• もっと見る
イスラム世界との結びつきを通じて、多様性を許容する社会の構築についてともに考えるサイトです。

« アサド・シリア大統領のインタビュー注目点 | Main | トルコによるシリア難民の本国帰還促進と非正規移民通過阻止 »

検索
検索語句
<< 2024年04月 >>
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        
最新記事
最新コメント
タグクラウド
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
プロフィール

中東イスラム世界社会統合研究会さんの画像
日別アーカイブ
https://blog.canpan.info/meis/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/meis/index2_0.xml
米・イラン収監者交換とイラン凍結資金解放合意[2023年08月11日(Fri)]
イランが最重要事項として取り組んでいる諸外国によるイランの凍結資金の解放に向け、各種報道ならびに米国務長官のコメント等から進展があったとみられる。

1.8月10日ニューヨーク・タイムズが報じたところによれば、米・イラン両政府は、米国で収監されているイラン人数人と引き換えに、イランで収監されている米国人5人(イランとの二重国籍者)の解放と、最終的に韓国の銀行で凍結されているイランの石油販売代金約60億ドルへのアクセスを認めることで合意に達した。イランはイラン系米国人の二重国籍者5人を軟禁状態で刑務所から釈放した。悪名高きイランのエヴィン刑務所から解放されたのは、シアマック・ナマジ氏、エマド・シャルギ氏、モラド・タフバズ氏で、いずれも根拠が不明確なスパイ容疑で投獄されてきた。名前を公表していない他の2人のうち1人は科学者、もう1人は実業家とされる。うち一人は女性で、すでに刑務所を出て軟禁状態にあったとされる。

(1)拘束されていた米国人解放に向けてのイラン・米間の秘密交渉
●米国とイランの交渉に詳しい関係者らによると、オマーン、カタール、スイスが仲介した合意はここ数カ月で具体化され、双方が数週間にわたって最終調整に取り組んできた。ホワイトハウスの中東・北アフリカ調整官ブレット・H・マクガーク氏は2023年5月初めにオマーンの当局者らと会談し、イランとの捕虜交換について協議した。オマーン滞在中、マクガーク氏はイラン当局者らとの間接協議を行い、イランがウラン燃料の濃縮を核兵器の製造に必要なレベル以下に制限し、対ロシアへの軍事援助を制限するという目標を掲げ、その見返りに、米国は国際場裡でイランに対する制裁を強化したり、その他の特定の懲罰的措置を追求しないことを伝え働きかけを行っていたとされる。
(2)拘束されていた米国人のイラン出国に向けての行程
●米国は、韓国で凍結されてきたイランの石油販売代金である凍結資産約60億ドルをカタール中央銀行の口座に移すことを了承。 この口座はカタール政府によって管理され、イランが医薬品や食品などの人道的購入の代金を業者に支払う場合にのみこの資金にアクセスできるようになる。
@凍結資金が韓国の銀行からカタールの銀行口座に到着次第、拘束されていた米国人はイランからの出国を許可されるが、イランに帰属する多額の資金を移動させるために必要な許可や制裁免除の事務手続きが複雑なため、手続きには4〜6週間かかると予想されている。
Aカタールが合意の仲介で中心的な役割を果たしたことから、イランで拘束されてきた5名の米国人は政府専用機でカタールの首都ドーハに搬送される見通し。
B米国で拘束されているイラン人数名も交換のためにドーハへ出国することができる。 しかし、多くの人が家族とともに米国に住んでおり、彼らがそれを望むかどうかは不明。
https://www.nytimes.com/2023/08/10/us/politics/iran-us-prisoner-swap.html?campaign_id=190&emc=edit_ufn_20230810&instance_id=99750&nl=from-the-times
2.今回の合意に関するブリンケン国務長官のコメント(2023年8月10日 於:ワシントンD.C.)
●イランで不当に拘束されている5人の米国人に関しては、まず彼らが刑務所から釈放されて自宅軟禁に移されたことは前向きな一歩だ。 しかし、これは彼らの米国への帰国につながることを私は期待し、期待するプロセスの始まりにすぎない。 私が何度も言っているのを聞いたことがあると思うが、私にとって世界中でイランを含む多くの国で不当に拘束されている米国人の安全、安寧に配慮し、特に負傷者を帰国させるためにできる限りのことを行う以上の優先事項はない。
●この5人の米国人については、彼らの刑務所への拘留は現政権よりも前から行われており、長期にわたって続いている。 一人はイランで8年間不法投獄されている。 したがって、今回の動きは前向きな一歩である。 しかし、私は結論を先取りしたくない。なぜなら、彼らを実際に帰国させるためには、やるべきことがまだあるからである。 私の信念は、これは彼らの悪夢と彼らの家族が経験した悪夢の終わりの始まりであるということである。 このプロセスの完了と同胞の帰国を危険にさらしたくないので、我々が何をしているのか、あるいは取り組んでいるのかについては、詳細には立ち入るつもりはない。
●いくつかのことをはっきりさせておきたい。今回の対応のすべてにおいて、イランはいかなる制裁緩和も受けることはない。 我々が米国人をイランから帰国させるための取り組みを行う場合、イラン自身の資金が使用され、制限された口座に送金されることになり、その資金は人道的目的にのみ使用できる。 我々が科している制裁において人道的活動に対する免除は最初から存在している。
●我々は(イランに対する)すべての制裁を引き続き実行する。 我々は、ウクライナに対する侵略戦争のためにロシアに無人機を供給するなど、地域内外におけるイランの不安定化活動に対して断固として反発し続ける。 そして、今回の努力のどれもがそれを損なうものではない。 これらは完全に別のトラックの話である。 我々は米国民を帰国させることに注力してきたが、我々や他の多くの国が強く反対しているイランの他の活動に対しては引き続き強力な行動をとっていく。
●国務省は米国人5人と連絡をとっている。 今日我々は彼らと話をした。 言うまでもなく、彼らは刑務所から出られてとても喜んでいると思うが、我々はこのプロセスを確実に完了させ、彼らを家族の元に連れ帰りたいと考えている。
https://www.state.gov/secretary-antony-j-blinken-and-mexican-foreign-secretary-alicia-barcena-at-a-joint-press-availability/
(補足)この合意の下ではイランは、食糧と医薬品、および軍事用途を持たない限定的な医療機器など人道的な商品に限ってしかドーハの銀行に発注することができず、ドーハの銀行が韓国から送金された口座の資金の中から商品の代金を支払い、カタールの企業が商品をイランに配送することになり、イランは解放される資金には直接アクセスすることはできないとされる。すなわち、イラン側には外貨はもたらされない。米国バイデン政権は、イランにさまざまな制裁を科しているが、人道目的の取引はそもそも制裁の対象になっておらず、イランは米国から見て地域の安定に害を与える活動に資金を投入することはできず、また、今回の合意の最重要な狙いは、不当に拘束されてきた米国人の解放であるとして、今回の合意を正当化している。米国内では、ペンス元副大統領はじめ共和党の有力政治家が、バイデン政権の今回の取り組みを非難している。イラン政府は、韓国からの石油販売代金の回収について、韓国側はこれまで幾度も支払う用意があるとイラン側に伝えてきたにもかかわらず、一向に約束を果たそうとはしていないとして、苛立ちを隠しておらず、凍結資金の回収を巡って、国際調停に訴える意見も出ていた。イランは、2022年3月に英国からシャー時代の戦車代金前払い金の回収に成功しており、また、本年6月にはイラク政府もイランへのエネルギー代金支払いに同意したと報じられており、凍結資金の解放に向けては、資金の用途に対する制限付きながら一歩一歩成果を積み上げている。なお、今回の米・イラン間の合意成立においても、2021年のアフガニスタンに関する米・タリバーン間の合意にカタールが貢献したこと、2015年のイラン核合意成立前の米・イラン秘密交渉にオマーンが貢献したことなど、対外的に多様なパイプを有する湾岸のアラブ国家が重要な役割を演じてきたことが伺われる。

Posted by 八木 at 14:04 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

この記事のURL

https://blog.canpan.info/meis/archive/537

トラックバック

※トラックバックの受付は終了しました

 
コメントする
コメント