シリアのクルド人有力政治家サーレハ・ムスリム元PYD共同議長の逝去にあたって[2026年03月12日(Thu)]
2026年3月11日シリアのクルド政党である民主統一党(PYD)の元共同議長で共同統治評議会メンバーのサーレハ・ムスリム氏が、療養先のイラククルディスタン地区エルビルで腎不全のため75歳で逝去した。
1.サーレハ・ムスリム元PYD共同議長の経歴(ANF通信記事)
サーレハ・ムスリム・ムハンマド氏は1951年3月3日、コバネ(アラブ名アイン・アルアラブ)で生まれた。高校までロジャヴァ(クルド語で西クルディスタン)とシリアで教育を受け、その後イスタンブール工科大学に進学し、1977年に卒業した。一時期、サウジアラビアに勤務していた。強い同胞愛を持つムスリム氏は、1983年にPKK創始者アブドッラー・オジャラン氏を訪ねた。2003年のシリア北東部カミシュロ(カミシリ)での虐殺事件後、バッシャール・アル・アサド大統領に宛てた手紙を理由に逮捕され、7ヶ月間投獄された。釈放後、当時非合法の2003年に新設された民主統一党(PYD)に入党し、執行委員会メンバーとなった。2010年にはPYDの共同議長に選出された。その間、彼はトルコ政府関係者と会談し、シリア情勢の将来について交渉した。
2017年9月、彼は民主社会運動(TEV-DEM)の外交部長を務めた。PYD共同議長およびTEV-DEM内での役割において、彼は国内外での活動を通じて重要な役割を担うようになった。
2022年3月19日に開催されたPYD第9回大会において、彼はPYD共同議長に再選された。2年後の第10回大会において、彼は共同議長の地位を譲り、PYD共同議長評議会のメンバーとしての役割を継続した。
サーレハ・ムスリムは、腎不全の治療を受けていたイラクのクルディスタン地区エルビルで、2026年3月11日に亡くなった。
https://english.anf-news.com/rojava-syria/salih-muslim-passes-away-84327
2.PYD(Democratic Union Party):クルド民主統一党。2003年設立。PKKのオジャラン党首の思想を支持し、PYDの幹部の中には、一時期PKKの庇護を受けていた者もおり、トルコからは、PKKと同根のテロ組織とみなされてきた。男女が代表を分け合う形をとっている。元共同代表のサーレハ・ムスリムは、2010年〜2017年まで代表を務めた。2015年2月オランド大統領との会見に参加したアシヤ・アブドッラーも前共同代表である。軍事部門は、YPG(クルド人民防衛隊)とその女性部隊YPJである。YPG、YPJは、2014年10月にクルド色を薄めて、ISISと戦うために設立されたシリア民主軍(SDF)の主力部隊で、シリアからのISIS駆逐までに約1万1千人の犠牲者を出したとされる。
3.サーレハ・ムスリム、アサド政権崩壊直後のインタビュー(2024年12月12日medyanews報道)
(Q)あなたは、ISISへの抵抗の象徴である都市コバニの解放に際して、計り知れない損失を個人的に経験されました。当時の経験は、シリアにおける平和と和解に向けたあなたの現在のビジョンにどのように影響を与えていますか?この不確実な時代において、コバニの人々、そしてより広範なクルド人の方々に、どのようなメッセージをお持ちですか?
(A)私たちクルド人は、100年、1世紀にもわたって戦争によって翻弄されてきました。そして、誰もが私たちクルド人を滅ぼそうとしました。彼らは私たちの存在を認めようとしませんでした。そしてもちろん、この闘争を経て、今では誰もがクルド人とクルド人の存在、そして彼らが民主的な権利を持っていることを知っています。もちろん、その代償は非常に高く、若者、シリア人、そしてクルド人の血が流されました。そしてもちろん、私たちの家族もこの闘争の代償を払った家族の一つです。これ以上の犠牲や犠牲者を求めないのであれば、私たちはその終焉、つまり平和、平和の中で生きる道を見つけなければなりません。他の人たち、つまりシリア人たちが共存を受け入れるなら、問題はないでしょう。私たちは代償を払ってきたと思います。私たちが払ってきた代償は、シリアに自由と民主主義をもたらすのに十分なものです。そして、私たちが近いうちにそれを実現できることを願っています。
https://medyanews.net/exclusive-interview-salih-muslim-co-chair-of-syrias-democratic-unity-party/
4.社会契約憲章主要項目(抜粋)2023年12月改訂
第4条:DAANESは、自由かつ平等な参加に基づき、民主的な選挙を通じて、人民及び集団の意思に基づき、そのその正当性を確立する。
第5条: DAANESは、シリア民主共和国の一部である。
第6条・第7条:北東シリアの地理的領域におけるすべての言語は平等。アラビア語、クルド語、シリア語(古代アラム語)は、 DAANESにおける公用語である。
第16条:DAANESは、クルド人の政治的、経済的、文化的権利を保証し、クルド地域の歴史的特徴と本来の人口構造を維持する。
第20条:天然資源は社会の所有物。それらは、地域のニーズに応じて、公正な方法で利用および投資される
第24条:DAANESは、各分野において共同議長制を採用し、これを男女平等の代表の原則とみなす
第72条:すべての市民が正当な防衛に参加することは、DAANESおよびシリア民主共和国の地域に対するあらゆる攻撃を抑止する権利であり義務である。
第91条:北東シリア地域は、ジャズィーラ、デリゾール、ラッカ、ユーフラテス、マンビジ、アフリン/シェバ、タブカの7つのカントン(canton:行政区の意味)からなる。
第96条:執行評議会は、DAANESの名において外交活動を行う。
第111条:自衛は生命の保証と継続であり、生存を守る権利と義務に基づき、北シリア及び東シリアにおいて、正当な自衛意識と組織化された民主主義社会に基づく自衛体制を次の方法で確立することが必要
@コミュニティ防衛部隊、ASDF、B女性防衛部隊(SDF内で自律的に組織)、C情報局、D内務治安部隊(アサイシュ)
5.2026年1月18日、シリア政府とクルド人主導のシリア民主軍(SDF)は、シリア北東部における激しい戦闘を終結させるため、包括的な停戦と軍・行政の完全な統合に関する14項目の合意に達した。
シリア暫定政府とSDFの14項目の合意テキスト(2026年1月18日)
第一に、シリア政府軍とシリア民主軍(SDF)間の全ての戦線及び接触線において、即時かつ包括的な停戦を実施し、SDFの全部隊をユーフラテス川東岸に撤退させること。これは、再展開の予備段階として実施する。
第二に、デリゾール県及びラッカ県の行政及び軍事権限をシリア政府に全面的かつ即時に移譲する。これには、全ての民間機関及び施設の移管、並びにシリア国家の専門省庁における現職員の正式職員化に関する法令の即時発布が含まれる。
第三に、ハサカ県内の全ての民間機関をシリア国家の機関及び行政機構に統合する。
第四に、シリア政府は、地域内の全ての国境検問所、油田、ガス田を管理下に置く。資源のシリア国家への返還を確実にするため、正規軍による警備を確保する。ただし、クルド人居住地域という特殊な状況を考慮する。
第五に、SDF(シリア民主軍)の軍人および治安要員全員を、必要な治安審査を経て「個別に」シリア国防省および内務省の組織に完全統合し、軍階級、財政的権利、および兵站要件を付与する。
第六に、シリア民主軍(SDF)指導部は、旧政権残党をSDFの部隊に組み入れることを控え、シリア北東部地域に駐留する旧政権残党の将校名簿を提供することを約束する。
第七に、政治参加と地方代表権の保証として、ハサカ県知事に就任する候補者を任命する大統領令を発布する。
第八に、アイン・アル・アラブ(コバニ)市から大規模な軍の駐留を撤去し、同市住民から構成される治安部隊を編成し、シリア内務省に行政上所属する地方警察を維持する。
第九に、ISIS捕虜およびキャンプのファイルを管理する行政機関、ならびにこれらの施設の警備を担当する部隊をシリア政府と統合し、シリア政府がそれらに対する完全な法的および安全保障上の責任を負うこと。
第十に、国民的パートナーシップを確保するため、SDF指導部が提出した、中央政府機構における軍事、安全保障、および文民の高官職に就く候補者リストを採択すること。
第十一に、クルド人の文化的および言語的権利の承認、ならびに未解決の権利に基づく問題および民事上の問題(未登録者/無国籍者、過去数十年間に蓄積された財産権請求を含む)への対処を規定する2026年大統領令第13号を歓迎すること。
第十二に、SDFは、主権と地域の安定を確保するため、シリア・アラブ共和国の国境外にいるシリア人以外のすべてのクルディスタン労働者党(PKK)指導者およびメンバーの排除にコミットする。
第十三に、シリア政府は、国際連合の活動メンバーとして、米国と連携し、地域の安全と安定を確保するため、テロリズム(ISIS)との闘いを継続することを約束する。
第十四に、アフリンおよびシェイク・マクスウド地域の住民の安全かつ尊厳ある帰還に関する合意に向けて取り組む。
https://peoplesdispatch.org/2026/01/29/reached-but-breached-the-ceasefire-between-syrias-interim-government-and-sdf/
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/85/The_January_2026_Ceasefire_and_Full_Integration_Agreement_between_the_Syrian_Government_and_the_Syrian_Democratic_Forces_%28English%29.pdf
(コメント)サーレハ・ムスリム元PYD共同議長は、3月11日、イラク・クルディスタン自治区のエルビルで闘病中、腎不全で亡くなった。クルド人勢力の軍事部門の顔は、SDFを率いるマズルーム・アブディ司令官であるが、ムスリム氏は政治部門の有力者として、内外に広く知られた人物であった。シリア内戦の最中、同氏の指導の下、2011年12月 PYD主導の「民主的社会実現にむけての運動(TEV-DEM)」が設立され、2013年11月3つのcanton(ジャジーラ、コバニ、アフリン)で自治統治開始された。2015年12月 SDFの政治部門であるシリア民主評議会(SDC)が創設され、2016年3月、Rojava/北シリア民主連邦統治宣言された。2018年7月16日には、北東部シリア自治行政区(AANES)が設立された(その後、DAANES北東部シリア民主自治行政区に改名)。統治機構の憲法にあたる社会契約憲章は、すべての言語が平等であることや、男女共同代表制など、シリアの民主化に必要な事項を規定している。これらのシリア北東部における民主的自治統治機構の整備の推進役であったのが、サーレハ・ムスリム氏である。SDFのアブディ司令官は、シリア暫定自治政府シャラア暫定大統領との間で、2026年1月18日、自治統治機構とSDFのシリア暫定政権への統合に合意した。この合意では、シリア北東部での自治統治や連邦制は認められず、SDFもイラクのクルド人勢力が有するペシュメルガのような、独特の地位は与えられなかった。クルド人の文民や軍人への一定の配慮はみられるものの、シリアのクルド人が内戦期間中に築いてきたTEV-DEMは、その役割を終了することになる。今回の合意には、クルド人を中心とする勢力に自治統治を認めることを拒否するトルコ政府の意向と、ISISとの戦闘中SDFを利用してきた米政府が、もはやクルド人勢力への関心を失ってきたことを意味する。サーレハ・ムスリムが24年12月12日のインタービューで答えているように、多くの犠牲を払ってきたクルド人勢力が、新たな体制の中で、平和裡に政治的権利を享受できるようになることを国際社会は監視してほしいと願うばかりである。
1.サーレハ・ムスリム元PYD共同議長の経歴(ANF通信記事)
サーレハ・ムスリム・ムハンマド氏は1951年3月3日、コバネ(アラブ名アイン・アルアラブ)で生まれた。高校までロジャヴァ(クルド語で西クルディスタン)とシリアで教育を受け、その後イスタンブール工科大学に進学し、1977年に卒業した。一時期、サウジアラビアに勤務していた。強い同胞愛を持つムスリム氏は、1983年にPKK創始者アブドッラー・オジャラン氏を訪ねた。2003年のシリア北東部カミシュロ(カミシリ)での虐殺事件後、バッシャール・アル・アサド大統領に宛てた手紙を理由に逮捕され、7ヶ月間投獄された。釈放後、当時非合法の2003年に新設された民主統一党(PYD)に入党し、執行委員会メンバーとなった。2010年にはPYDの共同議長に選出された。その間、彼はトルコ政府関係者と会談し、シリア情勢の将来について交渉した。
2017年9月、彼は民主社会運動(TEV-DEM)の外交部長を務めた。PYD共同議長およびTEV-DEM内での役割において、彼は国内外での活動を通じて重要な役割を担うようになった。
2022年3月19日に開催されたPYD第9回大会において、彼はPYD共同議長に再選された。2年後の第10回大会において、彼は共同議長の地位を譲り、PYD共同議長評議会のメンバーとしての役割を継続した。
サーレハ・ムスリムは、腎不全の治療を受けていたイラクのクルディスタン地区エルビルで、2026年3月11日に亡くなった。
https://english.anf-news.com/rojava-syria/salih-muslim-passes-away-84327
2.PYD(Democratic Union Party):クルド民主統一党。2003年設立。PKKのオジャラン党首の思想を支持し、PYDの幹部の中には、一時期PKKの庇護を受けていた者もおり、トルコからは、PKKと同根のテロ組織とみなされてきた。男女が代表を分け合う形をとっている。元共同代表のサーレハ・ムスリムは、2010年〜2017年まで代表を務めた。2015年2月オランド大統領との会見に参加したアシヤ・アブドッラーも前共同代表である。軍事部門は、YPG(クルド人民防衛隊)とその女性部隊YPJである。YPG、YPJは、2014年10月にクルド色を薄めて、ISISと戦うために設立されたシリア民主軍(SDF)の主力部隊で、シリアからのISIS駆逐までに約1万1千人の犠牲者を出したとされる。
3.サーレハ・ムスリム、アサド政権崩壊直後のインタビュー(2024年12月12日medyanews報道)
(Q)あなたは、ISISへの抵抗の象徴である都市コバニの解放に際して、計り知れない損失を個人的に経験されました。当時の経験は、シリアにおける平和と和解に向けたあなたの現在のビジョンにどのように影響を与えていますか?この不確実な時代において、コバニの人々、そしてより広範なクルド人の方々に、どのようなメッセージをお持ちですか?
(A)私たちクルド人は、100年、1世紀にもわたって戦争によって翻弄されてきました。そして、誰もが私たちクルド人を滅ぼそうとしました。彼らは私たちの存在を認めようとしませんでした。そしてもちろん、この闘争を経て、今では誰もがクルド人とクルド人の存在、そして彼らが民主的な権利を持っていることを知っています。もちろん、その代償は非常に高く、若者、シリア人、そしてクルド人の血が流されました。そしてもちろん、私たちの家族もこの闘争の代償を払った家族の一つです。これ以上の犠牲や犠牲者を求めないのであれば、私たちはその終焉、つまり平和、平和の中で生きる道を見つけなければなりません。他の人たち、つまりシリア人たちが共存を受け入れるなら、問題はないでしょう。私たちは代償を払ってきたと思います。私たちが払ってきた代償は、シリアに自由と民主主義をもたらすのに十分なものです。そして、私たちが近いうちにそれを実現できることを願っています。
https://medyanews.net/exclusive-interview-salih-muslim-co-chair-of-syrias-democratic-unity-party/
4.社会契約憲章主要項目(抜粋)2023年12月改訂
第4条:DAANESは、自由かつ平等な参加に基づき、民主的な選挙を通じて、人民及び集団の意思に基づき、そのその正当性を確立する。
第5条: DAANESは、シリア民主共和国の一部である。
第6条・第7条:北東シリアの地理的領域におけるすべての言語は平等。アラビア語、クルド語、シリア語(古代アラム語)は、 DAANESにおける公用語である。
第16条:DAANESは、クルド人の政治的、経済的、文化的権利を保証し、クルド地域の歴史的特徴と本来の人口構造を維持する。
第20条:天然資源は社会の所有物。それらは、地域のニーズに応じて、公正な方法で利用および投資される
第24条:DAANESは、各分野において共同議長制を採用し、これを男女平等の代表の原則とみなす
第72条:すべての市民が正当な防衛に参加することは、DAANESおよびシリア民主共和国の地域に対するあらゆる攻撃を抑止する権利であり義務である。
第91条:北東シリア地域は、ジャズィーラ、デリゾール、ラッカ、ユーフラテス、マンビジ、アフリン/シェバ、タブカの7つのカントン(canton:行政区の意味)からなる。
第96条:執行評議会は、DAANESの名において外交活動を行う。
第111条:自衛は生命の保証と継続であり、生存を守る権利と義務に基づき、北シリア及び東シリアにおいて、正当な自衛意識と組織化された民主主義社会に基づく自衛体制を次の方法で確立することが必要
5.2026年1月18日、シリア政府とクルド人主導のシリア民主軍(SDF)は、シリア北東部における激しい戦闘を終結させるため、包括的な停戦と軍・行政の完全な統合に関する14項目の合意に達した。
シリア暫定政府とSDFの14項目の合意テキスト(2026年1月18日)
第一に、シリア政府軍とシリア民主軍(SDF)間の全ての戦線及び接触線において、即時かつ包括的な停戦を実施し、SDFの全部隊をユーフラテス川東岸に撤退させること。これは、再展開の予備段階として実施する。
第二に、デリゾール県及びラッカ県の行政及び軍事権限をシリア政府に全面的かつ即時に移譲する。これには、全ての民間機関及び施設の移管、並びにシリア国家の専門省庁における現職員の正式職員化に関する法令の即時発布が含まれる。
第三に、ハサカ県内の全ての民間機関をシリア国家の機関及び行政機構に統合する。
第四に、シリア政府は、地域内の全ての国境検問所、油田、ガス田を管理下に置く。資源のシリア国家への返還を確実にするため、正規軍による警備を確保する。ただし、クルド人居住地域という特殊な状況を考慮する。
第五に、SDF(シリア民主軍)の軍人および治安要員全員を、必要な治安審査を経て「個別に」シリア国防省および内務省の組織に完全統合し、軍階級、財政的権利、および兵站要件を付与する。
第六に、シリア民主軍(SDF)指導部は、旧政権残党をSDFの部隊に組み入れることを控え、シリア北東部地域に駐留する旧政権残党の将校名簿を提供することを約束する。
第七に、政治参加と地方代表権の保証として、ハサカ県知事に就任する候補者を任命する大統領令を発布する。
第八に、アイン・アル・アラブ(コバニ)市から大規模な軍の駐留を撤去し、同市住民から構成される治安部隊を編成し、シリア内務省に行政上所属する地方警察を維持する。
第九に、ISIS捕虜およびキャンプのファイルを管理する行政機関、ならびにこれらの施設の警備を担当する部隊をシリア政府と統合し、シリア政府がそれらに対する完全な法的および安全保障上の責任を負うこと。
第十に、国民的パートナーシップを確保するため、SDF指導部が提出した、中央政府機構における軍事、安全保障、および文民の高官職に就く候補者リストを採択すること。
第十一に、クルド人の文化的および言語的権利の承認、ならびに未解決の権利に基づく問題および民事上の問題(未登録者/無国籍者、過去数十年間に蓄積された財産権請求を含む)への対処を規定する2026年大統領令第13号を歓迎すること。
第十二に、SDFは、主権と地域の安定を確保するため、シリア・アラブ共和国の国境外にいるシリア人以外のすべてのクルディスタン労働者党(PKK)指導者およびメンバーの排除にコミットする。
第十三に、シリア政府は、国際連合の活動メンバーとして、米国と連携し、地域の安全と安定を確保するため、テロリズム(ISIS)との闘いを継続することを約束する。
第十四に、アフリンおよびシェイク・マクスウド地域の住民の安全かつ尊厳ある帰還に関する合意に向けて取り組む。
https://peoplesdispatch.org/2026/01/29/reached-but-breached-the-ceasefire-between-syrias-interim-government-and-sdf/
https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/8/85/The_January_2026_Ceasefire_and_Full_Integration_Agreement_between_the_Syrian_Government_and_the_Syrian_Democratic_Forces_%28English%29.pdf
(コメント)サーレハ・ムスリム元PYD共同議長は、3月11日、イラク・クルディスタン自治区のエルビルで闘病中、腎不全で亡くなった。クルド人勢力の軍事部門の顔は、SDFを率いるマズルーム・アブディ司令官であるが、ムスリム氏は政治部門の有力者として、内外に広く知られた人物であった。シリア内戦の最中、同氏の指導の下、2011年12月 PYD主導の「民主的社会実現にむけての運動(TEV-DEM)」が設立され、2013年11月3つのcanton(ジャジーラ、コバニ、アフリン)で自治統治開始された。2015年12月 SDFの政治部門であるシリア民主評議会(SDC)が創設され、2016年3月、Rojava/北シリア民主連邦統治宣言された。2018年7月16日には、北東部シリア自治行政区(AANES)が設立された(その後、DAANES北東部シリア民主自治行政区に改名)。統治機構の憲法にあたる社会契約憲章は、すべての言語が平等であることや、男女共同代表制など、シリアの民主化に必要な事項を規定している。これらのシリア北東部における民主的自治統治機構の整備の推進役であったのが、サーレハ・ムスリム氏である。SDFのアブディ司令官は、シリア暫定自治政府シャラア暫定大統領との間で、2026年1月18日、自治統治機構とSDFのシリア暫定政権への統合に合意した。この合意では、シリア北東部での自治統治や連邦制は認められず、SDFもイラクのクルド人勢力が有するペシュメルガのような、独特の地位は与えられなかった。クルド人の文民や軍人への一定の配慮はみられるものの、シリアのクルド人が内戦期間中に築いてきたTEV-DEMは、その役割を終了することになる。今回の合意には、クルド人を中心とする勢力に自治統治を認めることを拒否するトルコ政府の意向と、ISISとの戦闘中SDFを利用してきた米政府が、もはやクルド人勢力への関心を失ってきたことを意味する。サーレハ・ムスリムが24年12月12日のインタービューで答えているように、多くの犠牲を払ってきたクルド人勢力が、新たな体制の中で、平和裡に政治的権利を享受できるようになることを国際社会は監視してほしいと願うばかりである。
Posted by 八木 at 11:30 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)



