されたカタール航空の運航を歓迎したこと、食料品や医薬品等の緊急供給にも応じ、カタール国内住民のパニックが起きないようサポートしたことが心理的・物理的に効果が大きかった。また、米国トランプ大統領とクシュナー上級顧問を含む側近は、トランプ大統領が直前の2017年5月下旬にサウジを訪問し、直後にタミーム首長に関するフェーク報道が流れたことから、少なくともクシュナー顧問はサウジ、UAE等の封鎖措置実施を事前に聞かされていた可能性が強く、反対はしなかったとみられるが、他方で、カタールには、中東・中央アジアを管轄する米中央軍の前線基地であるウデイド空軍基地が存在しており、また、当時はカタールともかつてビジネス関係を有していたエクソン・モビル出身のティラーソンが国務長官であったため、カタールにアラブ4か国の要求をのませる方向で動くことはなかった。結果として、アラブ4か国の動きは、カタールを屈服させることにはならず、逆に、カタールを、サウジと対立するイラン側に押しやり、また、UAE・エジプトと対立するトルコとの関係強化に向かわせることとなった。
●5日の首脳会議では、GCC3か国とエジプトの指導者が一堂に会し、カタールへの封鎖を終了させ、一方、カタールは封鎖によって被ったカタール航空の50億ドルの損害補償訴訟を取り下げる協定に調印するとみられている。
●表面的には、関係修復の途を歩み始めるアラブ4か国とカタールであるが、カタールがトルコにトルコ軍の帰国を求めたり、イランとの関係格下げを実施したり、アルジャジーラの閉鎖を実行したりすることは想定されていない。カタールのテロ支援を最大の理由として、断交・封鎖に参加したエジプトは、カタールが庇護しているムスリム同胞団に強い影響力を有するとされるユースフ・カラダーウィ師の娘とその夫を拘束したままであり、解放が近いとはみられていない。UAE、エジプトは、リビアでハフタル将軍側を支援してきており、トルコとカタールがシラージュ暫定政権側を支援してきたことに反発している。すなわち、カタールとアラブ4か国が当面温かい関係に戻ることは想定されない。
https://www.middleeasteye.net/news/saudi-arabia-qatar-end-blockade
https://www.aljazeera.com/news/2021/1/4/saudi-to-lift-qatar-blockade-live-news

4か国によるカタール封鎖のこれまでの経緯については、次のサイトを参照願います。
http://meis.or.jp/products/gulfstat/QatarBlockadeFourYears.php

Posted by 八木 at 12:07 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

パキスタンに接近を図るイラン[2021年01月04日(Mon)]
パキスタンとイランは、2020年12月19日にグワダル-リムダン地点に、2番目の公式国境検問所を開設した。この新たなゲートウェイ開設によって、パキスタンのグワダル港とイランのチャバハール港が最短の陸路で結ばれることになる。中国が支援するパキスタンのグワダル港と一時期インドが関心を示していたイランのチャバハール港の開発は、ライバル視されていたが、インドのチャバハールからの事実上の撤退と、グワダル-リムダンの国境通過ポイントが開設されることにより、パキスタンのグワダル港とイランのチャバハール港が有機的に結ばれ、アフガニスタン、中央アジア、トルコ他への輸送も視野に入れたイランとパキスタン、中国の経済連携が深まることになる。他方で、インドとの関係を強化しているサウジは、パキスタンにローンの返済を迫り、それを中国が新たなパキスタンへの借款提供でサウジへの返済分を補完するという財政が絡む地域のライバル国間の主導権争いが生じている。

(参考1)イランとパキスタン間の新たな国境通過ポイントの開設
●イランとパキスタンは、2020年12月19日、両国間の貿易・往来拡大のため、両国間に新たな国境通過ポイント開設記念式典を開催した。イラン外務省のスポークスマンは、2020年11月にイランのザリーフ外相がパキスタンを訪問した際、両国がリムダン・ガブド(Rimdan-Gabd)国境通過ポイントを開くことに合意していたと述べた。
●イランのスポークスマンは、友好的な近隣国である両国が国境ゲートウェイを建設し、最近のカフヘラット鉄道プロジェクトの発足は、イランイスラム共和国が近隣諸国との交流と協力を特に優先していることを示していると述べた。イラン東部とアフガニスタン西部を結ぶ共同鉄道プロジェクトは12月10日に開始され、隣接する両国大統領がビデオ会議を通じて鉄道建設が、地域全体の貿易関係を強化することを期待していると述べた。
●パキスタンビジネスカウンシル(PBC)によると、隣接する2か国間の二国間貿易は2018年時点で3億6,900万ドルであった。パキスタンは、イランから液化石油ガス、その他の鉱物燃料、電気エネルギーを輸入する一方で、紙や板紙、米、文房具をイランに輸出している。イランは1,000メガワットの電力をパキスタンに販売しており、これを最大3,000メガワットに増やして、パキスタン国内の約4,000メガワットの不足分を補う計画である。
●70年近くの間、イランとパキスタン間の唯一の公式の国境ゲートウェイは、バルチスタンの州都であるクエッタより北にあるミルジャバ-タフタン(Mirjavah-Taftan)国境検問所であった。
http://en.otaghiranonline.ir/news/22685

(参考2)サウジへの借金返済で露呈したパキスタン・サウジ関係の緊張
サウジアラビアは、2018年後半にパキスタンに30億ドルの融資と32億ドルの石油購入融資枠を提供した。パキスタンは紛争地域のジャンムー・カシミール自治州でのインドによる自治権はく奪に抗議し、イスラム諸国会議機構(OIC)の支援を求めていたが、OICのホスト国サウジアラビアはパキスタンに融資の返済を迫った。
●30億ドルの融資については、2020年7月パキスタンは、10億ドルをサウジアラビアに返済し、さらに12月に10億ドルを返済した。この返済にあたって、パキスタンは中国にサウジへの返済を可能にするための融資を申し入れ、中国が応じた。本年1月中にさらに10億ドルがサウジに返済される予定。
https://www.reuters.com/article/pakistan-china-saudi-arabia-idUSL8N2IW3N2

Posted by 八木 at 11:59 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

ソレイマニIRGCコッズ部隊司令官殺害一周年にあたって[2021年01月03日(Sun)]
1年前の今日1月3日、ソレイマニIRGCコッズ部隊司令官は、バグダッド空港到着時、アブー・マフディ・アルムハンディスPMF(人民動員部隊:ハッシュド・シャアビィ)副司令官とともに米軍のドローン攻撃で殺害された。トランプ大統領退任前にトランプ政権が、イランを叩く口実を探しているのではという見方や、イランがウラン濃縮20%までを目指す旨IAEAに通報したと伝えられる等、イランをめぐる緊張が拡大する中で、2日付、MEEは、ソレイマニ殺害後のイラン・イラク関係について興味深い記事を掲載しているので、注目点を紹介する。

●ソレイマニ司令官の後任には、エスマイル・ガーニー准将が就任した。しかし、ガーニー新司令官は、ソレイマニがアラビア語を話し、所属や宗派に関係なく、ほとんどのイラクの政治家や武装勢力の指揮官と関係を広げており、イラクへの入国もビザなしで入っていたのに反し、入国には査証申請が必要で、かつアラブ人との会談ではアラビア語の通訳が必要で、イラク各界の有力者に浸透することができないでいる。
●ソレイマニが不在となり、アサーイブ・アハル・アルハックのようなイランが支援してきたイラクの準軍組織は、ガーニーの指示を無視して、制御不能に陥っているとされる。イラク内のシーア派武装組織へのイランのグリップの低下により、イランは現在、イラクでのソレイマニが進めてきた計画すべての見直しに取り組んでいる。イランの考え方は、これまでのように、親イラン系武装組織への影響力行使によって、イラク全体を牛耳ようとするのではなく、PMFへのイラク政府支配の強化を容認し、さらにPMF枠外の一部の「抵抗組織」の存続が認められることで、親イラン系組織の存続を維持し、イランの権益の損失を最小限に抑えようとしている。
●イランは次の3つの要素を見直しの中心に据えている。すなわち、@ジョー・バイデン次期政権との関係、Aイラクのグランド・アヤトラ・アル・シスターニ師に忠実な武装勢力がPMFから離脱したことや、親イラン系シーア派組織内で対立が生じ始めていることを踏まえてのPMFとの関係再構築、B本年イラクで行われる議会選挙への対応、である。
●イランにとっての、最初のステップは、武装勢力への影響力とイランへの近さで比類がなかったカタエブ・ヒズボラ準軍組織の共同創設者であるムハンディスに代わる人物を見つけることである(注:すくなくとも、後任のガーニーとPMFの後任のアブー・ファダックの関係は、ソレイマニとアルムハンディスの親密な関係にはるかに及ばないとみられている)。
●2020年12月23日にバグダッドを訪れたガーニー司令官は、カーディミ首相ならびにバルハム・サリーフ大統領に会い、「イランは最近のグリーンゾーン内の米大使館攻撃とは何の関係もないというメッセージを米国に伝えてほしい」と依頼した模様。そして、ガーニー司令官は、イランはソレイマニの死の1周年にあたり、米側に報復する計画はないと強調した模様。ガーニーのイラク訪問は、短時間であったが、12月27日、カディミの顧問の1人が率いるイラクの公式代表団がテヘランを訪問した。公式の代表団がカアニの訪問の数日後にイランに行った理由についての情報は明らかではないが、イラク代表団がイランのメッセージに対して米国の反応を示したことは明らかであるとみられている。
●多くのイラクのシーア派指導者は、イラクの代表団が「統制されていない要素」を追及する上でイランの支援を要請したことを示唆している。イラク側は、イラク政府も、イランも制御できない武装勢力をコントロールするために、カーディミ首相とPMFの参謀長であるムハンマド・「アブー・ファダック」アブドルアジーズの間の調整を強化する方法についてイランとの合意を模索していたと確信している。これは、政府ならびにイランの影響力から外れた小規模かつ制御不能なシーア派民兵組織をPMFや「抵抗勢力」のカバーから外すことを目論むものである。
●これに呼応するかのように、12月23日、イラク治安部隊は、ミサイル技術者であり、強力な武装勢力のリーダーの1つであるアサーイブ・アハル・アルハックの1名と他の3名を「ミサイルで米大使館を攻撃した」罪で逮捕した。その数日前に、誘拐、恐喝、財政的および行政的腐敗で告発されたコラサニ旅団の司令官であるハーミド・アル・ジャザリーとアリー・アル・ヤシーリが逮捕された。その1週間前には、同じグループの他の30人も拘束されていた。コラサニ旅団を解体し、その指導者を逮捕し、その財産を没収することは、PMFを浄化するプロセスが実際に始まったことを示しているとみられている。
https://www.middleeasteye.net/big-story/soleimani-iran-iraq-death-strategy-quds-force

Posted by 八木 at 12:54 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

パレスチナ人にとっての衝撃の年2020年を振り返る[2020年12月31日(Thu)]
2020年、パレスチナ人はコロナ感染症拡大に直撃されたことだけでなく、アラブの同胞の多くに見捨てられる衝撃の年となった。イスラエルが1967年と73年の中東戦争で占領した領土のアラブ側への返還なしに、イスラエルとの関係正常化をアラブ側が受け入れるという70年に及ぶイスラエル・パレスチナ紛争において、イスラエルが軍事的側面だけでなく、政治的にも勝利したことを意味する。

(参考1)2020年のアラブ諸国とイスラエルとの関係正常化の動き
2020年8月13日 UAEがイスラエルとの国交正常化発表
2020年9月11日 バーレーンがイスラエルとの国交正常化発表
2020年9月15日 ホワイトハウスで、アブドッラーUAE外相、ザヤニ・バーレーン外相、ネタニヤフ・イスラエル首相、トランプ大統領が出席して、UAE、バーレーン、イスラエル、米国間の「アブラハム宣言」に署名
2020年10月23日 スーダンがイスラエルとの国交正常化発表
2020年11月22日 ネタニヤフ・イスラエル首相が、サウジの未来都市NEOMを事前公表なしに訪問し、ポンペイオ国務長官、ムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)皇太子と会談(注:ファイサル・サウジ外相は会談を否定したが、ネタニヤフ首相は肯定も否定もせず。5時間ほどNEOMに滞在したとみられている)
2020年12月10日 モロッコがイスラエルとの国交正常化発表
2020年12月24日 ポンペイオ国務長官は西サハラ領事館を開設すると発表(当面は、モロッコの米大からの遠隔業務。米国は、12月19日には、西サハラをモロッコ領とする地図を公認)

(参考2)アラブ和平提案(2002年)
置き去りにされるアラブ和平提案(2002年3月、アブドッラー・サウジ皇太子の提案に基づき、アラブ首脳会議で採択)
@イスラエルに対し、全アラブ占領地からの完全撤退、難民問題の公正な解決、および東エルサレムを首都とするパレスチナ独立国家の樹立の受諾を要請。
Aその場合、アラブ諸国は、イスラエルとの紛争終結・和平合意、および正常な関係の構築を実施。
B本提案に対する国際社会への支援要請、および連盟特別委員会の設立要請。

(参考3)アラブ諸国とイスラエルとの国交正常化の歩み
1.エジプト:シナイ半島を回復。1979年から90年まで、エジプトはアラブ連盟加盟資格を停止されていた。
2.ヨルダン:一部領土を交換した。パレスチナ・イスラエル和平協議が開始されたタイミングであり。和平後押しの意味あり。
3.UAE:イスラエルによるヨルダン渓谷の入植地併合を一時的に停止させたとしているが、イスラエル側は放棄したものではないと主張。UAEの資金力とイスラエルのサイバー技術等のマッチングによる経済・安全保障の推進に期待
4.バーレーン:サウジが直ちに、イスラエルとの正常化に踏み切れない中、UAE一国ではなく複数が正常化したと言えるために米、サウジ、UAEが働きかけた結果と考えられる。
5.スーダン:1993年から米国によりテロ支援国家に指定されており、その解除と、サウジ等からの援助が「見返り」と考えられる(注:スーダンはサウジの要請で、イエメンに地上軍を派遣し、援助も受けている)。
6.モロッコ:モロッコが主張する西サハラへのモロッコの領有権(注:領有権をめぐっては、ポリサリオ戦線と対立)をトランプ政権が認めることの見返りに、イスラエルとの関係正常化を受け入れたものと考えられる。因みに、モロッコには、欧州からのユダヤ人が多数居住し、20世紀前半には、20−25万人に達していたとみられる。その多くが、イスラエルに移住した。

(コメント)エジプト、ヨルダンのイスラエルとの国交正常化は、パレスチナ人の土地と権利回復への支援という意味合いがあった。しかし、2020年8月以降のUAE、バーレーン、スーダン、モロッコのイスラエルとの国交正常化は、パレスチナ問題を棚上げして、自国の利益を前面に押し出した結果といえる。UAEのイスラエルとの正常化の動きは、2015年にUAEが国際再生可能エネルギー機関(IRENA)のイスラエル常駐代表部のアブダビ設置を認め、2018年10月アブダビで開催された柔道選手権には、11名のイスラエル選手が参加し、ミリ・レゲヴ文化・スポーツ相が出席する中、金メダルを獲得した柔道選手を讃えて史上初めてイスラエル国歌が演奏された。さらに、2020年5月、6月のパレスチナ側との調整なしにエッテハド機によるコロナ禍での医薬物資のテルアビブへの直接輸送されるなどに象徴的に表れていたが、直接的には、トランプ政権、なかでもクシュナー上級顧問が、UAEの実質的指導者ムハンマド・ビン・ザーイド(通称MBZ)アブダビ皇太子との密接な関係をてこに、米国大統領選前にトランプ政権の外交的成果をアピールするため、親米アラブ諸国指導者にイスラエルとの関係正常化を猛烈に働きかけた結果とみられる。もちろん、UAEの正常化は、湾岸アラブ諸国の大国であるサウジの実質的指導者MBS皇太子のゴーサインがあったことは想像に難くない。MBS自身も、サウジとイスラエルの国交正常化を進めたかったが、サウジが2002年のアラブ和平提案の提唱者であり、旧世代を代表するサルマン国王が首を縦に振らなかったため、MBS皇太子も国交正常化を強行できなかったが、かわりにイスラエル航空機の領空通過を認め、MBS自身、11月22日にサウジの未来都市NEOMで、ポンペイオ国務長官を交え、ネタニヤフ首相と会見する等、サウジも、実質的にはイスラエルと関係を正常化していますとの印象を国内外に発信している。

これに対して、パレスチナ人は、背中からアラブの同胞に刺されたと表現し、不満と失望をあらわにしているものの、アッバース大統領率いるパレスチナ暫定自治政府も有効な対応策を打ち出すことができず、また、パレスチナの民衆も、西岸とガザを分断され、民衆蜂起も武装闘争も行えるような状態ではなくなっている。こうした中、本年11月にはアラファト時代を知り、また、イスラエルとの和平協議にも臨んだことのある国際的にも著名なパレスチナ旧世代であるサイエブ・エラカートPLO執行委員会事務局長がコロナで亡くなり、ハナーン・アシュラーウィ同委員会メンバーも辞表を提出し、表舞台から退場しつつある。マフムード・アッバース・パレスチナ暫定自治政府大統領も、パレスチナ人に何らの展望を開くことができず求心力を失いつつある。代わって10年間UAEに庇護されてきたムハンマド・ダハラーン元ファタハ治安部門トップのような人物が、イスラエルとパレスチナ側の橋渡し役として、台頭するのか見守る必要がある。

パレスチナ難民に対して、最大のドナーであった米国が2018年にUNRWAへの拠出を停止しており、また、その穴を埋めるために支援を継続してきたUAEなどが、イスラエルとの関係正常化後も支援を続けるのか、また、アラブボイコットを停止したUAEほかが、入植地での農産品も含めて、イスラエル産品を輸入することになれば、経済的にもパレスチナの大義が葬り去られることになる。パレスチナ人は、アラブとイスラエルの正常化の動きに対して、有効なカードを所持しておらず、バイデン次期政権に期待するしかないが、バイデン政権にとっても、イスラエルとの関係は重要であり、政権末期にトランプ大統領が置き土産として残した既成事実を4年前に戻すことは容易でない

Posted by 八木 at 15:13 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

在イラク米大使館へのロケット攻撃とトランプ大統領のイランへの警告[2020年12月25日(Fri)]
12月20日、バグダッドの米大使館が居を構えるグリーンゾーンに向けて8発のロケット弾が発射された攻撃(少なくとも3発がゾーン内に着弾)により、イラクの兵士1人が負傷し、米国大使館の敷地と民間の家屋に損害を与えた。
退任間近のドナルド・トランプ米国大統領は、バグダッドの米国大使館に対する攻撃についてイランによるものと非難し、ひとりの米国人でも殺害されれば、イランに責任をとらせるとツイートした。ポンペイオ国務長官もイラン犯行説を主張した。これに対して、イラン政府は、イランは攻撃と無関係であり、米国とその同盟者にこそ非難の矛先が向かられるべきであると反論した。
これは、10月10日にイラクの新イラン民兵組織で構成されているとみられる「抵抗調整機関」がイラクの米軍並びに米国の権益への攻撃停止を宣言した後の最新のロケット攻撃であった。攻撃の犯行声明は出されていない。
(参考1)トランプ大統領ツイート(12月23日)
バグダッドにある我々の大使館が日曜日(12月20日)にいくつかのロケット弾に襲われた。 3つのロケットが発射に失敗した。彼らがどこから来たのか推測してみなさい。イランからである。今、我々はイラクでの米国人に対する追加の攻撃の話を耳にしている。イランに対して友好的で健全なアドバイスを発しておこう。もし1人の米国人が殺された場合、私はイランに責任を負わせる。よく考えてみなさい。
(参考2)ザリーフ外相ツイート(12月24日)
海外で自国の市民が危険にさらされていると主張しても、国内での(コロナによる大量の死者発生という)壊滅的な失敗から注意をそらすことはできない。
(参考3)イラン外務省スポークスマン・サイード・ハティーブザデ(Saeed Khatibzadeh)氏発言(12月24日)
トランプ大統領に、任期の最後の日々において緊張と「危険な冒険主義」を避けるように求める。イラン・イスラム共和国は「賢明でない行動」が招く結果に対して米国政府に責任を負わせる。(ポンペイオ国務長官の発言に対して)従来からのホワイトハウスの非難ゲームの形をとった根拠のない、そして捏造された主張が繰り返されていることは、トランプ大統領が置かれた困難な状況を物語っている。(イランが)繰り返し述べてきたように、外交使節や住宅地への攻撃は拒否しており、この特定のケースでは、緊張を高めようとしている米国自身とそのパートナーや地域の同盟国に非難の指が向けられている。新たな扇動を形成しようとしている。
(参考4)カターイブ・ヒズボラ声明(12月20日)
現時点での「悪の大使館(アメリカ大使館)」への爆撃は制御されていない行動であり、当局は加害者を追跡し、彼らを逮捕しなければならない。米国大使館内の軍事兵舎への無差別攻撃は民間人の生活に深刻な脅威をもたらすため、非難する。
(コメント)10月10日、新イラン系の民兵組織で構成されているとみられるいわゆる「イラク抵抗調整機関」は、その種の最初の宣言で、イラクの外国の利益を標的とする攻撃について、「3年以内に米軍を撤退させる協定の実施を条件として攻撃を停止する」と宣言した。この後、米国ではバイデン候補の大統領選勝利がほぼ確実になり、トランプ大統領が任期終了前に、イランに対して強硬措置に出るのではないかという憶測も出始めている。イランは、大統領選挙前の段階では、イラク国内の米国権益への攻撃は、トランプ大統領の選挙戦に有利に働くのではないかという計算もあり、イラクのシーア派民兵組織に強く自重を求めたのではないかとみられている。そして、現在は、退任間近なトランプ大統領に、イランを叩く口実を与えないことが最優先事項であることは間違いない。そうした中での、今回のグリーンゾーン内の米大使館付近へのロケット攻撃について、米国からテロ組織に指定され、組織のトップであったアブ・マハディ・アルムハンディスPMF副司令官が、ソレイマニIRGCコッズ部隊司令官とともに本年1月3日に米軍のドローン攻撃で殺害されたカターイブ・ヒズボラ(ヒズボラ旅団)でさえ、攻撃を非難しており、今回のロケット攻撃については、どこからも犯行声明は出されていない。トランプ大統領、ポンペイオ国務長官とも、イランを攻撃の責任者として非難したが、このタイミングで米国の権益に攻撃を加えることに最も利益を見出すことができないのがイランであり、イラン犯行説は、根拠に乏しいものの、トランプ大統領が実際にホワイトハウスを去るまでに、予期せぬことが連続して起こっており、年末年始は、米・イラン関係の脈絡においても何が起きてもおかしくない要警戒期間に入ったと考えられる。
(参考)イラク抵抗調整機関による米軍・米権益への攻撃停止宣言
●10月10日、いわゆる「イラク抵抗調整機関」は、その種の最初の宣言で、イラクの外国の利益を標的とする攻撃について、「3年以内に米軍を撤退させる協定の実施を条件として攻撃を停止する」と宣言した。
●地元筋によると、この機関はイラクでは知られておらず、「イラクのヒズボラ旅団」、「アサーイブ・アハル・アルハック」、「ハラカット・アル・ヌジャバ」など、イランに忠実な武装シーア派の組織が含まれているとみられている。
●同機関は声明の中で、「イラクにおける外国軍と利益、特に米軍に対する作戦の停止」を発表した。この措置は、米国がバグダッドを標的としたミサイル攻撃の拡大を懸念して、バグダッドにある大使館を閉鎖する意向であると当局が発表した後に行われた。
●10月12日、イラクのヒズボラKHは、PMFのメンバーが、米国またはイラク政府軍からによるものかにかわらず、「裏切り」とみなす行為にさらされた場合、米国との休戦を取り消すと脅した。KHの軍事スポークスマン、アブー・アリー・アル・アスカリは声明の中で「イラクの抵抗組織は、敵に与えた条件付きの(停戦の)機会は、PMFあるいは、軍事、政治、人民抵抗グループの誰かを裏切った場合、裏切りがムスタファ・アルカーディミ首相の政府から来たのか、それとも米国人とシオニスト(イスラエル)から来たのかにかかわらず、取り消されることになろうと付け加えた。
https://www.al-monitor.com/pulse/originals/2020/12/iraq-embassy-attack-rockets-baghdad.html
https://www.presstv.com/Detail/2020/12/24/641400/Iran-Zarif-US-Trump-Iraq-Baghdad

Posted by 八木 at 15:24 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

UAEによる静かなムスリム・バン(ムスリム入国禁止)[2020年11月27日(Fri)]
2017年1月トランプ大統領の就任後間もなく、イスラム教徒多数7か国の国民の米国入国を制限するいわゆる「ムスリム・バン」がとられたことを記憶されている方が多いと思われるが、アラブ首長国連邦(UAE)が、ムスリム多数の13か国国民に対して、訪問査証と就労査証の申請受付を一時停止したことが明らかになった。この背景を中東メディアの報道からまとめてみる。
1. UAE、イスラエルともコロナ・ウィルス感染拡大の影響を受けており、感染防止策として、今回の措置がとられたと考える人もいるが、感染が拡大している欧州や米国、インドなどは対象となっておらず、コロナの影響と考えるには無理がある。
2.最近のサウジアラビア・ジッダでの2回のイスラム過激派による襲撃事件攻撃に対応していると考える人もいるが、一連の襲撃は、マクロン仏大統領のイスラム教徒への発言を発端になっていると考えられ、UAEがマクロン発言の関連で過激派に狙われると考えるのは無理がある。
(参考)サウジにおける仏を標的にしたとみられるテロ事件
• 10月29日:サウジアラビアの都市ジッダにある仏領事館の外にいた警備員がナイフ攻撃で負傷した。サウジアラビア市民である加害者が逮捕された。
• 11月12日、ISISは、、サウジアラビアのジッダにある非イスラム教徒の墓地で11日に起きた爆発に関して声明を発出し、「十字軍の国の領事」が複数人集まっていた墓地でISの「兵士」が手製の爆弾を爆発させたと主張。この事件では数人が負傷。
3.最も考えられるのは、UAEのイスラエルとの最近の国交正常化である。 以下の展開に関連して、UAE当局が治安措置を講じた可能性が高い。
@UAEのフライトのテルアビブ便就航開始:11月26日、格安航空会社のフライ・ドバイは、ドバイ・テルアビブ間の直行便の運航を開始した。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、初フライトの到着に合わせて催されるテルアビブ・ベングリオン空港での記念式典に参加。フライ・ドバイは1日2便運航する。11月初旬フライ・ドバイのガイス・アル・ガイスCEOは「定期便の開始は経済発展に貢献し、投資のさらなる機会を生み出すであろう」と語っていた(ちなみに、イスラエルの航空会社ElAlとIsrairは両方とも12月に両国間で商用サービスを開始する予定で、アブダビ首長国が運営するエッテハド航空は、2021年3月に週7便定期便を就航する予定。)A特にイスラエル人は、タイムズ・オブ・イスラエルで報じられたように、今週の終わりには早くもUAEへの入国が許可されるためである。これに加えて、両国は間もなく発効するビザ免除プログラムに合意した模様。ビザ免除はイスラエルとその最大の同盟国である米国の間にさえ存在しないものである。一時的に査証発給を禁止された13カ国のうち、11カ国はイスラエルとの関係の正常化を非難している。UAEの人口は約1千万人だが、その9割近くが在留外国人で、中東や南アジア出身者が多数を占める。UAEとイスラエルの関係正常化に不満を抱く者も多いと考えられる。UAE当局が、とくにイスラエル人の入国開始に合わせて、テロが起きないよう予防措置を講じたと考えてもおかしくない。
BUAEは、イスラエルと協力して、アルアクサモスクへのアクセス改善、安全の確保に取り組んでおり、これまでは自由に訪問できなかったイスラム教徒にとっての第三の聖地エルサレム訪問を湾岸諸国人の観光の目玉のひとつにしようとしている。パレスチナ人は、自分たちを置き去りにして、イスラエルと一部アラブ諸国の関係が発展することに反発しており、また、イスラム教徒の中には、UAEがアルアクサモスクをめぐる対応で、主導権をとることに警戒がある。
https://www.aljazeera.com/news/2020/11/26/flydubai-launches-first-scheduled-dubai-tel-aviv-flight
https://www.trtworld.com/opinion/the-uae-s-silent-muslim-ban-politics-or-security-41817

Posted by 八木 at 11:00 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

| 次へ