• もっと見る
イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

« 注目されるアサド前大統領の弟マーヘル・アルアサド前第四機甲師団長の行方 | Main | シリアのクルド人勢力の将来に関連する注目されるクルド人指導者発言 »

検索
検索語句
<< 2025年01月 >>
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  
最新記事
最新コメント
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
プロフィール

中東イスラム世界社会統合研究会さんの画像
日別アーカイブ
https://blog.canpan.info/meis/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/meis/index2_0.xml
アサド政権崩壊をうけてのプーチン大統領の見方[2024年12月30日(Mon)]
アサド政権がなぜかくももろく崩壊したのか、アサド(前)大統領はどのようにシリアを脱出したのか、次第に明らかになってきた。とりわけ、12月19日のプーチン大統領のNBC記者、アナドール通信記者との質疑で、プーチン大統領は、如何にアサド政府軍が、少人数のHTS武装勢力との戦いを放棄したのか、トルコはクルド人駆逐の目標の一部を達成するだろうが、クルド人対応には大きな課題を抱えていること、さらに、シリア政変の最大の受益者はイスラエルであることを指摘している。
(参考1)アサド大統領の脱出まで
ロイター通信を引用し、時事通信は12月13日、10人以上の関係者の証言を伝えた。それによると、アサド氏は脱出直前の12月7日も国防省で軍関係者らと会合を開き、政権軍の地上部隊に抵抗を促した。アサド氏は旧反体制派が攻勢を始めた翌日にロシアを訪問。攻勢を阻むためロシアに軍事介入を要請したが、聞き入れられなかった。アサド氏はロシアと同じく後ろ盾となっていたイランには支援を求めなかった。イランが介入すれば、イスラエルがシリアやイラン国内へ攻撃を強める口実になると懸念したとされる。戦況は不利と判断し、出国を決断したアサド氏はアラブ首長国連邦(UAE)に受け入れを求めたが、UAE側は国際的な反発を恐れて拒否。米ブルームバーグ通信によれば、アサド氏はロシアから身の安全を保証され、シリア北西部にあるロシア空軍基地を経由しモスクワへ向かった。ロシアではアスマ夫人と子供たちが待機していたという。ロイターによると、アサド氏は軍高官を務めていた弟マーヘル(第四機甲師団長)氏や母方のいとこにも出国意思を伏せた。
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024121400132&g=int

(参考2)2024年12月19日に公表された年末総括質疑におけるプーチン大統領発言
(1)アサド大統領との会見予定と行方不明米国人ジャーナリストについて(NBCニュースのKeir Simmons記者の質問に答えて):率直に言って、私はバッシャール・アル・アサド大統領がモスクワに到着してから会っていません。しかし、会うつもりですし、必ず彼と話をするつもりです。私たちは大人ですから、その人物(母親が消息を尋ねているシリアで行方不明になったAustin Tice記者)が12年前にシリアで行方不明になったことを理解しています。12年です。12年前のシリアで何が起こっていたかはわかっています。国は双方の軍事行動に巻き込まれていました。アサド大統領は、私の理解する限りでは戦闘地帯で活動していたこの米国市民、ジャーナリストに何が起こったかを果たして知っているでしょうか?それでも、私は彼にこの質問を必ずすることを約束します。ちょうどこの質問を、現在シリアの現地で状況をコントロールしている人々に転送できるのと同じです。

(2)アサド政権崩壊はロシアの敗北か:あなたはシリアについて言及しました。あなたと、私が言ったように、あなたの給料を払っている人たち(NBCや米国のメディア)は、シリアの現在の展開をロシアの敗北として提示したいのです。私はそうではないと断言します。その理由はここにあります。私たちは10年前にシリアにやって来たのは、例えばアフガニスタンのような他の国々で見られたようなテロリストの拠点がシリアに作られるのを防ぐためでした。私たちはその目標を概ね達成しました。当時アサド政権や政府軍と戦っていたグループでさえ、内部で変化を遂げています多くの欧州諸国や米国が今、彼らとの関係を築こうとしていることは驚くべきことではありません。もし彼らがテロ組織だったら、彼らはこのようなことをするでしょうか?これは彼らが変化したことを意味します。ですから、私たちの目標はある程度達成されました。

(3)アサド政権軍は戦ったのか:我々はシリアに地上部隊を配備していません。単にそこに(地上軍は)存在しなかったのです。我々のプレゼンスは、空軍基地と海軍基地の2つの基地のみから成っていました。地上作戦はシリア軍と、周知の事実ですが、親イラン戦闘部隊によって行われました。ある時点で、我々は特殊作戦部隊をその地域から撤退させました。我々はそこで戦闘に参加していなかったのです。それで何が起こったのでしょうか?武装反政府グループがアレッポに向かって進軍したとき、同市は約3万人の人員で守られていました。しかし、350人の過激派が市内に入ると、政府軍は親イラン部隊とともに抵抗することなく撤退し、撤退する際に陣地を破壊しました。このパターンは、小競り合いが起こったわずかな例外を除いて、シリア領土のほぼ全域で見られました。過去には、イランの友人たちが部隊をシリアへ移動させる支援を要請していましたが、今や彼らは我々に撤退の支援を求めています。我々は、フメイミム空軍基地からテヘランへのイラン戦闘員4,000人の移転を支援しました。親イラン部隊の一部(注:ヒズボラを指すとみられる)はレバノンへ撤退し、他の部隊は戦闘に参加することなくイラクへ撤退しました。

(4)トルコに関する見方:シリアに関しては、率直に言って、トルコはシリア情勢を踏まえて南部国境沿いの安全を確保し、トルコ領土からシリア国内のトルコ支配地域にある他の地域への(300万人規模の)シリア難民の移動条件を整え、クルド人勢力をトルコ・シリア国境周辺から追い出すために全力を尽くしていると私は信じています。これらの目標はすべて、ある程度達成可能であり、おそらく達成されるでしょう。我々は、トルコが何十年にもわたってクルド労働者党(PKK)との長年の課題に直面してきたことを十分に認識しています。我々はこれ以上のエスカレーションは望んでいませんが、一部の欧州政治家は最近、会議で、第一次世界大戦後、クルド人は独自の国家を約束されたが、結局は騙されたと述べています。
この地域のクルド人の人口は相当な数で、トルコ、イラン、イラクにまたがり、数千万人にのぼり、彼らは密集したコミュニティーで暮らしています。推定では、少なくとも3,000万から3,500万人のクルド人がいると言われています。これはクルド問題の重大さを浮き彫りにしています。クルド人は手強いだけでなく、粘り強く、闘志にあふれていることで知られています。例えば、彼らはマンビジから撤退しましたが、それは激しい抵抗の末のことでした。クルド人問題は解決が必要です。これはアサド大統領のシリアの枠組みの中で対処されるべきでした。今、これはシリア領土を現在支配している当局と解決しなければなりませんが、トルコも自国の安全を確保する方法を見つけなければなりません。私たちはこれらの問題の複雑さを理解しています。

(5)イスラエルに関する見方シリア情勢の進展の主な受益者はイスラエルであると私は信じています。イスラエルの行動についてどのような意見をお持ちでも構いませんが、ロシアはシリア領土の奪取を非難します。この問題に関する我々の立場は明確で不変です。同時に、イスラエルは自国の安全保障上の懸念に対処しています。例えば、ゴラン高原では、イスラエルは前線に沿って62〜63キロメートル前進し、幅20〜25キロメートルまで進軍しました。彼らは、もともとソ連がシリアのために建設した要塞を占領しており、マジノ線に匹敵する強力な防御構造となっています。我々は、イスラエルが最終的にシリアから撤退することを期待しています。しかし、現在、イスラエルはシリアにさらなる部隊を配備しています。すでに数千人の人員が駐留しているようです。撤退する意思がないだけでなく、駐留をさらに強化する計画もあるようです。さらに、現地住民はすでにユダヤ人国家に組み入れられることを望んでおり(注:ドルーズ教徒の一部の動きを指すとみられる)、今後さらに複雑な事態を引き起こす可能性があります。進行中の事態が最終的にシリアの分裂につながる場合、これらの問題は国連憲章と自決の原則に沿って現地住民が対処する必要があります。これは複雑な問題であり、おそらく(一時棚上げし)将来の議論に残しておくのが最善でしょう。
http://www.en.kremlin.ru/events/president/transcripts/75909

(参考3)アサド前大統領声明
アサド氏の声明とされるものは、通信アプリ「テレグラム」のシリア大統領府のチャンネルに投稿された。アラビア語と英語で書かれている。このチャンネルを誰が管理しているのか、あるいは声明がアサド氏によって書かれたものかは、いずれもはっきりしない。
声明でアサド氏とされる人物は、
@シリアの首都ダマスカスが反体制派に掌握されたことを受け、「戦闘作戦を監督するために」ラタキア州にあるロシアのフメイミム空軍基地に移動したと説明。現地ではシリア軍がすでに持ち場を放棄していた。
A同基地も「激しいドローン(無人機)攻撃」にさらされたため、ロシア側がアサド氏をモスクワに航空機で移動させることを決めた。「基地を離れる現実的な手段がなかったため、ロシア政府は12月8日(日)夜、基地の司令部に対し、ロシアへの即時避難の手配を指示した。これはダマスカス陥落の翌日の出来事だった。最後の軍事拠点が崩壊し、それにより、残っていたすべての国家機関が機能不全となった。
Bこの間、辞任や避難を考えたことはなかったし、誰からも、どの政党からも、そうした提案を受けたことはなかった
https://www.bbc.com/japanese/articles/cvgp4lnp92lo
(コメント)アサド(前)大統領は、結局、ロシアに見捨てられ、ヒズボラに頼れず、イランも支援を断念し、アサド政権はもろくも崩壊したことが、プーチン大統領の発言などで明らかになってきた。自ら闘う意思のないアサド政権軍を、ロシアは支援する気はないとの建前であるが、ひとことでいえば、プーチンにとってアサド政権に肩入れすることによって得られる「プラス」より、「マイナス」がはるかに大きくなったということに尽きる。プーチンは、一度はトルコとの了解で、ナゴルノカラバフ紛争の停戦を実現したが、2023年9月のアゼルバイジャンによる攻勢において、プーチンはアルメニア側勢力を見捨てた。今回もアサドは、モスクワに飛んでアレッポへの攻勢を開始したHTS部隊の進軍を阻止してほしいとプーチンに直訴したが、断られたことが示唆されている。プーチンにとって重要なのは、トランプ次期政権の理解を得て、如何にウクライナ危機を自国有利な形で終わらせるかである。シリア問題が足手まといになることはなんとしても避けたかったに違いない。ここで、ロシアはシリアに再び軍事介入すれば、トランプとの関係を悪化させ、ウクライナ問題の処理でロシア寄りの妥協策が遠のくことを恐れたのは間違いない。もちろん、フメイミム空軍基地やタルトゥース海軍基地の権益を損なうことになる可能性があることは大きな安全保障、地政学的マイナスではある。しかし、海軍基地移転については、リビア東部勢力との支援が期待できる。フメイミムは、もともと、2015年9月の軍事介入までは、ロシアの基地ではなかった。エルドアン政権との関係もプーチンにとっては重要である。トルコとの関係は、2024年末をもって、ウクライナ経由の欧州向け天然ガス供給がパイプライン閉鎖によって終了する。トルコ経由のトルコストリームラインを経由した欧州向けガス供給は、ロシアが欧州諸国との関係を維持するうえで、さらにロシアの財政をこれ以上悪化させないためにも必要である。そして、トルコではロシア製アックユ原発の建設も続いている。ロシアとトルコは、2017年に開始された体制側と反体制側の緊張緩和、停戦を実現したアスタナ・プロセスの当事者でもある。本来的には、HTSの侵攻を合意違反であるとして、止めさせることもありえたはずである。しかし、ロシアもトルコも、HTS部隊の進攻を黙認した。プーチン発言のとおりであれば、「350人の過激派が市内に入ると、アサド政府軍は親イラン部隊とともに抵抗することなく撤退した。このパターンは、小競り合いが起こったわずかな例外を除いて、シリア領土のほぼ全域で見られた。」ということで、政府軍は、実質、戦わずして敗北を選んだということになる。プーチンが、12年前に行方不明となった米国人ジャーナリストの消息を必ずアサドに尋ねると約束したことは、トランプ次期大統領を意識していることを示しており、「アサド政権や政府軍と戦っていたグループでさえ、内部で変化を遂げています」と発言し、元アルカーイダ系の組織が、欧米に受け入れられる穏健で信頼できる組織に変貌したと評価している。2024年3月22日にモスクワのコンサートホールで発生したイスラム過激派の襲撃事件を激しく非難したのと同じ指導者の発言である。これは、プーチンは、直接あるいは間接的にトルコと組んで、HTSの進攻を黙認していたという告白とも考えられる。最後に、HTS暫定政権は、シリアのゴラン高原がイスラエルに占領されており、占領地が拡大している状態にもかかわらず、イスラエルを一切非難していない。イスラエル軍は、今回の政変にあたって、旧シリア軍の武器弾薬保管庫などを徹底的に爆撃し、それはイスラエルの安全保障上必要な措置であったと述べているが、実際のところ、旧政権側の勢力が、HTS部隊などへの反撃をできないようにするための側面支援の意味合いがあったものと考える方が納得できる。おそらく、イスラエル軍は、敵の敵は味方という論理で、HTSにこれまで武器や資金を支援してきたのではないかと想像される。かつて、バッシャールの父ハーフェズ・アルアサド大統領は、シリアは、一インチ(一握り)の土地さえ譲歩することはないと言い続けてきた。新生シリアは、アラブ世界7番目のイスラエルとの間で国交正常化する国になるのだろうか

Posted by 八木 at 09:51 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

この記事のURL

https://blog.canpan.info/meis/archive/589

トラックバック

※トラックバックの受付は終了しました

 
コメントする
コメント