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サウジ・ウオッチャーの着眼点(空港セレモニーの重要性)[2019年03月08日(Fri)]
3月5日付英国ガーディアン紙電子版のステファニー・ケルシュゲッセナー(ワシントンDC駐在)、ニック・ホプキンス(ロンドン駐在)両名執筆のレポートは、外部にはほどんど明らかになることのないサウジ王室内でサルマン国王と息子のムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)皇太子の関係に微妙な緊張が走った可能性を示唆している。同報告は、サルマン国王が2月25日に、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されたアラブ連盟・EU首脳会議出席を終えてリヤドに帰着した際、出迎え者の中にMBS皇太子の姿が見当たらなかったことに着目して、国王・皇太子の関係に亀裂が生じた可能性に言及した。空港送迎に誰が対応するのかという形式については、欧米や日本であれば、標準的なプロトコールで対応し、さほど問題になることはないが、サウジアラビアについては、非常に重要な意味を持っている。いくつか例をあげよう。
1.2016年4月20日のオバマ大統領のサウジ訪問:リヤドの空港に出迎えたトップは、リヤド州知事で、国王も皇太子も副皇太子も外務大臣も出迎えることはなかった。サウジのTVも外国要人の来訪の際、通例になっている空港到着時の様子を放映することはなかった。国王は、翌21日、米・GCC首脳会議に出席する予定のGCC首脳については、自ら空港に出向いて、迎えているにもかかわらず、米大統領の出迎えを省略した。当時、サウジは、2015年7月米国がサウジが懸念するイランとの核合意(JCPOA)に踏み切ったこと、シリアのアサド政権の化学兵器使用疑惑で、オバマ政権がアサド政権崩壊をもたらす可能性のある軍事オプションをとることを躊躇ったこと、9.11同時多発テロに関連して、テロ被害者や犠牲者家族がサウジ政府に賠償等を求めて訴えることを可能にする「テロ支援国に対する正義法(JASTA)」法案が廃案になるようオバマ大統領に圧力をかける必要があったこと等を背景に、サウジ政府がオバマ大統領の中東政策に大きな不満を抱いていることを、空港出迎えのレベルを落とすことでデモンストレートしたとみられている。
2.2017年5月20日のトランプ大統領サウジ訪問:トランプ大統領は、就任後初の外遊先にサウジを選択し、同日夫人同伴で、大統領専用機でリヤドに到着した。空港には赤じゅうたんに沿って儀仗兵が並び、サルマン国王が大統領夫妻を出迎えた。サウジ指導部が、トランプ大統領との公私の関係構築に如何に期待しているかを、空港行事が物語っていた。
3.2017年11月3日のハリーリ・レバノン首相来訪:レバノンのサアド・ハリーリ首相は、サウジからの訪問の要請に応じて、同日リヤドの空港に到着したが、空港でサウジ側出迎え者が誰もいない異変に気付いた。外国の政府賓客の来訪に際して、空港ではサウジ王族、政府高官が出迎えるのが通例である。ハリーリ首相は、この状況に自分とサウジ政府との関係でなにか重大な問題が生じていることを空港で悟った。翌4日、ハリーリ首相は訪問先のサウジからTV演説で、レバノン首相ポストを突然辞任すると発表し、マクロン仏大統領が介入するまで、軟禁状態に置かれていたとされる。ハリーリ首相はレバノン帰国後、辞意を撤回した。
4.2006年4月5日のサウジ皇太子訪日:日本もサウジとの関係では破格の空港対応を行っている。同日スルタン・サウジ皇太子が訪日した際は、羽田空港では皇太子殿下、日・サウジ議連の会長橋本龍太郎元首相、麻生太郎外相という超豪華陣がサウジ皇太子を出迎えた
5.2017年3月12日のサルマン国王訪日:サウジ国王としては46年ぶりにサルマン国王が訪日した。政府専用機からエスカレーター式タラップで羽田の地を踏んだ国王出迎えたのは、皇太子殿下であった。国王は1000名の随行員を従えていたと報じられている。

ガーディアン報告には、ほかにも注目点がある。ひとつは、エジプト訪問にあたってサルマン国王は、警護要員を、MBS皇太子に近い要員ではなく内務省の特に国王に忠実な要員に入れ替えたとされること、国王不在中に国王代行であるMBS皇太子が、2つの重要な王宮令を発しており、ひとつは、王女リーマ・ビント・スルタン駐米大使の発令であり、ふたつめは、MBS皇太子の弟で国王の息子である駐米大使であったハーリド・ビン・サルマン王子の国防副大臣発令(MBS皇太子は国防大臣も兼任)であった。ガーディアン報告は、この人事異動はサルマン国王に相談なく発出され、特にハーリド王子の人事は、昇格を急ぎすぎているとして国王の怒りを買ったとされる。国王と皇太子の関係がこれをもって危うくなっているとみるのは早急すぎ、サウジの政策立案、執行の実質的トップにあるMBS皇太子も、みずからの決定の正当性を国王の権威に依存していることは間違いなく、国王と皇太子の相互依存関係は当面続くのは間違いない。しかし、2017年6月下旬に1夜にして、当時皇太子だったムハンマド・ビン・ナーイフ(通称MBN)殿下が解任された例からも、サウジ・ウオッチャーは、王室内のどのように一見小さく見える変化からも、その意味を懸命に探ろうとしている
https://www.theguardian.com/world/2019/mar/05/fears-grow-of-rift-between-saudi-king-salman-and-crown-prince-mohammed-bin-salman

Posted by 八木 at 11:55 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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