イスラエルにとって「必要悪」から「抹殺対象」に変化したヒズボラ政治指導者[2024年09月28日(Sat)]
イスラエル軍は、ヒズボラのテロ指導者ハッサン・ナスラッラー書記長を暗殺する作戦を「新秩序(New Order)」と名付けたと発表した。イスラエル軍のハガリ報道官は9月27日、レバノンの首都ベイルートにあるヒズボラの本部のある住宅地に「精密攻撃」の実施を発表していた。民間の建物の下層にある「ヒズボラの本部」を狙ったもので、イスラエル・ラジオによればバンカーバスター型の地下施設も一挙に破壊する大型攻撃が実施された。ハガリ報道官は「意図的にレバノン市民を人間の盾として使っていた」と主張。また、攻撃は「イスラエル国民を守るために必要な措置だった」と述べていた。 この発表ではナスラッラー師の生死にかかる言及はなかった。しかし、イスラエル軍は9月28日、ヒズボラの最高指導者ナスラッラー師を殺害したと発表した。イランのIRGC系タスニム通信は、27日時点でナスラッラー師は無事であると報じたが、その後の安否確認の報道はない。ヒズボラのアル・マナールTVも安否報道はなされていない。他方、ナスラッラー師とは、通信が取れない状況が続いている由。レバノン当局は、6名が死亡したとされる。
(コメント)イスラエル軍のハガリ報道官が、ヒズボラはレバノン市民を「人間の盾」として使っていたと述べたことに対して、強い違和感を感じざるをえない。そもそも、今回の攻撃は、イスラエル国内ではなく、隣国レバノンの首都で実施された。レバノン軍やヒズボラはイスラエルの領空侵犯に対して、それを効果的に防御できる防空システムも航空戦力も有していない。イスラエルとレバノン側との戦闘は、イスラエル軍がその気になればなんでもできる非対象戦力によるものである。すなわち、明らかに国際法違反の攻撃であり、他国に侵入した軍が、「人間の盾」という主張を行うことは受け入れがたい。ナスラッラー書記長は、92年に三代目書記長として就任し、以後32年にわたって、ヒズボラのトップとして、ヒズボラをまとめてきた。ヒズボラは軍事組織だけではなく、レバノン議会でも13議席を有し、閣僚も出し、福祉社会活動にも参加している総合的な組織である。イスラエル歴代政権も、92年にアッバース・ムーサウィ前書記長を殺害して以来、ナスラッラー書記長については、敵ながら全面的な対立回避を理解できる指導者として、「必要悪」として、暗殺は控えてきた印象がある。しかし、7月31日のテヘランでのハニーヤ・ハマス政治指導者の殺害以降、もはやヒズボラのあらゆる指導者、司令官は、イスラエルにとって敵とみなせば、危険な人物は、どこに居ても誰であっても殺害するという「新秩序」構築を打ち出したとしか思えない。イスラエル軍は過去1週間にベイルート南部郊外を4回攻撃し、少なくとも3人のヒズボラ司令官であるイブラヒーム・アーキル、アハメド・ワフビー、イブラヒーム・クバイシを殺害した。レバノン保健省によると、イスラエルの攻撃で少なくとも1,300人が死亡したとされる。通信機器の一斉爆破でも民間人多数が殺害され、駐レバノン・イラン大使も失明したとされる。イスラエルは、何をやっても許されるのであろうか。国際社会は、ネタニヤフ首相が国連演説で述べたように、イスラエルの安全を脅かすとみなせば、如何なる攻撃も正当化されるのか、国際社会は、それを認めるしかないのか、技術力と軍事力が優る勢力に屈服するしかない方向に世界がシフトしていることを感じざるをえない。
https://www.timesofisrael.com/idf-says-hezbollah-terror-chief-nasrallah-other-top-commanders-killed-in-beirut-strike/
(コメント)イスラエル軍のハガリ報道官が、ヒズボラはレバノン市民を「人間の盾」として使っていたと述べたことに対して、強い違和感を感じざるをえない。そもそも、今回の攻撃は、イスラエル国内ではなく、隣国レバノンの首都で実施された。レバノン軍やヒズボラはイスラエルの領空侵犯に対して、それを効果的に防御できる防空システムも航空戦力も有していない。イスラエルとレバノン側との戦闘は、イスラエル軍がその気になればなんでもできる非対象戦力によるものである。すなわち、明らかに国際法違反の攻撃であり、他国に侵入した軍が、「人間の盾」という主張を行うことは受け入れがたい。ナスラッラー書記長は、92年に三代目書記長として就任し、以後32年にわたって、ヒズボラのトップとして、ヒズボラをまとめてきた。ヒズボラは軍事組織だけではなく、レバノン議会でも13議席を有し、閣僚も出し、福祉社会活動にも参加している総合的な組織である。イスラエル歴代政権も、92年にアッバース・ムーサウィ前書記長を殺害して以来、ナスラッラー書記長については、敵ながら全面的な対立回避を理解できる指導者として、「必要悪」として、暗殺は控えてきた印象がある。しかし、7月31日のテヘランでのハニーヤ・ハマス政治指導者の殺害以降、もはやヒズボラのあらゆる指導者、司令官は、イスラエルにとって敵とみなせば、危険な人物は、どこに居ても誰であっても殺害するという「新秩序」構築を打ち出したとしか思えない。イスラエル軍は過去1週間にベイルート南部郊外を4回攻撃し、少なくとも3人のヒズボラ司令官であるイブラヒーム・アーキル、アハメド・ワフビー、イブラヒーム・クバイシを殺害した。レバノン保健省によると、イスラエルの攻撃で少なくとも1,300人が死亡したとされる。通信機器の一斉爆破でも民間人多数が殺害され、駐レバノン・イラン大使も失明したとされる。イスラエルは、何をやっても許されるのであろうか。国際社会は、ネタニヤフ首相が国連演説で述べたように、イスラエルの安全を脅かすとみなせば、如何なる攻撃も正当化されるのか、国際社会は、それを認めるしかないのか、技術力と軍事力が優る勢力に屈服するしかない方向に世界がシフトしていることを感じざるをえない。
https://www.timesofisrael.com/idf-says-hezbollah-terror-chief-nasrallah-other-top-commanders-killed-in-beirut-strike/
Posted by 八木 at 19:45 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)