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中東における重要な選挙の年2021年の総括[2021年12月23日(Thu)]
2021年は、中東の主要国における重要な選挙が実施された年になりました。イスラエルでは3月のクネセト選挙で敗北したネタニヤフ長期政権が6月に崩壊しました。シリアでは、5月にアサド大統領が得票率95%で4選を果たし、今後7年間政権を率いることになりました。イランでは、監督者評議会(護憲評議会ともいう)の事前審査等により、改革派の有力候補は立候補できず、保守強硬派のライシ新大統領が誕生し、11月29日からは新政権の下で、イラン核合意を巡る米国との協議を5か月ぶりに再開させています。イラクでは5回目となる国政選挙が10月10日に実施され、イランとは一線を画すムクタダー・サドル師が率いるサドル潮流(サーイルーン)が前回の54議席から73議席に躍進する一方で、親イランのファタハ連合が前回の48議席から17議席へと激減し、大敗北を喫しました。親イラン・シーア派調整勢力は、選挙は不正で結果を認められないとして、選管や最高裁への訴えを行い、抗議デモも繰り返してきましたが、結果が覆る見通しはたたず、一方で、新内閣も発足せず、政治的混乱が続いています。
そして、12月24日は、リビアで初の大統領選挙が実施される予定でしたが、候補者リストも公表されないまま、選挙管理委員会は準備を停止し、予知通りの実施が困難になりました。1か月延期という観測も出ていますが、不透明です。政治的混乱が、内戦の再発等、現地情勢の悪化につながらないことが期待されます。

1.3月23日:第4回イスラエル・クネセト選挙
イスラエルでは2019年4月以来4回目のクネセト(議会)選挙が実施された。最終選挙の結果は次のとおり。イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、連立交渉にっ失敗して、議会の過半数を確保して政府を形成することができなくなった。
(参考)2021年3月 クネセト選挙の結果
●リクード(ベンヤミン・ネタニヤフ) 右派 30議席(−6)
●シャス(アリエフ・デリ) ユダヤ教超正統派  9(±0)
●トーラー・ユダヤ連合(モシェ・ガフニ) ユダヤ教超正統派 7議席(±0)
●合同リスト(アイマン・オーデ) アラブ系、反ネタニヤフ 6議席(-9)
●宗教シオニズム(ベザレル・スモトリッチ) 極右  6議席(*前回はヤミーナ)

(のちに連立を組むことになった政党)
●イェシュ・アティド(ヤイル・ラピッド) 中道、反ネタニヤフ 17議席(*前回は青と白連合)
●青と白(ベニー・ガンツ) 中道、反ネタニヤフ 8議席(−25)
●ヤミナ(ナフタリ・ベネット) 右派 7議席(−1)(注:一人離反)
●労働党(メラブ・ミカエリ) 左派、反ネタニヤフ 7議席(±0)(*前回は労働・ゲシェル・メレツ連合)
●イスラエル・ベイテイヌ(アビグドール・リーベルマン)  右派、反ネタニヤフ 7議席(±0)
●ニューホープ(ギドン・サール) 右派、反ネタニヤフ新党、リクードから分離 6議席
●メレツ(ニツァン・ホロウィッツ) 左派、反ネタニヤフ  6議席(*前回は労働・ゲシェル・メレツ連合)
●ラーム(マンスール・アッバース) アラブ系  4議席(*前回は合同リスト)(注)連立政権投票一人棄権

2.5月26日 シリア大統領選挙
5月26日に実施されたシリア大統領選挙で、ハムーダ・ダッバーグ・シリア人民議会議長は翌27日、現職バッシャール・アサド(Bashar al-Assad)が1354万0860票、得票率95.1%で4選を果たした(憲法第86条と、普通選挙法第79条の項目/ B /
に基づく)と発表した。 発表によると、投票者数は1420万人、投票率は78.64%だった。シリアは2011年から内戦下にあり、選挙は国土の3分の2に当たるアサド政府支配地域と在外公館の一部で行われた。事実上アサド大統領の信任投票であり、予想どおりの結果となった。しかし、イドリブ地域等の反体制派や360万人以上が一時避難しているトルコや欧州最大のシリア人受入国独が在外選挙を許さなかったことに加え、政権側とも最低限の接触を保ってきたクルド人が選挙ボイコットを決めたことにより、国内の分裂は続く。欧米は、この選挙を茶番とみており、欧米の対シリア制裁が近い将来解除される見通しもない。こうした中、唯一の注目点は、大統領選挙後、アラブ諸国がアサド政権と寄りを戻して、シリアがアラブ連盟復帰を果たすのか否かである。9月にヨルダン・シリア国境が開通し、アブドッラー国王とアサド大統領の電話会談が実現した。また、同月、燃料不足、電力不足に苦しむレバノンにヨルダン、シリア経由で、エジプトの天然ガスを輸送する構想が、米国政府の了解の下、関係四カ国のエネルギー大臣が集まり、話し合った。2011年以来資格が停止されているシリアのアラブ連盟復帰の見通しも出てきたとされる。

(選挙結果)
(1) 有権者数:1810万7109
(2) 国内外での投票者数:1423万9140
(3) 投票率:78.64%
(4) 各候補得票率
@ バッシャール・アサド:1354万0860票、得票率95.1%
A マフムード・アハメド・マレイ:47万0276票 得票率3.3%
B アブドッラー・サローム・アブドッラー:21万3968票 得票率1.5%

3.6月13日 イスラエル新内閣誕生
2021年6月13日に、イスラエルの国会に当たるクネセトは、第36代ベネット内閣の発足を賛成60−反対59−棄権1で正式に承認した。

●ネタニヤフ打倒で一致した極右、中道、左派、アラブ政党を含む中小8政党の連立内閣
●イスラエル歴代最長(2009年〜12年。全体で15年)の政権を率いてきたネタニヤフ首相は退陣。しかし、連立の弱点を突いて反撃に出る可能性は残されている。
●キッパー(ユダヤ教の民族衣装の一種。男性がかぶる帽子)をつけた右派の少数政党「ヤミナ」のベネット党首が連立内閣の首相に就任。4年間の任期の前半2年間首相を務める。入植地相を兼務する。
●8党からなる連立政権成立の最大の貢献者は、中道の「イェシュ・アティド」のヤイル・ラピッド党首
●ベニー・ガンツ氏は前政権から引き続き副首相兼国防相に就く。
●アラブ政党として初めて「ラーム」(党首アッバース)が統一ブロックに加わった(但し、閣僚を出さず、アラブ問題担当副大臣ポストを得た)
●内閣全体で3人の副首相を含む33の閣僚ポストに延べ27人が名を連ね、うち9人が女性閣僚。

4.6月18日イラン大統領選挙
6月18日に行われた第13回イラン大統領選挙の結果が翌19日に発表された。当選したのは、保守派の司法府長官のエブラヒーム・ライシ師。投票率48.8%、得票率61.95%であった。ライシ次期大統領は、ローハニ前大統領の8月初旬退任を引き継ぎ就任した。
(1) 投票結果
6月19日の記者会見でのファズリ内務大臣の発表によれば、大統領選挙で投じられた合計28,933,004票のうち、司法府長官で、保守派の最有力候補とみられていたエブラヒーム・ライシ師が1790万票以上を獲得し、一回目で投票数の5割を突破し、当選した。続いてモホセン・レザーイが340万票を獲得(得票率11.79%)したと述べた。改革派候補ナーセル・ヘンマティは240万票(得票率8.39%)に留まり、第3位であった。アミール・ホセイン・ガジザデ・ハーシェミはほぼ100万票(得票率3.45%)を獲得した。
2)5月25日、大統領本選出馬の資格を審査する監督者評議会(注:護憲評議会とも訳される)は、7名の候補者を有資格者として認定した。うち、5名は保守派、2名は改革派と色分けされた。失格となった他の592人の選挙戦出馬希望者の中には、最高指導者顧問で元議会議長のアリー・ラリジャニ(Ali Larijani)(近年、保守系に近いが実務主義者とみられている)との改革派の第一副大統領エスハク・ジャハンギリ(EshaqJahangiri)ならびに過去2期大統領を務めたアフマディネジャド前大統領が含まれる。イランの司法長官であるエブラヒーム・ライシ(60歳)が最も有力な保守派の候補者であり、改革派の大統領候補として期待が高かったザリーフ外相が、ソレイマニIRGCコッズ部隊司令官を批判したともとらえられる音声テープ漏洩問題でレース参加を断念し、それをうけて、大統領選出馬の資格取得申請を行ったジャハンギリ第一副大統領が失格となったことで、改革派はライシ候補の実質的ライバルとなりうる候補を失ったことになる。

(2) ライシ師とはどのような人物なのか
●最高指導者のアヤトラ・アリー・ハメネイのように、指導者は黒いターバンを身に着けている。これは、彼がサイイド、つまり預言者ムハンマドの子孫であることを意味する。ライシ師は、82歳の現最高指導者ハメネイ師が亡くなったとき、後継者となる可能性が高いと言われている。ライシ師は、8番目のイマームであるイマーム・レザ廟があり、シーア派イスラム教徒の宗教の中心地であるイラン北東部の主要都市マシュハドで生まれた。聖職者の家庭で育ったライシ師は、宗教教育を受け、15歳のときにコムの神学校に通い始めた。そこで、彼はハメネイ師を含む幾人かの著名な学者に師事した。大統領選挙討論会で教育に関し、神学校教育のほかに、古典教育の6学年までしか修了していないことを否定し、法学博士号を取得していると述べた。彼がイスラム共和制をもたらした1979年の革命のわずか数年前にコムで影響力のある神学校に入学したとき、多くのイラン人は最終的に追放されたモハンマド・レザー・シャー・パフラビの統治に不満を持っていた。ライシ師は、シャーに亡命を促し、最高指導者アヤトラ・ホメイニ師の下に新たな聖職者支配を実現したいくつかの出来事に参加したとされている。
●革命後、ライシ師はイラン南西部のマスジェド・ソレイマンにある検察庁で働き始めた。次の6年間で、彼は他のいくつかの管轄区域での検察官としての経験を積みはじめた。副検察官に任命され、1985年にイランの首都テヘランに移動したとき、重大な展開があった。人権団体によると、3年後の1988年、厳しい8年間のイラン・イラク戦争が終わってからわずか数か月後、彼はいわゆる「死刑委員会」の一翼として、数千人の政治犯の失踪と秘密の処刑を監督した。ライシ師は、大量死刑と公の抗議活動の取り締まりにおいて果たした役割によって、2019年に課された米国の制裁の対象となった歴代最初のイラン大統領になる。
●ライシ師は、1989年にハメネイが最高指導者に就任した後もイランの司法制度内でポストを登りつめた。その後、テヘランの検察官としての役割を果たし、その後、国家総合監査機関を率い、2014年までの10年間、司法府副長官を務めた。 その間、2009年に民主化推進草の根の抗議運動が起こった。2006年、司法府副長官時代、初めて南ホラーサーン地区から専門家会議メンバーに選出された。専門家会議は、最高指導者の後任を選ぶ任務を負っている。ライシ師は、2014年にイランの検事総長に昇進し、2016年までその地位に留まった。このとき、司法制度の外で、最高指導者からイマーム・レザー廟とすべての関連組織を管理する巨大な公益財団、または慈善信託であるアウタン・イコッズ(Astan-eQuds)の管理人に任命された。その立場で、ライシ師は数十億ドル相当の資産を管理し、イランで2番目に大きな都市であるマシュハドの宗教およびビジネスエリートと関係を築いた。
●2人の娘を持つライシ師は、マシュハドの強硬な長年の金曜礼拝の導師あるアハマド・アルアモルホダ(Ahmad Alamolhoda)の義理の息子でもある。同人は、激しい超保守的な演説と非常に物議を醸す発言やアイデアで知られていた。
●2017年の大統領選挙でローハニ現大統領に敗れたが、1600万票、得票率38%であった。2019年、ハメネイ最高指導者は、ライシ師を司法長官に任命。

5.10月10日イラク国民議会選挙
●10月10日、イラクは第5回目の議会選挙を行った。 投票率は41%と低調であった。民兵グループと関係を共有し、長い間イラクの政治を支配してきたイランが支援するシーア派政党ブロックであるファタハ連合は、前回の48議席から17議席へと激減した。 ポピュリストのシーア派聖職者ムクタダー・アル・サドルが率いるサドル潮流は最大の勝利者であり、議会で最大のブロックである329議席の組織で合計73議席(前回54議席)を獲得した。 スンニー派のタカダム同盟が2位で、マーリキー元首相率いる法治国家連合が33議席で第3位、クルド政党のKDPが31議席を確保し、クルド政党では第一位となった。
●選挙結果に衝撃をうけ、また、不満をもった親イラン・シーア派政党と民兵組織は選挙を不正、詐欺だと非難し、バクダッド市内を中心に、連日抗議行動を展開した。シーア派調整グループは、サドル師に対抗するため選挙管理委員会におびただしい数のクレイムを提出し、手動による投票結果の再カウントを求め、11月30日に選挙管理委員会が発表した「最終」選挙結果にも納得せず、連邦最高裁判所に提訴して、その判断を待っている。
●最大ブロックが組閣の優先的権利を有するため、サドル派は組閣に向けて、各ブロックとの調整を活発化させている。サドル師は、従来の権力分担型ではなく、多数派が権力を握る構造への変革を模索している。一方、反サドル派のシーア派調整グループは、サドル師とのバランスをとるため、シーア派内では、第2位の議席を確保したマーリキー首相を中核に、結束を強めている。一方で、サドル派が組閣を進めた場合、対ISIS作戦の中核にもなった人民動員勢力(PMF)を解散させ、国軍に吸収するか文民化しようとしているのではないかと警戒して、調整ブロック全体として、サドル師とも幾たびか会合を持ち、サドル師の独走を抑えようとしている。サドル師は、議会選挙には出ていないカーディミ現首相の続投を期待しているとみられ、一方、シーア派調整ブロックは、続投に反対する立場であり、次期首相の任命を巡っても対立が生じている。米・イラク協議の結果、2021年12月末までに米軍の戦闘部隊がイラクから撤退することになっているが、訓練や助言その他の役割の軍隊はイラクに留まる見通しであり、親イラン・シーア派民兵組織は、それを偽りの撤退とみなしており、2022年1月になれば、米軍への攻撃再開に踏み切る可能性も排除されない。
◆11月30日時点での各ブロックが獲得したとみられる議席数(注:確定値ではない)
@ サドル潮流(ムクタダー・サドル師):73議席を獲得
A タカダム同盟(モハメッド・アル・ハルブシ前議会議長)37議席
B 法治国家連合(ヌーリー・アル・マーリキー元首相)33議席
C クルディスタン民主党(KDP)(マスウード・バルザーニ)31議席
D 独立候補者 43議席
E クルド連合(クルディスタン愛国同盟(PUK)+ゴラン)18議席
F アズム同盟(イラクのアラブプロジェクト事務局長)14議席
G アルファタハ連合(ハーディアルアーミリィ)17議席

6.12月24日リビア大統領選挙(来年1月24日に延期の観測あり)
リビアで初となる大統領選挙の立候補が11月締め切られ、90人以上が届け出した。その中には、2011年アラブの春の反体制派蜂起で失脚し、殺害されたカダフィ大佐の後継者と目されていた次男のセイフ・イスラム氏や、東部の軍事組織「レバノン国民軍(LNA)」を率いてきたハフタル氏、それに選挙には出馬しないと公言してきたドゥバイバ現暫定首相など、物議をかもしている人物が含まれている。リビアでは、10年前にカダフィ大佐による独裁的な政権が崩壊したあと、2014年、西部の首都トリポリを拠点とする暫定政権とは別に、東部トブルクで「代表議会」が発足し、分裂状態に陥り、2019年にはハフタル氏率いるLNAが西部に進攻し、暫定政権に近いイスラム系武装勢力と軍事衝突。ロシアやエジプト、アラブ首長国連邦(UAE)がLNAを、トルコやカタールが暫定政権を支援する代理戦争となり、内戦が泥沼化した。LNAと暫定政権は2020年10月、国連の仲介で停戦に合意し、国際社会は大統領選を国民和解の第一歩と位置づけて実施を後押ししてきた。しかし、東西の両陣営は選挙制度などをめぐって非難合戦を続け、和解にはほど遠いのが現状といえる。12月に入ってからはトリポリの政府庁舎を一部の軍人らが包囲したり、南西部セブハで民兵らが衝突したりするなど治安が不安定化している。こうした中で、12月22日、選挙管理委員会は、立候補者リストを公表しないまま、選挙準備を取りやめ、予定通りの実施が困難になった。選管筋は、1ヵ月の延長のラインを出しているが、東西の立法議会で改めて決定する必要がある。

Posted by 八木 at 15:55 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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