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トランプ政権のイラン原油輸入国に対する取引「ゼロ」への圧力行使[2019年04月24日(Wed)]
米国ポンペイオ国務長官は、4月22日記者会見し、5月2日をもって、イラン原油輸入を、昨年11月から一時的に認めた8か国を含め、例外的措置を一切認めない旨宣言した。声明文、記者会見の注目点、コメント次のとおり。

1.ポンペイオ国務長官の声明
本日(4月22日)、米国は、イランの石油の既存の輸入者に対して、追加の大幅な削減に例外を認めないと発表した。トランプ政権はイランの石油輸出を歴史的に最低の水準にまで落ち込ませた。そして我々は、世界の石油市場で原油の十分な供給を維持しながら、我々の国家安全保障目標を満たすよう調整された方法で圧力キャンペーンを劇的に加速している。輸入国がイランの原油から他の(ソースの)代替品へと移行するとき、我々は、同盟国とパートナーを支持する。この移行を容易にし、十分な供給を確保するために、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、および他の主要生産者と広範囲かつ生産的な議論を重ねた。これは、米国の(原油)生産量の増加に加えて、エネルギー市場で依然十分な量の原油が供給されているという我々の確信を強調するものである。
本日の発表は、我々の圧力キャンペーンがすでに大きな成功を収めたことに基づいている。我々は、イランの指導者たちが彼らの破壊的な行動を変え、イランの人々の権利を尊重し、そして交渉テーブルに戻るまで、イランの体制に最大の圧力をかけ続けるであろう。
https://www.state.gov/secretary/remarks/2019/04/291272.htm
2.ポンペイオ国務長官記者会見注目点
@米国の措置は、MEK(注:仏に拠点をおくイラン反体制派組織ムジャヒディン・ハルクを指す)を含む外部の特定の団体を支援するものではない。我々は、イランの人々を支援している。
Aカーシム・ソレイマーニ(IRGCコッズ軍司令官)であれ、イランの指導者であれ、あるいはシーア派民兵であれ、米国人に敵対するものは、米国の権益を守るため適切な方法で対応する。
B我々の圧力キャンペーンの結果としてイランは、世界中で害を及ぼす彼らの能力は絶対に明らかに減少させている。例えば、ヒズボラは、定期的に要員に給与を支払えない状況に追いこまれている。
C我々がイランに求めている12項目の要求(下記参考参照)が満たされれば、イランを通常の国として交渉することが可能になる。
Dイランとの原油取引禁止に従わなければ、制裁を受けることになる。原油取引には、ほとんどの場合、金融市場に参加する必要があるからである(注:そうしなければ、ドル取引ができなくなり、また、国際的な決済システムからも締め出されることになるという意味)。
E(原油取引に関する8か国に与えた)例外措置は、5月1日を超えて継続しない

3.コメント
イランの国家収入の4割は、石油からもたらされているとみられる。イランはイランの原油輸出は、昨年4月の日量250万バレルから本年3月の日量約100万バレルまで落ち込んでおり、先般の米国務長官の記者説明でも、従来取引のあった23か国がすでに原油輸入ゼロになったとされる。昨年11月に米国から180日間の制裁免除を認められた主要原油輸入国8カ国は、中国、インド、トルコ、日本、韓国とギリシャ、イタリア、台湾。うち、ギリシャ、イタリア、台湾はすでにイランの石油輸入をゼロに減らしている。また、韓国と日本は輸入ゼロに向けての対応をとったとされる。残りは、トルコ、中国とインド。中国とインドはイラン原油の最大の輸入国であり、トルコを含む3か国の対応が最も注目されている。中国は、外務省スポークスマンが、中国は一貫して米国の一方的制裁の実施に反対し、米国は、その管轄権限外にまで手を伸ばしすぎている、と批判している。トルコも、米国の一方的な措置を非難し、そのままの形で従うことは拒否している。一方、インドは代替輸入先への切り替えを検討中との報道がある。原油の安定供給、価格安定の観点からは、米国は、サウジおよびUAEとの間でイラン減少分の補填につき、協議を開始していることを明らかにしている。米国は、先日、イランの国家機関であるイスラム革命防衛隊全体を、国家機関に対するものとしては史上はじめて、テロ支援機関に指定した。そして、5月から世界のあらゆる国々に対して、イランの国家収入の基本である原油の輸入をゼロにするか、さもなければ、それらの国々が米国の制裁を受けると宣言した。ポンペイオ長官は、イランの国外にいる特定勢力を支援しているわけではなく、イラン国民を支援していると説明しており、体制転覆を目指しているわけではないとしているが、以下の12項目は、イランが現体制のままで受け入れることはありえず、そうであるとすれば、米国は、イランの現体制が崩壊するまで、世界中を巻き込んで制裁を強化すると宣言したのと同様であると認識される。中国は、このトランプ政権の理屈を受け入れれば、自分たちも標的にされかねないことを認識しており、原油の自国通貨や、独自の決済システムを利用し、米国の制裁を回避する方向に動くものとみられる。

(参考)米国がイランに突き付けている12項目の要求(2018年5月21日ヘリテージ財団の会合におけるポンペイオ国務長官発言)
@イランの核兵器プログラムのこれまでの軍事的側面について完全に説明できるようにするとともに、そのような活動を永久に、かつ恒久的に検証可能な形で放棄することを国際原子力機関(IAEA)に宣言する。
A濃縮を停止し、重水炉の閉鎖を含めプルトニウム再処理を決して追求しない。
BIAEAに、イラン国内の全てのサイトへの無条件のアクセスを認める。
C弾道ミサイルの拡散を止め、核弾頭搭載ミサイルシステムのさらなる打ち上げや開発を停止する。
Dすべての米国市民ならびに米国のパートナーおよび同盟国の市民を解放する。
Eヒスボラ、ハマース、イスラム聖戦(イスラミック・ジハード)を含む中東の「テロリスト」グループへの支援を止める。
Fイラク政府の主権を尊重し、シーア派民兵の武装解除、解体、再統合を認める。
G反体制ホーシー派に対する軍事的支援を終了し、イエメンにおける平和的で政治的な解決に向けて努力する。
Hイランの指揮下にあるすべての部隊をシリア全土から撤退させる。
Iアフガニスタンならびに(中東)地域においてタリバーンやその他の他の「テロリスト」の支援を終了し、アルカーイダの幹部指導者に庇護を与えることをやめさせる。
J世界中の「テロリスト」と「武装」同盟者に対するイスラム革命防衛隊コッズ軍の支援を終了させる。
Kイスラエルを破壊するとの脅しや、サウジアラビアやアラブ首長国連邦に向けてのミサイルの発射、国際的な輸送への脅威ならびに破壊的なサイバー攻撃を含む、多くが同盟国である近隣諸国に対する脅迫行為を終了させる。

Posted by 八木 at 15:28 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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