ハマスによる「23年10月7日襲撃」に関するUAE大統領からネタニヤフ首相への事前警告が発せられていたとの著書出版の衝撃[2026年09月09日(Wed)]
26年9月7日のイスラエルのハアレツ紙報道をうけたミドル・イースト・アイ(Middle East Eye)報道によれば、シュロミ・エルダル氏とルース・ユヴァル氏による近刊『Hostages: 843 Days of Abandonment(人質:見捨てられた843日間)』の中で明らかにされた2023年10月7日のハマスによる越境襲撃の背景、ならびにアラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド(通称MBZ)大統領からネタニヤフ首相にあてた「奇襲作戦」に関する事前の警告と、ネタニヤフ首相が、それを国防省や情報部幹部にも伝えておらず握り潰していたとみられることが波紋を広げている。ネタニヤフ首相は、MBZ大統領からの45分間の電話による事前警告の存在を完全否定している。
電話会談に同席した、ガザ出身のUAE指導者の顧問は、「MBZ大統領は、自身の分析として、(ハマスの軍事部門指導者ヤヒヤ・)シンワルが『重大な事態』に向けて準備を進めていると説明し、ネタニヤフ首相に対し、イスラエルは備えを固めるべきだと伝えた。これに対してネタニヤフ首相は、MBZ大統領に対し、イスラエルはいかなる事態にも備えている、と答えたとされる。
ハアレツ紙によると、シンワル指導者は2023年9月初旬、イスラエルの諜報機関から「コール・アイズ(Coal Eyes)」というコードネームで呼ばれていたファタハ(パレスチナ解放機構の主流派)の仲介者に対し、イスラエルは「地震」のような衝撃に見舞われるだろうと語っていた。当時シンワル指導者は、ガザに拘束されているイスラエル人と引き換えにパレスチナ人捕虜を釈放することを承認する委員会会合を、ネタニヤフ首相が繰り返し延期したことに苛立ちを募らせていたという。ハマスは数ヶ月にわたり、ガザ封鎖の段階的な解除、同地区における経済的機会の拡大、そして2014年・2015年からガザに拘束されている4人のイスラエル人(兵士2人の遺体を含む)とパレスチナ人捕虜との交換を軸とした協議を仲介者と進めていた。ハアレツ紙によると、シンワル指導者uから「彼ら(イスラエル)のために巨大なサプライズを準備している」と告げられた際、「コール・アイズ」は動揺した様子でその場を後にし、その後、「コール・アイズ」は、ガザからアブダビに移動し、MBZ大統領の側近として仕えていたパレスチナ人に相談することを決めたと、同紙は報じている。 2023年9月中旬のフォローアップ会合で、シンワル指導者は「彼らにこう伝えてくれ。私は『あらゆる驚きを凌駕する最大の奇襲』――恐るべき作戦、並外れた何か――を準備していると」と語ったと伝えられている。こうしたシンワル指導者の脅しはイスラエル当局者とMBZ大統領の双方に伝えられ、MBZ大統領がネタニヤフ首相に対して行った警告の背景の一つとなった。
ハアレツ紙は、「コール・アイズ(Coal Eyes)」という人物が信頼できる情報源であり、ハマスとシン・ベト(イスラエル国内治安機関)の双方に受け入れられる存在だったと報じた。ミドル・イースト・アイ(Middle East Eye)が情報筋から得た話によると、「コール・アイズ」(「ブラック・アイズ」とも呼ばれる)の正体は、ファタハ運動の有力指導者であるスフィヤン・アブー・ザイダ氏で、同氏はガザ地区のジャバリヤ難民キャンプ出身で、ファタハ革命評議会のメンバーで、彼は2005年2月からハマス政権が発足するまで、パレスチナ自治政府において捕虜・釈放被拘束者問題担当大臣を務めた。
ハマスによる攻撃の数日前、エジプトの諜報機関もネタニヤフ首相に対し、攻撃が計画されていると警告していたことは、以前からイスラエルや各国のメディアで報じられてきた。イスラエルの日刊紙イェディオト・アハロノトによると、当時のエジプト諜報機関トップであるアッバス・カメル氏はネタニヤフ首相に対し、「異常な事態、恐ろしい作戦」について警告したとされている。
https://www.middleeasteye.net/news/uae-president-warned-netanyahu-major-hamas-operation-ahead-7-october
(コメント)2023年10月7日に発生したハマスの越境攻撃によって、約1200名が犠牲になり、251名が人質となってハマス側に長期に拘束され、徐々に解放された人もいるが、25年10月のトランプ和平提案成立後に生還した人質は20名に留まった。長らくのイスラエルとパレスチナの紛争において、イスラエルは、自国民が襲撃されれば、10倍返しするといわれてきた。これまで、ガザのパレスチナ人の死者は7万3千人を数え、60倍返しとなっている。こうした中、イスラエル議会選挙が10月27日に迫ってきている。ネタニヤフ首相は、現時点で完全否定しているものの、MBZ大統領が直接、ネタニヤフ首相に重大な襲撃の可能性を伝えたのであれば、MBZ大統領も情報源が「コール・アイズ」というコードネームの情報源から大統領側近に伝えられた情報の信ぴょう性が高いとみなしてネタニヤフ首相に警告したと考えるのが合理的である。今回、ハアレツ紙が報じた記事では、シンワル軍事部門指導者は、捕虜交換が進まないことにいら立ち、パレスチナとイスラエル側双方に警告を発していたということで、UAE情報部が独自につかんだ機密ではなく、それは、エジプト諜報機関もイスラエル側に警告を発していたということで、ハマス内部でそれなりの目立った準備行動があったことを踏まえての展開であったと考えられる。これを裏付けるようにイスラエル側からも、事前にハマスが、越境準備などの訓練を行っていたことが明らかになってきている。
MBZ大統領からのネタニヤフ首相への警告が事実であったとすれば、ネタニヤフ首相が特別の対策を講じなかったのは、事前に同様の情報を得ていたという慢心からなのか、ハマスが実際に行動を起こすことはないと高をくくっていたからなのか、仮にハマスが行動を起こしても、完全に叩き潰せると考えていたのかわからないものの、結果として、ネタニヤフ首相は、未然に襲撃を防ぐことに失敗し、その失敗を覆い隠すために、ハマス指導者の24年7月のハニーヤのテヘランでの爆殺、24年10月のガザでのヤヒヤ・シンワル指導者の殺害、(おそらく24年7月までの)カッサム旅団のムハンマド・ディーフ司令官の殺害だけでなく、24年9月のヒズボラ指導者のナスラッラー書記長、米国を巻き込んだ26年2月28日のイランの最高指導者アリーハメネイ師ほか治安機関幹部の殺害へと発展させ、イスラエル首相として「安全なイスラエル」を実現したと国民にアピールしてきたものとみられる。しかし、このタイミングで、「人質:見捨てられた843日間」が出版され、ネタニヤフ首相が、MBZ大統領の警告を真摯にとりあわず、ガザ襲撃に必要な対策を講じず、結果として多くの犠牲者を出すことにつながったと多くの国民が信じれば、10月27日の選挙結果がどのようになるのかは想像に難くない。
電話会談に同席した、ガザ出身のUAE指導者の顧問は、「MBZ大統領は、自身の分析として、(ハマスの軍事部門指導者ヤヒヤ・)シンワルが『重大な事態』に向けて準備を進めていると説明し、ネタニヤフ首相に対し、イスラエルは備えを固めるべきだと伝えた。これに対してネタニヤフ首相は、MBZ大統領に対し、イスラエルはいかなる事態にも備えている、と答えたとされる。
ハアレツ紙によると、シンワル指導者は2023年9月初旬、イスラエルの諜報機関から「コール・アイズ(Coal Eyes)」というコードネームで呼ばれていたファタハ(パレスチナ解放機構の主流派)の仲介者に対し、イスラエルは「地震」のような衝撃に見舞われるだろうと語っていた。当時シンワル指導者は、ガザに拘束されているイスラエル人と引き換えにパレスチナ人捕虜を釈放することを承認する委員会会合を、ネタニヤフ首相が繰り返し延期したことに苛立ちを募らせていたという。ハマスは数ヶ月にわたり、ガザ封鎖の段階的な解除、同地区における経済的機会の拡大、そして2014年・2015年からガザに拘束されている4人のイスラエル人(兵士2人の遺体を含む)とパレスチナ人捕虜との交換を軸とした協議を仲介者と進めていた。ハアレツ紙によると、シンワル指導者uから「彼ら(イスラエル)のために巨大なサプライズを準備している」と告げられた際、「コール・アイズ」は動揺した様子でその場を後にし、その後、「コール・アイズ」は、ガザからアブダビに移動し、MBZ大統領の側近として仕えていたパレスチナ人に相談することを決めたと、同紙は報じている。 2023年9月中旬のフォローアップ会合で、シンワル指導者は「彼らにこう伝えてくれ。私は『あらゆる驚きを凌駕する最大の奇襲』――恐るべき作戦、並外れた何か――を準備していると」と語ったと伝えられている。こうしたシンワル指導者の脅しはイスラエル当局者とMBZ大統領の双方に伝えられ、MBZ大統領がネタニヤフ首相に対して行った警告の背景の一つとなった。
ハアレツ紙は、「コール・アイズ(Coal Eyes)」という人物が信頼できる情報源であり、ハマスとシン・ベト(イスラエル国内治安機関)の双方に受け入れられる存在だったと報じた。ミドル・イースト・アイ(Middle East Eye)が情報筋から得た話によると、「コール・アイズ」(「ブラック・アイズ」とも呼ばれる)の正体は、ファタハ運動の有力指導者であるスフィヤン・アブー・ザイダ氏で、同氏はガザ地区のジャバリヤ難民キャンプ出身で、ファタハ革命評議会のメンバーで、彼は2005年2月からハマス政権が発足するまで、パレスチナ自治政府において捕虜・釈放被拘束者問題担当大臣を務めた。
ハマスによる攻撃の数日前、エジプトの諜報機関もネタニヤフ首相に対し、攻撃が計画されていると警告していたことは、以前からイスラエルや各国のメディアで報じられてきた。イスラエルの日刊紙イェディオト・アハロノトによると、当時のエジプト諜報機関トップであるアッバス・カメル氏はネタニヤフ首相に対し、「異常な事態、恐ろしい作戦」について警告したとされている。
https://www.middleeasteye.net/news/uae-president-warned-netanyahu-major-hamas-operation-ahead-7-october
(コメント)2023年10月7日に発生したハマスの越境攻撃によって、約1200名が犠牲になり、251名が人質となってハマス側に長期に拘束され、徐々に解放された人もいるが、25年10月のトランプ和平提案成立後に生還した人質は20名に留まった。長らくのイスラエルとパレスチナの紛争において、イスラエルは、自国民が襲撃されれば、10倍返しするといわれてきた。これまで、ガザのパレスチナ人の死者は7万3千人を数え、60倍返しとなっている。こうした中、イスラエル議会選挙が10月27日に迫ってきている。ネタニヤフ首相は、現時点で完全否定しているものの、MBZ大統領が直接、ネタニヤフ首相に重大な襲撃の可能性を伝えたのであれば、MBZ大統領も情報源が「コール・アイズ」というコードネームの情報源から大統領側近に伝えられた情報の信ぴょう性が高いとみなしてネタニヤフ首相に警告したと考えるのが合理的である。今回、ハアレツ紙が報じた記事では、シンワル軍事部門指導者は、捕虜交換が進まないことにいら立ち、パレスチナとイスラエル側双方に警告を発していたということで、UAE情報部が独自につかんだ機密ではなく、それは、エジプト諜報機関もイスラエル側に警告を発していたということで、ハマス内部でそれなりの目立った準備行動があったことを踏まえての展開であったと考えられる。これを裏付けるようにイスラエル側からも、事前にハマスが、越境準備などの訓練を行っていたことが明らかになってきている。
MBZ大統領からのネタニヤフ首相への警告が事実であったとすれば、ネタニヤフ首相が特別の対策を講じなかったのは、事前に同様の情報を得ていたという慢心からなのか、ハマスが実際に行動を起こすことはないと高をくくっていたからなのか、仮にハマスが行動を起こしても、完全に叩き潰せると考えていたのかわからないものの、結果として、ネタニヤフ首相は、未然に襲撃を防ぐことに失敗し、その失敗を覆い隠すために、ハマス指導者の24年7月のハニーヤのテヘランでの爆殺、24年10月のガザでのヤヒヤ・シンワル指導者の殺害、(おそらく24年7月までの)カッサム旅団のムハンマド・ディーフ司令官の殺害だけでなく、24年9月のヒズボラ指導者のナスラッラー書記長、米国を巻き込んだ26年2月28日のイランの最高指導者アリーハメネイ師ほか治安機関幹部の殺害へと発展させ、イスラエル首相として「安全なイスラエル」を実現したと国民にアピールしてきたものとみられる。しかし、このタイミングで、「人質:見捨てられた843日間」が出版され、ネタニヤフ首相が、MBZ大統領の警告を真摯にとりあわず、ガザ襲撃に必要な対策を講じず、結果として多くの犠牲者を出すことにつながったと多くの国民が信じれば、10月27日の選挙結果がどのようになるのかは想像に難くない。
Posted by 八木 at 11:06 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)



