• もっと見る
イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

« 自由で開かれた国を放棄する米トランプ政権と従うしかない国際社会 | Main | イラン国内抗議活動の拡大を導いた米国によるイラン通貨安操作 »

検索
検索語句
<< 2026年03月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31        
最新記事
最新コメント
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
プロフィール

中東イスラム世界社会統合研究会さんの画像
日別アーカイブ
https://blog.canpan.info/meis/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/meis/index2_0.xml
UAE大統領の国賓訪日延期にあたって求められるバランスのとれた経済外交[2026年02月08日(Sun)]
アラブ首長国連邦(UAE)のムハンマド・ビン・ザーイド・アールナヒヤーン(通称MBZ)大統領は、本来であれば、2月8日から10日まで、国賓として訪問予定であったが、残念ながら延期になった。報道によれば。イラン情勢の緊迫化などが理由とされる。日本にとって、UAEはサウジと並んで、原油輸入のトップを争う国であり、とりわけ24年、25年には、UAEからの原油輸入量は、サウジをやや上回った(財務省通関統計によれば、25年UAEは約43%で、サウジは約40%。なお同年の日本の原油中東依存度は約94%)。UAEは、OPEC2025年次報告による2024年の確認原油埋蔵量としては、世界第5位(1130億バレル)であり、世界第2位のサウジ(2672億バレル)には及ばないものの、再生可能エネルギーや水素、燃料アンモニアなどの新エネルギー分野でも日本との協力を進めている。UAEとサウジはともにGCC(湾岸協力理事会)メンバー国で親米国家でもあり、伝統的に両国関係は良好であったが、最近、イエメンやスーダンといった地域情勢への対応や地域の経済的主導権争いでも、緊張が目立ち始めている。因みに、サウジの実質的指導者ムハンマド・ビン・サルマン・アールサウード(通称MBS)皇太子兼首相は、2024年5月公賓として訪日予定であったが、直前にサルマン国王の健康状態を理由に、訪日を延期している。MBZ訪日延期の機会をとらえて、両国の特徴と、両者が抱える地域問題を整理しておく。
1.両国の経済的特徴
(1)UAEの強みと課題
外国企業にとっての中東の地域拠点、住環境充実右矢印1日本企業をはじめ多くの外国企業は商業・金融・観光の中心地であるドバイに地域拠点を置いている。一方、サウジが地域統括会社(RHQ)免許を通じて、多国籍企業の地域拠点の選択で、サウジをとるかUAEなのかの踏み絵を踏まそうとしており、その影響を受ける可能性あり。
国際交通の便よし右矢印1エミレーツ航空、エティハド航空などが運航。但し、カタール航空やトルコ航空もライバルであり、最近設立されたリヤド航空との競争も激しくなる可能性あり。
巨額の政府系ファンド運用右矢印1アブダビ投資庁(ADIA)、ムバダラ投資会社など。投資先によっては、サウジやカタール、トルコの政府系ファンドと競合することもある。
再生可能エネルギー・新エネルギー生産拠点造り・活用推進右矢印12009年に国際再生エネルギー機関IRENA誘致。水素製造計画については、2023年11月国家水素戦略2050を公式に発表し、UAEが2031年までに世界有数の水素生産国になる目標を掲げている。水素生産では、サウジが競合国になるとみられる。また、韓国製バラカ原発の運用が開始されており、現在国内電力需要の25%を原発が供給しているとされる。
温暖化対策推進右矢印1COP28ホスト、カーボンニュートラル達成目標年2050年(サウジより10年早い)
イスラエルとの連携により地域のハイテク拠点目指す。米企業とも連携し、AI拠点化も推進右矢印1イスラエルとは包括的経済連携協定を締結。ガザ危機によっても貿易量は拡大してきたが、パレスチナ人の犠牲者が7万にも達する中で、二国間関係を強化するUAEの姿勢にアラブ世界では批判の声もある模様。今後のガザ停戦第二弾においてUAEに如何なる役割が求められるのかが注目される。AI拠点化では、アブダビで建設中の1ギガワット・データセンター・プロジェクト「スターゲイトUAE」は、UAEと米国が共同で計画する巨大なAIキャンパスの中核となる予定。G42のKhazna Data Centersが開発し、OpenAI、Oracle、Nvidiaも参加するこのデータセンターの最初の20%は、2026年のオープン予定。
観光・娯楽・エンタメも推進右矢印1ディズニー・テーマパークも誘致。宗教的寛容をうたい文句としてアブダビで建設されたシナゴーグを含む国立宗教施設「アブラハム・ファミリー・ハウス」を2023年3月1日正式オープンしている。
(2)サウジの強みと懸念
OPECプラスの指導的国家右矢印1今や世界最大の石油生産国は、サウジではなく米国。そのため、OPECの主導的国家サウジは、非OPECの大産油国ロシアと組んで、OPECプラスによる原油生産調整を2017年1月以来開始。2020年5月には、970万B/Dの大幅減産を実行。その後、減産幅を縮小(すなわち、増産)していったが、@2022年11月からは、200万b/dの減産を開始。さらに、A2023年5月には、有志国8か国による166万b/dの追加減産開始。そして、B2024年1月には、220万b/dの追加減産を開始してきたが、2025年以降、方針を転換して、増産を開始。Bについては、25年8月に繰り上げ終了。Aについても、減産幅縮小を進めてきたが、現在、その動きを一時停止中。OPEC創設国ベネズエラの石油が米国の管理下に入ることで、OPECの結束力にくさびが撃ち込まれることになった。
メガプロジェクト推進右矢印1サウジのPIF公式サイトによる設立された新企業数は103。なかでも、ギガプロジェクトNEOM(新未来の意味)のプロジェクトである線状新未来都市建設事業「ザ・ライン」(砂漠に、全長170km、高さ500m、幅200m、端から端まで20分の高速鉄道で結ぶ計画)が注目されてきたが、原油価格低迷の中、費用見積が膨れ上がり、計画の大幅後退を余儀なくされている模様。他に完成時世界最大となる浮上式物流拠点Oxagon、山岳リゾートTrojena、海洋観光リゾートShindalaなどが計画されているが、人工雪を降らすことで2029年アジア冬季スポーツ大会の会場とされていたTrojenaでの開催をサウジが断念して、大会はカザフスタンのアルマティに変更することが決定した模様。
政府系ファンド「公的投資基金(PIF)」による積極的投資右矢印1PIFは、MBS皇太子が推進するサウジ経済の多角化を実現する「ビジョン2030」の各種目標を達成するための主要な手段であり、2030年にPIF管理資産を10兆サウジリアル(2.67兆ドル)に増大させる計画(2024年段階の達成値は9400億ドルで目標を4%上回っている)
再生可能エネルギー・新エネルギー生産拠点造り・活用推進右矢印1紅海沿岸の未来都市「NEOM」で、ACWAパワー、エア・プロダクツ、NEOMの合弁事業として進行中。また、2030年までに電力の50%を再生可能エネルギーにする目標を掲げている。
米企業とも連携し、AI拠点化推進右矢印1政府系ファンドPIFは2025年5月12日、同基金の会長を務めるMBS皇太子がAI企業HUMAINを立ち上げ、よく13日HUMAINとNVIDIAは、サウジアラビアに未来のAI工場を建設するための戦略的パートナーシップを結んだと発表。更に、2025年10月29日、PIFとアラムコは、両社の人工知能(AI)プログラムを統合し、HUMAINを通じて共同事業を展開することを発表
中東地域投資会社を6か国で設立右矢印1PIFは、2022年設立のエジプトに加えて、バーレーン、イラク、ヨルダン、オマーン、スーダンに地域投資会社を設立すると発表
地域統括会社(RHQ)免許取得で外国企業を選別右矢印12024年末段階で当初計画を上回る571件の免許付与。25年10月26日報道によるファーリフ投資大臣の発言によれば、多国籍企業の地域拠点となる675社にRHQ免許が付与されたとされる。RHQ免許が付与されると政府調達への優先的参入と10年間のサウダイゼーション(従業員のサウジ人化)免除などの特典あり
サウジ/中東グリーンイニシアティブ推進右矢印1サウジで100億本、中東で500億本の植樹を行い、CO2の削減を支援する計画を発表
巡礼客・観光客誘致、スポーツ大会誘致、娯楽提供右矢印1サウジは、2030年リヤド万博、2034年FIFAサッカーワールドカップホストが決定している。また、2024年から毎年eスポーツワールドカップをホストすることが決定している。加えて、ゲーム、アニメ分野での日本企業との協力も進んでいる。さらに、2019年観光ビザを解禁し、2024年には、2,970万人の外国人を含む1億1,590万人の来訪者数を記録。
2.地域情勢に関する彼我の立場
(1)イエメンの分離主義勢力STCへの支援
UAEは、イエメン南部の民兵組織、特に南部暫定評議会(STC)を積極的に支援してきたとされる。UAEは、2014年のフーシ派への攻撃ではサウジ主導のアラブ連合軍に参加したものの、その後、参加を見合わせてきた。とくに、2024年12月30日サウジはイエメン南部の港湾都市ムカッラをサウジが空爆し、UAEとの関係が悪化した。それにもかかわらず、UAEはSTC関係部隊に対し、訓練、資金提供、装備提供を行ってきた。サウジからの圧力により、UAEは2025年後半に軍の撤退を宣言したものの、これらのグループとの関係は維持しており、UAEが支援する分離主義とされるSTCはハドラマウトやアデンなどの南部地域での支配を大幅に強化しているとされる。また、BBC報道によれば、イエメンにおけるサウジアラビア主導の連合軍は、イエメン大統領評議会から追放され反逆罪で告発されたSTC指導者アル・ズバイディ議長の国外への密航をUAEが支援したと主張しており、サウジとの緊張が高まっている。
(2)スーダン内戦における対立勢力への支援
スーダン内戦が開始された以降、UAEは即応支援部隊(RSF)という準軍事組織を、サウジはスーダン軍部をそれぞれ支援している。UAEは、スーダン政府軍と対峙する即応支援部隊(RSF)に財政的、政治的、軍事的支援を提供してきたとされる。UAEは公式にはこれらの主張を否定しているものの、スーダン政府は、2025年5月UAEとの外交関係を断絶している。RSFがスーダンで使用している軍事設備には、UAE製の装甲車両、ドローンなどが含まれているとされる。また、UAEはスーダンとの間で、特に金に深い経済的利益を有しており、RSFがダルフールで管理する鉱山から採掘された大量の金がUAEで取引されているとされる。UAEは、スーダンの港湾建設にも参画してきており、紅海周辺海域での影響力確保のため、RSFとの結びつきを重視してきた。
この対峙は、アフリカの角情勢にも影響を与え、サウジとエジプトがソマリアを支援し、UAEとエチオピアとイスラエルが分離独立を目指すソマリランドを支援する構図となっており、トランプ政権も親米国家間の対立に手をこまねいているとされる。
https://www.theguardian.com/world/2025/nov/04/sudan-rsf-militia-uae-united-arab-emirates
https://biz.chosun.com/jp/jp-international/2026/02/05/QKPDSOEKWBCHPPQQN4CC4OPH4I/

(コメント)2025年5月のMBSサウジ皇太子の公賓訪日延期と今回のMBZ・UAE大統領の国賓訪日延期は、石油だけでなく、新エネルギー分野で、連携が期待される両国のトップとの関係構築に結びつかなかったことで残念である。2024年5月下旬に予定されていたMBS皇太子の公賓訪問に際し、日本、サウジアラビア両政府は液化水素のサプライチェーン(供給網)強化に関する協力に合意する方向で最終調整に入ったと報じられていた。しかし、MBS皇太子は、国王の急病を理由に、来日一日前に訪問キャンセルとなった。サウジは、エネルギー資源だけでなく、レアアースはじめ鉱物資源輸出国の潜在性を秘めた国であり、世界中でレアアースの争奪戦が始まっている現在、この分野でもサウジとの関係を強化していく必要がある。一方、UAEのMBZムハンマド大統領は、過去に5度訪日し、うち2度はアブダビ皇太子として訪日(2007年12月、2014年2月)しており、1990年に父であるザーイド大統領(当時)が国賓として訪日した際にも同行した経緯がある。UAEは液化水素運搬実験を行う日本企業に注目しており、2023年4月川崎重工とアブダビの国営石油会社ADNOC社との間で、液化水素サプライチェーン構築に向けた戦略的協業契約の締結している。また、2023年7月、INPEXはアブダビのマスダール社とのグリーン水素・CO2を利用した「e-メタン」製造事業の実現に向けた共同調査に関する契約締結を発表。2024年1月には、東京ガス、大阪ガスが調査参加を表明している。両国は、新エネルギー分野、とりわけ、サプライチェーン構築において、日本にとって重要なパートナーとなる可能性を秘めている。日本は、次の首脳の訪日の機会を待つのではなく、ドイツのメルツ首相が最近、サウジ、カタール、UAEを訪問したように、新内閣は積極的に訪問外交を展開することが望まれる。両国のほか、カタールについては、2月にJERAがカタールエネジーと2028年から27年間のLNG供給の長期契約を結んだことが明らかになった。JERAは、2021年末で、カタールとの長期契約を打ち切ったところで、ロシアのウクライナ侵攻が始まった。日本にとって、サウジ、UAE、カタールは日本のエネルギー安全保障の観点から引き続き、重要な国々である。日本政府要人の中東訪問にあたっては、地域情勢を巡ってサウジ・UAE間の摩擦が発生していることも念頭に、バランスのとれた経済外交を積極的に展開すべきであると思われる。

Posted by 八木 at 15:54 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

この記事のURL

https://blog.canpan.info/meis/archive/613

トラックバック

※トラックバックの受付は終了しました

 
コメントする
コメント