イラン国内抗議活動の拡大を導いた米国によるイラン通貨安操作[2026年02月09日(Mon)]
イランの通貨リアルは、2025年12月28日に対ドル約140万リアル(2026年2月9日時点で、約160万リアル)とこの半年で、7割価値を失い、史上最安値を記録し、暴落寸前まで下落したことがバザール商人たちの抗議活動を引き起こし、その後、イラン31州に広がる大規模反体制暴動のきっかけとなった。当局は、抗議活動の拡大を抑えるために、インターネットを遮断し、治安部隊による実弾使用も認めて、暴動の拡大の鎮静化に努めた。この間、JETROによれば、イラン統計センターが2026年1月25日に発表したデータによると、イラン暦1404年10月(2025年12月22日〜2026年1月20日)の消費者物価指数(CPI)は、引き続き高水準で推移し、前月比で7.9%上昇、前年同月比で60.0%上昇した。また、当月を含む直近12カ月間の平均では、前年同期比44.6%の上昇となった。項目別の上昇率を前年同月比でみると、上昇率が最も高かったのは「食品・飲料」の89.9%で、特に「パンと穀類」が2.3倍と高い伸びになったとのことで、これが、国民の体制側への怒りと不満爆発の原動力となった。バザール商人たちの昨年12月28日の反体制抗議運動開始のきっかけとなった通貨安については、2026年2月6日の上院公聴会で、ケイティ・エリザベス上院議員がベセント財務長官に対し、トランプ政権のイランに対するいわゆる「最大限の圧力」政策を強化するために講じた措置について質問したところ、長官は、「我々が行ったのは、イラン国内にドル不足を作り出すことだった。イラン最大の銀行の一つ(参考1)が破綻したことで、事態は急激かつ壮大な頂点に達したと言えるだろう。中央銀行は紙幣を刷らざるを得なくなり、イラン通貨は暴落し、インフレが爆発的に進んだ」と答えた。
米国は、イランに対する武力行使の選択肢を放棄しておらず、2月6日のマスカットでの米側との間接協議についてアラグチ外相は、有意義であったとしつつ、協議に参加した米国ウィットコフ中東担当特使とトランプ大統領娘婿のクシュナー氏は、協議終了後、7日に米空母「USSエイブラハム・リンカーン(USS Abraham Lincoln)」に立ち寄った動画を公開し、イラン側は、真剣に交渉に臨む気があるのか不信感を強めている。
(参考1)2025年10月25日、国内270支店(テヘランには150支店)を有するイラン最大の民間金融機関の一つであるアヤンデ銀行が正式に破産宣告を受け、全土でパニックが勃発し、約52億ドルの貯蓄を失う恐れから預金者たちは長蛇の列に並ばざるを得なくなった。政府は直ちに介入し、アヤンデ銀行の資産を国営Bank Melli Iranに移し替え、保護することとなった。
https://caspianpost.com/iran/major-iranian-bank-declares-bankruptcy-sparks-financial-alarm
(参考2)反体制デモ関連死者数
米拠点の人権活動家通信(HRANA)は、25年12月末に騒乱が始まって以降、5633人の抗議参加者を含む6000人近くの死亡を確認したと述べた。また、約3週間に及ぶインターネット遮断にもかかわらず寄せられた、さらに1万7000件の死亡報告について調査を進めているとしている。ノルウェーに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」は(IHR)は、最終的な死者数は2万5000人を超える可能性があると警告した。一方、イラン当局は1月中旬、3100人以上が死亡したと述べたが、その大半は治安要員か、あるいは「暴動参加者」に攻撃された、その場にいた人々だと主張した。
(参考3)2026年2月6日、ホワイトハウスによると、トランプ米大統領は、イランから商品やサービスを購入している国からの輸入品に追加関税を課す大統領令に署名した。大統領令には、「この大統領令の発効日から、イランから直接または間接的に商品やサービスを購入、輸入、その他の方法で取得している国の製品で、米国に輸入される商品には、例えば25%などの従価税率の追加関税が課される可能性がある」とやや一律の制裁発動ではないともとれる記述となっている。これに先立ち、26年1月12日、トランプ大統領は、イランと取引する国は米国とのあらゆる取引に対して新たに25%の関税を課される。即時発効させる。この命令は最終的かつ決定的なものだ」とTruth Socialに投稿していた。ホワイトハウスは、この関税やトランプ政権の実施計画に関する追加情報の開示を拒否し、イランとの「取引」の定義の明示を避けていた。この投稿は、これらの追加関税がどのように機能するのか、どの国が対象となるのか、製品だけでなくサービスにも高い関税が課されるのかなどの疑問を提起した。この発表は、イランと米国双方の主要貿易相手国である中国からの製品の輸入コストが大幅に上昇することを示唆。新たな関税導入により、中国からの輸入品に対する関税率は、現行の20%から最低45%に引き上げられる可能性がある。中国税関のデータによると、2025年の最初の11ヶ月間で、中国はイランに62億ドル相当の製品を輸出し、28億5000万ドルを輸入した。これは中国が公表していない石油購入額を考慮に入れていない数字。アナリストの推計によると、近年のイランの石油貿易の90%以上は、仲介業者を通じて中国が輸入している。中国に加えて、インド、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコもイランの主要貿易相手国とされている。
(参考4)米国などの対イラン制裁
1979年1月 イラン・イスラム革命。シャー・ムハンマド・レザー・パフラヴィ体制崩壊
1979年、米国はイランからの石油輸入を停止し、120億ドル相当のイラン資産を凍結。
1995年、クリントン大統領は、米国企業によるイランの石油・ガスへの投資、およびイランとの貿易を禁止する大統領令を発令。
1996年、米国議会は、イランのエネルギー部門に年間2,000万ドル以上を投資する外国企業に対して米国政府が制裁を課すことを義務付ける法律を可決。
2006年12月、国連安全保障理事会は、イランの原子力関連資材および技術の貿易に対して独自の制裁を課し、それに関連する活動に携わる個人および企業の資産を凍結。
その後数年間、国連は制裁を強化し、欧州連合(EU)もそれに追随。
2015年7月、イランは米国(オバマ政権)、英国、中国、フランス、ドイツ、ロシア、EUとの間で核合意(包括的共同行動計画(JCPOA))に署名。ウラン濃縮は3.67%までに制限することとなった。
2018年5月、米国(トランプ第一次政権)は核合意から一方的に離脱
2018年8月、米国核合意離脱後の第イラン制裁第一弾発動
2018年11月、米国核合意離脱後の第イラン制裁第二弾(エネルギー、金融ほか)発動
2019年4月15日、米国は、IRGC(イスラム革命防衛隊)を外国テロ組織に指定
2019年5月、米国イラン産主要原油輸入国8か国への制裁発動免除措置を終了
2019年5月、米国イランの輸出額の約10%にあたるイランの鉄、鋼、アルミニウム、銅の分野での取引に制裁を発動
2020年9月 米国ポンペイオ国務長官は、2015年7月のイラン核合意で解除された国連によるイラン制裁が、国連安保理決議(UNSCR)2231に基づくスナップバック・プロセスに従って、国連による対イラン制裁が復活したと宣言(バイデン政権発足後撤回)
2020年9月21日、トランプ大統領は、イランの核開発、弾道ミサイルおよび通常兵器への追求を制限するため新たな制裁、規制措置をとったと表明
2021年 米国バイデン政権は、イランとの核合意復帰に向けた交渉開始 進展なし
2025年4月 米国トランプ第二次政権は、イランとの核協議開始(マスカットとローマで5回実施)
2025年6月21日 米軍はイラン本土の核関連施設3カ所を空爆
2025年9月28日 ロシア、中国提出の国連制裁(スナップバック)再発動延期提案が否決され、国連制裁復活
2026年1月29日、EUは、IRGC(イスラム革命防衛隊)をテロ組織に指定
2026年2月 オマーンで米・イラン核協議実施 イラン側は、高濃度の濃縮ウランの海外搬送を提示した趣き
(コメント)トランプ米大統領は、2025年2月4日、ワシントンD.C.のホワイトハウス大統領執務室で、「イランに最大限の圧力を再びかける」大統領令に署名した。これをうけて、米国財務省は、イラン産原油の対中国輸送に関わる国際ネットワークに制裁を発動した。米国は、25年6月21日にイランの核関連施設3カ所を空爆し、さらに、金融面でも、ドル不足に苦しむイランの為替急落を導き、25年末のイランの反体制デモ拡大を支援してきた。さらに、26年2月6日、トランプ大統領は、イランとの取引を継続する国々に、例示的に25%の追加関税を課すとの大統領令に署名した。米軍は、イラン周辺海域に、空母エイブラハム・リンカーンを派遣して、イランに対する軍事的圧力も強化している。EUもこれに呼応して、1月29日イスラム革命防衛隊(IRGC)を「テロ組織」に指定した。これに対して、イランの司法当局は1月10日、国内のデモに参加した市民を「神の敵」と位置づけ、死刑に値する可能性があると表明した(その後、米国の要請などもあり死刑執行は思い止まっているとのこと)。また、国防や外交政策を司る最高安全保障評議会は、デモが米国やイスラエルの支援を受けているとし、「無慈悲に対応する」と警告している。湾岸アラブ諸国は、国内に米軍基地を抱えており、これらの基地が標的になったり、自国領空を通じて、イラン攻撃が実行されることや、ホルムズ海峡の封鎖などを回避するために、米側にも接触し、オマーンでの核協議実施を働きかけたとされる。協議は、高濃縮ウランの国外搬送など前向きな点があったとされるものの、この機会に、イスラム革命体制を崩壊させたいとのイスラエルなどの思惑もあり、米国が、イラン攻撃を控えるのか、予断を許さない状況が続いている。
米国は、イランに対する武力行使の選択肢を放棄しておらず、2月6日のマスカットでの米側との間接協議についてアラグチ外相は、有意義であったとしつつ、協議に参加した米国ウィットコフ中東担当特使とトランプ大統領娘婿のクシュナー氏は、協議終了後、7日に米空母「USSエイブラハム・リンカーン(USS Abraham Lincoln)」に立ち寄った動画を公開し、イラン側は、真剣に交渉に臨む気があるのか不信感を強めている。
(参考1)2025年10月25日、国内270支店(テヘランには150支店)を有するイラン最大の民間金融機関の一つであるアヤンデ銀行が正式に破産宣告を受け、全土でパニックが勃発し、約52億ドルの貯蓄を失う恐れから預金者たちは長蛇の列に並ばざるを得なくなった。政府は直ちに介入し、アヤンデ銀行の資産を国営Bank Melli Iranに移し替え、保護することとなった。
https://caspianpost.com/iran/major-iranian-bank-declares-bankruptcy-sparks-financial-alarm
(参考2)反体制デモ関連死者数
米拠点の人権活動家通信(HRANA)は、25年12月末に騒乱が始まって以降、5633人の抗議参加者を含む6000人近くの死亡を確認したと述べた。また、約3週間に及ぶインターネット遮断にもかかわらず寄せられた、さらに1万7000件の死亡報告について調査を進めているとしている。ノルウェーに拠点を置く人権団体「イラン・ヒューマン・ライツ」は(IHR)は、最終的な死者数は2万5000人を超える可能性があると警告した。一方、イラン当局は1月中旬、3100人以上が死亡したと述べたが、その大半は治安要員か、あるいは「暴動参加者」に攻撃された、その場にいた人々だと主張した。
(参考3)2026年2月6日、ホワイトハウスによると、トランプ米大統領は、イランから商品やサービスを購入している国からの輸入品に追加関税を課す大統領令に署名した。大統領令には、「この大統領令の発効日から、イランから直接または間接的に商品やサービスを購入、輸入、その他の方法で取得している国の製品で、米国に輸入される商品には、例えば25%などの従価税率の追加関税が課される可能性がある」とやや一律の制裁発動ではないともとれる記述となっている。これに先立ち、26年1月12日、トランプ大統領は、イランと取引する国は米国とのあらゆる取引に対して新たに25%の関税を課される。即時発効させる。この命令は最終的かつ決定的なものだ」とTruth Socialに投稿していた。ホワイトハウスは、この関税やトランプ政権の実施計画に関する追加情報の開示を拒否し、イランとの「取引」の定義の明示を避けていた。この投稿は、これらの追加関税がどのように機能するのか、どの国が対象となるのか、製品だけでなくサービスにも高い関税が課されるのかなどの疑問を提起した。この発表は、イランと米国双方の主要貿易相手国である中国からの製品の輸入コストが大幅に上昇することを示唆。新たな関税導入により、中国からの輸入品に対する関税率は、現行の20%から最低45%に引き上げられる可能性がある。中国税関のデータによると、2025年の最初の11ヶ月間で、中国はイランに62億ドル相当の製品を輸出し、28億5000万ドルを輸入した。これは中国が公表していない石油購入額を考慮に入れていない数字。アナリストの推計によると、近年のイランの石油貿易の90%以上は、仲介業者を通じて中国が輸入している。中国に加えて、インド、アラブ首長国連邦(UAE)、トルコもイランの主要貿易相手国とされている。
(参考4)米国などの対イラン制裁
1979年1月 イラン・イスラム革命。シャー・ムハンマド・レザー・パフラヴィ体制崩壊
1979年、米国はイランからの石油輸入を停止し、120億ドル相当のイラン資産を凍結。
1995年、クリントン大統領は、米国企業によるイランの石油・ガスへの投資、およびイランとの貿易を禁止する大統領令を発令。
1996年、米国議会は、イランのエネルギー部門に年間2,000万ドル以上を投資する外国企業に対して米国政府が制裁を課すことを義務付ける法律を可決。
2006年12月、国連安全保障理事会は、イランの原子力関連資材および技術の貿易に対して独自の制裁を課し、それに関連する活動に携わる個人および企業の資産を凍結。
その後数年間、国連は制裁を強化し、欧州連合(EU)もそれに追随。
2015年7月、イランは米国(オバマ政権)、英国、中国、フランス、ドイツ、ロシア、EUとの間で核合意(包括的共同行動計画(JCPOA))に署名。ウラン濃縮は3.67%までに制限することとなった。
2018年5月、米国(トランプ第一次政権)は核合意から一方的に離脱
2018年8月、米国核合意離脱後の第イラン制裁第一弾発動
2018年11月、米国核合意離脱後の第イラン制裁第二弾(エネルギー、金融ほか)発動
2019年4月15日、米国は、IRGC(イスラム革命防衛隊)を外国テロ組織に指定
2019年5月、米国イラン産主要原油輸入国8か国への制裁発動免除措置を終了
2019年5月、米国イランの輸出額の約10%にあたるイランの鉄、鋼、アルミニウム、銅の分野での取引に制裁を発動
2020年9月 米国ポンペイオ国務長官は、2015年7月のイラン核合意で解除された国連によるイラン制裁が、国連安保理決議(UNSCR)2231に基づくスナップバック・プロセスに従って、国連による対イラン制裁が復活したと宣言(バイデン政権発足後撤回)
2020年9月21日、トランプ大統領は、イランの核開発、弾道ミサイルおよび通常兵器への追求を制限するため新たな制裁、規制措置をとったと表明
2021年 米国バイデン政権は、イランとの核合意復帰に向けた交渉開始 進展なし
2025年4月 米国トランプ第二次政権は、イランとの核協議開始(マスカットとローマで5回実施)
2025年6月21日 米軍はイラン本土の核関連施設3カ所を空爆
2025年9月28日 ロシア、中国提出の国連制裁(スナップバック)再発動延期提案が否決され、国連制裁復活
2026年1月29日、EUは、IRGC(イスラム革命防衛隊)をテロ組織に指定
2026年2月 オマーンで米・イラン核協議実施 イラン側は、高濃度の濃縮ウランの海外搬送を提示した趣き
(コメント)トランプ米大統領は、2025年2月4日、ワシントンD.C.のホワイトハウス大統領執務室で、「イランに最大限の圧力を再びかける」大統領令に署名した。これをうけて、米国財務省は、イラン産原油の対中国輸送に関わる国際ネットワークに制裁を発動した。米国は、25年6月21日にイランの核関連施設3カ所を空爆し、さらに、金融面でも、ドル不足に苦しむイランの為替急落を導き、25年末のイランの反体制デモ拡大を支援してきた。さらに、26年2月6日、トランプ大統領は、イランとの取引を継続する国々に、例示的に25%の追加関税を課すとの大統領令に署名した。米軍は、イラン周辺海域に、空母エイブラハム・リンカーンを派遣して、イランに対する軍事的圧力も強化している。EUもこれに呼応して、1月29日イスラム革命防衛隊(IRGC)を「テロ組織」に指定した。これに対して、イランの司法当局は1月10日、国内のデモに参加した市民を「神の敵」と位置づけ、死刑に値する可能性があると表明した(その後、米国の要請などもあり死刑執行は思い止まっているとのこと)。また、国防や外交政策を司る最高安全保障評議会は、デモが米国やイスラエルの支援を受けているとし、「無慈悲に対応する」と警告している。湾岸アラブ諸国は、国内に米軍基地を抱えており、これらの基地が標的になったり、自国領空を通じて、イラン攻撃が実行されることや、ホルムズ海峡の封鎖などを回避するために、米側にも接触し、オマーンでの核協議実施を働きかけたとされる。協議は、高濃縮ウランの国外搬送など前向きな点があったとされるものの、この機会に、イスラム革命体制を崩壊させたいとのイスラエルなどの思惑もあり、米国が、イラン攻撃を控えるのか、予断を許さない状況が続いている。
Posted by 八木 at 17:59 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)



