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ミシガン州のイエメン系アメリカ人イスラム教徒市長によるトランプ候補への支持表明[2024年09月24日(Tue)]
9月23日付のミドル・イースト・アイの記事によれば、来る11月の大統領選挙での激戦州のひとつミシガン州のデトロイトからわずか数分の位置にあるハムトラムク市のアーメル・ガーリブ市長は、9月22日のフェイスブック投稿で、「トランプ大統領と私はすべてにおいては、意見が一致しないかもしれないが、彼が信念を貫く人であることはわかっている。この重要な時期に彼が正しい選択だと信じている。結果がどうなろうと、私は自分の決断を後悔することはなく、その結果に立ち向かう覚悟ができている」として、トランプ前大統領を支持すると発表した。24年1月、ガーリブ市長はバイデン政権が中東でのイエメン空爆に資金援助していることに抗議し、ホワイトハウスからの全米市長会議への招待を断った。当時同市長は、多くのイスラム教徒やアラブ系アメリカ人と同様に、民主党に裏切られ、疎外されたと感じていると表明した。

ガーリブ市長は、共和党候補の予定されていた選挙集会のわずか1週間前にミシガン州フリントでトランプ氏と初めて会談した。会談は20分間続き、同じく同席していたイエメン系アメリカ人のハムトラムク市議会議員、ハリール・リファイ議員は、トランプ候補が、2017年の大統領就任早々に入国阻止を試みたムスリム・コミュニティの支持を取り戻すために働きかけがあったたこと示唆した。「ムスリムバン(イスラム教徒入国禁止令)」として一般に知られるこの大統領令は、共和党系判事が多数を占める最高裁で、イエメンをリストに載せたままで、トランプ政権による3回目の改訂を支持した。
リファイ議員は、トランプ候補は単独で来たのではなく、末娘ティファニーの義父で著名なレバノン人実業家マサド・ボウロス氏を連れてきた。ボウロス氏は、イスラエルの手による中東での膨大な死者数に対する民主党の無視に幻滅したアラブ人コミュニティにトランプ陣営が働きかけるのを支援してきた。この動きは、今年初めにはほとんど効果がなかった。しかし、最近まで民主党員として登録されており、現在はトランプを支持するアラブ系米国人会長を務めているハーバード大学の元研究者ビシャラ・バーバ氏は、「バイデン大統領やハリス副大統領の政策にはガザ停戦に向けての影響力が全くなかった」と語り、トランプ氏は「戦争全般に強く反対しており、ガザでの戦争の終結を望んでいる、また、(イスラエルのベンヤミン)ネタニヤフ首相が恐れているのは、世界中でトランプ大統領だけだと私は信じている」と語った。トランプ候補は、停戦に関する立場を明確にすることなく、イスラエルにガザでの「任務を終わらせる」と繰り返し述べている。

(参考)トランプ大統領のイスラム教徒入国禁止措置(いわゆるムスリムバン)
1.ムスリムバン第一弾
•2017年1月27日、トランプ大統領が署名した最初の大統領令(13769)は、米国への入国をすべての難民について120日間、シリア難民については無期限に禁止し、2017年の難民受け入れの上限を5万人に設定し、さらにムスリムが多数を占める7か国(イラン、ソマリア、イラク、リビア、スーダン、シリア、イエメン)の国民の入国も禁止した。
•トランプの大統領令は、迫害や戦争を逃れてきた避難民の保護を拒否するもの。因みに、標的とされた7つのムスリム多数国出身の移民または難民が米国本土にテロ攻撃を行ない、死者を出したことはない。
•トランプ政権は、これは「ムスリムバン(ムスリム禁止令)」ではないと主張したものの、中東・アフリカ地域でムスリムが多数の国民を一律入国禁止措置をとるものであり、ムスリム禁止令とみなされてしかたがない。
•この渡航禁止令が拙速に実施されたために、米国にやってきた人びとが入国を阻まれ、空港で収容され、はては退去強制の対象になった。
•これに対して、標的とされた国の国民と連携するデモや抗議行動が全米で繰り広げられ、連邦地裁は、大統領令の一時差し止めを命じた。
2.ムスリムバン第2弾
•トランプ大統領は、2017年3月6日に第1弾をやや緩和した大統領令第2弾(13780)を発動し、これによって当初の法的懸念への対応がなされたことを願うと述べた。第2弾は、第1弾で対象となったムスリムが大多数を占める7か国のうち、イラクを除く6か国の出身者について90日間、またすべての難民について120日間、入国を禁止するという内容。
•迫害を受けている宗教的マイノリティに関する条項は削除され、またグリーンカードおよび査証保持者には適用されないこととされた。
•この大統領令は、ハワイ州とメリーランド州の連邦裁判官によって差し止められた。裁判官らの判断は、この直近の禁止令はムスリムに対する差別であり、したがって宗教の自由について定めた連邦憲法の規定に違反するというものだった。トランプ大統領は、これは国家安全保障のために、また米国をテロリストの攻撃から守るために必要であると主張した。連邦司法省は、より保守的な連邦第4巡回区控訴裁判所に上訴するとし、トランプ大統領は、最終的には、連邦最高裁までこの問題を持ちこむ意思を明らかにした。
•2017年6月27日、米国最高裁判所は、政府が禁止の一部を縮小して実行することを許可した。裁判所の判決は、政府が6か国の国民の90日間の入国禁止または難民の120日間の入国禁止のいずれかを、米国の個人または団体との「誠実な関係」を主張できる個人に適用することを禁じた。
3.ムスリムバン第3弾
•2017年9月24日、トランプ大統領は就任以来3回目となるベネズエラ、北朝鮮、イラン、リビア、ソマリア、シリア、イエメン、チャドの8か国入国禁止を宣言( Presidential Proclamation9645)。
•第3弾に対して米連邦最高裁判所は2017年12月4日、イスラム圏や北朝鮮など8カ国の国民の入国を禁じる大統領令については、ベネズエラ、北朝鮮を除く6か国については 「ムスリム禁止令」にあたるとして訴訟が提起されていたが、関連の審議が継続している間は、禁止令の執行停止を認めない判断を下した
•最高裁の判事9人のうち7人が禁止令の執行を差し止めた下級審命令を無効とした一方、2名の判事は反対した。
•米連邦最高裁判所は2018年6月26日、ドナルド・トランプ米大統領が2017年9月に出したイスラム圏5カ国からの入国制限措置を支持する判断を示した。トランプ大統領は同日、この判断を称賛した(注:チャドは、第2弾のイラクに続いて、テロ情報の共有などの取り組みに改善が見られたとして対象から外れた)。
•下級裁判所は入国禁止令を違憲としていたが、9人いる最高裁判事のうち保守派の5人が禁止令を支持し、賛成5、反対4でこれを覆した。
•トランプ氏は、メキシコ国境に壁を作る自分の計画を話し合ったホワイトハウスでの会合で、最高裁の判断は「素晴らしい成功」だと称賛した。下級審が下した判断を最高裁が変更したその決定は、トランプ政権の勝利と見なされている。
•イラン、リビア、ソマリア、シリア、イエメンの5カ国から米国を訪れようとする大半の人について、米国入国禁止が確定した。
4.ムスリムバンの撤回
•バイデン大統領は、2021年1月20日の就任初日に「ムスリムの入国禁止」の撤回を含む6つの移民関連の大統領令に署名した。
•ムスリムバンは2017年に制定され、シリア、イラン、イラク、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンから米国への渡航と移民を制限し、2020年には、エリトリア、ナイジェリア、ミャンマー、キルギスタン、タンザニアを追加した。国務省はこれらの国のビザ申請を再開するように指示された。
•上記の国の一部の人は一時的なビザを取得することを許可されていたが、グリーンカードで米国に居住することは許可されておらず、ビザ申請者のごく一部の人だけが渡航禁止の免除を許可されていた。
•2020年7月20日に、イスラム教徒の票取り込みを意識した民主党のジョー・バイデン大統領候補はイスラム教徒の政治組主催の3千人が参加するバーチャル会議に出席し、自身が大統領に選出された暁には、就任「初日に」ムスリムバンを取り消すと語っていた。

(コメント)イエメン系のイスラム教徒であるミシガン州のハムトラムク市のガーリブ市長が、トランプ大統領候補への支持を表明したことは、驚きである。2017年の大統領就任直後に、トランプ大統領は、メキシコ国境に物理的な壁を建設することを命じたほか、シリア、イラン、イラク、スーダン、リビア、ソマリア、イエメンから米国への渡航と移民を制限するいわゆる「ムスリムバン」の措置を実施した。ムスリムにとっては受け入れがたい差別であり、民主党議員や支持者は、トランプ大統領の政策の中止を求めた。しかし、最高裁の支持もうけて、トランプ大統領は、ムスリムバンを微修正しながら、その骨格を維持してきた。こうした中、大統領選の激戦州であるミシガン州内のガーリブ市長が「トランプ大統領と私はすべてにおいては意見が一致しないかもしれないが、彼が信念を貫く人であることはわかっている。この重要な時期に彼が正しい選択だと信じている。」としてトランプ支持を表明し、トランプ候補自身とも20分間会談したと報じられた。この決断は、如何に一部のムスリム市民が、ガザ停戦に向け、ネタニヤフ政権に十分な圧力を行使せず、むしろ、ネタニヤフ政権の延命と中東紛争のエスカレーションに歯止めをかけようとしない、あるいは歯止めをかけることのできないバイデン政権とその中核にいるハリス候補への失望の表れでもある。現在、バイデン大統領からハリス副大統領に民主党候補が変更となり、勢いを得たハリス候補ではあるが、現下の中東政策で、民主党支持を離れ、もしかすると、トランプ大統領であれば、今の状況を変えてくれるかもしれないとの一縷の望みをかけ、トランプ支持に鞍替えするムスリム市民も存在する可能性があることをバイデン政権は認識し、早急なガザ停戦と、エスカレートしているレバノン危機を抑制するためにあらゆる努力を惜しむべきではないと思われる。
https://www.middleeasteye.net/news/michigan-muslim-mayors-support-trump-stems-alienation-democrats-conservative-religious-values

Posted by 八木 at 16:35 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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