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トルコ検察によるサウジ人ジャーナリスト・カショーギ氏殺害容疑者20名の起訴[2020年03月27日(Fri)]
トルコのイスタンブール最高検の検察官は、2018年10月2日、訪問したイスタンブールのサウジ領事館で殺害されたサウジ人ジャーナリスト・ジャマール・カショーギ氏殺害容疑で、サウジ人20名を起訴した(関連記事要旨参考1参照)。容疑者20名はインターポールを通じて国際手配される。容疑者全員は、事件後サウジに帰国しており、今後、トルコ国内で欠席裁判が行われる見通し。サウジでは、起訴された容疑者11名に対して、昨年12月一審で5名に死刑、3名に24年までの有期刑、3名が証拠不十分として解放されている。

(参考1)トルコ検察によるカショーギ殺害容疑者20名の起訴に関するディリーサバーハ紙オンライン記事要旨
●イスタンブールの最高検察官であるイルファン・フィダンは、ワシントン・ポスト紙のコラムニストで、2018年10月2日イスタンブールのサウジ領事館内で殺害されたサウジ人ジャーナリスト・ジャマール・カショーギ(Jamal Khashoggi)の殺害に関与した20人の容疑者を正式に起訴した。検察官は、声明の中でトルコは、サウジアラビアの漠然とした説明と論争の的になっている殺害に関する声明に不満を抱き、独自の調査を実施してきたが、調査は終了したと語った。
●検察官声明によれば、起訴状はサウジアラビアのアフマド・アル・アッシーリ元総合情報庁副長官とサウード・アル・カハタニ元王宮府顧問を「おぞましい意図を持った計画的殺人を扇動した」として糾弾した。また同声明は、この2人に加えて、カショーギの殺害を実行したとして他の18人も起訴した。しかし、容疑者は全員トルコを離れており、サウジアラビアはトルコでの裁判実施の要求を拒否した。サウジアラビアは、王国の法廷こそが彼らが裁判にかけられるべき正しい場所であると主張し、殺害に関して11人を裁判にかけた。
●18人の容疑者の中には、MBS皇太子と頻繁に外国訪問に同行した諜報部員マーヘル・ムトレブ、法医学の専門家サラーハ・アル・トゥバイギ、およびサウジアラビアの王宮ガードのメンバーであるファハド・アルバラウィが含まれ、彼らは意図的かつおぞましい意図をもち、苦痛を与えた殺害で起訴された。有罪判決を受ければ、彼らは刑務所で終身刑に服することになる。
●ムトレブ、トゥバイギ、バラウィの3名は、リヤドで裁判にかけられていた11人に含まれる。西側の当局者によれば、被告人の多くが、作戦の指揮官としてアッシーリの命令を実行したと述べ、自分たちを弁護した。2019年12月にサウジアラビアで名前が公表されていない5人の人々が死刑を宣告された一方、他の3人は24年までの懲役刑を受け、3名が証拠不十分で釈放された。カハタニ元王宮府顧問は調べられたが、「証拠不十分な証拠」のためにサウジアラビア当局から起訴されず、アッシーリ副長官は起訴されたが、結局同じ理由で解放された。
●トルコの検察官は、欠席裁判で20人の容疑者に対して開かれると述べたが、日付は明らかにしなかった。検察はすでにトルコにいない容疑者に対して逮捕状を発行した。起訴状によれば、容疑者の携帯電話の記録、トルコへの出入りの記録、領事館での彼らの存在の記録、証人の声明、カショーギの電話、ラップトップ、iPadの分析に基づいて起訴が決定した。すなわち、殺害された故人、原告、および容疑者の電話による会話の記録が調査され、故人の領事館への入場、容疑者のトルコへの到着、領事館の建物および領事住居への映像が調査された。
●トルコ当局はサウジアラビア当局に容疑者を引き渡すよう要請する一方で、殺害に関与した20人の容疑者に対してインターポールによって国際手配された。
●国際調査をカショーギの殺害に関する調査報告をまとめた国連人権特別報告者アグネス・カラマールは、サウジアラビア人容疑者20人のトルコに対する起訴を歓迎した。
https://www.dailysabah.com/politics/turkish-prosecutors-seek-life-sentences-for-killers-of-saudi-journalist-khashoggi/news


(参考2)サウジにおける裁判経緯
2019年12月23日、リヤドの刑事裁判所は、著名なサウジ人ジャーナリストでワシントンポストのコラムニストでもあったジャマール・カショーギ氏が、2018年10月2日、イスタンブールのサウジ領事館を、トルコ人女性との結婚に必要な書類を取得するために訪問した際、本国から派遣された15名の暗殺団によって殺害された事件の容疑者への判決を下した。今回のサウジ側の発表によれば、31人が取り調べをうけ、21人が逮捕され、11名が起訴されていたが、第一審の刑事裁判所は、起訴された11名のうち、5名に死刑、3名に合計24年までの禁固刑、3名は無罪となった。残る11名は証拠不十分で解放した。有罪判決を受けた人物は、最終的な司法の判断が下されるまでは、名前が公表されないとのこと。この判決に対して、サウジ国内やUAEなど友好国は、判決を評価しているが、トルコや国連の人道分野の特別報告者であるカラマル氏などは、裁判が国際的に受け入れられる水準に全く達していない、事件を指示した幹部にはほとんど調査、審査された形跡もないとして厳しく批判している。控訴審で争われるのかは、控訴裁判所の判断に委ねられるとのこと。

(参考3)リヤド刑事裁判所(一審)での判決結果(2019年12月23日)
検察は、31人を含むこの事件の審査と関連手続きを終了したと述べた。31人のうち、21人が逮捕され、10人が拘留の根拠なしとして、逮捕されずに尋問のために呼び出された。審査の結果は次のとおり。
第一に、この事件では、11人が起訴され、リヤド刑事裁判所における被疑者に対する刑事告発が提出された。
第二に、リヤド刑事裁判所は、以下のとおり起訴された11人に関して判決を下した。
@ 被害者の殺人を犯し、直接関与した5名に対する死刑。
A この犯罪を隠蔽し、法律に違反した3名に対して合計で24年までの異なる禁固刑。
B 裁判所は、3名に対する検察官の告発を却下し、有罪ではないと判断した。
第三に、検察は残る10人に対しては、証拠が不十分であるために告訴をせず、彼らを解放した。
検察は、裁判所の判決を検討し、第二審に控訴するかどうかを決定すると述べた。
https://www.spa.gov.sa/viewfullstory.php?lang=en&newsid=2014204#2014204

(コメント)今回のトルコのイスタンブール最高検による容疑者20名の起訴は、サウジ国内で進行してきた裁判では、真相が明らかにされないほか、責任者の処罰も不十分・不公平という観点から、エルドアン大統領の意向を踏まえたうえで、検察が起訴に踏み切ったものと考えられる。サウジ側においては、2018年11月15日にサウジの検察が11名を起訴して、2019年1月からリヤドの刑事裁判が開始され、9回のセッションを経て、10回目のセッションで、判決が下された。この裁判は、完全非公開に近い形で進められてきたが、カショーギ氏の家族や、G5+トルコ大使館の代表は傍聴を認められた。但し、裁判のセッションは当然アラビア語で実施され、ローカル・スタッフの同行は認められず、また、傍聴の内容も外部に漏らしてはいけないとの条件で行われたとのこと。この事件では、CIAがサウジの実質的指導者ムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)皇太子の関与を指摘したが、皇太子は、最近でこそ国としての監督責任には言及したものの、自身の関与を一切否定してきた。第一審の判決では、@本国から暗殺団を実質的に指揮したとされるカハタニ元王宮府顧問は、起訴もなれておらず、嫌疑なしとして解放されたこと、Aアッシーリ元サウジ情報部次長も起訴はされたものの、無罪になったこと、Bイスタンブールのサウジ領事館の主で、事件の推移をすべて見守り、記者団を領事館内に招き入れて、カショーギ氏はどこにもいないとの虚偽の発言を行ったオタイビ元総領事も罪に問われず、逆に、C一審は、今回の事件は、事前に仕組まれたものではなく、現場のチームがやむを得ず実行したものと判断し、殺人の罪を本国関係者は除外し、現場にいた暗殺団15名の中でも直接殺害に関わったとされる5名に限定していることである。これについて、サウジ上層部は、今回の裁判を「茶番」ではないか、あるいは「トカゲのしっぽ切り」との見方が出てくるのは、あえて承知で、年内にこの件に一区切りつけたいとの意向があったものとみられる。2018年10月の段階で、当時のジュベイル・サウジ外相は、国王、皇太子は、「レッドライン」であるとして、防衛線を貼っており、この防衛線を高めに設定して、カハタニ、アッシーリも無罪にしてMBS指導のサウジ国家体制の維持のために多少の批判は覚悟のうえで、サウジは、自国流のやりかたで国内での法的手続きを着実に進めていることを印象付けようとしたものとみられる。判決後のシャアラーン次席検事の記者会見で、とりわけ、印象的なのは、あえて、トルコに13通の尋問嘱託書簡を送ったにもかかわらず、返事があったのは一通だけであるとして、トルコ側が協力的でないため、証拠不十分で嫌疑を固められなかったケースが多かったことを示唆したことである。サウジ側は、サウジ上層部への追求の手を緩めず、サウジの司法手続きから距離をおくトルコ政府に強いフラストレーションを抱いてきたとみられる。逆に、トルコ側は、15名の暗殺団が殺害に何らかの役割を演じており、本国から指揮したとみられているカハタニ、アッシーリは何の処罰も受けず、また、サウジ領事館の主であるオタイビ総領事は殺害を見届けながら、直後に記者団を招き入れて、カッショーギ氏は立ち去ったとしてしらばくれているにもかかわらず、何の処罰も受けていないこと、そもそも、未だに判決をうけた容疑者の名前も公表されていないことから、裁判が透明性においても、法の正義の実現という観点からも国際的標準にまったく達していないとみている。今回のトルコ側の起訴により、サウジ国内で罪を免れたカハタニ、アッシーリも国外に出れば、インターポールの国際手配を通じて逮捕される可能性が出てくる。
この件は単に法律的な正義の実現という観点と離れて、二国間関係においてもサウジの実質的な指導者MBS皇太子とトルコのエルドアン大統領の関係を、修復できないレベルにまで切り裂く可能性がある。両国指導部の関係悪化は、シリアやリビアの情勢をはじめとする地域情勢をめぐる両国の対立を招く可能性が大きい。

Posted by 八木 at 15:20 | イスラム世界で今注目されている人物 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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