ノルドストリーム爆破容疑者のウクライナへの脱出[2024年08月15日(Thu)]
2024年8月14日〜15日のドイツやロシアの報道によれば、本年6月ドイツ検察当局が2022年9月26,27日のバルト海のノルドストリーム海底天然ガスパイプラインの爆発事件への関与の容疑者として逮捕状を送付して、ポーランドに協力を要請していたウクライナ国籍の人物ウラジミール・Ts(注:ロイターによれば、ポーランドの法律では、犯罪捜査で容疑者のフルネームを公表することは認められていないとのこと)がポーランドからウクライナへ出国したと、ポーランド検察総長の報道官が述べた。報道官は、「ノルドストリームパイプラインの爆発事件への関与をドイツ治安当局が疑っているウクライナ人ダイバーのウラジミール・Tsは、7月初旬にポーランドからウクライナへ出国した」と、オネットニュースウェブサイトに語った。報道官は、容疑者の名前が(シェンゲン圏内の)国境警備局のデータベースに追加されていなかったため、ウクライナ人が国外に逃亡できたと述べた。ポーランドのシェモニアク内務大臣は、同国の法執行機関は海底天然ガスパイプラインの爆発の捜査で「ドイツなどの外国の機関と積極的に協力し、今後も協力を続ける」と述べた。これに先立ち、南ドイツ新聞はARDテレビとディ・ツァイト紙の合同調査結果を引用し、ドイツ連邦検察がノルドストリーム天然ガスパイプラインの破壊に関与した疑いでウクライナ人ダイビングインストラクターの逮捕状を発行していたと報じた。南ドイツ新聞は容疑者を最近ポーランドに住んでいたウラジミール・Ts氏と特定した。同紙によると、ドイツの検察はウクライナ人ダイビングインストラクター2人も捜査している。この3人はドイツの捜査の中心となっているヨット「アンドロメダ」の乗組員だった疑いがある。
https://tass.com/world/1829047
(参考)ノルドストリーム・ガスパイプラインに関するこれまでの経緯や爆発の背景等
(1)2022年9月26日、および27日、ロシアから欧州ドイツに向け天然ガスを運ぶパイプラインであるノルドストリーム2の一か所、ノルドストリーム1の2か所からガス漏れが発生していることが確認されました。二酸化炭素以上に地球温暖化に悪影響を及ぼすメタンガスが大量に放出されました。メタンガスは天然ガスの主成分です。ガス漏れが発生したバルト海の位置です。2022年9月30日、ブリンケン米国務長官は、ノルドストリームガス漏れ事案は、欧州が、ロシア産ガス依存から縁を切る絶好の機会であると表明しました。環境活動家は、二酸化炭素以上に地球温暖化に悪影響を及ぼすメタンの大量発生に危機感を募らせました。
(2)欧米は、ロシアによる自作自演の破壊行為との疑いをかけました。ロシアが「不可抗力」を宣言することによって、欧州へのガス供給停止の言い訳になるからです。一方ロシアは、自分たちが建設した重要インフラであるガスパイプラインを破壊するわけがないと主張しています。スウェーデンはじめ沿岸国の治安当局は、パイプラインの近くで引き起こされた爆発が原因との見方を示しました。場所はデンマークの沖合です。誰が破壊したのか様々な憶測が流れました。そのひとつが親ウクライナの、少人数の特殊部隊が爆破した可能性を伝える米やドイツなどの有力メディアの報道です。その見方を初めて伝えたのは米国の有力紙ニューヨーク・タイムズ。2023年3月、米国政府が親ウクライナ勢力による破壊工作だったことを示す情報を持っていると伝えました。さらに、ワシントン・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルも、事件が起きる3か月前の2022年6月、米国政府はウクライナ軍が6人の特殊部隊を派遣してパイプラインを爆破する計画を立てていたという情報を入手。ドイツなどにその情報を共有していたと伝えました。
(3)米国のピューリッツアー賞作家セイモア・ハーシュは、バイデン政権の関与を示唆し、2022年6月、米海軍のダイバーがパイプラインに遠隔で起動できる爆薬をしかけたとの見方を表明しました。米国情報部が関与したとする説、ウクライナの特殊部隊が関与したとする説などさまざまな疑惑が出ていますが、どれも確認はされていませんでした。
(4)欧州はウクライナ危機前輸入の約4割をロシア産天然ガスに依存していました。しかし今や15%程度です。欧州はロシアからの天然ガス供給に大きく依存してきました。ひとつはノルドストリームです。ヤマルならびにウクライナを経由したパイプラインがあり、さらに黒海から中東のトルコを経由したものが、トルコ・ストリームのバルカン新パイプラインです。このうち、ノルドストリーム1,2、ヤマル・ヨーロッパは供給停止状態です。トルコ経由のパイプラインに加え、不思議なことに戦争状態にあるウクライナ経由のパイプラインが稼働中です。2019年にロシアとウクライナ間で契約が成立し、2024年末までに70億ドルの通行料がウクライナ側に入ることになっています。しかし、ウクライナ側は、契約更新はありえないと断言しています。また、最近のウクライナ軍のロシア・クルスクへの越境攻撃では、ロシアから欧州諸国のオーストリア、スロバキア、ハンガリーへのガス供給拠点のスジャ(Sudzha)が近くにあります。
(5)天然ガス供給がいかに政治問題化しやすいかについて、ノルドストリーム2の建設の過程に簡単に触れておきます。
ノルドストリームは既存のパイプラインであるノルドストリーム1と新設されたノルドストリーム2が存在します。後者の建設については、パイプライン通過国の承認がなかなか得られませんでしたが、デンマーク・エネルギー庁が2019年10月30日、同国の大陸棚部分におけるパイプライン建設を承認しました。同パイプラインは、バルト海を経由し、ロシア産ガスをドイツまで移送するもので、デンマークの許可により、必要なすべての国から建設許可が得られ、パイプラインの建設が進み、2021年9月6日完工しました。ノルドストリーム2は、パイプラインの敷設により、ウクライナを通る既存ルートの利用が減ることで、同国はロシアから得ている重要な経由料を失うことになるため、ロシアによる2014年のクリミア半島併合以降、同国と対立関係にあるウクライナは、ロシアがパイプラインを「危険な地政学的武器」として利用する可能性があると欧州に警告してきました。
米国は、建設を担うロシア船に対し制裁を発動し、ノルドストリーム2の完成は遅れ、ドイツは反発していました。しかし、トランプ前米大統領が悪化させた欧州との関係修復に取り組んできたバイデン大統領は、ついに2021年5月、プロジェクトに関わるロシア政府系企業に対する制裁を解除しました。専門家はこの動きについて、中国の台頭をはじめとする他の課題に対する独の支持を取り付けるための和解策との見方を示していました。
しかし、独のシュルツ首相は、2022年2月22日、ノルドストリーム2の稼働承認の手続き停止を発表し、2022年9月26日には、現時点で原因が特定されていないガス漏れが発生し、結局同パイプラインは一度も稼働することなく、現在を迎えています。
(6)現在、ロシアからパイプライン経由で、欧州に天然ガスが送付されているのは、ウクライナ経由のほかには、トルコ・ストリームガスパイプラインがあります。2020年1月にエルドアン大統領、プーチン大統領が出席して、パイプライン開所式典がトルコで開催されました。ハンガリーまで、ロシア産天然ガスを送るバルカン・パイプラインは2021年7月に完成し、同年10月から配送を開始しています。現時点で、ハンガリーはロシアの天然ガスを依然受け入れているEU 加盟国です。ハンガリーは、ロシアの原油輸入も継続中で、EUの対ロシア制裁には反対の立場を表明しています。
@ロシアは天然ガスを2本の海底パイプラインで輸送
Aうち1本は、トルコの国内消費用(157.5億立方メートル)
Bもう1本は、トルコ経由欧州輸送用(157.5億立方メートル)
(7)ロシアの欧州へのパイプライン経由の天然ガス供給が大幅に減少したことに伴い、欧州へのLNG(液化天然ガス)の輸出を大幅に拡大したのは、米国です。米国は、LNG輸出量でカタールを抜いて、2023年は世界第一位の国となりました。一方、カタールは、2021年秋日本との長期契約を更新できませんでしたが、22年〜23年にかけて中国や欧州のエネルギー企業と次々に長期契約を結ぶことに成功しました。
•21年末 日本JERAはカタールとの長期契約打ち切り
•22年1月 カタール・エナジーは、中国石油化工集団(シノペック) 年間200万トン、期間10年のLNG供給開始( 2021年3月、両社は初めての長期契約に調印)
•22年11月29日、カタール・エナジーは、米コノコ・フィリップスと共同で独に液化天然ガス(LNG)を長期供給すると発表した。コノコ社の子会社を通じ、2026年から少なくとも15年間、年最大200万トンを対独輸出する。建設中の独北部シュレスビヒ・ホルシュタイン州ブルンスビュッテル市に設置される浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)に船積みする。
•22年11月21日、シノペックがカタール・エナジーとの間で2026年から27年間の年間400万トンLNG供給長期契約締結
•23年6月21日、中国石油天然気集団公司(CNPC)がカタール・エナジーとの間で2026年から27年間の年間400万トン供給長期契約締結
•23年10月11日、仏トタルエナジーが、カタール・エナジーとの間で2026年から27年間の年間350万トン供給長期契約締結
•23年10月、英国に本部を置くシェルが、カタール・エナジーとの間でオランダへの2026年から27年間の年間350万トン供給長期契約締結
•23年10月23日、伊ENIがカタール・エナジーとの間で2026年から27年間の年間100万トン供給長期契約締結
(コメント)ロイターによれば、ドイツ当局は今年6月、爆破事案容疑者のドイツでの手続きに関連して、ワルシャワの地方検察当局に逮捕状を送った。ただ、ポーランド国境警備隊にこうした情報が伝わっておらず、容疑者は7月にポーランドからウクライナに出国した際にも拘束されなかったとされる。 ドイツはウクライナとの関係がノルドストリームを巡る調査で悪化することはないとしている。 ロシアは「ノルドストリーム」パイプラインの爆発に関して、米、英もしくはウクライナが関与した疑いがあるとして非難しているが、これらの国々は関与を否定している。 爆発事案発生後、ドイツ、デンマーク、スウェーデンが爆発事故に関して調査したものの、スウェーデンは爆発現場から回収した物体に見つかった爆発物の痕跡から、爆破が意図的なものと判断した。ただ、スウェーデンとデンマークは2024年2月、容疑者を特定せずに調査を終了している。ドイツの検察が逮捕状を、本年6月にポーランドに送付したとされているものの、容疑者は逮捕されず、シェンゲン域内の情報共有システムにも登録されず、容疑者がウクライナに出国できたとすれば、次の思惑が考えられる
@ウクライナがロシアの軍事侵攻にあって、EUはロシアの収入源を断つことを目的にロシアに各種の制裁を科している。天然ガスのEUへの供給は制裁対象にはなっていないものの、ロシアの天然ガス収入獲得を阻止することは、欧米からみれば、英雄的な行為である。その容疑者を逮捕して、ウクライナの士気を弱体化させるべきではないとの判断が働いた。
Aヨットで、海底パイプラインに爆発物をしかけることは、個人の犯行とはとても思えず、ウクライナ自身あるいは第三国の情報機関が関与して、実行されたとみることは自然である。容疑者逮捕によって、容疑者の背後のネットワークを、すくなくとも現時点で明らかにはしたくないとの判断が働いた。
Bポーランドは、容疑者を逮捕することによってロシアの攻撃をうけ全面的に支持しているウクライナとの摩擦を生じさせたくないとの判断が働いた。
いずれにしても、ウクライナに逃れた容疑者をドイツ、ポーランドとも積極的にウクライナ政府に引き渡しを求めるとは考えにくく、また、ウクライナ政府も仮にそのような要請があっても、応じるとはみられない。
https://jp.reuters.com/markets/commodities/EET4HWBOZ5ORPBG7EKRPX6NPNQ-2024-08-14/
https://tass.com/world/1829047
(参考)ノルドストリーム・ガスパイプラインに関するこれまでの経緯や爆発の背景等
(1)2022年9月26日、および27日、ロシアから欧州ドイツに向け天然ガスを運ぶパイプラインであるノルドストリーム2の一か所、ノルドストリーム1の2か所からガス漏れが発生していることが確認されました。二酸化炭素以上に地球温暖化に悪影響を及ぼすメタンガスが大量に放出されました。メタンガスは天然ガスの主成分です。ガス漏れが発生したバルト海の位置です。2022年9月30日、ブリンケン米国務長官は、ノルドストリームガス漏れ事案は、欧州が、ロシア産ガス依存から縁を切る絶好の機会であると表明しました。環境活動家は、二酸化炭素以上に地球温暖化に悪影響を及ぼすメタンの大量発生に危機感を募らせました。
(2)欧米は、ロシアによる自作自演の破壊行為との疑いをかけました。ロシアが「不可抗力」を宣言することによって、欧州へのガス供給停止の言い訳になるからです。一方ロシアは、自分たちが建設した重要インフラであるガスパイプラインを破壊するわけがないと主張しています。スウェーデンはじめ沿岸国の治安当局は、パイプラインの近くで引き起こされた爆発が原因との見方を示しました。場所はデンマークの沖合です。誰が破壊したのか様々な憶測が流れました。そのひとつが親ウクライナの、少人数の特殊部隊が爆破した可能性を伝える米やドイツなどの有力メディアの報道です。その見方を初めて伝えたのは米国の有力紙ニューヨーク・タイムズ。2023年3月、米国政府が親ウクライナ勢力による破壊工作だったことを示す情報を持っていると伝えました。さらに、ワシントン・ポストやウォール・ストリート・ジャーナルも、事件が起きる3か月前の2022年6月、米国政府はウクライナ軍が6人の特殊部隊を派遣してパイプラインを爆破する計画を立てていたという情報を入手。ドイツなどにその情報を共有していたと伝えました。
(3)米国のピューリッツアー賞作家セイモア・ハーシュは、バイデン政権の関与を示唆し、2022年6月、米海軍のダイバーがパイプラインに遠隔で起動できる爆薬をしかけたとの見方を表明しました。米国情報部が関与したとする説、ウクライナの特殊部隊が関与したとする説などさまざまな疑惑が出ていますが、どれも確認はされていませんでした。
(4)欧州はウクライナ危機前輸入の約4割をロシア産天然ガスに依存していました。しかし今や15%程度です。欧州はロシアからの天然ガス供給に大きく依存してきました。ひとつはノルドストリームです。ヤマルならびにウクライナを経由したパイプラインがあり、さらに黒海から中東のトルコを経由したものが、トルコ・ストリームのバルカン新パイプラインです。このうち、ノルドストリーム1,2、ヤマル・ヨーロッパは供給停止状態です。トルコ経由のパイプラインに加え、不思議なことに戦争状態にあるウクライナ経由のパイプラインが稼働中です。2019年にロシアとウクライナ間で契約が成立し、2024年末までに70億ドルの通行料がウクライナ側に入ることになっています。しかし、ウクライナ側は、契約更新はありえないと断言しています。また、最近のウクライナ軍のロシア・クルスクへの越境攻撃では、ロシアから欧州諸国のオーストリア、スロバキア、ハンガリーへのガス供給拠点のスジャ(Sudzha)が近くにあります。
(5)天然ガス供給がいかに政治問題化しやすいかについて、ノルドストリーム2の建設の過程に簡単に触れておきます。
ノルドストリームは既存のパイプラインであるノルドストリーム1と新設されたノルドストリーム2が存在します。後者の建設については、パイプライン通過国の承認がなかなか得られませんでしたが、デンマーク・エネルギー庁が2019年10月30日、同国の大陸棚部分におけるパイプライン建設を承認しました。同パイプラインは、バルト海を経由し、ロシア産ガスをドイツまで移送するもので、デンマークの許可により、必要なすべての国から建設許可が得られ、パイプラインの建設が進み、2021年9月6日完工しました。ノルドストリーム2は、パイプラインの敷設により、ウクライナを通る既存ルートの利用が減ることで、同国はロシアから得ている重要な経由料を失うことになるため、ロシアによる2014年のクリミア半島併合以降、同国と対立関係にあるウクライナは、ロシアがパイプラインを「危険な地政学的武器」として利用する可能性があると欧州に警告してきました。
米国は、建設を担うロシア船に対し制裁を発動し、ノルドストリーム2の完成は遅れ、ドイツは反発していました。しかし、トランプ前米大統領が悪化させた欧州との関係修復に取り組んできたバイデン大統領は、ついに2021年5月、プロジェクトに関わるロシア政府系企業に対する制裁を解除しました。専門家はこの動きについて、中国の台頭をはじめとする他の課題に対する独の支持を取り付けるための和解策との見方を示していました。
しかし、独のシュルツ首相は、2022年2月22日、ノルドストリーム2の稼働承認の手続き停止を発表し、2022年9月26日には、現時点で原因が特定されていないガス漏れが発生し、結局同パイプラインは一度も稼働することなく、現在を迎えています。
(6)現在、ロシアからパイプライン経由で、欧州に天然ガスが送付されているのは、ウクライナ経由のほかには、トルコ・ストリームガスパイプラインがあります。2020年1月にエルドアン大統領、プーチン大統領が出席して、パイプライン開所式典がトルコで開催されました。ハンガリーまで、ロシア産天然ガスを送るバルカン・パイプラインは2021年7月に完成し、同年10月から配送を開始しています。現時点で、ハンガリーはロシアの天然ガスを依然受け入れているEU 加盟国です。ハンガリーは、ロシアの原油輸入も継続中で、EUの対ロシア制裁には反対の立場を表明しています。
@ロシアは天然ガスを2本の海底パイプラインで輸送
Aうち1本は、トルコの国内消費用(157.5億立方メートル)
Bもう1本は、トルコ経由欧州輸送用(157.5億立方メートル)
(7)ロシアの欧州へのパイプライン経由の天然ガス供給が大幅に減少したことに伴い、欧州へのLNG(液化天然ガス)の輸出を大幅に拡大したのは、米国です。米国は、LNG輸出量でカタールを抜いて、2023年は世界第一位の国となりました。一方、カタールは、2021年秋日本との長期契約を更新できませんでしたが、22年〜23年にかけて中国や欧州のエネルギー企業と次々に長期契約を結ぶことに成功しました。
•21年末 日本JERAはカタールとの長期契約打ち切り
•22年1月 カタール・エナジーは、中国石油化工集団(シノペック) 年間200万トン、期間10年のLNG供給開始( 2021年3月、両社は初めての長期契約に調印)
•22年11月29日、カタール・エナジーは、米コノコ・フィリップスと共同で独に液化天然ガス(LNG)を長期供給すると発表した。コノコ社の子会社を通じ、2026年から少なくとも15年間、年最大200万トンを対独輸出する。建設中の独北部シュレスビヒ・ホルシュタイン州ブルンスビュッテル市に設置される浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)に船積みする。
•22年11月21日、シノペックがカタール・エナジーとの間で2026年から27年間の年間400万トンLNG供給長期契約締結
•23年6月21日、中国石油天然気集団公司(CNPC)がカタール・エナジーとの間で2026年から27年間の年間400万トン供給長期契約締結
•23年10月11日、仏トタルエナジーが、カタール・エナジーとの間で2026年から27年間の年間350万トン供給長期契約締結
•23年10月、英国に本部を置くシェルが、カタール・エナジーとの間でオランダへの2026年から27年間の年間350万トン供給長期契約締結
•23年10月23日、伊ENIがカタール・エナジーとの間で2026年から27年間の年間100万トン供給長期契約締結
(コメント)ロイターによれば、ドイツ当局は今年6月、爆破事案容疑者のドイツでの手続きに関連して、ワルシャワの地方検察当局に逮捕状を送った。ただ、ポーランド国境警備隊にこうした情報が伝わっておらず、容疑者は7月にポーランドからウクライナに出国した際にも拘束されなかったとされる。 ドイツはウクライナとの関係がノルドストリームを巡る調査で悪化することはないとしている。 ロシアは「ノルドストリーム」パイプラインの爆発に関して、米、英もしくはウクライナが関与した疑いがあるとして非難しているが、これらの国々は関与を否定している。 爆発事案発生後、ドイツ、デンマーク、スウェーデンが爆発事故に関して調査したものの、スウェーデンは爆発現場から回収した物体に見つかった爆発物の痕跡から、爆破が意図的なものと判断した。ただ、スウェーデンとデンマークは2024年2月、容疑者を特定せずに調査を終了している。ドイツの検察が逮捕状を、本年6月にポーランドに送付したとされているものの、容疑者は逮捕されず、シェンゲン域内の情報共有システムにも登録されず、容疑者がウクライナに出国できたとすれば、次の思惑が考えられる
@ウクライナがロシアの軍事侵攻にあって、EUはロシアの収入源を断つことを目的にロシアに各種の制裁を科している。天然ガスのEUへの供給は制裁対象にはなっていないものの、ロシアの天然ガス収入獲得を阻止することは、欧米からみれば、英雄的な行為である。その容疑者を逮捕して、ウクライナの士気を弱体化させるべきではないとの判断が働いた。
Aヨットで、海底パイプラインに爆発物をしかけることは、個人の犯行とはとても思えず、ウクライナ自身あるいは第三国の情報機関が関与して、実行されたとみることは自然である。容疑者逮捕によって、容疑者の背後のネットワークを、すくなくとも現時点で明らかにはしたくないとの判断が働いた。
Bポーランドは、容疑者を逮捕することによってロシアの攻撃をうけ全面的に支持しているウクライナとの摩擦を生じさせたくないとの判断が働いた。
いずれにしても、ウクライナに逃れた容疑者をドイツ、ポーランドとも積極的にウクライナ政府に引き渡しを求めるとは考えにくく、また、ウクライナ政府も仮にそのような要請があっても、応じるとはみられない。
https://jp.reuters.com/markets/commodities/EET4HWBOZ5ORPBG7EKRPX6NPNQ-2024-08-14/
Posted by 八木 at 10:59 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)