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イランによる「真実の約束作戦その2」の実行[2024年10月02日(Wed)]
2024年10月1日、イランイスラム革命防衛隊(IRGC)は声明を発表し、「殉教者ハニーヤ(殺害されたハマス前政治局長)、サイイド・ハッサン・ナスラッラー(殺害されたヒズボラ書記長)、ニルフォルーシアン(IRGC作戦副指揮官、27日のナスラッラー殺害の際、一緒に死亡したとみられている)の暗殺への報復として、占領地(すなわちイスラエル)の中心部を標的にした」と述べた。さらに声明では「イスラエル」に対し、「シオニスト政権がイランの作戦に報復すれば、暴力的な結末を迎えることになる」と警告した。イスラエルの報道によると、イランからは181発のロケット弾が発射され、ネタニヤフ首相は直後に「(イランは)大きな過ちを犯した。この代償を支払うことになる」との警告を発した。イランの今回の攻撃は、「真実の約束作戦その2(True Promise 2)」と名付けられた。IRGCの作戦は、その前身である「真実の約束作戦」にちなんで、作戦その2と宣言された。前の作戦は、4月1日にイスラエル軍によるダマスカスのイラン大使館への攻撃とその際のIRGC司令官の殺害への報復として、4月13日から14日にかけてイランから「イスラエル」に対して前例のないイラン本土からのドローンとミサイルによる攻撃が行われた。但し、前回は、イラン側は、近隣諸国などに攻撃を予告し、イスラエルや同国を支える米軍などが十分迎撃態勢を整えることができるタイミングで実施されたため、ほとんど実質的な被害はなかったとされる。IRGCは、2度目の声明で、テルアビブのネバティム、ハツェリム、テル・ノフ空軍基地の3つの軍事基地が標的になったことを確認した。これは、ネバティム基地にはF-35戦闘機が、ハツェリム基地には殉教者サイイド・ハッサン・ナスラッラーの暗殺に使用されたF-15戦闘機が配備されており、ヒズボラの殉教指導者の暗殺への報復として標的にされたと断言した。
さらに、IRGCの2回目の声明によると、イランが占領下のパレスチナ領土に向けて発射した第一波の弾道ミサイルと飛翔体の少なくとも90%が標的に命中したとしている。タスニム通信によると、攻撃は占領下の都市アスカラン近郊のガス・プラットフォームにも命中したとしている。一方、イスラエル側の被害ははっきりしていない。イスラエル側ではパレスチナ人1人が死亡し、二人が負傷したと報じられている。

(コメント)イランは、10月1日のイスラエル軍による南部レバノンへの限定的侵攻開始と伝えられたタイミングで間髪を入れず、イラン本土からのイスラエルへの弾道ミサイル攻撃に踏み切った。この作戦を、イランは、「真実の約束作戦その2」と名付けた。イランのハメネイ師は、7月31日、テヘランでハニーヤ・ハマス政治局長が暗殺されたあと、イスラエルへの報復を誓ったが、実施されていなかった。そして、9月27日、イランにとって最も重要な同盟勢力であるレバノンのシーア派組織ヒズボラのナスラッラー書記長が、ベイルート南部で米国製の通常兵器では最も破壊力が強いといわれるバンカーバスター爆弾の投下により、ビルの地下に待機していたとされるナスラッラー師を爆殺した(但し、遺体は損傷がなく、圧迫死か酸欠死かとみられている由)。イスラエル軍は、ヒズボラのテロ指導者ハッサン・ナスラッラー書記長を暗殺する作戦を「新秩序(New Order)」と名付けたと発表していた。この意味は、ハマスのハニーヤを殺害し、ナスラッラーを殺害し、場合によっては、ハメネイだって狙えますよと脅して、イスラエルの周りの「テロリスト」をすべて殲滅し、6万人の北部イスラエルの避難者を自宅に戻し、ネタニヤフ戦時内閣の下、完璧な安全を回復したと国民に訴え、支持を回復させようとする狙いだと思われる。しかし、ネタニヤフ政権は、ガザでの人質解放を実現したのであろうか、少なくとも、歴代のイスラエル政権は、人質の解放に最優先度を置いていたように感じていたが、ネタニヤフ政権からはまったくそれが感じられない。ナスラッラー師の殺害は、まさにネタニヤフ首相が、これまで、維持されてきた「交戦ルール」を破棄して、イスラエルに脅威を与えると「現政権」が決定すれば、政治指導者であれ誰であれ、他国の首都であれ、どこにでもいって、圧倒的優位なIT技術を駆使して、市民を巻き込んでも標的の暗殺、襲撃を実行するという政策変更を意味する。イランの最高指導者ハメネイ師も居場所を変更したとされる。また、盗聴、ピンポイント爆撃などを避けるため、イラン側の通信機器をロシア製に変更する計画も進められているとされる。米国大統領候補のドナルド・トランプ前大統領は、自身のSNS投稿で「この戦争は完全に防ぐことができた。決して起こるべきではなかった。私が大統領だったら、こんなことは起こらなかっただろう!」と投稿した。トランプ前大統領の発信をそのまま受け取ることはできないが、バイデン政権が、ガザ危機の発生からレバノン危機への移行、そして、イスラエルとイランの直接戦争に至る事態の深刻化を全く止めることができない、あるいは止めようとはせず、レバノン全土とシリアで市民多数を巻き込んだ通信機器一斉爆発も非難せずナスラッラー師殺害を支持し、イスラエル軍の南部レバノン地上侵攻に理解を示し、次に、今回のイランからの攻撃を踏まえ、イスラエルを防衛するためとして、イスラエル軍によるイラン本土への直接攻撃を容認することになれば、まさにネタニヤフ首相が狙ったとおり、緊張を激化し、米国を巻き込むという戦術にのせられたことになる。現在までのところ、原油価格には大きく影響していないが、軍事力で劣るイランが、IRGCだけでなく、政治指導者が狙われたりすれば、戦闘は泥沼化し、ホルムズ海峡封鎖が現実のものとなる危険も排除されない。そうなれば、日本を含めアジア諸国も対岸の火事ではなくなる。従来、このような危機では、大国のバランス感覚が働き、停戦を実現する動きが出てくるが、ウクライナ危機以降、安保理も機能不全に陥っており、状況の悪化が放置されないか懸念が拡大する一方である。
https://english.almayadeen.net/news/politics/iranian-response-has-begun--sirens-sounded-all-over--israel
https://english.almayadeen.net/news/politics/who-was-the-senior-irgc-commander-martyred-alongside-sayyed
https://www.tasnimnews.com/en/news/2024/10/01/3169883/irgc-90-of-missiles-have-hit-israeli-targets
https://www.timesofisrael.com/israel-warns-of-consequences-after-iran-launches-181-missiles-in-major-attack/

Posted by 八木 at 09:21 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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