本日開催のBRICS首脳会議での議論の注目点
[2023年08月22日(Tue)]
世界の目は今、南アフリカの首都ヨハネスブルグに向けられている。第15回BRICS首脳会議は8月22日から24日まで同地で開催される。BRICSはブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカの頭文字である。正式メンバー5か国の首脳のうち、国際刑事裁判所(ICC)から逮捕状が発出されているロシアのプーチン大統領を除いて、4か国首脳は対面で参加し、ロシアはラブロフ外相を派遣し、プーチン大統領はオンラインで参加が予定されている。南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領から69カ国の首脳がサミットに招待されており、イランのライシ大統領は既に南アに向け出発したとされる。
BRICSには、40カ国以上が加盟に関心を示し、うち、23カ国が正式に申請書を提出したとされる。23か国には、アラブ8か国アルジェリア、バーレーン、エジプト、クウェート、モロッコ、パレスチナ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)が含まれ、さらに、バングラデシュ、イラン、カザフスタン、ナイジェリア、セネガル、エチオピア、ベラルーシ、ボリビア、アルゼンチン、ベネズエラ、ベトナム、キューバ、ホンジュラス、インドネシア、タイが含まれている。サウジアラビアやUAE、イランをはじめとして、エネルギー資源国が多数含まれていることがわかる。
現在のロシアを除くBRICSメンバー国は、欧米の対ロシア制裁には参加していない。加盟を正式に申請したとされる国々にも対ロシア制裁に加わっている国は見当たらない。こうした中、南アで開催されるサミットの注目点を挙げれば次のとおり。
@メンバー国拡大の可能性
一部の国々の参加が承認されるのではないかとの観測が出ている。新たにブロックに参加する可能性が高いのは、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、アルゼンチンの3カ国との見方が出ている。
ABRICS新通貨発行
ブロック内では、ロシアが欧米の金融制裁を受けている関係で、石油やガス取引をドルやユーロでなく自国通貨で行うケースが増えているとされる。米国がドルを金融制裁の武器として使用していることから、ロシアだけでなく、メンバー国外のイランやベネズエラなど制裁下にある国々も、拡大BRICSで使用できる通貨ができれば、より貿易の幅が広がると期待している。
BBRICS新開発銀行
BRICS加盟国は、欧米が事実上支配する世銀やIMFではなく、BRICSとして独自に開発銀行を立ち上げ、途上国、新興国を積極的に支援していく必要性を認識し始めている。但し、それには、資金力が必要であり、そのためにも、サウジやUAEといった主要な産油国をBRICSのメンバーとして受け入れるのではないかとの観測が出ている。
(解説)国際社会において、いわゆるグローバル・サウスの存在感が増している。5月のG7広島サミットでも、招待国として、オーストラリア、ブラジル、コモロ〔アフリカ連合(AU)議長国〕、クック諸島〔[太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国〕、インド(G20議長国)、インドネシア(ASEAN議長国)、韓国、ベトナムが参加し、グローバル・サウスをG7陣営に如何に取り込むかが重要なアプローチのひとつであった。2023年5月に開催された上海協力機構(SCO)外相会談の最重要議題の一つは、加盟国間取引の脱ドル化であった。インドとロシアはすでに貿易関係において自国の通貨を使用し始めている。 ウクライナ危機を受けた西側の対ロシア制裁をうけて、ロシア政府は米ドルとユーロへの依存を減らすために貿易決済に各国通貨を利用することに熱心である。 国際システムにおける脱ドル化プロセスの加速については、中国も貿易における自国通貨「元」の使用を働きかけている。 SCO での議論には、自国通貨の使用を拡大したいという地域大国の意図も反映されていた。2023年7月4日、オンライン形式で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議には、ロシア同様米国の金融制裁を科されているイランが9番目のメンバー国として正式に承認された。首脳会議で発出されたニューデリー宣言には、「加盟国は、関心のある加盟国間で自国通貨による貿易決済の比率の段階的な拡大に向けたロードマップの実施に賛成した。」と記載されている。ロシアのウクライナ侵攻開始後、ロシアの値引きされた原油のインドへの輸出量が大幅に拡大しているものの、ロシアは、インド・ルピーを手に入れても、それで購入できる産品は限られており、BRICS共通通貨のようなより使い勝手のよい、使用範囲が限定されない通貨に関心を有していると思われ、一方、中国は、「元」取引が拡大する中で、BRICS共通通貨にこだわる理由は少ないと思われる。但し、BRICS各国ならびに加盟に関心を持つ国々の中では、取引の脱ドル化の方向性を支持する国が多いと思われ、その点でも、BRICS拡大会合の議論が注目される。さらに、BRICSにサウジアラビアやUAEあるいはG20のメンバー国であるアルゼンチンを正式メンバーあるいは準メンバーに迎入れるのか否かも注目される。SCOもBRICSも他の枠組みと対立あるいは競合するものではないとの建前ではあるものの、欧米主導の国際枠組みへの挑戦であることは疑いなく、欧米は、BRICS内でも特に関係が良好なインドなどと密接に連絡を取り合い、BRICSが中国やロシアの意向を反映しすぎないよう牽制するものとみられる。
https://watcher.guru/news/8-arab-countries-request-to-join-brics-alliance#google_vignette
https://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/brics-economies-catching-up-with-combined-gdp-of-g7-countries-piyush-goyal/articleshow/102917384.cms?from=mdr
https://newseu.cgtn.com/news/2023-08-20/2023-BRICS-Summit-The-Agenda-1mnl4xlQb8k/index.html
BRICSには、40カ国以上が加盟に関心を示し、うち、23カ国が正式に申請書を提出したとされる。23か国には、アラブ8か国アルジェリア、バーレーン、エジプト、クウェート、モロッコ、パレスチナ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)が含まれ、さらに、バングラデシュ、イラン、カザフスタン、ナイジェリア、セネガル、エチオピア、ベラルーシ、ボリビア、アルゼンチン、ベネズエラ、ベトナム、キューバ、ホンジュラス、インドネシア、タイが含まれている。サウジアラビアやUAE、イランをはじめとして、エネルギー資源国が多数含まれていることがわかる。
現在のロシアを除くBRICSメンバー国は、欧米の対ロシア制裁には参加していない。加盟を正式に申請したとされる国々にも対ロシア制裁に加わっている国は見当たらない。こうした中、南アで開催されるサミットの注目点を挙げれば次のとおり。
@メンバー国拡大の可能性

ABRICS新通貨発行

BBRICS新開発銀行

(解説)国際社会において、いわゆるグローバル・サウスの存在感が増している。5月のG7広島サミットでも、招待国として、オーストラリア、ブラジル、コモロ〔アフリカ連合(AU)議長国〕、クック諸島〔[太平洋諸島フォーラム(PIF)議長国〕、インド(G20議長国)、インドネシア(ASEAN議長国)、韓国、ベトナムが参加し、グローバル・サウスをG7陣営に如何に取り込むかが重要なアプローチのひとつであった。2023年5月に開催された上海協力機構(SCO)外相会談の最重要議題の一つは、加盟国間取引の脱ドル化であった。インドとロシアはすでに貿易関係において自国の通貨を使用し始めている。 ウクライナ危機を受けた西側の対ロシア制裁をうけて、ロシア政府は米ドルとユーロへの依存を減らすために貿易決済に各国通貨を利用することに熱心である。 国際システムにおける脱ドル化プロセスの加速については、中国も貿易における自国通貨「元」の使用を働きかけている。 SCO での議論には、自国通貨の使用を拡大したいという地域大国の意図も反映されていた。2023年7月4日、オンライン形式で開催された上海協力機構(SCO)首脳会議には、ロシア同様米国の金融制裁を科されているイランが9番目のメンバー国として正式に承認された。首脳会議で発出されたニューデリー宣言には、「加盟国は、関心のある加盟国間で自国通貨による貿易決済の比率の段階的な拡大に向けたロードマップの実施に賛成した。」と記載されている。ロシアのウクライナ侵攻開始後、ロシアの値引きされた原油のインドへの輸出量が大幅に拡大しているものの、ロシアは、インド・ルピーを手に入れても、それで購入できる産品は限られており、BRICS共通通貨のようなより使い勝手のよい、使用範囲が限定されない通貨に関心を有していると思われ、一方、中国は、「元」取引が拡大する中で、BRICS共通通貨にこだわる理由は少ないと思われる。但し、BRICS各国ならびに加盟に関心を持つ国々の中では、取引の脱ドル化の方向性を支持する国が多いと思われ、その点でも、BRICS拡大会合の議論が注目される。さらに、BRICSにサウジアラビアやUAEあるいはG20のメンバー国であるアルゼンチンを正式メンバーあるいは準メンバーに迎入れるのか否かも注目される。SCOもBRICSも他の枠組みと対立あるいは競合するものではないとの建前ではあるものの、欧米主導の国際枠組みへの挑戦であることは疑いなく、欧米は、BRICS内でも特に関係が良好なインドなどと密接に連絡を取り合い、BRICSが中国やロシアの意向を反映しすぎないよう牽制するものとみられる。
https://watcher.guru/news/8-arab-countries-request-to-join-brics-alliance#google_vignette
https://timesofindia.indiatimes.com/business/india-business/brics-economies-catching-up-with-combined-gdp-of-g7-countries-piyush-goyal/articleshow/102917384.cms?from=mdr
https://newseu.cgtn.com/news/2023-08-20/2023-BRICS-Summit-The-Agenda-1mnl4xlQb8k/index.html
Posted by 八木 at 11:51 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)