ハマス・イスラエル戦争勃発後初めてのナスラッラー・ヒズボラ書記長の発言の真意[2023年11月04日(Sat)]
イスラエル軍のガザ本格侵攻をうけて、2023年11月3日、これまで沈黙を保ってきたレバノンのヒズボラのトップであるナスラッラー書記長がテレビ演説でガザ情勢について、はじめて見解を表明した。ヒズボラとイスラエル軍との交戦は散発的には続いているが、ヒズボラが本格的に参戦すれば、イスラエルは二正面作戦を強いられることになり、ナスラッラー書記長の発言の真意が注目されている。
ナスラッラー・ヒズボラ書記長発言骨子(2023年11月3日)
@ ハマスの10月7日の「アル・アクサ洪水」作戦は100%パレスチナ人によって決定され、その実行は100%パレスチナ人によって行われ、その組織は誰に対しても パレスチナの派閥や抵抗運動に対してさえ、それを隠していた。
A イラン・イスラム共和国は一貫してこれらの抵抗勢力を支援しており、イランの指導部はその決意を揺るがすことはなかったが、彼ら(ハマス側)に対していかなる圧力も勧告も加えたことはなく、同指導者に何も求めなかった。決定の真の主は、抵抗組織指導部と、その戦士たちである。
B (ハマスの)絶対的な秘密主義が10月7日のアル・アクサ・ストーム作戦の成功を確実なものにした。
C ハマスが10月7日の攻撃計画を隠蔽したことを我々は気にしていない。
D ハマスがイスラエル占領軍に対して奇襲攻撃を開始した翌日の10月8日にレバノン抵抗運動(ヒズボラのこと)がイスラエルとの戦いに参戦した。これまでにヒズボラ戦闘員57人が殉教した。
E 我々は、現在この聖戦に関わっている強くて勇敢なイラクとイエメンのひとびとに敬意を表さなければならない(注:シリア、イラクに駐留している米軍への散発的な攻撃を指す)。
F ガザ侵攻は米国による侵攻であるため、米国はガザ侵攻を止めることができる。米国に対して言う。地域的な戦争を防ぐにはガザ侵攻を直ちに止めなければならない
G イスラエルとレバノンの国境地帯での戦線が「本格的な戦争」に突入する可能性については、それは起こり得ることであり、敵はその可能性をあらゆる考慮に入れなければならない。
(参考1)ヒズボラの強みと脆弱性
1.強み
@レバノンに根付いた組織であること
A過去に対立したキリスト勢力にもパイプを有すること(ヒズボラはアウン前大統領との協力してきた)
Bイスラエルに抵抗するレジスタンス組織として、国内で存在を認められ、アラブイニシアティブでレバノン内戦後、各民兵組織が武装解除されたが、国内で唯一武装解除を免れてきたこと
Cイランからの財政・武器支援を受け、シリアからもロジスティック面で支援を得てきたこと。2013年4月頃からシリア内戦に本格的に介入し、アサド政権存続に貢献した。
2.脆弱性
@ 米国のイラン経済制裁の影響で、イランからヒズボラへの財政支援が減少しているとみられること、
Aシリア内戦に関与し、多数のヒズボラ戦闘員が犠牲になったこと
B最重要事項は、イランに諮る必要があり、最終的な意思決定権を有していないとみられること。そのつなぎ役としてのIRGCコッズ部隊のソレイマニ司令官が、2020年1月米軍のドローン攻撃で殺害され、指示・調整機能が弱体化している可能性があること
Cかつては、イスラエルへの抵抗活動のシンボルとして、アラブ世界からも一定の評価を受けていたが、2016年3月にはサウジ他湾岸アラブ諸国がヒズボラをテロ組織に指定したこと
D米国は、ヒズボラをテロ組織に指定し、ヒズボラ関係機関・団体・個人に制裁を科しており、レバノンの金融機関がその影響を受けていること
E2020年8月4日のベイルート港穀物倉庫大爆発やコロナ禍といった惨状にもかかわらず、欧米の制裁で、復興が進んでおらず、ヒズボラはその責任の一端を負わされていること
(2)シューラ評議会とイランの関係
• シューラ評議会、または諮問評議会は、ヒズボラの国家レベルでの最高かつ中央の意思決定機関。 ナイム・カーセム副書記長によれば、組織的には、「戦略目標ピラミッドの最上位にあり、全体的なビジョンとポリシーを描き、党の機能の一般的な戦略を監督し、政治的決定を下す責任がある」。 全会一致または多数決により行われたその決定は、最終的であり、党員を宗教的に拘束する。
• シューラ評議会は、イランの最高指導者の権威にのみ従属しており、イランの最高指導者を、ワリー・アル・ファキーフと見なし、議論が行き詰まった場合、問題は最高指導者に照会される。理論的には、ヒズボラの書記長は、 評議会の「対等なメンバーのひとり」であるが、ハッサン・ナスラッラーの指導の下で、イランの最高指導者の権威の下で評議会の事実上の長となった。
• シューラ評議会メンバー
• 議長: ハッサン・ナスラッラー(Hassan Nasrallah)書記長
• 評議会メンバー: Sheikh Naim Qassem (副書記長), Sheikh Mohammad Yazbek (司法評議会議長), sayyed Ibrahim Amin al-Sayyed (政治評議会議長), sayyed Hashem Saffieddine (執行評議会議長), Hussein al-Khalil (Secretary General’s political aide), Mohammad Raad (議会活動評議会議長で、抵抗ブロック忠誠委員長.
(コメント)2006年以来、イスラエルとの本格交戦を控えてきたヒズボラが、仮に対イスラエル戦争に本格参戦すると、イスラエルは、南のガザ(ハマス、イスラム聖戦)と北のレバノン(ヒズボラ)の二正面作戦を強いられることになる。今回のナスラッラー書記長の発言の真意は、どこにあるのだろうか。そもそも、10月7日にハマスの越境作戦が開始され、それに対して、イスラエルがハマス掃討作戦を開始し、ヒズボラは、ナスラッラー書記長によれば、10月8日に参戦した。しかし、ナスラッラー書記長がガザ情勢について語るのは、11月3日になってはじめてである。ヒズボラは、比較的慎重に対応してきたようにみえる。また、今回の書記長の発言をみても、今次ハマスの作戦は100%ハマスの決定であり、ハマスの作戦を知ったのは、開始後で自分たちは相談にあずかっていなかった、また、ヒズボラがその権威に従属するイランの最高指導部も関与していなかったことを、あえて強調している。これは、イランがハマスの作戦に事前に関与していたことを打ち消すためであることに加え、北から散発的な圧力をイスラエル側に加えることはあっても、ヒズボラが矢面にたって、イスラエルとの交戦状態に入ることはない、イランもそれを望んでいない、米国は、イスラエルをたきつけるのではなく、イスラエルに停戦を働きかけ、パレスチナ人を救うべきであるというメッセージを米国ならびに国際社会に発しているとみるのが妥当であろう。
https://www.tasnimnews.com/en/news/2023/11/03/2982724/al-aqsa-storm-operation-100-percent-palestinian-says-hezbollah-chief
ナスラッラー・ヒズボラ書記長発言骨子(2023年11月3日)
@ ハマスの10月7日の「アル・アクサ洪水」作戦は100%パレスチナ人によって決定され、その実行は100%パレスチナ人によって行われ、その組織は誰に対しても パレスチナの派閥や抵抗運動に対してさえ、それを隠していた。
A イラン・イスラム共和国は一貫してこれらの抵抗勢力を支援しており、イランの指導部はその決意を揺るがすことはなかったが、彼ら(ハマス側)に対していかなる圧力も勧告も加えたことはなく、同指導者に何も求めなかった。決定の真の主は、抵抗組織指導部と、その戦士たちである。
B (ハマスの)絶対的な秘密主義が10月7日のアル・アクサ・ストーム作戦の成功を確実なものにした。
C ハマスが10月7日の攻撃計画を隠蔽したことを我々は気にしていない。
D ハマスがイスラエル占領軍に対して奇襲攻撃を開始した翌日の10月8日にレバノン抵抗運動(ヒズボラのこと)がイスラエルとの戦いに参戦した。これまでにヒズボラ戦闘員57人が殉教した。
E 我々は、現在この聖戦に関わっている強くて勇敢なイラクとイエメンのひとびとに敬意を表さなければならない(注:シリア、イラクに駐留している米軍への散発的な攻撃を指す)。
F ガザ侵攻は米国による侵攻であるため、米国はガザ侵攻を止めることができる。米国に対して言う。地域的な戦争を防ぐにはガザ侵攻を直ちに止めなければならない
G イスラエルとレバノンの国境地帯での戦線が「本格的な戦争」に突入する可能性については、それは起こり得ることであり、敵はその可能性をあらゆる考慮に入れなければならない。
(参考1)ヒズボラの強みと脆弱性
1.強み
@レバノンに根付いた組織であること
A過去に対立したキリスト勢力にもパイプを有すること(ヒズボラはアウン前大統領との協力してきた)
Bイスラエルに抵抗するレジスタンス組織として、国内で存在を認められ、アラブイニシアティブでレバノン内戦後、各民兵組織が武装解除されたが、国内で唯一武装解除を免れてきたこと
Cイランからの財政・武器支援を受け、シリアからもロジスティック面で支援を得てきたこと。2013年4月頃からシリア内戦に本格的に介入し、アサド政権存続に貢献した。
2.脆弱性
@ 米国のイラン経済制裁の影響で、イランからヒズボラへの財政支援が減少しているとみられること、
Aシリア内戦に関与し、多数のヒズボラ戦闘員が犠牲になったこと
B最重要事項は、イランに諮る必要があり、最終的な意思決定権を有していないとみられること。そのつなぎ役としてのIRGCコッズ部隊のソレイマニ司令官が、2020年1月米軍のドローン攻撃で殺害され、指示・調整機能が弱体化している可能性があること
Cかつては、イスラエルへの抵抗活動のシンボルとして、アラブ世界からも一定の評価を受けていたが、2016年3月にはサウジ他湾岸アラブ諸国がヒズボラをテロ組織に指定したこと
D米国は、ヒズボラをテロ組織に指定し、ヒズボラ関係機関・団体・個人に制裁を科しており、レバノンの金融機関がその影響を受けていること
E2020年8月4日のベイルート港穀物倉庫大爆発やコロナ禍といった惨状にもかかわらず、欧米の制裁で、復興が進んでおらず、ヒズボラはその責任の一端を負わされていること
(2)シューラ評議会とイランの関係
• シューラ評議会、または諮問評議会は、ヒズボラの国家レベルでの最高かつ中央の意思決定機関。 ナイム・カーセム副書記長によれば、組織的には、「戦略目標ピラミッドの最上位にあり、全体的なビジョンとポリシーを描き、党の機能の一般的な戦略を監督し、政治的決定を下す責任がある」。 全会一致または多数決により行われたその決定は、最終的であり、党員を宗教的に拘束する。
• シューラ評議会は、イランの最高指導者の権威にのみ従属しており、イランの最高指導者を、ワリー・アル・ファキーフと見なし、議論が行き詰まった場合、問題は最高指導者に照会される。理論的には、ヒズボラの書記長は、 評議会の「対等なメンバーのひとり」であるが、ハッサン・ナスラッラーの指導の下で、イランの最高指導者の権威の下で評議会の事実上の長となった。
• シューラ評議会メンバー
• 議長: ハッサン・ナスラッラー(Hassan Nasrallah)書記長
• 評議会メンバー: Sheikh Naim Qassem (副書記長), Sheikh Mohammad Yazbek (司法評議会議長), sayyed Ibrahim Amin al-Sayyed (政治評議会議長), sayyed Hashem Saffieddine (執行評議会議長), Hussein al-Khalil (Secretary General’s political aide), Mohammad Raad (議会活動評議会議長で、抵抗ブロック忠誠委員長.
(コメント)2006年以来、イスラエルとの本格交戦を控えてきたヒズボラが、仮に対イスラエル戦争に本格参戦すると、イスラエルは、南のガザ(ハマス、イスラム聖戦)と北のレバノン(ヒズボラ)の二正面作戦を強いられることになる。今回のナスラッラー書記長の発言の真意は、どこにあるのだろうか。そもそも、10月7日にハマスの越境作戦が開始され、それに対して、イスラエルがハマス掃討作戦を開始し、ヒズボラは、ナスラッラー書記長によれば、10月8日に参戦した。しかし、ナスラッラー書記長がガザ情勢について語るのは、11月3日になってはじめてである。ヒズボラは、比較的慎重に対応してきたようにみえる。また、今回の書記長の発言をみても、今次ハマスの作戦は100%ハマスの決定であり、ハマスの作戦を知ったのは、開始後で自分たちは相談にあずかっていなかった、また、ヒズボラがその権威に従属するイランの最高指導部も関与していなかったことを、あえて強調している。これは、イランがハマスの作戦に事前に関与していたことを打ち消すためであることに加え、北から散発的な圧力をイスラエル側に加えることはあっても、ヒズボラが矢面にたって、イスラエルとの交戦状態に入ることはない、イランもそれを望んでいない、米国は、イスラエルをたきつけるのではなく、イスラエルに停戦を働きかけ、パレスチナ人を救うべきであるというメッセージを米国ならびに国際社会に発しているとみるのが妥当であろう。
https://www.tasnimnews.com/en/news/2023/11/03/2982724/al-aqsa-storm-operation-100-percent-palestinian-says-hezbollah-chief
Posted by 八木 at 15:00 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)



