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米軍のイラク撤退合意[2024年09月09日(Mon)]
イラクに駐留する米軍主導の有志連合について、9月6日ロイター通信は、米軍撤退について米・イラク両国政府が、大筋合意したと伝えた。2014年に米軍を中心に結成された有志連合は、過激派組織IS掃討作戦のためにイラクに駐留し、ISが支配地域を失ったあとも現地にとどまっている。イラクと米政府は、米軍撤退問題について、2020年1月3日、イランのIRGCコッズ部隊カーセム・ソレイマニ司令官とイラクのPMF(人民動員部隊)のアブ・マフディ・アルムハンディス副司令官がバグダッド空港を車両で出ようとした際米軍のドローン攻撃で殺害され、それ以降イラク国内で米軍撤退の声が強まり、両国政府は撤退に向けて、議論をかわしてきた。2021年には両国協議を経て同年12月末までに米軍の戦闘部隊がイラクから撤退することになっていたが、訓練や助言その他の役割の軍隊はイラクに留まることで合意したものの、未だ約2500名の部隊が現地にとどまり親イラン・シーア派民兵組織は、それを偽りの撤退とみなしていた。2024年1月24日、米国とイラクは、イラクに駐留する米軍主導の有志連合軍の撤収と、それに代わる二国間関係のあり方に関する協議を開始することが駐イラク米大使からイラクのフセイン外相に手渡した書簡で明らかになっていた。今回の合意は、イランに支援されたイラクの武装集団がイラクの基地に駐留する米軍を攻撃する中、ムハンマド・シーア・アル・スーダーニ首相が本年1月に開始した6ヶ月以上の二国間協議によるもので、7月23日には、アッバースィ・イラク国防相がオースチン米国防長官とペンタゴンで会談している。今般明らかになった計画では、米軍は、2025年9月までにアイン・アルアラブ空軍基地やバグダッド周辺に駐留する数百人の部隊を撤退させるほか、残る北部クルディスタン地域のエルビル駐留部隊についても2026年末までに撤退させる予定。一方で、部隊の撤退のあとも米軍の一部については、イラク側を支援するために駐留を続ける可能性があるとされる。

(コメント)米国は、2014年に結成された連合軍の一員として、イラクに約2500人、隣国シリアに900人の部隊を配置している。イラクの民兵組織は、2020年1月8日、アイン・アルアサド空軍基地とエルビルの基地に向け、ソレイマニ司令官とイラクのPMF(人民動員部隊)のアブ・マフディ・アルムハンディス副司令官殺害への報復攻撃を実行し、死者は出なかったものの、複数の兵士にトラウマ的障害が発生したと報じられている。その後も、米軍基地への攻撃は、なくなっておらず、親イラン民兵組織は、2023年10月7日のハマスによる越境攻撃後イスラエル軍がガザに大規模侵攻して以降、イラク駐留米軍に対し少なくとも70回の攻撃を仕掛けている。また、1月28日には、イラク民兵組織「カターイブ・ヒズボラ」によるとみられる無人機による攻撃でシリア国境に近いヨルダン領内タワー22基地内で3人の米軍兵士が殺害され、40名以上の負傷者を出した。米軍は1月4日、米国はバグダッドでドローン攻撃を仕掛け、イラク・シーア派民兵組織の統括組織である人民動員部隊(PMF)のムシュタク・ターレブ・アル・サイーディ上級司令官を殺害した。数回にわたって報復攻撃を実行している。
これらの攻撃の応酬をうけ、イラク政府と米軍イラク駐留司令官らが協議を継続し、今回の米軍撤退の基本合意に至ったとされる。親イランのシーア派民兵組織は当然、この撤退合意をながらく待ち望んでいたものとして歓迎している。一方で、2021年の撤退合意のように、別の形での一部部隊の駐留継続、あるいは新たな理由による撤退見直しを警戒している。この撤退計画が実施されるとしても、本年11月の米大統領選挙の後の実施となる。トランプ候補が仮に大統領に復帰すれば、撤退合意を履行するのか撤回するのか、あるいは修正するのかは不透明である。イラクからの米軍撤退は、当然、シリアからの米軍撤退とも大きく関係している。シリアでは、米軍が、シリア北東部を実行支配するシリアのクルド人勢力を支援している。同地域は、シリアの石油・ガスの主要産出地であるが、米軍が撤退するとアサド政権が支配権奪回に動くことは確実である。一時期、アサド政権と冷え切った関係にあったトルコのエルドアン政権は、トルコがテロ集団とみなすPKK(クルド労働者党)と同根のテロ集団とみなすシリアのYPG(クルド人民防衛隊)・YPJ(女性部隊)あるいはクルド人勢力を主体とするシリア民主軍(SDF)からの脅威を取り除くため、アサド政権との関係修復に乗り出している。また、8月、トルコとイラクは、イラク北部のトルコ基地をイラク軍に移管し、トルコとイラクの合同訓練協力センターをそこで運営することに合意し、対PKK作戦で協力することとなった。トルコのエルドアン大統領は、9月7日、ガザで米・トルコ二重国籍の女性がイスラエル軍に殺害されたあとのコメントで、トルコがエジプトやシリアとの関係改善に踏み切っており、これは「増大する(イスラエルの)拡張主義の脅威に対抗する連帯路線を形成する」ことが目的であり、それ(拡張主義)がレバノンとシリアにも脅威を与えているからであると述べ、シリアとの関係改善に意欲的であることを明らかにしている。

(参考)イラクの流動的な政治情勢
2021年10月10日、イラクは第5回目の議会選挙を行った。 投票率は41%と低調であった。民兵グループと関係を共有し、長い間イラクの政治を支配してきたイランが支援するシーア派政党ブロックであるファタハ連合は、前回の48議席から17議席へと激減した。 ポピュリストのシーア派聖職者ムクタダー・アル・サドル師が率いるサドル潮流は最大の勝利者であり、議会で最大のブロックである329議席の組織で合計73議席(前回54議席)を獲得した。 スンニー派のタカダム同盟が2位で、マーリキー元首相率いる法治国家連合(シーア派)が33議席で第3位、クルド政党のKDPが31議席を確保し、クルド政党では第一位となった。総選挙で、サドル潮流は73議席を確保して、当然サドル潮流が組閣にあたるべきだとの立場であるが、シーア派調整グループは、88議席を集めたとして、同グループが組閣にあたるべきとの考えを示し、シーア派内の抗争が激化した。22年6月 イラク議会が政権樹立に何度も失敗して8カ月近く経った後、影響力のあるシーア派の宗教指導者であり、イラクの10月の議会選挙で最大の勝利を収めたムクタダ・サドル師は、もう我慢できないと決断し、サドル派の議員73名に辞表を提出するよう命じ、議員らは辞表を提出した。イラク国民議会は2022年10月27日、ムハンマド・シーア・アルスーダーニ氏を首相とする内閣を承認し、新政権が発足した。2021年10月の総選挙から1年近く続いた政治的停滞にようやく区切りがついた。再選挙を求めるサドル派による抗議活動が行われ、22年7月にはデモ隊が政府施設や各国大使館が集まるグリーンゾーン内に突入して議会を一時的に占拠した。8月下旬にもデモ隊がグリーンゾーン突入を試み、治安部隊との衝突で30人以上が死亡する事態も発生していた。

(最終確定数)2021年11月30日発表された当選者に基づく各ブロックが獲得した議席数(21年12月27日の連邦最高裁の決定で確定)
@サドル潮流(ムクタダー・サドル師):73議席を獲得右矢印1シーア派第一位。前回の54議席から大躍進。首相任命の主導権をとるとみられていた。
Aタカダム同盟(ムハンマド・アル・ハルブシ前議会議長)37議席右矢印1スンニー派第一位。アズム同盟と接近の動きあり。
B法治国家連合(ヌーリー・アル・マーリキー元首相)33議席右矢印1シーア派第二位
Cクルディスタン民主党(KDP)(マスウード・バルザーニ党首)31議席右矢印1クルド第一位
D独立系 43議席
Eクルディスタン愛国同盟(PUK)17議席右矢印1クルド第二位(独立系1人を加えて18議席との見方あり)
Fアルファタハ連合(ハーディ・アルアーミリィ・バドル機構代表)17議席右矢印1シーア派第三位。前回の48議席から激減
Gアズム同盟(ハンジャル・イラクのアラブプロジェクト事務局長)14議席右矢印1スンニー派第二位
H新世代 9議席右矢印1クルド政党
Iイムティダード 9議席
Jイシュラーカート・カーヌーン6議席右矢印1法律への参加の意味
Kタスミーム5議席
Lアーキッド・ワタニー4議席
M勝利同盟 4議席右矢印1ハイダルアバーディ元首相の政党
Nバビロン運動 4議席右矢印1キリスト教カトリック系
Oハスム運動 3議席
Pアイデンティティ連合 3議席
   その他、 17政党が1議席のみ確保 
https://www.reuters.com/world/us-iraq-deal-would-see-hundreds-troops-withdraw-first-year-sources-say-2024-09-06/
https://jp.reuters.com/world/security/VJ3AZGJBYZMKJJCCCS6M6HRR7A-2024-01-24/
https://www.defense.gov/News/News-Stories/Article/Article/3659809/3-us-service-members-killed-others-injured-in-jordan-following-drone-attack/
https://www.middleeasteye.net/news/us-and-iraq-agree-plan-withdraw-us-troops-report
https://www.timesofisrael.com/liveblog_entry/turkeys-erdogan-calls-for-islamic-countries-to-ally-against-growing-threat-of-expansionism-from-israel/

Posted by 八木 at 11:33 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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