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米議会下院選挙での民主党ムスリム女性議員2名の再選決定[2024年11月07日(Thu)]
2024年11月5日に実施された米国大統領選挙では、トランプ大統領が激戦州で勝利し、過半数270以上を確保し、カマラ・ハリス副大統領に得票数でも約500万票の差をつけて、直前の接戦予想を覆し、来年1月20日の大統領復帰を確実にした。同時に実施された、上院選挙(1/3)改選、下院選挙(全員)でも、上院で共和党が過半数を確保し、下院でも過半数確保が予想され、民主党の敗北が決定的となった。こうした中で、中東・ムスリム関連での民主党のかすかな光は、下院ミネソタ州 地区 5でのイルハン・オマル候補の勝利(約75%の得票率)と、ミシガン州 地区 12でのラシーダ・トライブ(メディアではタリーブと表記されることが多い)候補(約70%の得票率)が四選を果たしたことである。両候補は、2016年11月の下院選挙で初めて当選し、イスラム教徒の女性議員が誕生したのは、2016年11月の選挙が初めてであった。イルハン・オマル議員は、ソマリア系難民の出身で、ラシーダ・トライブ議員はパレスチナ系2世である。両議員とも、ムスリム女性議員として、米社会でのマイノリティの代表として、議会内やメディア、イスラエル支持者などからさまざまな圧力を受けながらも、ムスリム、パレスチナ人擁護、イスラエルによるガザ、レバノン戦争の継続反対に声をあげ続けている。

(参考1)イルハン・オマル議員の共和党支配議会への戦い
米共和党が過半数を握る連邦議会下院は23年2月2日、民主党のイルハン・オマル下院議員(ミネソタ州選出)を所属する外交委員会から除名する決議を可決した。下院の共和党議員からは、オマル氏について、過去の発言を理由に委員を務めるべきではないとする声が上がっていた。採決は除名に賛成が218票、反対は211票だった。オマル氏は採決に先駆けての演説で、委員会から1期除名されるとしても自分のリーダーシップと発言が弱まることはない、発言はむしろ一段と大きく、強くなるだろうと述べた。

(参考2)ラシーダ・トライブ議員の共和党支配議会への戦い
米下院は2023年11月7日、トライブ議員への問責決議を234対188で可決した。トライブ議員はイスラム組織ハマスによる攻撃があった23年10月7日以来、パレスチナを支持してガザへの侵攻を拡大し、民間人多数が犠牲になっているとしてイスラエルのネタニヤフ政権を批判する言動を続けていた。問責決議には、共和党大多数の議員に加えて、民主党からも22人が賛成に回って可決された。民主党議員の多くは反対し、共和党議員からも4人が反対票を投じた。しかし、彼女のパレスチナ支持、停戦に向けての呼びかけはまったく弱まっていない。

(参考3)米国のムスリム
米国におけるムスリムのプレゼンスは米国宗教国勢調査によれば、約445万人、全人口1.3%で、新たな移民も小さく、規模からして彼らが、選挙の動向を左右する力をもっているとまではみなされていなかった。さらに、2001年9月11日に起きた米国同時多発テロの首謀者であるアルカーイダが米国民のムスリムに対するイメージを悪化させた。加えて、2023年10月7日のハマスの越境イスラエル人攻撃でムスリムのイメージが悪化したとみられている。一方で、親パレスチナの大学デモが盛んなのが米国である。かつて「ベトナム反戦」の学生運動の象徴ともなったコロンビア大学では、イスラエルのパレスチナ自治区ガザへの攻撃に抗議するデモが拡大し、ついには警官隊が学生の占拠するホールに突入する事態ともなった。コロンビア大学は、オリエンタリズムの作者としても知られているパレスチナ系のエドワード・サイードが教鞭をとっていた大学でもある。
ガザ危機に際して、米国のムスリムの大半は、パレスチナ人に対して同情的で、米国ムスリムのパレスチナ人全面支持率は45%(これに対して米国人全体では5%)であったとされる。

(コメント)大接戦が予想されていた今回の大統領選挙のもうひとつの注目点が、同時に実施された上院選挙、下院選挙であった。大統領選挙とあわせて、共和党の全面的勝利がほぼ確実になってきた。米国最高裁判事も共和党から支持をうけた判事が多数を占める。トランプ次期大統領は、前回2017年1月就任直後、ムスリムバンというイスラム教徒入国禁止措置を打ち出し、その後、米大使館のテルアビブからエルサレムへの移転、イラン核合意からの一方的離脱(2018年5月)とイランへの制裁発動(第一号2018年8月、第二号2018年11月、イラン石油輸入国への制裁免除の廃止2019年5月)などイスラム勢力への厳しい圧力と親イスラエル姿勢をアピールし、さらに、2020年8月には、UAE・イスラエルの国交正常化を実現し、その年、バーレーン、スーダン、モロッコが続いた。
今回の米国の選挙での争点は、@経済、A移民対策、B中絶是否、といわれていた。確かにこれらの問題が有権者の投票に大きな影響を与えたことは、間違いないが、「外交」分野におけるバイデン政権への絶望感と不満が、僅差の激戦州でのトランプ候補の勝利に結びついたものと考えて間違いはないと思われる。トランプ候補は、ウクライナ危機は就任直後に終わらせる、中東紛争も直ちに収束させると宣言していた。ガザ危機では、事件発生後1年以上を経過したにもかかわらず、ネタニヤフ政権のガザへの攻撃は、ハニーヤ政治局長(7月31日テヘランで暗殺)、ムハンマド・ディーフ・カッサーム旅団司令官(イスラエルは7月殺害と発表)、ヤヒヤ・シンワル政治局長(イスラエルは10月17日殺害と発表、越境襲撃の計画責任者とされる)ら10月7日襲撃の責任者とされる人物をすべて殺害したにもかかわらず、政権内で人質解放を優先すべきと主張していたと伝えられたガラント国防相を解任してまで継続しており、一方、レバノンでは、9月27日ヒズボラの指導者ナスラッラー書記長をバンカーバスター爆弾で殺害し、NO2とみなされていたハシェム・サフィエディーン師も10月4日の空爆で殺害したとされ、現在もレバノン南部での地上侵攻とベイルート、バールベック、南部レバノンなどへの空爆を継続し、死者は3千人に達しているとされる。とりわけガザについては、イスラエルの自衛権支持を表明し、4万3千人以上の死者が出ているにもかかわらず、イスラエルのガザ攻撃継続を止めることができなかった、あるいは本気で止めることをしなかったバイデン政権のNO2として、ハリス候補への不信感が、一部のアラブ票・ムスリム票を含め、トランプに流れたか、あるいは第3の候補に流れたとみられる。イスラム教徒が多数といわれるミシガン州をみても、@トランプ2,795,917 票 Aハリス2,714,167 票 Bジルスタイン44,642 票 Cケネディ26,769 票で、トランプ・ハリスの差は、81750、B+Cで71411であるので、トランプ対反トランプでみると約1万票で、民主党政権とその中枢にあったハリス副大統領への不満が、トランプ候補のわずかな勝利に結びついたとみることができる。
イルハン・オマル議員とラシーダ・トライブ議員は、上述のとおり既に共和党多数の下院で、外交委員会除名や、問責決議を受けており、今後、議会内での共和党サイドからの更なる圧力を受けることは間違いない。しかし、トランプ就任までの2カ月半、ネタニヤフ政権が内部からも外部からも抑止力がなくなり、ガザでも、レバノンでも、あるいはイランに直接でも戦闘を拡大することがあれば、それを抑止するために先頭に立って声をあげるのは、両議員であることは間違いない。トランプ就任までの2カ月半が、ウクライナでも中東でも、さらなる壊滅的被害が起こりうることを世界の指導者は認識して、連帯して対応をとるべきであろう。

Posted by 八木 at 11:41 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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