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サウジ人ジャーナリスト・カショーギ氏殺害に関するサウジ第一審の判決[2019年12月24日(Tue)]
12月23日、リヤドの刑事裁判所(第一審)は、著名なサウジ人ジャーナリストでワシントンポストのコラムニストでもあったジャマール・カショーギ氏が、2018年10月2日、イスタンブールのサウジ領事館を、トルコ人女性との結婚に必要な書類を取得するために訪問した際、本国から派遣された15名の暗殺団によって殺害された事件の容疑者への判決を下した。今回のサウジ側の発表によれば、31人が取り調べをうけ21人が逮捕され、11名が起訴されていたが、第一審の刑事裁判所は、起訴された11名のうち、5名に死刑、3名に合計24年までの禁固刑3名は無罪となった。残る11名は証拠不十分で解放した。有罪判決を受けた人物は、最終的な司法の判断が下されるまでは、名前が公表されないとのこと。この判決に対して、サウジ国内やUAEなど友好国は、判決を評価しているが、トルコや国連の人道分野の特別報告者であるカラマール氏などは、裁判が国際的に受け入れられる水準に全く達していない、事件を指示したとみられる上層部にはほとんど調査、審査された形跡もないとして厳しく批判している。控訴審で争われるのかは、控訴裁判所の判断に委ねられるとのこと。

(参考1)リヤド刑事裁判所(一審)での判決結果(12月23日)
検察は、31人を含むこの事件の審査と関連手続きを終了したと述べた。31人のうち、21人が逮捕され、10人が拘留の根拠なしとして、逮捕されずに尋問のために呼び出された。審査の結果は次のとおり。
第一に、この事件では、11人が起訴され、リヤド刑事裁判所における被疑者に対する刑事告発が提出された。
第二に、リヤド刑事裁判所は、以下のとおり起訴された11人に関して判決を下した。
@ 被害者の殺人を犯し、直接関与した5名(参考4.参照)に対する死刑
A この犯罪を隠蔽し、法律に違反した3名に対して合計で24年までの異なる禁固刑
B 裁判所は、3名に対する検察官の告発を却下し、有罪ではないと判断した。
第三に、検察は残る10人に対しては、証拠が不十分であるために告訴をせず、彼らを解放した。
検察は、裁判所の判決を検討し、第二審に控訴するかどうかを決定すると述べた。
https://www.spa.gov.sa/viewfullstory.php?lang=en&newsid=2014204#2014204


(参考2)シャアラーン次席検察官による記者会見要旨(12月23日)
●シェイク・シャアラーン・ビン・ラジェ・ビン・シャアラーン次席検察官は、市民ジャマール・ビン・アハメド・カショーギを殺害した疑いのあるすべての関係者が検察によって審査され、有罪と認められる者は裁判所に送られ、そして、証拠の欠如のために有罪と認められなかった者はすべて、検察または裁判所の判断を経て釈放された、ことを確認した。
●本日(23日)開催された記者会見で、検察官は、控訴裁判所と最高裁判所の承認がない限り、刑事裁判所が被告に対して下した判決は最終的なものではないと指摘した。手続きに残されていることは、控訴裁判所が判決に異議を認めるかだけである。処罰の決定が控訴裁判所によって承認された場合、刑事訴訟制度の第190条に基づいて最高裁判所に提出される。
●検察官は、9回の公判セッションで被告の事案が審理され、10回目のセッションで判決が出されたこと。この事件に関心のある人々、被害者の子供、弁護士、および安全保障理事会の5人の常任理事国の大使館の代表の出席が認められていた、と補足した。
「トルコは協力し、調査に協力したのか」という質問に対して、検察官は、検察官が犯行現場から入手可能な証拠を王国の検察官に提供するためにトルコ側に13通の尋問嘱託書簡を送ったものの、検察により釈放されたサウジアラビア領事、ムハンマド・アル・オタイビに関するもの一件を除いて、如何なる回答の書簡も受け取ることはなかった、と答えた。この嘱託書簡は、サウジ領事が犯罪の日に彼らと一緒にいた休暇取得中だったトルコ国籍の証人の証言を含んでいた。
●検察官は、検察官の調査は、この任務の開始時に殺害する事前の意図がなく、殺害はその場の判断であり、交渉チームの代表が領事館本部を訪問し、犠牲者のジャマール・カショーギを彼との交渉を完了するために安全な場所に移動させることは困難であることが判明したため、それから、領事館内で交渉の責任者と加害者たちが相談し、領事館内で犠牲者を殺害することに合意したものである。検察官は、捜査が加害者と被害者の間に以前からの敵意が存在しなかったことを示したと強調した。
●次席検察官は、ジャマール・カショーギの殺害に関与した疑いのあるすべての人が検察によって審査され、審査により有罪と認められた者は裁判所に送られ、有罪と認められなかった者は検察または裁判所が証拠不十分で釈放されたことを確認した。また、被告人サウード・アル・カハタニは検察により審査され、証拠不十分のため起訴されなかったと補足した。更に被告人アハメド・アッシーリについては、彼は審査され、起訴され、裁判所に送られたが、裁判所が告訴を却下し釈放された。
●この事件で検察が、一審の判決を受けた者の身元を公表しない理由について、次席検察官は、刑事訴訟制度の第68条は、判決がまだ一審であり、名前の公表を禁止しており、最終的な判決で、名前が公表されると述べた。
https://www.spa.gov.sa/viewfullstory.php?lang=en&newsid=2014309#2014309
(参考3)トルコでカショーギ殺害事件を調査し、報告書にまとめたアグネス・カラマル国連特別報告者のコメント
事件の首謀者は自由に歩きまわれるだけでなく、捜査と裁判においてもほとんど触れられていない。それは正義へのアンチテーゼである。それ(裁判を指す)は見せ掛けだけのごまかしである。
(本年6月の国連人権コミッショナー室発出記事)https://www.ohchr.org/EN/NewsEvents/Pages/DisplayNews.aspx?NewsID=24713
(参考4)サウジ検察からは氏名非公表ながら、23日付MEE記事に基づき死刑判決を受けたとみられる5名
(1)マーヘル・アブドルアジーズ・ムトリブ(Maher Abdulaziz Mutreb)
カハタニ王宮府顧問の情報・治安担当補佐で、暗殺団の交渉責任者。情報当局のシニア職員で、皇太子の欧米外遊にもしばしば同行。ロンドンの大使館で、カショーギ氏と同僚だったこともあり、イスタンブール・オペレーションの一員に抜擢された。事件当日の3時間前に総領事館に入り、のちに総領事公邸の外にいることが監視カメラで確認されている。1971年5月23日生まれ
(2)サラーハ・ムハンマド・アル-トゥバイギ(Salah Muhammed al-Tubaigy)
内務省の犯罪証拠局に所属する法医学専門家。サウジ法医学学会会員。サウジ治安機関とも関係が深い。サウジでは同分野の著名な人物で、メッカ巡礼者の死因を特定するモバイル・クリニック開発にかかわったこともあり、当日、骨を切断する鋸をもちこんだことや、ヘッドホーンをはめて音楽を聴きながら、15分間のカショーギ氏の遺体切断を指揮したことが報じられている。1971年8月20日生まれ
(3)ワリード・アブドッラー・アル-セフリ(Waleed Abdulla al-Sehri): サウジ空軍に所属する将校。2012年に軍関係者集会での詩吟が報じられている。 1980年11月5日生まれ
(4)ファハド・シャビーブ・アル-バラウィ(Fahad Shabib al-Balawi):サウジ王宮ガード隊員。1985年1月24日生まれ
(5)トルキー・ムサッレフ・アル-セフリ(Turki Musarref M al-Sehri):1982年生まれ
https://www.middleeasteye.net/news/saudi-arabia-sentences-five-death-over-jamal-khashoggi-murder

(コメント)今回の裁判は、昨年11月15日にサウジの検察が11名を起訴して、本年1月からリヤドの啓示裁判が開始され、9回のセッションを経て、10回目のセッションで、判決が下された。この裁判は、完全非公開に近い形で進められてきたが、カショーギ氏の家族や、G5+トルコ大使館の代表は傍聴は認められた。但し、裁判のセッションは当然アラビア語で実施され、ローカル・スタッフの同行は認められず、また、傍聴の内容も外部に漏らしてはいけないとの条件で行われたとのこと。この事件では、CIAがサウジの実質的指導者ムハンマド・ビン・サルマン(通称MBS)皇太子の関与を指摘したが、皇太子は、最近でこそ国としての監督責任には言及したものの、殺害への自身の関与を一切否定してきた。今回の判決で特に注目されるのは、@本国から暗殺団を実質的に指揮したとされるカハタニ元王宮府顧問は、起訴もされておらず、証拠不十分として解放されたこと、Aアッシーリ元サウジ情報部次長も起訴はされたものの、無罪になったこと、Bイスタンブールのサウジ領事館の主で、事件の推移をすべて見守り、記者団を領事館内に招き入れて、カショーギ氏はどこにもいないとの虚偽の発言を行ったオタイビ元総領事も罪に問われず、逆に、C一審は、今回の事件は、事前に仕組まれたものではなく、現場のチームがやむを得ず実行したものと判断し、殺人の罪を本国関係者は除外し、現場にいた暗殺団15名の中でも直接殺害に関わったとされる5名に限定していることである。これに対して、サウジ上層部は、今回の裁判を「茶番」ではないか、あるいは「トカゲのしっぽ切り」との見方が出てくるのは、あえて承知のうえで、年内にこの件に一区切りつけたいとの意向があったものとみられる。昨年10月の段階で、当時のジュベイル・サウジ外相は、国王、皇太子は、「レッドライン」であるとして、防衛線を貼っており、この防衛線を高めに設定して、カハタニ、アッシーリも無罪にして、MBS指導のサウジ国家体制の維持のために多少の批判は覚悟のうえで、サウジは、自国流のやりかたで国内での法的手続きを着実に進めていることを印象付けようとしたものとみられる。なお、シャアラーン次席検事の記者会見で、とりわけ、印象的なのは、あえて、トルコに13通の尋問嘱託書簡を送ったにもかかわらず、返事があったのは一通だけであるとして、トルコ側が協力的でないため、証拠不十分で嫌疑を固められなかったケースが多かったことを示唆した。トルコ政府は、サウジ上層部への追求の手を緩めておらず、サウジ政府は、サウジの司法手続きに距離をおこうとするトルコ政府に強いフラストレーションを抱いていることが看取される。

Posted by 八木 at 18:19 | 情報共有 | この記事のURL | コメント(0) | トラックバック(0)

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