着地点の見えないシリア暫定政府・SDF合意の行く末[2025年09月01日(Mon)]
1.8月31日付ANF通信によれば、北東部シリア民主自治行政区を代表するクルド政党PYD(クルド民主統一党)の有力メンバーであるサーレハ・ムスリムはクルディスタンNweとのインタビューで要旨次のとおり語った。
@シリア暫定政権との関係:シリア政府との意見の相違は平和的に解決したい。戦争は解決策ではなく、我々はシリア分割も求めていない。クルド問題は国際問題であり、国際的な努力によって解決されなければならない。国際勢力もまた、戦争で勝利する者はいないため、中東和平を望んでいる。しかし、ダマスカスは不公平な平和を求めているのに対し、我々は公正な平和を求めている。公正な平和なしには、シリアにおける永続的な平和は実現しない。抑圧的で独裁的な国家は解決策ではない。西クルディスタン(シリアのクルド地区)にとって唯一実現可能な道は民主主義である。
A統治体制:この地域にとって最善の体制は地方分権であり、それは自治、地域統治、連邦制、さらには連合制など、様々な形態を取り得る。我々は、シリアにおける完全な中央集権体制への回帰も、2011年以前の状況も決して受け入れない。もしシリアの新政府が地方分権を認めなければ、我々は独立を要求せざるを得なくなるだろう。
BSDF:シリア民主軍(SDF)の解散は受け入れられない。我々の地域は我々自身の軍隊によって守られ続けなければならない。これがSDF設立の理念である。
Cトルコとの関係:トルコは国内で平和を要求しながら、同時に西クルディスタンのクルド人を脅かすことはできない。そのため、トルコ政府はこの問題に関する立場を変えざるを得ない。我々クルド人はトルコに敵対しておらず、トルコとの間に問題を抱えているわけでもない。シリアにおける我々の権利を要求するために武器を取ったのだ。トルコはクルド人問題を解決するため、ダマスカス政府に圧力をかけなければならない。
Dクルディスタンの4つの地域におけるクルド人の関係:クルド人はクルディスタンの4つの地域すべてで団結し続けなければならない。西クルディスタンと南クルディスタン(イラクのクルド地区)の関係は特に緊密であり、特にクルド愛国者同盟(PUK)との関係は良好だ。2014年に(PUKの)ペシュメルガ部隊がコバニ(トルコ国境に近いシリアの町で、ISISとSDFの激戦の地であった)に進駐した際、クルド人全体が彼らを大喜びで歓迎した。PYDとPUKは戦略的な関係を維持している。PYDの設立以来、PUKは一貫して支援を続けており、このパートナーシップはさらに拡大していく可能性がある。PUKは、対ISIS国際連合の枠組みを含め、西クルディスタンのあらゆる成果を支援してきた。
https://anfenglishmobile.com/news/salih-muslim-we-will-never-accept-a-return-to-a-fully-centralised-system-in-syria-81044
2.8月30日SDFのマズルーム・アブディ司令官はドイツで開催されたクルド人青年イベントに送ったビデオメッセージで次のとおり述べた。
1)シリア北東部では数ヶ月にわたり停戦と安定が保たれてきたが、最終合意に至っていないため、敵対行為が再発する可能性は依然として残っている。紛争が再発しないことを願う一方で、我々は常に我々の組織と国民を守る用意がある。我々は(和平)交渉の成功を望んでいる。15年間続いたシリア内戦は必ず終結しなければならないと信じている。
2)前進する唯一の道は分権化されたシステムであり、その目標に向けて努力を続けている。そのための努力は進行中である。シリア国民と国際部隊の全員が、徐々にこれが適切だと認識するようになると信じている。2011年以前のシリアの全体主義的で超中央集権的なシステムは復活しないだろう。
https://www.rudaw.net/english/middleeast/syria/300820252
(コメント)二人のシリアのクルド人の政治的・軍事的指導者が相次いで発信したメッセージは、北東部シリアを事実上自治運営しているクルド人勢力にとって、シリアにおける中央集権的なシステムへの回帰は認めない、SDFの国軍への統合は認めても、解散するのではなく、北東部シリアの防衛部隊として存続させる、との原則的立場を改めて強調したものとなっている。これは、シリア暫定政権側の「国の中の国」、「軍隊の中の軍隊」は認めないとする立場と相いれない。シャラア暫定大統領は、9月にシリアの北東部のクルド支配地区と南部のドゥルーズ支配地区を除外する形で、人民議会選挙を実施し、自身の権力基盤を固めようとしているものの、ドゥルーズ支配地区については、イスラエル軍に保護されており、シリア北東部については、未だ米軍が駐留しており、双方ともに暫定政権側が、力で屈服させることは困難な状態にある。また、隣のイラクには、ペシュメルガという個別軍隊を持ち、自治統治体制を有するクルディスタン政府の例があり、暫定政権側と北東部シリア統治勢力との3月15日の合意の実施に向けた行動計画を一致させることは容易ではない。欧州は暫定政権への制裁は解除したものの、本格的支援には至っていない。8月31日付RUDAWによれば、独政府は、当面、シリア支援は、国連機関やNGOなどを通じて実行し、暫定政権経由で行わないと発表した。シリア暫定政権に影響力を有するトルコは、本国ではPKKとの和解に向けて、議会で委員会を立ち上げて検討を開始しているが、具体的進展は見えてきていない。トルコは、シリアにおける連邦制や地方分権は認められないとの考えで、シャラア政権に働きかけており、着地点は未だ霧の中にあるといわざるをえない。
https://www.rudaw.net/english/world/31082025
@シリア暫定政権との関係:シリア政府との意見の相違は平和的に解決したい。戦争は解決策ではなく、我々はシリア分割も求めていない。クルド問題は国際問題であり、国際的な努力によって解決されなければならない。国際勢力もまた、戦争で勝利する者はいないため、中東和平を望んでいる。しかし、ダマスカスは不公平な平和を求めているのに対し、我々は公正な平和を求めている。公正な平和なしには、シリアにおける永続的な平和は実現しない。抑圧的で独裁的な国家は解決策ではない。西クルディスタン(シリアのクルド地区)にとって唯一実現可能な道は民主主義である。
A統治体制:この地域にとって最善の体制は地方分権であり、それは自治、地域統治、連邦制、さらには連合制など、様々な形態を取り得る。我々は、シリアにおける完全な中央集権体制への回帰も、2011年以前の状況も決して受け入れない。もしシリアの新政府が地方分権を認めなければ、我々は独立を要求せざるを得なくなるだろう。
BSDF:シリア民主軍(SDF)の解散は受け入れられない。我々の地域は我々自身の軍隊によって守られ続けなければならない。これがSDF設立の理念である。
Cトルコとの関係:トルコは国内で平和を要求しながら、同時に西クルディスタンのクルド人を脅かすことはできない。そのため、トルコ政府はこの問題に関する立場を変えざるを得ない。我々クルド人はトルコに敵対しておらず、トルコとの間に問題を抱えているわけでもない。シリアにおける我々の権利を要求するために武器を取ったのだ。トルコはクルド人問題を解決するため、ダマスカス政府に圧力をかけなければならない。
Dクルディスタンの4つの地域におけるクルド人の関係:クルド人はクルディスタンの4つの地域すべてで団結し続けなければならない。西クルディスタンと南クルディスタン(イラクのクルド地区)の関係は特に緊密であり、特にクルド愛国者同盟(PUK)との関係は良好だ。2014年に(PUKの)ペシュメルガ部隊がコバニ(トルコ国境に近いシリアの町で、ISISとSDFの激戦の地であった)に進駐した際、クルド人全体が彼らを大喜びで歓迎した。PYDとPUKは戦略的な関係を維持している。PYDの設立以来、PUKは一貫して支援を続けており、このパートナーシップはさらに拡大していく可能性がある。PUKは、対ISIS国際連合の枠組みを含め、西クルディスタンのあらゆる成果を支援してきた。
https://anfenglishmobile.com/news/salih-muslim-we-will-never-accept-a-return-to-a-fully-centralised-system-in-syria-81044
2.8月30日SDFのマズルーム・アブディ司令官はドイツで開催されたクルド人青年イベントに送ったビデオメッセージで次のとおり述べた。
1)シリア北東部では数ヶ月にわたり停戦と安定が保たれてきたが、最終合意に至っていないため、敵対行為が再発する可能性は依然として残っている。紛争が再発しないことを願う一方で、我々は常に我々の組織と国民を守る用意がある。我々は(和平)交渉の成功を望んでいる。15年間続いたシリア内戦は必ず終結しなければならないと信じている。
2)前進する唯一の道は分権化されたシステムであり、その目標に向けて努力を続けている。そのための努力は進行中である。シリア国民と国際部隊の全員が、徐々にこれが適切だと認識するようになると信じている。2011年以前のシリアの全体主義的で超中央集権的なシステムは復活しないだろう。
https://www.rudaw.net/english/middleeast/syria/300820252
(コメント)二人のシリアのクルド人の政治的・軍事的指導者が相次いで発信したメッセージは、北東部シリアを事実上自治運営しているクルド人勢力にとって、シリアにおける中央集権的なシステムへの回帰は認めない、SDFの国軍への統合は認めても、解散するのではなく、北東部シリアの防衛部隊として存続させる、との原則的立場を改めて強調したものとなっている。これは、シリア暫定政権側の「国の中の国」、「軍隊の中の軍隊」は認めないとする立場と相いれない。シャラア暫定大統領は、9月にシリアの北東部のクルド支配地区と南部のドゥルーズ支配地区を除外する形で、人民議会選挙を実施し、自身の権力基盤を固めようとしているものの、ドゥルーズ支配地区については、イスラエル軍に保護されており、シリア北東部については、未だ米軍が駐留しており、双方ともに暫定政権側が、力で屈服させることは困難な状態にある。また、隣のイラクには、ペシュメルガという個別軍隊を持ち、自治統治体制を有するクルディスタン政府の例があり、暫定政権側と北東部シリア統治勢力との3月15日の合意の実施に向けた行動計画を一致させることは容易ではない。欧州は暫定政権への制裁は解除したものの、本格的支援には至っていない。8月31日付RUDAWによれば、独政府は、当面、シリア支援は、国連機関やNGOなどを通じて実行し、暫定政権経由で行わないと発表した。シリア暫定政権に影響力を有するトルコは、本国ではPKKとの和解に向けて、議会で委員会を立ち上げて検討を開始しているが、具体的進展は見えてきていない。トルコは、シリアにおける連邦制や地方分権は認められないとの考えで、シャラア政権に働きかけており、着地点は未だ霧の中にあるといわざるをえない。
https://www.rudaw.net/english/world/31082025
Posted by 八木 at 11:32 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)



