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クウェート・サバーハ首長の逝去[2020年09月30日(Wed)]
9月29日、クウェートの首長シェイク・サバーハ・アルアフマド・アルジャベール・アルサバーハが亡くなった。91歳であった。故サバーハ首長は、1929年生まれ、クウェートの外務大臣を40年近く務め、2006年に逝去したジャービル首長のあと、ごく短期間の首長家内の権力争いを経て首長に就任した。後任には、サバーハ首長の異母兄弟のシェイク・ナワーフ・アルアフマド・アル・サバーハ皇太子(83歳)が閣議で新しい首長に指名された。
https://www.aljazeera.com/news/2020/9/29/sheikh-sabah-the-gcc-has-lost-his-voice-of
(コメント)クウェートはOPECメンバーで、大産油国である。サバーハ首長は40年務めた外相時代ならびに首長就任後も様々な危機や困難に直面した。その中で達成した大きな業績のひとつは、イラン革命後の1980年9月に勃発したイラン・イラク戦争をうけて、湾岸の王国・首長国の結束を強め、共同防衛にあたるために1981年に湾岸協力理事会(GCC)の結成に尽力したことである。最大の困難は、1990年8月にサッダーム・フセイン統治下のイラクがクウェートに侵攻したことである。サバーハ外相は、サウジに逃れ、一時期、亡命政権の中で、クウェート外交の陣頭指揮にあたった。翌1991年3月クウェートは多国籍軍によって解放された。外相は、その後イラクとの国境線の画定、補償と被拘禁者、人質、そしてクウェート人の遺体の返還に取り組んできた。日本は、湾岸危機で多額の資金面での貢献を行ったが、日本国内では日本の貢献にふさわしい謝意がクウェートから示されていないと見方もあったが、2011年3月の東日本大震災にあたって、クウェートは、サバーハ首長の指示で世界の中で最大の500万バレル(5億ドル相当)の石油を日本に送り、日本国民に分かる形で湾岸危機における日本の貢献に謝意を表した。クウェートには、湾岸諸国では少数派の立法議会が存在する。サバーハ首長は、内閣の変更や、議会の解散・総選挙により、幾たびかの国内の政治的危機を乗り越えてきた。2011年のアラブの春の民衆蜂起も乗り越えることができた。2009年には、初めて議会で女性議員4名が誕生した。2017年6月、サウジアラビア、UAE、バーレーン、エジプトがGCCを構成する同胞国であるカタールに対して「テロを支援している」との理由で断交し、陸、海、空の封鎖を課した。封鎖国は、カタールのアルジャジーラ放送局の閉鎖、イランとの外交関係縮小、トルコ軍の駐留終了、ムスリム同胞団やハマースやヒズボラとのすべての関係の切断などの13の要求を突き付けた。GCC創設に尽力したサバーハ首長は、直ちに調停に乗り出し、現実的解決を模索してきた。この努力が実を結んだわけではないが、内部の危機に際して、周辺国すべてから敬意を払われ、外交的イニシアティブを発揮できる人物の存在の必要性が改めて認識された。GCC諸国の中では、本年1月10日に、湾岸で全方位外交を展開してきたカブース国王が亡くなった。湾岸アラブ世界では、近隣同胞諸国の結束よりも、指導者の権力維持・拡大のための過去の経緯に配慮しないアグレッシブな外交政策を展開する国が増えている。サバーハ首長の死は、世代交代による躍動的で明るい展望の湾岸アラブ世界というより、対立の中で敵か味方かの判断を突き付ける不安定でリスクの大きい湾岸アラブ世界に突入していくのではないかという不安を感じざるをえない。

Posted by 八木 at 11:25 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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